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2025年8月28日木曜日

1_242 冥王代の岩石 7:短い半減期

 複数の岩石を用いた年代値はどうしても信頼性が、高くなりません。そこでSmの2種の放射性核種の用いた年代測定から、年代の精度を保証していくという方法です。議論を呼びそうな方法論ですが、今度どうなるでしょうか。


 一連のマグマでできたことが明らかな場合は、ひとつの火成岩の中で、同時にできたいくつ種かの鉱物で、147Smを測定することです。しかし、そのためには、変成・変質作用を受けていない鉱物を見つけて、きれいな状態で分離するという手続きが必要です。さらに、鉱物によっては、少ない量の147Smの測定する技術が必要になります。
 かつては、岩石全体でしか、147Smの量を測定することができませんでした。その後、比較的147Smの量の多い鉱物を見つけて、分離して測定することに挑戦されるようになりました。そのためには、きれいな鉱物を、より多く分離していく必要がありした。
 大学院生のとき、その方法にチャレンジしたことがありました。研究対象としてた地域の岩石は、激しく変成作用や変質作用を受けていました。その中で、火成作用で形成された(初成のといいます)鉱物であった単斜輝石が、変成作用・変質作用に耐えて、かろうじて残っていました。それを分離していくことにしました。その苦労は並大抵ではありませんでした。
 まず、4つの岩石を選び、単斜輝石の分離に挑戦しました。きれいに単斜輝石だけが分離できたは、ひとつの岩石のみで、あとは単斜輝石を多く含むもの(「mafic fraction 苦鉄質濃集物」と論文では呼びました)になりました。分離したものから、変成・変質物を取りぞくために、何度も洗浄してから、147Smの測定をしました。その結果、なんとか年代を求めることができました。
 現在では、より微量の147Smであっても、測定精度は上がっていますが、変成作用を受けていない鉱物を分離する作業は、今でも大変です。このような鉱物の分離による年代測定は、ジルコンを用いたウランの年代測定ほどは、用いられていません。
 この論文では、同じマグマだ「と考えられる」岩石の147Smを用いてのアイソクロン年代が41.57±1.74億年と求められました。上述したように、この年代が、火成岩の年代を示しているかどうかの確実性が、これだけでは足りません。
 論文では、年代の精度をチェックするために、放射性核種の146Smも用いています。146Smは崩壊すると142Ndになりますが、その半減期は6800万年と短いものです。短い半減期の核種は、古い岩石の年代測定には使えません。冥王代に形成された岩石では、146Smはすべて142Ndに改変しています。
 もしこの岩石が冥王代に形成されていたら、形成時にもっていた146Smからの142Ndと、147Smからの143Ndの間に相関が残っているはずです。崩壊してできた143Nと142Nd(実際には144Ndとの比の規格化しています)の相関関係を、アイソクロン法とみなして調べています。
 半減期の短い142Nd/144Nd比では、誤差が大きくなっていましたが、直線状の相関が見られました。これをアイソクロンとみなして、その年代を求めると、41.96+0.53-0.81億年前となりました。この年代は、半減期の長い147Smからえられた年代と似ています。したがって、半減期の短い146Smのアイソクロンも、形成時の情報を保存しているという根拠だと主張しています。
 したがって、この地域の岩石の年代が41.57億年前となり、冥王代に火成作用でできた可能性が高いといっています。仮定や論理が複雑なので、今後も議論は続きそうです。まだ誰もが納得できる冥王台の岩石は見つかったとはならないようですね。

・人間の忍耐力・
正確なアイソクロン年代をえるには、
必要な素材の分離技術、
そして微量成分のために測定技術が必要です。
分離も測定も、技術の進歩で
簡便化、高精度化されています。
しかし、分離には、研究者の忍耐力が必要です。
いつの世も、人間側の問題には
進歩はなかなか訪れませんね。

・症状悪化・
早朝の出勤は涼しいのですが、
昼間の暑い中を、
連日歩いて帰宅していました。
夏の暑さと日差しのせいでしょうか。
それとも年齢による衰えでしょうか。
先日、検査にいったら、
一旦治まっていた症状が、まだ悪化していました。
それまで自覚症状はまったくなかったのですが、
その診断されると、つらく感じるようになりました。
新たな対処薬も加わることになりました。
今日から暑い中を歩くのはやめて
妻に迎えに来てもらうことにしました。
次回の診察まで様子を見ていきましょう。

2025年8月21日木曜日

1_241 冥王代の岩石 6:年代確証の課題

 アイソクロンでえられた年代が、火成岩の形成時のものだというためには、いくつかの課題をクリアしなければなりません。この論文では、いくつかはクリアしていますが、クリアできない課題もありました。


 前回、アイソクロン年代の意味を説明して、論文での精度がはっきりしないということまで紹介しました。もう少し詳しく説明して、その課題をみていきましょう。
 アイソクロンを引くためには、同時に形成された「もの」で、なおかつ放射性核種の147Smの量が異なっているもの(岩石や鉱物)が必要です。ここで「もの」とは、岩石や鉱物のことになります。147Smの量は、岩石や鉱物の組成を反映して変化していきます。そのため、一連のマグマから形成された「と考えられる」組成の異なった岩石・鉱物を選んで、147Smの量を測定していきます。その結果、147Smの量が異なっていれば、「直線状に並ぶはず」で、時間とともに直線の傾斜が大きくなります。
 この「と考えられる」と「直線状に並ぶはず」とが問題となります。それらの確証がない限り、求めた年代が岩石の形成されたもの(初成年代)だということができません。
 まず、同じ起源であることを示す必要があります。なぜなら、放射性核種がマグマの中で一様になってから、固化(岩石や鉱物になる)してから、崩壊が進むという条件が必要です。岩石の放射性核種の量が一定(直線状)になってから、崩壊がストップウオッチを押したように、同時にスタートする必要があるからです。
 今回の論文では、組成の変化をえるために、離れた地域の岩石を用いています。そのような状態の試料で、同じ起源であるという前提を置くのは危険です。一連のマグマからできたということが確実なのは、連続した露頭で、組成変化していることが確認できる場合です。
 今回の試料の多くは、数100mから数kmの範囲で、一連に見える岩石です。しかし、もともと海洋地殻だった古い時代の地質体が、陸地に上がっているものでは、一連に見えても、見えない断層(衝上断層やスラストと呼ばれます)が多数存在してことが知られています。そのため、一連のマグマであったという確証がえられません。
 また、岩石ごとに、形成後に異なった変成作用や変質作用を受けると、147Smの量の違いが、本当にマグマ由来(初成)かどうかが、はっきりしなくなります。一番の問題は、ある時期、147Smを含んだ成分が、変成作用などで水に含まれていたり、別の岩石から由来する可能性です。このような可能性を論文では「同位体混合」と呼んで検討しています。
 同位体混合では、混合する成分がわかれば、その混合状態(グラフ上で曲線が描ける)が推定できます。論文ではそのチェックはしており、いくつもの条件で検討してみて、可能性が少ないとしています。
 ですから、課題として残るのは、一連のマグマからできたかどうかです。これは岩石で検討している限り解決できそうもありません。その課題の詳細については、次回としましょう。

・長男の帰省・
先週、1週間ほど、長男が帰省していました。
昨年もこの時期に帰省していました。
その理由は、野外フェスにいくためです。
今年は、1日分しかチケットを取れなかったようですが
幸い、雨にも降られず、見ることができたようです。
連日、ひとりであちこち出歩いていたり
夜も知人の飲みにいったりしていました。
それでも、家族では2回ほど
夕食をともにしました。
一年に一度の面会で、団欒を楽しみました。

・夏が終わりつつある・
北海道の小・中学校は、
来週で夏休みが終わり、学校がはじまります。
昼間は、その日の天気により
暑かったり、蒸したりすることがありますが、
夜は涼しく、窓を閉めて寝れるようになりました。
朝も涼しく、上着をはおるようになりました。
研究室は、午後には西日が当たり暑くなるので
午後には早帰りもしていましたが、
これからは、通常に戻れますかね。

2025年8月14日木曜日

1_240 冥王代の岩石 5:年代の意味

 斑レイ岩の年代を求めめようとした論文ですが、半減期の長いサマリウムを用いてアイソクロン法で年代測定をしています。アイソクロン法には、一筋縄ではいかない困難さがあります。


