tag:blogger.com,1999:blog-16126250820180858212024-03-18T07:51:05.734+09:00Earth Essay 地球のささやき地球の歴史、生命の歴史、地球の仕組み、<br>地球地学紀行、地球の調べ方、地球と人と、<br>という6つのテーマで連載しているエッセイです。Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comBlogger1204125tag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-85115573941853631722024-03-14T00:00:00.003+09:002024-03-14T00:00:00.142+09:006_209 AIで最初の星 4:銀河考古学<p> 最初の星に由来する元素を、AIで解析した報告がありました。太陽系近傍の若い星には、複数の星に由来する元素が用いられていました。これは、銀河、宇宙の形成の時空間へ、情報を与えることになりそうです。<br /></p><hr /> 観測で調べた若い星の元素組成を、AIで解析した報告がなされました。すると、ひとつの最初の星に由来する元素からだけではなく、複数の星に由来することがわかってきました。この結果は、どのような意味があるのでしょうか。<br /> 星は、形成場の周辺に存在している元素が素材になります。今回の報告では、若い星の形成場には、いくつもの最初の星に由来する元素がありました。形成場は、複数の星の超新星爆発が起こり、元素が混在していたことを示していました。これは、最初の星は、同時期に形成され、同時期に超新星爆発を起こしたことを意味しています。<br /> 複数の最初の星の元素が集まっているということは、近くに最初の星がいくつも形成されていた状態、つまり星団となっていたと考えられます。これは、宇宙創成期に、星の形成場では、星の分布が不均質だった可能性を示していそうです。<br /> 最初の星の様子を、形成時期だけでなく位置関係も推定させることになってきました。これらの内容は、最初の星の誕生のシナリオでも考えられていましたが、今回の報告で、その証拠が示され、定量化もできたことになります。<br /> さらに、超新星の元素合成であらゆる可能性での元素組成をシミュレーションして、AIに学習させました。その学習結果を、現実の観測値このような過去の星「最初の星」の様子を推定に利用するというアイディアは素晴らしいものでした。そして、太陽系近傍の星に適用してえられた結果は、今後、全宇宙の適用していく時の重要な作業仮説にできます。<br /> このような研究手法は、過去の銀河や恒星の探査は「銀河考古学」と呼ばれています。銀河考古科学には、星の元素の特徴を用いて調べるほかにも、星の分布、星の運動などを用いても研究が進められています。近年、観測衛星の高精度のデータから、星の固有運動を正確に決定できるようになってきました。星の運動を用いる研究も、進められています。<br /> 太陽系の近くの恒星から、古い銀河、宇宙開闢の様子を探ろうとするアイディアは面白いですね。<br /><br />・マスク・<br />集中講義が終わり、3月のバタバタも<br />これで一段落となります。<br />今週末には、学位記授与式がおこなわれます。<br />コロナ禍以来、やっと通常の学位記授与式となります。<br />まだ教職員にも学生にも<br />マスクをしている人が、まだ何割かいます。<br />そのため、素顔を覚えることなく<br />卒業していく学生もいます。<br />街で素顔の卒業生とすれ違っても<br />見分けがつかないかもしれません。<br /><br />・定活・<br />今年から、かつての状態に戻り<br />全学の卒業を祝う会がおこなわれます。<br />今年からゼミを持たなくなったので、<br />身近な学生との懇親会がなくなりました。<br />コロナ禍が終わって、やっと学生との<br />宴会ができる状態になったのですが<br />学生との飲み会ができないのが残念です。<br />まあ、定活(定年退職に向けての準備)と思って<br />少しずつ、変化に慣れていきましょう。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-71941408638279096182024-03-07T00:00:00.004+09:002024-03-07T00:00:00.351+09:006_208 AIで最初の星 3:スペクトル分析<p> 恒星の元素組成は、光のスペクトル分析で調べることができます。最初の星の超新星爆発で形成される元素組成は、理論から推定することができます。両者を、AIを用いて解析することで、新しいことがわかってきました。<br /></p><hr /> 恒星の元素組成は、どうして知ることができるのでしょうか。恒星の光の観測から推定できます。私たちの太陽も同じ方法で調べることができます。<br /> 太陽を例にしましょう。太陽からでている光を、プリズムを通すと波長ごとに分けることができます。その様子を詳しくみていくと、明るい線や暗い線がたくさん見つかりました。