2015年7月30日木曜日

6_127 新たな地平 2:ニューホライズンズ

 惑星探査機「ニューホライズンズ」からの画像が、最近話題になっています。この探査機は、冥王星を探査するために2006年に打ち上げられたものです、それがやっと冥王星に最接近をして情報を送ってきました。

 ハッブル宇宙望遠鏡が、1990年4月かが現在に至るまで利用されています。ハップル宇宙望遠鏡は地球の大気の影響を受けないので、非常にシャープな画像が撮影できます。そのおかげで、地球にいながら、宇宙での新たな画像を撮影することができます。
 ハッブル以前にも、いろいろなところに探査機を送り込み、惑星や新たな衛星の発見、多数の科学的情報を手に入れてきました。ハッブル宇宙望遠鏡やさまざまな探査機のお陰で、太陽系の惑星や衛星、あるいは宇宙全体の理解を深めていきました。そこには多数の新発見があり、新たな地平が拓かれました。
 惑星の概略がわかると、より詳細な部分が次なるフロンティアとなり。その代表的なものは、それぞれの惑星に多数見つかっている衛星の詳しい情報を知ることでしょう。もちろん、そのいくつか衛星には、探査機が送り込まれて、新しい情報が得られています。
 実は、衛星以外にも太陽系内にも、まだ未知の地平が残されています。皆がよく知っている冥王星です。これまで、海王星までの鮮明な画像はありました。海王星の青い惑星で白い筋が特徴的でした。その画層を見た人も多いでしょう。ところが冥王星は、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したぼんやりとした画像があるだけでした。
 惑星探査機「ニューホライズンズ」のターゲットは、冥王星でした。2006年1月19日に打ち上げられました。打ち上げ後、2006年6月13日に接近することがわかった小惑星(APLと命名)を撮影しました。その他にも、2007年には木星を観察しています。その後は、休眠状態に入り、半年に一度の定期点検のために起動をしては、冥王星に向かいました。
 2014年12月には18回目の休眠から起動して、冥王星の探査を開始しました。そして、情報がぞくぞくと地球に送られてきています。2015年7月14日には最接近して、観察をしました。2015年8月まで冥王星や衛星のカロンなどを観測する予定です。
 その詳細は次回以降としましょう。

・ハッブル・
ハッブル宇宙望遠鏡は、1990年4月に打ち上げられ
その後、不具合が見つかって修理されたり、
いろいろな部品交換も何度もされながらも、
現在も運用されています。
25年以上にもおよぶ運用されています。
後継機が待たれますが、
まだ実現しないようです。

・原子力電池・
ニューホライズンズは、
太陽から多く離れたところを探査するため、
太陽光発電も使えません。
今でも、せいぜい木星軌道あたりまでしか
太陽光発電は機能しません。
そのため、遠くの惑星の探査機は
原子力電池を積んでいます。
原子力電池とは、
半減期の長い放射性元素の崩壊エネルギーを
熱として利用して発電しています。
熱電変換素子を利用して発電されています。
事故があると放射性物質をまき散らす危険性があるので
遠くの惑星を探査するときのみに使われています。

2015年7月23日木曜日

6_126 新たな地平 1:メッセンジャー

 探査機は長い年月をかけて開発がされてきます。そんな状況を踏まえて、最近の惑星探査の状況を紹介します。水星と冥王星を中心に、新たな地平を切り開いた探査機、そして話題になったエピソード、ニュースも紹介していきます。まずは、水星の探査からです。