 年代測定をするとき、冥王代のような古い時代の岩石では、放射性核種でも、半減期の長いものを用いなければなりません。そのような元素として、ジルコンに含まれている放射性核種のウラン238(238Uと表記)の半減期は約45億年、ウラン235(235U)の半減期は約7億年です。
 以前、ウジャラルク・ユニットを貫入している酸性岩(トロニエム岩と呼ばれる)があり、そこにはジルコンが含まれていたので、年代測定されています。その年代は約37億7000万年前となり、冥王代ではありませんでした。ただし、他の根拠から、ウジャラルク・ユニットは、冥王代ではないかと推定されていたのですが、確実な年代値が示されていたわけではありません。
 今回、斑レイ岩で年代測定が試みられたのですが、塩基性の岩石なのでジルコンは含まれていませんでした。そこで、サマリウム(Sm)の放射性核種が用いられました。サマリウムには、年代測定に使えるサマリウム147(以降、147Smと表記)があり、その半減期は約1060億年と極めて長いものです。147Smは崩壊すると、ネオデウム143(143Nd)になります。
 マグマからできた岩石は、結晶化するとき、岩石ごとに化学組成の変化が起こります。岩石ごとに、放射性核種の147Smが量が異なってきます。147Smの量が異なると、改変でできた143Ndの量も、それに比例して変化していきます。ですから、組成の異なった岩石の147Smと143Ndの比率を調べていくと、形成時間に応じて一連の関係(直線)をもってきます。この原理を利用して年代測定する方法が、アイソクロン法と呼ばれています。
 ウジャラルク内で採取された6種類の斑レイ岩と、飛び地になりますが同じ地帯と属すると考えられる2種類の斑レイ岩も加えて分析しました。8個の岩石は、143Nd/144Ndではきれいな直線となりました。そこからえられた年代値は、41.57±1.74億年前となりました。
 各種の岩石で、年代測定をすることになるのですが、アイソクロン法にはいくつか問題があります。それは一連の起源の岩石を用いておこなうのですが、マグマの一連の結晶分化で組成変化したのか、マグマや他の岩石の成分が混合した混合線を示している可能性があります。また、激しい変成作用を受けていると、147Smと143Ndの比がリセットされる可能もあります。古い時代のアイソクロン年代が、火成作用の年代だと決定づけられないことがあります。
 この論文では、別の工夫をして、他の可能性も検討しています。工夫とは、同じサマリウムの放射性各種を用いるのですが、詳細は次回としましょう。

・パソコンまだ不調・
修理に出したパソコンが、新しいものにかわりました。
苦労してアプリケーションやデータを入れてきました。
ところが、現在、非常に不安定な状態です。
アプリケーションのバージョンを下げたり、
スタート時に読み込むアプリケーションを制限したり、
あれこれと調整しながら使っています。
データのバックアップは怠りなくおこなっています。
しかし、週末に、全く動かなくなりました。
諦めかけたのですが、原因は不明ですが、
別のところたシンプルにして立ち上げたら
なんと動き出しました。
熱暴走していたようです。
今後、放熱対策をしていきましょう。

・暑さのピーク・
昼間には暑い日があるのですが、
しばらくエアコンを使っていません。
夜には暑くて窓を開けていても
夜中には閉めないと涼しくなります。
昼間も扇風機でなんとか過ごせます。
まだ暑い日が来るでしょうが
暑さのピーク時は過ぎ去ったのでしょうかね。

2025年8月7日木曜日

1_239 冥王代の岩石 4:花崗岩マグマの起源

 これまで報告されてきた冥王代の年代は、砕屑性ジルコンによるものでした。ジルコンは、花崗岩マグマから由来していました。花崗岩マグマの起源を探ると、今回の緑色岩帯に貫入している斑レイ岩の地質学的な重要性もわかってきます。


 年代測定で岩石最古の年代は、太古代のものでした。それより古いが岩石は見つかっておらず、砕屑性ジルコンでは冥王代のものが見つかっていました。砕屑性ジルコンは、花崗岩(大陸地殻)に由来していると考えられますが、そもそも花崗岩をつくったマグマは、どうしてできたのでしょうか。
 花崗岩マグマの起源には、いくつかあるとわかっています。それは、玄武岩質マグマの結晶分化作用、地殻物質の水の存在下での融解、そして島弧下でのマグマ混合の3つが主なものです。これらは、島弧の地下では、それぞれ独立して働くものではなく、関連して起こっていると考えられています。
 マントル物質が溶融すると玄武岩質マグマができます。深部では温度は高温ですが、マグマは液体のため周りの岩石より密度は小さくなります。その結果、マグマはマントル内を上昇していきます。周りの岩石は冷たいので、マグマの温度が冷えててき、結晶ができてきます。温度とマグマの成分により、出てくる結晶の種類や組成が変化していきます。結晶化(結晶分化)が進むと、マグマの組成は玄武岩質から、安山岩質、そして花崗岩質に変化していきます。玄武岩質マグマが、結晶分化して花崗岩質マグマになっていくのは、量的に少なくなります。花崗岩マグマによる貫入岩などはできますが、地殻を構成するような大規模な花崗岩の起源としては量が足りません。
 次の地殻物質の溶融とは、地殻物質(花崗岩類や堆積岩類など)が、水のある条件で高温になると溶けて、花崗岩質マグマができます。この起源には、高温にするための熱源が必要ですが、熱が十分供給されれば、大量のマグマができます。では、熱源はどうすればもらされるでしょうか。
 それが次の島弧下のマグマ混合と関連してきます。島弧は、海洋プレートが沈み込む陸側にできます。沈み込んだ海洋プレートから、島弧下のマントルへ水分が継続的に供給され、マントルが溶融していきます。マントルの溶融では、上で述べたように玄武岩質マグマができます。沈み込みはプレート運動によるものなので継続的に起こるので、島弧下ではマグマが常に上昇してくるところになります。
 マントルから玄武岩質マグマが島弧地殻下部にまで上昇してくると、それが熱源となって、地殻の溶融が起こり花崗岩質マグマができます。熱源の玄武岩質マグマと溶融でできた花崗岩質マグマは近くにあるので、混合することになります。玄武岩質マグマの量(熱量)や、花崗岩質マグマの形成量、混合機構などの違いによって、多様な組成のマグマができます。マグマ混合で、島弧の多様な火山のマグマ組成を説明できます。
 混合比率によって多様なマグマができますが、平均的には中間組成の安山岩質になります。大陸地殻の平均化学組成は、島弧の安山岩に似ていることが知られているため、島弧のマグマ混合作用で島弧の地殻ができて、やがてそれが大陸地殻を形成しているのではないかと考えられています。
 今回、緑色岩帯の玄武岩(海洋地殻)に貫入した斑レイ岩は、海洋地殻内で起こった現象となります。ただし、緑色岩帯は、大陸地域に残されているため、島弧の一部として取り込まれ、大陸地殻へと変化していったと考えられます。
 また、島弧の地下でのマグマ混合作用で大陸地殻を形成するような大量の花崗岩質マグマの形成は、水が重要な役割を果たしています。砕屑性ジルコンの年代の冥王代には、すでに海洋が形成されプレートテクトニクスが働いていたことも示すことにもなります。
 では、次は、年代測定の方法とその信頼性を見てきましょう。

・北海道らしい夏・
7月下旬からは、北海道らしい夏の気候となっています。
昼間でも、乾燥しているので、
爽やかな風が抜けています。
そのため、しばらくエアコンは使っていません。
夜も涼しく、窓も閉めて寝ています。
これぞ北海道と思えます。
このまま涼しくなっていけばと思っていますが、
そうはいかないでしょうがか。

・パソコン本体のバックアップ・
メインで使用していたパソコンを壊れたので
修理に出したところ、破損箇所は特定されたのですが、
修理ができず、新品との交換となりました。
保証期間でよかったのですが、
再度のアプリケーションのインストールすることを考えると
気が重くなります。
現在、大学に返却予定のパソコンを使用しています。
サバティカルと時と現在自宅で使うようにしているものです。
それを大学に持ってきて使っています。
パソコンで仕事をしているので
壊れることは非常に恐ろしいことです。
データのバックアップは常にしていますが、
パソコン本体のハードウェアとしてのバックアップも
考えておく必要がありますね。

2025年7月31日木曜日

1_238 冥王代の岩石 3:貫入の意味

 論文で年代が報告された岩石には、貫入という産状や苦鉄質という岩石の特徴が示されていました。そこには重要な地質学的意味があります。その意味を紹介していきましょう。


 報告された冥王代の年代をもった岩石は、タイトルには苦鉄質貫入岩とありました。貫入岩と苦鉄質とには、それぞれの地質学的には重要な意味があります。それを見ていきましょう。
 まずは、貫入岩についてです。貫入岩とは、マグマが移動(主には上昇)していくとき、周りの岩石を割りながら進んでいきます。できた割れ目にマグマが残って固まることがあります。その状態を貫入といいます。貫入した状態は、岩石の産状から見分けることができます。貫入岩があるということは、それ以前にできていた岩石があったことになります。その岩石は、当然、貫入岩より、前の時代にできたことになります。
 この貫入岩は斑レイ岩で、ウジャラルク・ユニット(Ujaraaluk unit)と呼ばれ変成作用を受けた玄武岩類に貫入しています。このユニットは、ヌーヴァギットゥク緑色岩帯(Nuvvuagittuq Greenstone Belt)の一部になっています。緑色岩帯は海洋地殻の名残だと考えられています。海洋地殻は、中央海嶺で長期に渡るマグマ活動で形成されます。それが海洋プレートとなっていきます。その時、一連のマグマから斑レイ岩の貫入も起こっていたと考えられます。ですから、このウジャラルク・ユニットとともに、海洋プレートの年代も冥王代となりそうです。
 ウジャラルク・ユニットの年代は、37億5000万年前から43億年前までのいろいろな年代が推定され報告されてきました。その度に年代が真かどうかが議論されましたが、年代はまだ確定していませんでした。今回報告された年代が確実だと認められれば、ウジャラルク・ユニットからヌーヴァギットゥク緑色岩帯までが、冥王代に形成された可能性がでてきます。
 次に苦鉄質岩の意味についてですが、これまで、冥王代を示す年代は、太古代の堆積岩中から見つかった砕屑性の鉱物からの年代でした。冥王代の鉱物が由来した岩石の鉱物なので、年代は求められても、岩石の直接の情報はえられません。年代測定できた砕屑性の鉱物の多くはジルコンと呼ばれるものでした。
 ジルコンは化学組成ZrSiO4で、ジルコニウムと珪酸からできています。このような鉱物は、火成岩から結晶化したもので、なおかつマグマの組成が珪酸に富んだもの(酸性マグマと呼ばれ)、つまり花崗岩類から由来したと考えられています。花崗岩は大陸地殻を構成する岩石なので、花崗岩の年代は、大陸地殻の年代を意味しています。ですから最古の砕屑性ジルコンの年代は、大陸が存在した最古の年代も意味しています。
 では、花崗岩マグマは、どうしてできたのでしょうか。少々長くなった来たので、花崗岩の起源については、次回にしましょう。