<br /> 明るい線(輝線)は、太陽の内側で輝いているところに多くある元素が出している光で、その波長の特徴を示しています。一方、暗い線(暗線)は、太陽が出している光が、外側の大気中にある元素に、吸収された光の波長の特徴を示しています。光の波長ごとの特徴から、恒星(太陽)の元素組成を知ることができます。<br /> このような方法をスペクトル分析といいます。遠くの星のスペクトル分析ができれば、その元素組成も調べることができます。これは恒星の観測データから、その星の元素組成が決めることを意味しています。<br /> 一方、最初の星の内部の核融合のプロセスが理論的に計算できます。同様に、超新星爆発で合成される元素組成の計算もできます。こちらは理論的に最初の星の元素組成を想定することができます。ただし、最初の星のサイズが異なれば、元素組成も異なってきます。<br /> 二代目の星は、最初の星とその超新星爆発で形成された元素組成と、周辺のビックバンでできた元素からできるはずです。何代目がわからないとして、重い元素の少なければ、若い星とみなせます。若い星の元素組成を観測して調べていきます。<br /> この論文の工夫された点は、最初の星の超新星爆発で形成される元素組成を、いくつものパターンを理論的に計算して、AIを用いて観測した星が、どのような組成の超新星爆発からできかを区分していったことです。<br /> AIの解析により、ひとつの超新星爆発の元素でできた星と、複数の超新星爆発でできた星が、区別できようにました。太陽系の近くにある462個の重い元素を含まない星を調べた結果、31.8%がひとつの星から来た元素であることがわかりました。このような星をモノエンリッチ(mono-enriched ひとつに富む)と呼んでいます。それ以外の68%ほどが、複数の超新星爆発による元素からできていることがわかってきました。このような星をマルチプリシティ(multiplicity 多元素性)と呼んでいます。<br /> これは、どのような意味をもっているのでしょうか。次回としましょう。<br /><br />・事前指導・<br />現在、集中講義の最中です。<br />教育実習のための事前指導のための<br />授業となります。<br />ゴールデンウィーク開けから<br />教育実習がはじまります。<br />その前の準備となります。<br />先生として実際の授業を進めてきます。<br />はじめてのことなので、<br />なかなかうまくいかないでしょうが<br />実際の体験すること、<br />失敗することも重要です。<br />学ぶことが多いと思います。<br /><br />・著書の執筆中・<br />著書の執筆を進めてみます。<br />当初予定より、1月ほど遅れてスタートしました。<br />それは、この著書に関係する<br />論文の草稿を執筆していたためです。<br />その論文や著書を書きながら<br />構想を深めてきました。<br />おかげで、これまで大学で研究してきた<br />いくつかのテーマがすべてつかって<br />総括できるような内容に発展してきました。<br />あとは、その内容をどこまで深めていけるかですが、<br />これが、なかなか難しく、頭を使う必要があります。<br />3月中になんとかまとめたいと考えています。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-79018593546471035602024-02-29T00:00:00.005+09:002024-02-29T00:00:00.154+09:006_207 AIで最初の星 2:超金属欠乏星<p> 最初の星を見つけるのは難しいのですが、最初の星に近い初期の星なら、見つけられます。初期の星のデータを集めてAIに解析させることで、最初の星の様子を探ろうとしました。<br /></p><hr /> AI学習による最初の星の探査は、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の客員研究員のハートウィグ(Tilman Hartwig)さんたちの共同研究で、Astrophysical Journalという雑誌に、<br />論文タイトル:Machine learning detects multiplicity of the first stars in stellar archaeology data<br />(機械学習が恒星考古学データから最初の星の重複性を検出)<br />というタイトルで報告されました。<br /> 「最初の星」とタイトルにありますが、直接観測できないので、初期の星から探ろうとするものです。重い元素は、最初の星の中と超新星爆発で合成されていきます。ですから、古い星を探して、その成分に重い元素が少ないほど、初期の星となっていきます。<br /> 重い元素を多く含む星を種族I(population I)と呼んでいます。少ないものが種族II(population II)となります。最初の星は金属をまったく含まないので種族III(population III)と呼ばれています。前回紹介したように、種族IIIの星は見つかっていません。