 今まで未知であったものを調べて、「新たな地平」(ニューホライズン)を切り拓こうという挑戦には、いろいろなものがあります。未知の惑星を調べる探査機などは、まさに未知を切り拓き、新発見をするための装置です。探査機は、新たな地平の開拓には、重要な役割を担っているはずです。
 地球から離れた惑星を調べるのは、難しい作業となります。これまで、一番太陽に近い水星も、よくわかっていない天体でした。えっと思われる方がいるかもしれません。水星の画像はよく見ているし、その存在も古くから知れているはずです。
 ところが、私たちがみている水星の画像は、半分(45%)がカバーされているだけのものでした。その画像も、1974年から1975年に2度にわたって接近したマリナー10号が撮影したもので、その後は探査機による調査がなされませんでした。水星としてよく見ていた画像は、水星の半分の姿しか表していない、40年も前のものだったのです。
 水星は太陽に近いため、太陽からの熱、電磁波の影響を強く受けるので、その対策が必要になります。太陽の重力に負けないで水星軌道に入ること、さらに水星の公転速度が大きいのでその速度に合わせること、などいろいろ接近には困難さが伴います。
 2004年8月3に打ち上げられた「メッセンジャー」という探査機が、2011年3月に水星の周回軌道に入りました。地球と水星は一番近い時は、1億kmほどの距離なのですが、メッセンジャーは、7年の歳月をかけ、80億kmほどの距離を移動しながら、水星に達しました。これも軌道投入の難しさ故でしょう。
 メッセンジャーの探査で、水星の全容の把握、そして新しい情報の追加がなされました。メッセンジャーは、当初1年間の探査予定でしたが、機体、装置の調子がよくて、1年延長、そしてさらに2年の延長がおこなわれ、結局4年間も延長されて運用されました。最終的には2015年5月まで探査を続け、水星表面へ落下してミッションを終了しました。
 探査の結果、水星に氷があったこと、液体の核がありそうなことなどがわかってきました。
 水星に氷は少々不思議です。太陽に近くて暑い場所にあり、大気もないのに氷が存在するはずがありません。ところが、大気がないと、影の部分は冷たくなります。水星の極地にあるクレータには、常に影になるところ(永久影と呼ばれています)があり、そこは-180℃ほどの低温になっていてると考えられました。そこに氷があれば、溶けずに存在しうると推定されました。その推定通りに、氷が存在していることがメッセンジャーによって確認されました。
 水星には磁場があることがマリナー10号で観測されていました。水星は小さいので内部温度も速く冷めてしまうはずなので、磁場の存在は不思議なものでした。磁場は液体の金属(ふつうは鉄)が流動することで発生すると考えられます。メッセンジャーにより、磁場は双極子(NとS極がある)で、自転軸と合っていることも確認されました。マリナーだけでなくメッセンジャーでも観測されたことから、磁場は安定したものだと考えられます。その原因として、液体の核の存在が推定されたのです。
 液体の核ができるためには、核に不純物(イオウや水素など)がまじると鉄の融点が低くなることから、液体の鉄があっても不思議ではないと考えられるようになってきました。
 このような、身近でありながら未知の惑星、水星の様子が、惑星探査機によって明らかになってきました。

・アメリカの実力・
米ソの冷戦時代は、
お互いの技術力や戦術的優位に立つために、
宇宙開発がさかんに行われました。
その一環として、月の探査や惑星探査も含まれていました。
冷戦の終結後、経済状況の悪化もあり、
探査も見直し、小規模化、低予算での遂行が強いられてきました。
それでも米ソ、さらにいえは米が中心の
惑星探査がなされてきました。
その間にヨーロッパ、日本なども実力をつけてきました。
しかし、やなりアメリカが行なう探査は、
今までの経験や実績があるので、
一日の長があるようです。
今回の紹介予定の探査機もアメリカのものです。

・快晴の希少価値・
今年の北海道の気候は、
日照時間が短く、晴れの日でも湿度が高いので
なかなか快適な日が少ないです。
それでもたまに快晴の青空があると、
ありがたく思えます。
北海道の一番いい天候であるはずの
夏のカラリとした快晴の日は
今年は、希少価値になってしまいそうです。

2015年7月16日木曜日

1_143 月の新起源説 4:タングステン

 ある仮説でこれまでわかってきた特徴を説明されてきました。ところが、新しいデータが出てくると、その仮説では説明できなくなることががあります。そこに新たしい仮説が登場します。しかし、その仮説で一応の説明ができたとしても、納得しがたいことも・・・

 月は、地球に火星サイズの天体ティアが、斜めに衝突したことでできたと考えられています。斜めの衝突であったため、地球のマントル成分だけが飛び出し、それが材料となり、月が形成されたと考えられています。ですから、月は、地球ともティアとも少々違った組成ですが、どことなく地球のマントルに似ているところもあるわけです。
 ところが、それだけでは説明できない成分が発見されました。タングステン(元素記号W)という元素の、同位体組成においてみられる違いでした。タングステンには、多数の同位体があります。
 同位体とは、同じ元素で陽子の数は同じなのですが、中性子の数が違うものを指します。タングステンは、陽子数が74(=原子番号)で、中性子の数が106(質量数は180)、107(181)、108(182)、109(183)、110(184)、111(185)そして112(186)までのものがあります。このうち、質量数が、182、183、184、186ものは安定ですが、それ以外のものは不安定な放射性核種で、一定期間を経過すると崩壊します。タングステン180は放射性核種なので、半減期が異常に長く(1.8垓年)で、ほとんど変化がないといえるほどです。他の放射性核種は数ヶ月の半減期となります。
 元素の存在度でいうと、安定な核種が99%を占めます。質量数182のタングステンは26.5%、183は14.3%、184は30.6%、186は28.4%となっています。
 さて、問題は核種は、安定な核種で一番軽いタングステン182です。月の岩石は、地球のものに比べて、タングステン182が少ないことがわかってきました。その差は、0.0025%と非常に小さいものです。このデータは、分析技術の発達のおかげで、有意な差(本当に違っていると断言できる)があることがわかってきました。
 さて、このタングステン182の差を、衝突モデルでどう説明するかが問題なのです。2つの考えが提案されています。
 ひとつは、月が形成された後、別の天体が地球にいくつか衝突したと考えるものです。それは、重いタングステンをもった天体だったので、地球のマントルの同位体組成を変更したというものです。地球はさらなる衝突でタングステンの組成だけを変えたというものです。
 もうひとつの考えは、地球とティアの化学組成は似ていたのですが、タングステンだけは、違っていたとするものです。特別な天体を用意する必要はなく、形成時間に差があればいいという提案がなされています。タングステンは核に分配されやすい元素で、核の成長は形成時間に依存するとされています。ですから、両天体は、同じような組成を持っていたとしても、できからの時間が違えば、タングステンの組成も変わることになります。これでタングステンの同位体組成の違いを説明できるという説です。
 いずれの説も、反論はあります。ですから、まだまだ検討が必要でしょう。このように新しい考えがいくつも提案されることで、注目され、議論が沸き起こり、研究が深まります。今後に進展に期待したいものです。