・前期講義終了・
大学は、前期の授業が終わりました。
別キャンパスでの授業でしたが
なんとか終わることができました。
新しいキャンパスできれいで設備もいいのですが、
ホワイトボードなのでペンのインクが見えず
ダメになりきれいに書けないことが度々ありました。
まあ、これもいい経験でした。

・睡眠不足・
北海道は今年も暑い日が続いています。
エアコンも使っていますが、
夜になる寝る部屋にはないので
窓を開けること、それでも暑いときは
扇風機を窓際において外の涼しい空気を入れます。
それでも暑い日は、熟睡できずに
寝不足状態になっていきます。
まだ、そんな日は少ないですが、
これからも暑い日がありそうなので
睡眠不足が心配ですね。

2025年7月22日火曜日

1_237 冥王代の岩石 2:最古と最初

 最古の年代になる岩石が見つかったという報告は、年代の更新だけでなく、冥王代の岩石であったことも重要ですが、「最古」と「最初」の違いも意識していく必要があります。その意味を詳しく見ていきましょう。


 「最古の岩石」は「最初にできた岩石」とは違うものです。「最古の岩石」より、さらに古いものが見つかれば、「最古」は更新されていきます。「最古」という意味は、常に「現在のところ『最古』の年代をもっている」ということになります。
 これまで知られていた最古の年代は、カナダのアカスタ地域の火成岩類の40億3000万年前のものでした。この岩石は変成作用を受けていましたが、火成作用の年代(マグマが固化した時代)が求められました。
 前回紹介したように岩石の成因から探っていくと、「地球最初の岩石」は、火成岩にたどり着くと考えられます。これまで、見つかっている最古の岩石の年代は、火成岩のものでした。ですから、最古の岩石が火成岩となっているのは、たまたまなのかもしれません。もしかすると、「もっと古い」堆積岩や変成岩が見つかるかもしれません。
 太古代と冥王代の時代境界は、最古岩石の年代によって決められるので、アカスタの岩石の年代が採用されています。今後も、古い年代の岩石が見つかれば、この時代境界は変更される可能性があります。
 2025年の6月26日のアメリカの科学雑誌Scienceに、Soleらの共同研究で、
Evidence for Hadean mafic intrusions in the Nuvvuagittuq Greenstone Belt, Canada
(カナダ、ヌヴァギットゥク緑色岩帯内の冥王代の苦鉄質貫入岩の証拠)
という論文が発表されました。
 この論文では、岩石の年代として41億5700万と41億9600万年前という値が報告されました。この年代が正しければ、冥王代に形成された岩石となります。冥王代と太古代の時代境界の年代が、40億3000万年前されていました。もしこの岩石の年代値が承認されれば、時代境界が41億9600万年前となり、太古代のはじまりが、1億6600万年ほど遡ることになります。
 しかし、この岩石の年代を求めるのはなかなか困難で、何度もチャレンジされてきました。これまでえられた年代は、もっと新しい時代のものばかりで、その信憑性も不確かでした。今回、やっと信頼できそうな年代値がえられという報告でした。まだ、多くの研究者が承認しているわけではありませんが、かなり信頼性は上がってきています。

・暑さが戻る・
北国では、一時期、暑い日々が続いたのですが、
最近は比較的涼しい日々が続いています。
週末は雨で、より涼しくなり
心地よい日が続きました。
夜も窓を閉めて寝るほどで
連日、熟睡できたため
体調も良くなってきました。
しかし、週明けからは、暑さが戻ってきました。

・パソコン破損・
先週末、突然、メインのパソコンが破損しました。
電源を何度入れ直しても
うんともすんとも反応しません。
2日間、あれこれやってみたのですが、
反応なしでした。
諦めることにしました。
前日の朝に保存していたデータはあったので、
3時間分のほどのデータが消えました。
対処しながらノートパソコンに切り替え
忘れないうちに、文章を復元しました。
このエッセイもそのひとつです。
重要な投稿論文も大丈夫でした。
PCの破損はあまりないのですが、
長く使用していると、時々起こります。
今回で3度目となります。
やはりバックアップが重要ですね。

2025年7月17日木曜日

1_236 冥王代の岩石 1:最古の岩石とは

 最古の岩石が見つかったという報告がありました。冥王代と呼ばれる時代で、これまでより2億年近く古い年代でした。まずは、最古の岩石と最初の岩石について考えていきましょう。


 以前書いた論文で、地球で最古の岩石は、どのようなものかを論じたことがありました。岩石は、変成岩、堆積岩、そして火成岩の3つの成因に区分できました。その中で一番最初の岩石を考えました。まずは、それぞれの成因を整理していきましょう。
 変成岩は、既存の岩石が地下で高温や高圧になることで、もとの岩石が溶けることなく別の結晶へと変化(再結晶といいます)することです。溶けてしまえばマグマができ、火成岩になるので、溶けずに、固体の状態で再結晶することが特徴です。堆積岩は、風化により陸地の岩石が砕屑物になり、河川によって湖や海底に運ばれ、堆積したものです。水の関与が重要になります。火成岩は地下深部のマントルが溶けてマグマができ、冷え固まったものになります。固体が液体になり、再度固体になるという変化をします。
 これらの3つの成因で、もっとも古い岩石はどれになるのでしょうか。
 変成岩は、既存の岩石が再結晶するので、既存の岩石が必要になります。既存の岩石の種類は問いませんので、変成岩、堆積岩、火成岩のいずれでもいいことになります。変成作用を重複して受けた変成岩も存在しますが、その変成岩も、既存の岩石を必要とします。突き詰めてとどっていきますと、既存の岩石は、堆積岩か火成岩にたどりつくはずです。
 堆積岩の形成には、砕屑物が水に運ばれたり、水に成分が溶け込む必要があります。水は、かつては地球形成初期からあったと考えられていたのですが、現在では、冥王代の中ごろに、小惑星帯あたりから飛来した多数の小天体の衝突でもたらされたと考えられるようになりました。
 他にも生物の遺骸(チャートや石灰岩)や化学的沈殿(岩塩や石膏)からでできるものものあります。生物の遺骸からできた堆積岩は生物が誕生していなくてはなりませんが、最古の堆積岩は生物誕生のもっと前です。化学的沈殿も水が関与していますので、水が地球にもたらされて以降になります。
 水ができる前は、月の表面のように、岩石だけが広がる乾燥した表層となります。そこでも衝突が起これば、既存の岩石は破壊され、砕屑物が飛び散ります。月の表層には、これらの破片でできた堆積岩(レゴリスと呼ばれています)ができています。既存の岩石はどれでもいいのですが、変成岩と同じように、もっとも古い既存の岩石を辿っていくと、火成岩にたどり着きます。
 以上のことから、地球に最初にできたはずの岩石は、火成岩だったと考えられます。では、最初の火成岩はどのようなものだったのでしょうか。次回としましょう。

・更新された年代・
このシリーズの書くきっかけは、
次回から紹介していきますが。
これまでの最古の岩石を
更新した年代が報告されました。
この論文には、他にも注目すべき点がいくつかあり
それをシリーズにして
紹介していこうと考えました。

・北海道の夏・
先週前半まで暑くてたまらず
エアコンをつけたのですが、
中ごろあたりから北海道らしい、
清々しい夏の天候が訪れました。
北海道らしい天気とは、
日差しは強いのですが、
乾燥しているため、
日陰に入ると涼しく過ごせます。
日が傾くと涼しくなり、
夜も窓を閉め、
夏掛けが布団をかけて寝ます。
こんな北海道の夏は気持ちいいものです。