種族IIIに限りなく近い種族にIIの星が研究対象になります。<br /> そのような星は、「超金属欠乏星」と呼ばれています。これも前回のエッセイの【註】に示したように、リチウムより重い元素は、天文学では「金属」と呼ばれます。そのため重い元素(金属)が極端に(超)少ない(欠乏)星となります。<br /> 重い元素の少ない星の特徴が調べられました。初期の星が、最初の星に由来する元素をもとにできていたら、最初の星の個性をもっているはずです。なぜなら、最初の星のサイズや超新星爆発の特徴により、元素組成にも特徴が現れるからです。元素組成の個性に乱れがあれば、複数、あるいは多数の最初の星の影響を受けていたことになります。<br /> 元素組成のパターンを機械学習したAIを使って、調べていったというのが、この論文となります。その結果は、次回としましょう。<br /><br />・閏年で29日・<br />今年は閏年で29日もあった<br />2月も最後となります。<br />2月は短く感じました。<br />それは、授業はなくなっていたのですが、<br />研究での作業が詰まっていたため、<br />バタバタとしていたためでしょう。<br />そのバタバタはまだ終わっていないのですが<br />充実はしています。<br /><br />・集中講義・<br />3月上旬には、集中講義があります。<br />そのため、1週間、そこに忙殺されます。<br />学生もその間だけでなく、<br />準備にも時間を使います。<br />その相談のために研究室にもきます。<br />それも教育、指導になります。<br />熱心な学生ほど集中して準備に取り組んでいます。<br />ですから、手を抜くことも、<br />時間を惜しむことはできません。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-20669084998222312222024-02-22T00:00:00.004+09:002024-02-22T00:00:00.261+09:006_206 AIによる初代星の探査 1:初代星<p> いろいろな分野でAIの導入が進められています。天文学でも導入されていますが、2023年にでた論文では「最初の星」をAIで探したました。その論文を紹介していきましょう。<br /></p><hr /> 「最初の星」をAIで探すという研究が報告されました。まず、「最初の星」とはどんなものがを考えておきましょう。それがわかっていないと、見つけることができません。<br /> 「最初の星」は、「初代星」(first star)とも呼ばれていますが、宇宙ができた直後の星になります。「最初の星」は、宇宙の創成のときに存在した材料だけから作られていきます。ここでいう宇宙の創成とは、「ビックバン」のことです。<br /> ビックバンで形成された元素は、理論と観測でわかっています。ビッグバンで合成された元素は、水素(H)とヘリウム(He)がほとんどで、あとは少量のリチウム(Li)だけです。つまり、「最初の星」は水素とヘリウムからでできたことになります。<br /> 天文に詳しい人であれば、太陽系の恒星(太陽)も、水素とヘリウムからできていることをご存知だと思います。しかし、太陽の構成元素を詳しくみていくと、水素とヘリウムが多いのですが、リチウムより重い元素がいろいろと見つかっています。重くなるほど量は少ないですが、明らかに太陽には存在してます。この重い元素は、ビックバンのときには存在しなかった元素です。ですから、私たちの太陽は「最初の星」ではありません。<br /> では、重い元素は、どうしてできるのでしょうか。恒星の中で、水素とヘリウムなどが連鎖的に核融合を起こして、鉄(Fe)までの元素ができていきます。恒星内では鉄までしかできませんが、星が一生を終えるときに起こる超新星爆発で、鉄より重い元素が形成されます。ですから、重い元素は、少なくとひとつの恒星ができて、終焉を迎えていないと形成されません。<br /> 「最初の星」は、重い元素を含まない水素とヘリウムからだけの星だといえます。そのような星を探せばいいのです。しかし、「最初の星」は、現在のところ、どのような観測装置を使っても、まだ見つけることはできていません。小さなものは遠くにある(古い)ので暗くて見えないでしょうし、大きくて明るい星はすでに寿命が尽きているでしょう。<br /> 最初の星がだめなら、第2世代の星を見つけることで、そこから最初の星の特徴を探ろうとしています。その手段にAIを導入したという研究が報告されました。その詳細は、次回以降としましょう。<br /><br />【註】リチウムより重い元素は、天文学では「金属」と呼ばれるのですが、ここでは重い元素と呼ぶことにします。<br /><br />・外国人観光客・<br />今年は2月11日まで、<br />札幌の雪まつりがありました。<br />中国の日本への旅行も解禁されていて<br />春節(2/10から2/17)もあったので<br />海外からの観光客が多くなりました。<br />寒い中を長時間歩いて見て回ったら<br />風邪を引いたことがあり懲りました。<br />今では、雪まつりはテレビで見るだけです。<br /><br />・祝日の連休・<br />2月の祝日は、2回あります。