・気の持ちようで・
今日の朝の講義が終わった出張します。
一泊ですので、用事を済ませたら、すぐに戻ります。
土、日曜日も用事が入っていて、夜は飲み会です。
なかなか休めません。
体の疲れは眠ればとれます。
心の疲れは、気の持ちようで乗り切るしかありません。
出張も用事も楽しいものだという気持ちで望めば
それは気分転換になります。
そんな心の余裕が、重要だ最近強く感じています。

・天候不順・
北海道は天候不順です。
毎週、書いている気がしますが、
ここ最近は本当にそう思える天候です。
一昨日までひどく蒸し暑かったのですが、
昨日は半袖は肌寒いほどです。
朝快晴だと思ったら、午後から曇ったり、
めまぐるしく天気が変わります。
忙しく休みが取れない時で
天候不順ですから、体調だけには、
気を付けなければと思っています。
体調不順にはならいようにしなければ。

2015年7月9日木曜日

1_142 月の新起源説 3:斜め衝突

 月と地球は化学組成でみると、似ている点と異なる点もあります。両方をうまく説明するのは、少々工夫が必要です。新しい論文では、いくつかのアイディアが紹介されました。

 惑星形成は、太陽系の初期におこったことで、衝突合体を繰り返しながら、大きな天体へと成長してきます。やがて衝突が暴走的に起こり、小さな物体はすべて微惑星と呼ばれる天体に吸収されていきます。軌道上には、成長した微惑星だけになり、やがてそれらも衝突合体を繰り返して、ひとつの惑星、原始地球へとなります。惑星形成の初期には、衝突合体により、地球軌道付近の物体は、すべて地球に集積してしまいました。
 2015年4月Natuer誌に掲載された論文のシミュレーションによると、近くの軌道で形成された天体同士は、衝突しやすく、太陽形成初期の衝突の20%は、似た天体同士のものだとという結果が得られています。軌道上の微惑星の化学組成が似たものがぶつかれば、そこから飛び出した天体(月のようなもの)や、合体した天体も似た組成になることも当然となります。地球軌道に火星サイズの天体が残っていて、最後に衝突したとすると、月の起源も説明可能となります。
 ところが、問題もいくつかあります。地球と月のいろいろな化学組成が似ているということは、衝突説で説明可能ですが、違う点もあります。化学的違いを説明することが、今度は、困難になります。
 また、衝突頻度が20%は、そんなに大きな確率ではないということです。月の形成には、似た組成の天体が衝突が必要なのですが、その確率が低いのは少々問題がありそうです。80%は違う組成の天体で、それが衝突したとすると、今度は月と地球の化学組成の類似性が問題となります。ですから、似た天体の衝突が必要になります。
 そこで考えられたのが、似た組成のティアの衝突はあったのですが、飛び出したのは、主に地球のマントル物質で、それが月の材料となったというものです。そんなに都合よく、ぶつけられた地球のマントル物質だけを飛び出すことが可能なのでしょうか。
 その方法として、ティアの斜めの衝突が考えられました。斜めの衝突によって、飛び出したのは地球のマントル物質で、ティアの物質は地球に加わったとするのです。飛び出した物質は、地球やティアとは少々違った成分を持つことになます。このメカニズムで月が地球とは、似た点と違う点をもつ不思議さを説明しています。
 ところが、似た組成の天体の衝突では、説明できないものもありました。それは、次回としましょう。

・やっと快晴が・
北海道は、天候不順が続いています。
まだ曇りがちの日があったり、
晴れていても雲がすぐにでてきたりと安定しません。
ここ2日ほど、やっと快晴になったのですが、
半袖だと少々寒いくらいの天気です。
涼しいのは、過ごしやすくていいのですが、
寒いくらいだと、農作物について心配になります。

・受け流す・
現在、論文の大詰めにかかっています。
来週が締め切りなので、大変です。
自分の研究のノルマとしているものなので、
なんとか終わらせたいと考えています。
論文にかかりきりになっていると、
他のことがおろそかになっていきます。
それが少々心配で、ストレスにもなっています。
ただ、ストレスを跳ね除ける余力はなく、
ストレスを受け流ようにしています。
受け身ではなく受け流す姿勢です。
そんな姿勢が、いいことなのか、
悪いことなのかはわかりません。
一種の防衛本能のなせる技なのでしょうか。