2025年6月12日木曜日

1_235 スノーボールアースの開始 8:ガス放出の低下

 スターチアン氷河期の開始と終了が、二酸化炭素の増減との関係がシミュレーションされました。二酸化炭素の供給源としては、中央海嶺で起こる火山活動が考えられました。


 フーさんたちの「衝突誘導」は、証拠不十分なので、可能性は低いようです。一方、ドゥトキェヴィチさんたちの研究は、地質的な記録から、大陸移動のモデルを作成しました。
 このモデルでは、気温変化と関係すると考えられる要因として、超大陸ロディニアの分裂、大陸と海の配置、海洋盆地の年齢、海洋底の深さ、海水準の変動、中央海嶺の火山活動による二酸化炭素の供給程度などを想定しています。それらの要因をもとに、全地球のプレートテクトニクスでシミュレーションをしています。テクトニクスの影響を定量化して、スターチアン氷河期の開始を考えています。
 シミュレーションでは、大きく2つのモデルを作成して検討しています。両モデルでは、大陸の沈み込み帯の長さは、スターチアン氷河期のはじまりから終わりま一定のままでした。そのため、スターチアン氷河期への沈み込みの関与はなさそうです。
 2つのモデルは、中央海嶺での二酸化酸素の放出のタイミングと程度が異なっています。この違いが大きいようです。
 1つ目のモデルは、中央海嶺での二酸化酸素の放出が多く、海洋盆地の体積が小さくなるため、温室効果が大きく、白亜紀後期より温かい状態だと予測されました。これの条件では、大規模な氷河期へとはなりません。
 2つ目のモデルでは、中央海嶺での二酸化酸素の放出が少なく、海洋盆地の体積が大きく、低い海面となっていました。中央海嶺からの二酸化炭素の放出量が少なくなったため(9Mt/年)、スターチアン氷河期の契機となると考えられました。
 スターチアン氷河期の終了は、氷河期の状態が継続することで、大気中の二酸化炭素が徐々にですが蓄積していきます。ロディニアの分裂に伴う激しい火山活動(フランクリン大規模火成岩区と呼ばれています)も加わることで、二酸化炭素も供給されていきます。
 そこに、ケイ酸塩の風化の減少の組み合わせがあったと考えられます。ケイ酸塩鉱物が水中や大気中で風化するとき、二酸化炭素と反応して炭酸塩として固定されていきます。ケイ酸塩の風化が減少すると、大気中の二酸化炭素の消費量が減り、溜まりやすくなります。
 これまでも、スターチアン氷河期の契機も終了も、二酸化炭素が重要な要因であるとは予測されていました。しかし、シミュレーションによって、氷河期への契機は、温暖化のための二酸化炭素の供給の低下で、氷河期の終了は、大気中への二酸化炭素の蓄積によるものと、示されてことになります。二酸化炭素の由来が、定量的な可能性が示されたことになりました。
 スノーボールアースに関しては、いろいろな研究が進められていますが、まだまだ可能性の追求の段階にあるようです。

・初夏から夏へ・
北海道は初夏から夏になってきました。
朝、歩いてくるときには、
春から聞こえているヒバリの鳴き声に加えて
カッコーの鳴き声が加わりました。
昼間にはエゾハルゼミが騒がしく鳴きます。
5月のライラックまつりから
6月はじめのYOSAKOIへと移りました。
我が大学のチームも入賞していました。
YOSAKOIが終わると、
北海道もいよいよ夏になります。

・沖縄へ・
先週まで、沖縄に行っていました。
同じホテルで5泊7日の短期滞在しました。
沖縄は梅雨で、旅行者が比較的少ないはずなので
この時期を選びました。
到着した日は、激しい雨で、
帰る前日からは蒸し暑くなりました。
しかし、この時期には珍しく
滞在中は、爽やかな日々となっていました。
天気に恵まれて
旅行を楽しむことができました。

2025年6月5日木曜日

1_234 スノーボールアースの開始 7:衝突が契機の可能性

 全球凍結への契機には、大陸配置は重要でした。しかし、それだけでは充分んではなさそうです。他にも2つの契機の可能性が指摘されてきました。最新の研究成果を紹介してきましょう。


 全球凍結へは、ロディニア超大陸の存在とその分布位置、そして分裂の開始という地質学的条件がそろったためだと前回紹介しました。温かい地域でのひとつの超大陸と、赤道から極地までつながって広がっているひとつの海となっている状態が、全球凍結に向かう必要条件でした。しかし、それだけで全球凍結には至らないようです。十分条件として、なんらかの契機が必要になりそうです。
 前回は、超大陸の分裂によって、多数の河川の形成や、海岸線の増加によって、大気中の二酸化炭素が消費されるという十分条件を示しました。しかし、それが本当に全球凍結の契機だったのでしょうか。その根拠は、必ずしも明瞭ではありませんでした。
 契機の可能性を新たに指摘する論文が、2024年に相次いで報告されました。2024年2月のScience Advance誌に、フー(Fu)さんたちの共同研究による
Impact-induced initiation of Snowball Earth: A model study
(スノーボールアースの衝突誘導による開始:モデルによる研究)
そして、2024年2月のGeology誌にドゥトキェヴィチ(Dutkiewicz)さんたちの共同研究による
Duration of Sturtian “Snowball Earth” glaciation linked to exceptionally low mid-ocean ridge outgassing
(例外的に低い中央海嶺のガス放出と関連したスターティアン「スノーボールアース」氷河期の期間)
という論文が報告されました。
 いずれも、全球凍結への契機として、これまでにない、隕石の衝突と中央海嶺のガス放出の低下という可能性を考えたものでした。
 まずは、フーさんたちの「衝突誘導」とは、シミュレーションによる研究で、天体の衝突を契機に、全球凍結がはじまったという説を紹介しましょう。
 白亜紀の大絶滅を起こした小天体の衝突で、「衝突の冬」と呼ばれる一時的に寒冷化が起こり、その結果、大絶滅が起こりました。もし白亜期末のような天体衝突が原生代末期に起こったとしたら、どうなるのかをシミュレーションした研究です。
 衝突により、成層圏に硫酸塩エアロゾルが舞い上がるという条件で、その濃度をいろいろと変えてシミュレーションをしていきました。その結果、衝突時が、暖かい時期であれば全球凍結には至りませんが、寒冷化がおこっていたら、衝突を契機に全球凍結になることを示しました。
 ただし、これは可能性の指摘にすぎず、衝突の痕跡は、まだ見つかっていません。それも2度も続けておこったという証拠もありません。ですから、可能性としての説に過ぎません。
 ドゥトキェヴィチさんの説は次回としましょう。

・可能性・
可能性を指摘することは、重要です。
もしシミュレーションの結果、
可能性がないのであれば、
その条件では全球凍結は
起こっていないということになります。
ただし、一般に、可能性がないという結果を
論文として報告することはないでしょう。
ですから、今回は起こる可能性がでてきたので
論文となったのです。
しかし、根拠が示せないのは残念ですね。

・遠隔授業・
今回、長期に不在にしていました。
その間の講義は、遠隔授業としました。
コロナ禍による遠隔授業の経験が活きています。
以前なら不在のため休講としていた場合でも
遠隔授業として講義を実施することができます。
今回の講義に関しては、課題を提示して
それを提出することで
評価に加えていくことにしました。

2025年5月29日木曜日

1_233 スノーボールアースの開始 6:従来の説

 全球凍結からの回復は、火山活動によって大気中に二酸化炭素が蓄積され、その温室効果によると考えられます。全球凍結からは、必然的に回復できることがわかってきました。では、全球凍結への契機は、なんでしょうか。


 シミュレーションでは安定した状態であった全球凍結から、火山による大気中の二酸化炭素の蓄積によって、温暖化が起こりました。それは、必然的に起こる現象だったので、全球凍結からは必ず戻れることが示されました。では、どのような契機によって、全球凍結がはじまるのでしょうか。
 いくつかの要因が組み合わさって起こったと考えられてきました。一番の要因は、超大陸の存在です。
 原生代の11億年前には、大陸がほとんど一箇所に集まっており、超大陸(ロディニア超大陸と呼ばれていました)と呼ばれる状態になっていました。ロディニア超大陸は、赤道から南北に伸びる形で分布していました。大陸が一箇所に集まっていたため、海洋(パンサラッサ海と呼ばれていました)も一つだけになっています。そのような海と陸の配置は、海が一気に、そして全面的に、凍ってしまう状態でした。
 例えば、現在の海と陸の配置は、全球凍結になりにくい状態です。北極には海があるのですが、周辺は陸地に囲まれています。そのため、北極海が凍ったとしても、その凍結領域が外側に進出しにくい状態になっています。また、南極には大陸があり、現在も大半が氷に覆われていますが、陸にある氷床なので、夏には、周りの溶けてない海があり、氷と海が切り離されます。大陸が分散してるため、海が太平洋、大西洋、インド洋などに分かれています。海洋全体が北半球と同時に南半球も凍りつくことは難しくなります。ですから、ここ数百万年の間に、何度も氷河期が繰り返されていますが、全球凍結には進んでいません。
 全球凍結の直前、ロディニア超大陸は、原生代末の8億2500万年前から7億5000万年前にかけて、分裂をはじめていました。温かい地域に広がる大陸では降雨量も多く、陸地での風化作用が進んでいたところに、分裂によって河川や海岸線が広がり、さらに風化が進んでいきます。風化の結果、大気中の二酸化炭素が大量に消費され、温室効果も減っていきます。
 大陸は分裂していきますが、分布状態が超大陸の配置のままで、海がひとつで北極も南極にも海が広がっていました。極地で海が凍りだしすと、海全体が凍っていきます(負のフィードバックといいます)。いったんすべての海が凍ってしまうと、海を温めるための太陽エネルギーが海面で反射され(アルベドも一気に大きくなっていきます)、地球全体が短期間に寒冷化(暴走冷却)が進み、全球凍結に至ります。
 海が凍ると、水蒸気ができず、雲もできず、大気を通じた水の循環も停止し、大陸は干からびていきます。全球凍結のまま、地球全体は安定状態になります。
 以上のように、全球凍結になるためには、地球表層で地質学的特別な状態があったためだと考えられていきました。それだけでなく、新しい可能性があるという報告が2つ相次いで出されました。それは次回としましょう。

・夫婦で旅行・
今日から、夫婦で旅行に出かけます。
このエッセイも予約配信です。
退職後、校務や研究ではなく
のんびりと旅行を楽しみたいと思っています。
5泊6日間となりますが
ひとつの宿でレンタカーで
うろうろとしようかと思っています。
ただし、どこに行こうかなど決めずに
現地で、行き当たりばったりで
その日の行動を考えようと思っています。
こんな旅もいいのではないでしょうか。

・初夏のいい季節・
北海道は初夏のいい季節なりました。
朝、通勤している時、
快晴の抜けるように青空は
非常に心地よい思いで歩けます。
カッコウやヒバリの鳴き声も聞こえてきます。
初夏の花々も咲き出したました。
あちこち行楽にいきたくなります。
先日は中島公園とライラックまつりに出かけました。
平日だったのですが
海外からの人や高齢者の人も多かったです。
いい季節になったので、
行楽地はいつも混んでいますね。

2025年5月22日木曜日

1_232 スノーボールアースの開始 5:温暖化へ

 シミュレーションによる、地球では全球凍結も安定した状態であることがわかってきました。いったん全球凍結になると、温暖な状態に戻って来れません。しかし、温暖な状態に戻ってきています。なぜでしょうか。


 地球表層のシミュレーションでは、全球凍結は安定した状態で継続することがわかってきました。つまり、全球凍結になると、温暖な状態に戻ってこれないことになります。地質学的証拠から、6億年前には、少なくとも2度の全球凍結が起こっていましたが、その度に温暖な状態に戻ってきています。地球には、全球凍結から、簡単に戻れる仕組みがあったはずです。どのような仕組みだったのでしょうか。
 全球凍結期の直後の地層の中に、海底に堆積した炭酸塩の厚い岩石層がありました。全球凍結の発見者のポール・ホフマンは、この岩石が、温暖化に戻ってくるための重要な地質学的痕跡と考えました。
 厚い炭酸塩岩の地層があるということは、大量の炭酸塩が沈殿したことになります。その炭酸塩は、大気中の二酸化炭素から海洋に供給されたと考えられました。気体の二酸化炭素は、固体の炭酸塩にすると、750分の1のサイズにコンパクトになります。ですから、全球凍結の時には、膨大な量の二酸化炭素が大気中にあったことになります。大気中の二酸化炭素は温暖化効果を起こします。全球凍結の時期中に大量の二酸化炭素が大気中に蓄積され、激しい温室効果を起こし、その効果が全球凍結を終わらせたと、ホフマンは考えました。
 では、その二酸化炭素はどこから供給されたのでしょうか。
 火山噴火にともなって放出されたガスが供給源だとしました。現在の火山ガスにも、二酸化炭素は含まれています。放出された二酸化炭素は、植物が利用したり、海に吸収されたりして、大気中の量は一定に保たれています。このような平衡状態が、地球の気温を一定に保っているメカニズムを担っています。ただし近年、人類が化石燃料の使用で、大気中の二酸化炭素が増加していますが。
 原生代にも現在と同様に火山の活動はしていたはずです。ところが、原生代には、陸上植物は存在せず、二酸化炭素を利用する生物も少なかったはずです。また、全球凍結で海も凍っていたので、二酸化炭素が海に吸収されることもありませんでした。火山から放出された二酸化炭素は、使われたり吸収されることもなく、大気中にたまるしかありません。二酸化炭素が、大気に多くなってくると、温室効果で気温が上昇していきます。
 やがて、海の氷が溶けはじめていきます。いったん温暖化がはじまると、強烈で急激な温暖化(暴走温暖化と呼ばれています)が起こります。大量の二酸化炭素が大気には溜まっていたので、溶けた海洋ができると、吸収されて、炭酸塩として沈殿していきます。大半の二酸化炭素が使用されてしまうまで、温暖化が継続していきます。
 つまり、全球凍結が起これば、一定期間その状態が継続することになり、大気中に二酸化炭素が蓄積されていきます。そして、その後には、急激な温暖化が必然的に起こってくることになります。つまり、全球凍結から温暖な状態には必然的に戻ることになります。
 では、全球凍結にはどうして起こったのでしょうか。次回としましょう。

・初夏・
わが町も、やっと夏めいた季節になってきました。
朝夕はひんやりしていることもありますが、
初夏と呼べる季節がやってきました。
札幌ではライラックまつりがはじまりました。
天気がよければ、でかけたいと思っています。
YOSAKOIから北海道神宮祭へと続きます。
北海道は一番いい季節が巡ってきました。
今年は、地元も催しに参加したいと思っています。

・思想史を・
現在、思想史、あるいは哲学史を
勉強しなおしています。
哲学史といっても、通史ではありません。
少し前は、仏教のうち密教と空海の真言でした。
現在は、合理主義と経験論、カントのそれらの批判
ヘーゲルの弁証法を中心としたドイツ観念論
のあたりの基本的なところを、学んでいます。
思索の詳細は難しいのですが、
概要を追いかけていくのならなんとかなりまそうです。
問題は地質学へどのように応用していくかが
もっとも重要だと思っています。

2025年5月15日木曜日

1_231 スノーボールアースの開始 4:安定状態

 全球凍結という状態は、地球の位置でも安定した状態でした。しかし、そこには大きな問題がありました。全球凍結になると、温暖な状態に戻ってこれないことでした。なぜ戻ってこれないでしょうか。


 全球凍結が、なぜはじまり(契機)、どのようにして終わった(回復)かについては、難しい問題となっています。それは、地球表層の条件に関するシミュレーションの結果があったためです。
 地球の表層の条件に関するシミュレーションがあります。太陽からのエネルギーが地球を温めるための熱源となり、その熱源を地球表層でどのように利用されるかが、地球表層の温度を決定していきます。太陽系における地球の位置は、現在のように海が広く存在でき、氷床や氷河(夏でも溶けない氷)があっても少しある状態になれるほどの太陽からのエネルギーが届いています。
 地球表層の温度は、届いている太陽からの熱エネルギーだけでなく、熱ネルギーが表層でどのように利用されていくか、留まっているのか、放出されていくのかによって、大きく左右されます。それは大気の有無や成分、地表の条件により変化します。
 例えば、天気のいい日は、朝夕は宇宙空間にエネルギーが放出され、気温は下がりますが、昼間は太陽エネルギーがたくさん注ぐので、気温は上がります。曇りや雨の日になると、太陽光がささないので、昼間でもあまり気温は上がりませんが、朝夕でも気温が下がることがありません。これは雲が気温変化をさせない影響をあたえていることになります。
 気温を決める条件の中でも、地表の太陽光を反射する割合は、アルベド(albedo)と呼ばれ、0から1の値で示されます。現在の地球のアルベドは、0.3ほどです。この状態が地球では安定していることが、シミュレーションに確かめられています。
 ところが、もうひとつシミュレーションでは安定な状態があることがわかっています。それが全球凍結の状態です。全球凍結は、大きな問題がある安定状態なのです。
 全球凍結となると、海面や陸地の山岳地帯などが真っ白な氷で覆われることになります。寒いので大気中の水分は雪となり、海も湖、河川も凍っているため、水蒸気もほとんどなく、雲もなくなっていきます。こんな真っ白な状態になると、海洋や大気を温めることもなく、太陽光が反射され、宇宙空間に戻っていきます。アルベドも0.8くらいに大きくなると推定されます。この状態は安定していることも、明らかにされてきました。
 もしいったん全球凍結の状態になってしまったら、安定した状態なので、海のある状態に戻ってこれなくなります。実際にこれまで氷河期と呼ばれる状態があっても、海が一部しか凍ることはありませんでした。全球凍結というシミュレーションの結果があったのですが、海がすべて凍るような状態にはならないと考えられていました。
 しかし、地質学的に全球凍結が起こってきたことが明らかにされました。発見者のポール・ホフマンは、そこから簡単に戻る方法を示しました。それは二酸化炭素による温室効果によるもので、その証拠もありました。その詳細は次回としましょう。

・少し眼の調子が回復・
目の調子が悪くなり
先週まで頻繁に医者にかかっていましたが、
少しずつ回復してきています。
医者も2週間後まで様子を見ることになりました。
左目が見えにくいので、
どうしても右目に負担がかかり疲れてきます。
長時間、集中しての研究は難しくなりました。
今までの半分ほどのペースで
研究を進めていこうと考えています。

・長い老後・
退職以降、平日が自由に使えることになりました。
できる限り、週に一度くらいは
夫婦で過ごす時間として
使うようにしようと考えていました。
4月中旬からは、妻が体調不良になり
現在は、私が体調不良になりました。
ですから、あまり出歩けていません。
私が、少しずつ回復してきています。
今後は、少しずつ夫婦での時間を
取っていこうと考えています。
これから長い老後があるでしょうから、
のんびりと時間を使っていこうと思っています。

2025年5月8日木曜日

1_230 スノーボールアースの開始 3:何度かの全球凍結

 カンブリア紀までは、定量的な気温の推定が可能でしたが、それ以前の時代では定性的な推定になります。原生代には地球全体が凍ってしまうような、超寒冷化が起こっていたことがわかってきました。


 これまで気温の推定法をいろいろ紹介してきました。カンブリア紀以前の連続的な気候変動は、定性的推定になっていきます。調べていく中で、激しい寒冷化が、原生代末に起こっていたことがわかってきました。
 この寒冷化は、現在から数100万年前から繰り返し起こっている氷河期とは、桁違いのものでした。その時期、赤道付近の陸地からも氷河の堆積物があり、赤道付近まで海洋はすべて凍りついていたと考えられます。全球凍結と呼ばれ、地球全体がまるで雪玉のようになっていたと想定されることから、「スノーボールアース(Snowball Earth)」とも呼ばれています。
 全球凍結の様子が、地質学的な証拠から推定されています。赤道付近の海まで1000mの厚さの氷がはるほど、寒かったとされています。もちろん夏でも解けることはありません。長い氷期が終わった後には、超高温期が訪れたと推定されています。
 その後、詳しく調べられていくと、全球凍結は、原生代末に少なくとも2回、7.2億から6億6000万年前(スタルティアン氷期 Sturtian)と、6億5000万から6億3500万年前(マリノアン氷期Marinoan)が起こっていることが明らかになってきました。そして、それぞれの氷期の特徴もわかってきました。
 スタルティアン氷期は、約5000万年もの非常に長期に渡り、寒冷化がもっとも厳しく、平均気温はマイナス40度以下で、赤道でも氷河堆積物が見つかっています。海洋では激しい酸欠が起こり、縞状鉄鉱層が堆積しています。その後の温暖化は顕著ではありません。
 マリノアン氷期では、全球凍結は起こっていたようですが、氷河は成長と後退が繰り返され、大きな気候変動が起こってい多様です。そして、氷が溶けたあとに、急激な温暖化が起こり、その時の平均気温40°Cまで達していました。温暖化によって、大気中の蓄積されていた大量の二酸化炭素が、海水に溶け込んで、炭酸塩として大量に沈殿していきました。やがて、炭酸塩の厚い地層(キャップカーボネートと呼ばれています)となっていきます。
 原生代末の全球凍結では、平均気温で80度もの気温差ができる、激しい気候変動となりました。このような2度の激しい寒冷化があったことは、多くの証拠から確認されてきました。
 他に、もう2つの全球凍結が起こった可能性が指摘されています。
 マリノアン氷期の後、5.8億年前のガスキアーズ氷期(Gaskiers)と呼ばれ、短期間(30万年間ほど)で局所的な寒冷化だった可能性があります。もう一つは、25億年前(原生代初期)のヒューロニアン氷期(Huronian )と呼ばれるもので、非常に長期に渡り(24億5000万から21億年前)、一時期全球凍結が起こったと推定されています。
 なぜ全球凍結がはじまり、なぜ終了したでしょうか。それについては、次回としましょう。

・ゴールデンウィーク・
当初、ゴールデンウィークには、夫婦で、地元へ
何箇所か出かける予定をしていました。
しかし、いずれも、断念しました。
眼の調子がよくないのと
なにより天候が安定していないので
出かけることができませんでした。
曇ったり、雨が降ったり、寒い日が続きました。
晴れたとしても一時的で、不安定な日々でした。
そのため、大学と自宅と、
2度ほど買い物で街に出かけるだけでした。
そんな時期もあるでしょう。
これからは、平日にも出かけられますので、
よしとしましょう。

・仕事のペースを抑えて・
眼の炎症は、継続中です。
左目が、まだかすんでいます。
激しい炎症は少し治まったので
散瞳する目薬はささなくてよくなりました。
眼圧が上がってきており、
その治療が新たにはじまりました。
頻繁に病院にいっています。
そのため、最近は、仕事のペースが
ゆっくりとしたものになってきました。
むりせずに研究も進めていきましょう。
自宅でも作業できる環境を
構築していこうと少しずつ進めています。

2025年5月1日木曜日

1_229 スノーボールアースの開始 2:気温の定量値

 化石の分析から海水の温度が推定できました。そこから大気の温度の推定がされますが、直接気温を推定しているわけではありません。気温の推定はどうのようにすればできるでしょうか。


 前回は、連続した地層中の化石を入手することができれば、殻化石の酸素同位体組成から、その地域の水温が定量値として推定できることを示しました。化石の生息環境から、海底や海面の温度が推定できました。海面の温度は、大気の温度を反映していることを紹介しました。しかし、化石からの推定は、大気の温度つまり気温を直接測定しているわけではありませんでした。
 直接、気温を探る方法もあります。同じ酸素同位体組成による仕組みを利用しますが、材料が氷です。極地では、毎年降雪があり年輪のような氷が堆積して氷床となります。降った雪がふかふかしており、空気を含んでいます。氷になっても、中にはその時代の空気も閉じ込められています。その空気はその地点の上空の大気となります。氷の中の空気を集めて、その酸素同位体組成を測定すれば、直接気温を計算することができます。
 氷の層を一枚ずつ数えるのは困難で、年代補正として、噴火時期のわかっている火山灰などの層(鍵層 キーベッドと呼ばれます)を手がかりに年代を定めて、時代ごとの気温を定量的に求めることができます。
 グリーンランドや南極などの氷床には、古い時代かたたまったものがあります。連続的に気温変化が測定されています。岩石と比べる氷にボーリングは楽なので、長いコア(氷の試料)が回収されています。そのような情報から、数100万年分くらいの気候変動が読み取られ、そこには氷河期と間氷期の多数の繰り返しがあったことも明らかになってきました。
 氷床が手に入る時代は100万年前くらいまでです。それ以前の数億年前などの古い時代の気温を推定することはできません。一方、地層中の化石であれば、数億年前までの化石もあります。しかし化石となるような生物が多量に生存していたカンブリア紀(5億3880万年前から)から以降の時代になります。
 カンブリア紀以前は、前回示した定性的な推定となります。有機物(生物由来の化合物)や特徴的な地層(縞状鉄鉱層やチャート)からえられる物質の酸素同位体組成から推定していくことになります。
 カンブリア紀以前には、大きな気候変動が見つかってきました。その内容は次回としましょう。

・桜は足踏み・
北海道もやっと桜の季節になってきました。
わが町では、ツツジがすでに開花していますが、
次が、桜となります。
ただし、最近天気の悪い日、肌寒い日が続き
少々開花も足踏み状態になっています。
桜のソメイヨシノは一番先に咲くのですが、
少し気の早い木は咲いているのですが、
多くは蕾状態です。
桜は一気に咲きますが、ツツジは長く咲いています。
今週は、妻と花見や野山に散策などに
出かけたいと考えています。

・眼の不調・
眼の不調は、悪化はしていないですが、
悪い状態で足踏み状態です。
何度も医者にいっているのですが
現在の治療を継続して、様子見の状態です。
無理せずに、時間をかけてゆっくりと
対処療法を続けていくことになりそうです。

2025年4月24日木曜日

1_228 スノーボールアースの開始 1:土壌と化石

 地球の気候変動についてみていきます。今回は、気候変動の中でも、全球凍結、スノーボールアースに関する研究を紹介するシリーズとなります。まずは、過去の気候をどのようにして知るのか、その方法を考えていきます。


 地球には、激しい気候変動が、過去に何度もありました。その変動は、現在危惧されている温暖化や繰り返されてきた氷河期などとは、比較にならないほど、激しい変動であることがわかってきました。では、そん気候変動はどのようにして、推定されていくのでしょうか。
 いくつかの方法によって、気候は推定されています。気候の推定で利用するのは、目的の時代の地層となります。地層には、堆積した時の環境の痕跡が記録されていることがあります。
 痕跡の記録として、例えば土壌があります。気候条件を反映した特徴的な土壌ができることが知られています。このような土壌は、気候指標土壌(climosequences soils)と呼ばれています。熱帯の高温多湿ではラトソル(Laterite)、乾燥地帯ではカリシソル(Calcisol)やアリソル(Aridisol)、温帯ではポドゾル(Podzol)、寒帯のツンドラでは永久凍土土壌(Cryosol)、高山ではアンデゾル(Andosol)などが、気候指標土壌となります。このような土壌が過去の地層の中から見つかったら、その時代のその地域の気候が推定ができます。特徴的な土壌の発見から、定性的に気候を推定することができます。
 他にも、定量的に気候を知る方法もあります。化石を構成している物質の化学組成から、海水の温度を調べる方法があります。微生物の化石(有孔虫)の殻をつくっている成分(炭酸カルシウム CaCO3)に含まれている酸素の成分(酸素の同体組成)には水温と比例する関係(同位体平衡)が知られています。その関係を利用して、海水温を計算できます。その時、目的の時代の海水の値を推定する必要があるのですが、仮定をすることで定量されていきます。
 また、有孔虫化石の形態や種の判定から、海面や海底などの生息環境を見分けることができます。一枚の地層から、両者を組み合わせることで、海面と海底の温度を推定することもできます。海面温度は、大気の温度(気温)に近いとみなせます。
 連続した地層は、同じ地域で堆積していたはずなので、同一地域の連続記録とみなせます。海で連続的に堆積した地層から、化石を取り出し、海水温の連続した記録は、定点での地球の気候変動として読みとるができます。
 さて、今回は、大きな気候変動として地球の海がすべて凍結したという全球凍結についての研究成果を紹介していきます。

・自由の謳歌・
現在、自由を謳歌しています。
以前と同じように、土日も含めて
毎日大学の研究室にきています。
週に一度は講義があるので
その準備と当日の束縛はあるのですが、
それ以外の時間は、好きな研究に使うことできます。
ただし、講義の曜日以外は、
平日に好きに時間を使うことができます。
なにより精神的に自由度が大きくなっています。
その自由さを有効に活かしていこうと考えています。

・眼病・
週末にこのエッセイの下書きをしていました。
ところが、持病ともいうべき眼病が発症しました。
この眼病は、若い時に2度発症していました。
しばらく再発していませんでした。
それが週末に発症しました。
地元の眼科病院にかかりました。
処方されて点眼薬が効いていて
痛みは消えたのですが、炎症は残っています。
紹介状をもらって、
翌日、市立病院でも治療を受けました。
金曜日まで様子をみてから、
今後の方針を決めていくことにしました。
痛みはないので、日常生活ができるので、
研究室にも出てきました。
大学で講義もできそうです。
この炎症は、これまで長引いてきましたので
今回も長引きそうです。
歳を取るということは、
病気ともうまく付き合っていく必要があります。
退職後だったので、時間が自由になるので
通院の自由度が大きいので助かっています。
しかし、病院の待ち時間の長さには
耐え難いものがありますが。

2025年1月30日木曜日

1_227 過去のプレートテクトニクス 7:砕屑性ジルコン

 プレートテクトニクスのはじまりの直接的証拠があったのは39.5億年前でした。次に、間接的証拠を見ていきましょうた。それは、どのようなもので、直接的証拠より前の時代まで遡れるのでしょうか。


 プレートテクトニクスの年代は、太古代のはじまりの39.5億年前まで遡れることがわかってきました。この時代以降は、各地で岩石が見つかっています。これ以前の冥王代になると岩石は見つかっていません。
 岩石ではなければ、冥王代の物質が見つかっています。それは、冥王代のより後の時代となる太古代に形成された地層の中に見つかる砂粒となっている鉱物です。現在では、ミクロンサイズの鉱物でも、年代測定が可能になってきたことから、冥王代の年代であることが判明しました。
 ただし、年代測定が可能になるには、それなりの条件が必要です。その鉱物が、侵食・運搬作用でも壊れることなく、変質・変成作用などによって成分が移動しないものでなければなりません。そして、年代を示す放射性元素(主にはウランU)を多く含んでいることが必要条件です。また、放射性元素の生成元素(Uだと鉛Pb)を、あまり含んでいない鉱物の方が、精度良く年代を測定することができます。
 そのような条件を満たす鉱物としてジルコンがあります。堆積物となっているので砕屑性ジルコンと呼ばれています。
 もっと古い時代の砕屑性ジルコンが、西オーストラリアのナリアのジャックヒルズ礫岩から、見つかっています。地層ができたのは、約30億年前の太古代中期ですが、その礫岩層から43億年前の砕屑性ジルコンが見つかっています。非常に有名になったので、多くの研究者が、いろいろな方法で多数の年代測定をしてきたので、この年代は確定していると考えられます。
 ジルコンの化学組成はZrSiO4となり、二酸化ケイ素が多いマグマから形成されています。そのような二酸化ケイ素の多いマグマは、酸性マグマと呼ばれ、大陸を構成している花崗岩をつくります。ですから、ジルコンの存在は、花崗岩、つまり大陸地殻の存在を推定させます。大陸地殻は島弧で形成されていきます。
 さらに、砕屑性ジルコンの化学組成(希土類元素のパターン)、結晶の中に含まれている包有物の酸素同位体や形成温度の推定などを調べることで、島弧の下で起こっている火成作用に由来している可能性が指摘されています。島弧は、海洋プレートの沈み込みによって形成される地質場なので、島弧の存在が証明されれば、プレートテクトニクスがあったことになります。
 以上のことから、プレートテクトニクスは、直接的証拠(火成岩)からは39.5億年前には営まれており、間接的証拠(砕屑性ジルコン)からは43億年前まで遡れそうになりました。プレートテクトニクスと島弧の形成には、海洋が存在しなければなりません。そうなると、海の存在は43億年前より古いはずです。地球は、45億年前にできたのですが、海ができればプレートテクトニクスもはじまるということになりそうですね。

・後期授業の終了・
今年後期の講義もすべて終わりました。
あとは定期試験と採点評価がありますが、
とりあえずは一段落の感があります。
大学の専任教員としては、最後の講義となります。
来年度は非常勤講師として
いくつかの科目を担当しますが、
退職後となると、気分は異なりそうです。
来年度の講義の作成をしています。

・時間を買う・
急用で帰省しました。
航空チケットもホテルも
正規料金でとることになりました。
いつもは早くから格安価格の探して
移動や宿泊しているので
予想以上の高額となったので驚きます。
現在のように格安やパックツアばかりを利用していると
通常の正規料金は驚きますね。
どうしても必要な時、
お金には換算できない時間を
買ったと思えばいいのでしょうね。

2025年1月23日木曜日

1_226 過去のプレートテクトニクス 6:最古の痕跡

 今回とりあげた論文は、プレートテクトニクスが33億年前まで遡れそうだという報告でした。それが最古でしょうか。もっと古い時代の痕跡はあるのでしょうか。もしあるとすれば、どのようなものでしょうか。


 前回までのエッセイでは、32.7億年前の特殊な火山岩から沈み込んだ海洋プレートの痕跡が見つかったこと、そこから以前にプレートテクトニクスがあったと推定した論文を紹介してきました。
 では、33億年前がプレートテクトニクスのはじまりでしょうか。これより古い証拠がなければ、33億年前が最古になります。過去のプレートテクトニクスの痕跡は、このシリーズの最初にも紹介したように、海洋プレートが沈み込む場で必然的に起こる地質現象がありました。沈み込み帯でみられるプレートテクトニクスの痕跡をおさらいしておきましょう。
 海洋プレート層序の破片のオフィオライト、沈み込みの圧縮の力で陸側に形成される堆積物の付加体やデュープレックス構造、沈み込んだ海洋プレートが低温高圧型の変成作用でできた青色片岩などを挙げました。
 それぞれの最古の年代がどれくらいになるでしょうか。いくつか見ていきましょう。順番は前後しますが、青色片岩からいきましょう。
 青色片岩の年代として、10億年前以降の新しいものしか見つからないので、それ以前にはプレートテクトニクスは作用していないと考えられていました。ところが、その後の研究で、古い時代は青色片岩は形成されないことがわかってきました。マントルの温度が現在よりも高かったはずなので、想定される高温条件では、現在よりずっと浅いところで海洋プレートが溶けてしまいます。青色片岩ができる条件に達する前に、マグマができてしまいます。青色片岩が新しい時代のものしかないのは、それが原因だと考えられます。ですから、最古の青色片岩の年代がプレートテクトニクスの年代とはならないことになります。
 グリーンランドのイスアには、38.0億年前のいろいろな岩石が分布しています。イスアには、38億年前の島弧から大陸の破片が分布しています。大陸を構成していた花崗岩、また島弧を構成していた付加体の岩石、海洋プレートを構成していたオフィオライトも見つかっています。38億年前がプレートテクトニクスが起こっていたことが、かなり以前から判明していました。
 同じような地質体が、カナダのラブラドールにもあります。そこでは、39.5億年前の海洋プレート層序とデュープレックス構造が見つかっています。
 紹介した論文の33億年前のプレートテクトニクスは、最古ではありません。しかしこの論文の重要性は、まったく異なったアプローチ(独立した根拠)で、プレートテクトニクスの根拠が示されてたことになります。限られた岩石しかない時に、この方法論が利用できるかもしれません。
 以上のことから、プレートテクトニクスの証拠となる年代は、39.5億年前まで遡れると考えられます。ここまでは、直接的な証拠になっています。現在見つかっている最古の岩石は、40億年前までなので、プレートテクトニクスのはじまりの探求はここまです。
 これより前の時代にへ、証拠をもとに検証することがここまでしょう。実は、もう少し遡れる可能性があります。次回としましょう。

・共通テスト・
先週末に大学入学共通テストが実施されました。
各地の大学が会場になりました。
我が大学も会場になっており
監督官をしました。
全国の受験生が同じ条件で受けられるように
実施会場の大学では非常に細かく指示されています。
大変ですが、仕方がありません。
この共通テストの業務も今年が最後になります。

・卒業研究・
今週、卒業研究の発表会が実施されます。
4年生にとっては、
もっとも重要な最後の講義になるかと思います。
このメールマガジンは、
発表会前に配信をしているので、
その様子は、まだ体験していません。
すべての人が緊張しているでしょうが
多分、全員無事に終わっていることでしょう。

2025年1月16日木曜日

1_225 過去のプレートテクトニクス 5:海洋プレート由来

 今回取り上げた論文のタイトルで示された内容とその意味が、やっと明らかになります。そこから、その当時にプレートテクトニクスが営まれていたことが、わかってきました。これだけが最古の痕跡なのでしょうか。


 前回紹介したように、32.7億年前のコマチアイト中のカンラン石の酸素同位体組成と元素組成を調べられました。その結果、カンラン石には、2つのグループがあることがわかってきました。もちろん、カンラン石は、変成や変質を受けていない、マグマから結晶化したままのものを使用しています。
 ひとつ(グループ I)はマントルと同じような酸素同位体組成(18Oの比率が大きい:重い)とカンラン石の組成(マグネシムの含有量が多い)でした。これは、マントル物質が溶融してでできたと考えていいものでした。もうひと(グループ II)つは、酸素同位体組成が低く(18Oの比率が小さい:軽い)、マグネシウムの少ないカンラン石の組成となりました。
 2つのグループで、カンラン石のマグネシウム量は異なっていますが、マントルのカンラン岩からできるマグマの多様性の範囲にはなっています。ですから、両グループともマントルでできたマグマであることは確かですが、異なったマントル物質に由来することになります。
 問題は、この低い酸素同位体組成やマグネシムの少ないカンラン石は、どのようなマントルであったかです。
 酸素同位体組成は、マントルのカンラン岩より水(海水)の方が軽く(18Oの比率が小さい)なります。つまり、海水の影響を受けたマントルがあり、そこから由来したマグマがグループ IIのコマチアイトだということになります。
 海水の影響を受けたマントルは、海底で海水の影響を受けた海洋プレートの中のカンラン岩だと考えられます。ただし、それがマントル内の溶融する条件(マントルのあるような深部の条件)に置かれていたことになります。
 沈み込んだ海洋プレートは低温なので、溶融しにくいため、マントル内にしばらく置かれ温度が上がらばければなりません。欧陽たちは、マントル遷移層に沈み込んだ海洋プレートがしばらく滞留したものだったと考えました。コマチアイトマグマよりかなり以前に沈み込んだ海洋プレートに由来するマントル物質が、このグループ IIの起源になったことになります。
 以上のことから、欧陽たちは、32.7億年前のコマチアイトに海洋プレート由来のものがあることから、「oceanic crust subduction before 3.3 billion years ago(33億年前より前の海洋地殻の沈み込みを明らかにした)」というタイトルを付けたのです。
 少々回りくどい説明をしてきましたが、これが論文のタイトルの意味と地質学的意義です。論文では33億年前以前ということにしていますが、このシリーズで前に述べたように、他にも沈み込み帯の証拠も挙げていました。そこからもっと古い痕跡があるかもしません。それは次回としましょう。

・連続する行事・
正月が明けて、先週から講義がはじまり
大きな行事もひとつ無事に終わりました。
一段落としたいところですが
1月は大学共通テスト、卒業研究発表会、
定期試験と採点評価、そして2月の入試
次年度の講義のシラバス作成など
つぎつぎと校務や行事があります。
講義終了後もなかなか落ち着かないです。

・老後の研究テーマ・
研究の方は順調に終盤を迎えています。
予定していた論文のすべて投稿が終わり
現在校正がつぎつぎと入っていますが
こちらは一段落です。
現在は、退職後の研究テーマに関する
準備を少しずつ進めています。
これまでの延長線にはあるのですが
なかなか手ごわいテーマになりそうです。
手強いほど、老後の楽しみとして
長く続けらそうなので期待できます。

2025年1月9日木曜日

1_224 過去のプレートテクトニクス 4:酸素同位体組成

 今回の論文紹介に、なかなか入っていけないのですが、もうひとつ酸素同位体組成の意味を知っておく必要があります。このような基礎知識から、地質学の多くの成果を知ることができます。もう少しお付き合いください。


 欧陽たちは、太古代(33億年前)にのみに産するカンラン岩質のコマチアイトの溶岩を用いて、化学分析をしてきました。分析した結果が、「軽い酸素同位体組成」というものでした。論文のタイトルも難しい内容になっています。酸素の同位体組成はどうのようなもので、そしてそれが軽いとは、どんな意味があるのでしょうか。説明していきましょう。
 原子には水素の1からはじまる原子番号があります。原子番号とは陽子の数に相当します。陽子の数が、元素の性質を決めています。原子核には陽子の他にも中性子もあり、陽子と合わせたものを質量数といいます。一つの原子(同じ陽子の数)においても、中性子の数が異なったものがあり、それを同位体と呼びます。中性子の数が異なった同位体がいく種類ある元素もあり、その違いを利用し、物質の特徴や由来を調べていけることもあります。
 酸素原子は、原子番号が8で、陽子が8個あります。酸素の同位体には質量数が、16(中性子が8個)、17、18のものが安定に存在しています。酸素は質量数16のもの(16O)は99.759%(原子比率 atom%)になり、17Oは0.037%、18Oは0.204%となっています。それらの比率を同位体組成といいます。
 酸素の同位体は、元素としての挙動は同じですが、状態変化や温度変化に応じて、質量数に応じて少し比率が変わることがあります。このような変化を「同位体分別」といいます。
 上で示した同位体組成は大気中のものです。18Oの同位体組成で見ていくと、海水は0.1995%となっています。これは、水分子(H2O)では軽い16Oを多く含んでいることを意味します。また水が蒸発する時、18Oを含んだ水より、16Oを含んだものより蒸発しにくいので、同位体分別が起こり軽くなっていきます。雨となり陸上に降った淡水や、雪や氷で極地で氷床となった18Oの同位体組成は、0.1981%という小さい値になっていきます。
 極地の氷の18Oの比率が大きく(重く)なるということは、寒冷化により氷床が発達していくと、海水の16O比率が大きく(軽く)なっていきます。このような性質を利用して、氷床から当時の気候変動や、海底の堆積物中の微化石の殻の成分(炭酸カルシウムCaCO3)から海水温の変化などを探ることができます。
 論文では、コマチアイト中のかんらん石((Mg,Fe)2SiO2)の酸素同位体組成と元素組成を調べています。その結果、かんらん石には、2つのグループがあることがわかってきました。その詳細は次回としましょう。

・我が家の正月・
わが町は、暮れには積雪がありましたが、
それほど多くの降雪もなく、
正月には、冷え込みはありましたが、
穏やかに、明けていきました。
元旦は一日、のんびりと夫婦とも自宅で過ごしていました。
家内は、いつもと同様に家事をしていたので、
正月気分が味わえないといっていましたが。
ニ日は、幸い快晴だったので初詣にいきました。
次男が元日夜に帰省していたので、
家内は買い物にでました。
三日は、次男も同窓会があると夜は出かけたので
家内も自宅でのんびりとしていました。
正月中は次男が帰省していたので
家内の仕事は増えていましたが。

・正月明けは・
昨年の暮れに、締め切りのある仕事を
大半、片付けてしまったので
正月はのんびりと過ごせました。
正月番組を見たり、録画して見ていなかったものなどを
少しずつ消化しました。
本を入れ込んだけの自宅の書斎も
未整理だったので、それを進めたり
などとりとめのない日々を
のんびりと過ごしました。
正月明けの4日からは、通常モードで、
大学で仕事はじめとしました。

2025年1月2日木曜日

1_223 過去のプレートテクトニクス 3:コマチアイト

 明けまして、おめでとうございます。本年も、地球や地質に関する話題を、淡々と紹介していきます。今回の話題は、昨年からの続きとなる過去のプレートテクトニクスの痕跡の探求のシリーズとなります。

 地球と環境の通信誌(Communications Earth & Environment)の2024年5巻に中国科学院の欧陽(Dongjian Ouyang)と共同研究者が、
Light oxygen isotopic composition in deep mantle reveals oceanic crust subduction before 3.3 billion years ago
(マントル深部の軽い酸素同位体組成から33億年前より前の海洋地殻の沈み込みを明らかにした)
というタイトルの論文を発表しました。この論文の意義は、いくつかの説明を経て理解していく必要があります。順番に説明していきましょう。
 アフリカ南部に、バーバートンという地域があります。ここには、太古代の岩石が分布していることで有名です。
 バーバートンには、緑色岩帯(グリーンストーン帯)と呼ばれる地帯があります。世界各地の緑色岩帯の多くは、海洋地殻が陸に持ち上げられたオフィオライトであったことがわかってきました。ただし、もともと列島(島弧と呼ばれます)の火山岩類や複雑な地帯の岩石も含んでいることもあります。オフィオライトの玄武岩類が、変成作用を受けると緑色のなっていることから、古くから緑色岩類と呼ばれてきました。緑色岩類が分布している地域を、緑色岩帯と呼ばれ、現在でもその名称が残っているところがいくつもあります。
 今回、分析された岩石は、緑色岩帯中のウェルテヴレーデン(Weltevreden)層の溶岩ですが、通常のオフィオライトの溶岩ではなく、コマチアイトと呼ばれる変わったものでした。
 コマチアイトは、特異な化学組成を持っており、マントルのカンラン岩に似たマグネシウム(Mg)の含有量(18重量%程度)を持っています。このようなマグマで現在は活動していません。主に太古代にだけ活動していた特異なマグマです。マグネシウムの多いマグマをマントルでつくるためには、高温(1600℃)で、マントルのカンラン岩を多く溶かして(45%ほど)いく必要ががあります。そのような高温の条件が今ではないため、マントルが熱かった時代の火山活動になります。
 このコマチアイトの年代は、太古代(40億から25億年前)の前半の32.7億年前となります。ところが、論文タイトルでは「33億年前より以前」というのは、コマチアイトの年代よりものが想定されるとという意味になります。古い海洋地殻の沈み込みの痕跡が、コマチアイトのマグマをもたらしたマントルで見つかったという報告になります。マグマが由来する岩石は、すでにできていた岩石になるので、32.7億年前より古いものになります。
 では、それはどのよう痕跡に基づくものだったのでしょうか。次回としましょう。

・年のはじめに・
月初めは、地球地学紀行にしてきましたが、
新年なので、めでたい地域での話題にしたかったのですが、
思いつきませんでした。
新年ですが、昨年から続きのシリーズを
淡々と紹介することにしました。
この論文を理解するには、
地質学の前提となる知識が
いくつも必要になるややこしいものです。
新しい知見が含まれているので、
詳しく紹介していくことにしました。
ただし、このシリーズでは、論文より先へと
もっと展開していきます。

・いつものように・
正月の三ヶ日以外、
仕事納めから仕事初めの間も
大学で仕事をしています。
いつものことなのでこれはいいのですが
今年は、年初からいろいろと
締切のある校務を
多数、抱えています。
今年の3月に退職するための校務も
そこに加わっているめた多くなっています。
優先順、締切順にこなしていきます。