<br />建国記念日と天皇誕生日です。<br />11日と23日で日程が近くなっています。<br />それに今年は、曜日の関係で<br />両方とも連休となります。<br />実は札幌で訪れたいところがあります。<br />出かける日程を連休をずらして、<br />平日にしました。<br />このエッセイの発行は<br />木曜日にしているので、<br />今日、出かけている予定です。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-22192242657708533562024-02-15T00:00:00.003+09:002024-02-15T00:00:00.255+09:001_211 テクタイト 5:継続する研究<p> インドチャイナイトは、非常に広範に分布しています。近年、研究が進み、形成時代や温度などの実体が、徐々に明らかになってきました。このテクタイトを形成した衝突は、生物にどのような影響を与えたのか気になります。<br /></p><hr /> インドチャイナイトでは、これまでのエッセイで、ラオス南部のボーラウェン高原に落下した隕石によるものだという報告を紹介しました。巨大なクレータができたのですが、その後、火山活動による溶岩で、クレータが埋められたということを、人工衛星からの重力や磁力のデータから示され、やっと位置が特定されました。<br /> 他にも、インドチャイナイトに関する研究がいくつか進められています。2019年にMeteoritics & Planetary Science誌に発表されたジョーダン(Jourdan)らの共同研究による<br />Ultraprecise age and formation temperature of the Australasian tektites constrained by 40Ar/39Ar analyses<br />(40Ar/39Ar分析によるオースタラリアンテクタイトの超高精度の年代と形成温度への束縛条件)<br />という論文があります。<br /> この論文では、タイ、中国、ベトナム、オーストラリアからそれぞれ一つずつテクタイトを採取して、2つの研究所で3つの測定器を用いて、データが検証されました。加熱しながら測定するという手法でも、精度を上げるようにしました。その結果、40Ar/39Arによる年代は、78.81万年前(78.81 ± 0.28 万年前)となり、これまでより数倍の精度で年代を決めました。また、タイのテクタイトで温度推定がなされました。形成時の最低温度は、2350~3950°Cとわかってきました。<br /> 公表時代は前後しますが、2022年の同誌に発表された論文で、千葉工業大学の多田賢弘らの共同研究による<br />Identification of the ejecta deposit formed by the Australasian Tektite Event at Huai Om, northeastern Thailand<br />(北東タイ、フアイオムでのオーストラリアンテクタイト事件による放出物堆積の特定)<br />という論文があります。<br /> この論文では、フアイオムの地質調査から、3つの放出物を含むラテライト(鉄やアルミニウムの水酸化物を多く含むサバンナや熱帯雨林に分布する土壌)層から、テクタイトを見つけています。下位には衝突時で再構成された層があり、その上に粗粒の砂とテクタイトの降下物の層ができ、もっとも上には細粒の降下物の堆積層があることを示しました。そして、それらの層には、衝突石英もあることを明らかにしました。<br /> 他にも、テクタイトの分布範囲から、クレータのサイズを33~120kmと推定したり、イリジウム濃度から重量15億tの隕石だったという推定などもされきました。多くの研究者のさまざまな視点での研究によって、インドチャイナイトの実体が少しずつ明らかになってきました。<br /> 隕石のサイズとしては、大絶滅を起こすほどではなかったようですが、このテクタイトの分布域の広さを見ると、その衝突の衝撃は非常に大きなものだったと想像できます。約80万年前は、原人がこの地域にもいたはずです。彼らは絶滅したのでしょうか。アフリカにしか生き残れなかったのでしょうか。ヒトの進化との関係が気になりますが、このシリーズはここまでにしましょう。<br /><br />・湧き出るアイディア・<br />現在書いている論文に手こずっています。<br />来年、出版しようと考えている本の<br />重要な視座を決める内容なので、<br />重要な論文になります。<br />別の論文を書いている時に<br />新しいアイディアが浮かびました。<br />そのアイディアが連鎖しながら発展して<br />この論文の骨子へと繋がりました。<br />さっさと書けると思っていたのですが、<br />データを大量に扱い、文献を収集して内容を確認し<br />なければなりませんでした。<br />すごく手間がかかっていますが、<br />近いうちに粗稿ができそうです。<br />粗稿ができた段階で、この論文は一旦休止します。<br />本命の著書に執筆を急がなければなりませんので。<br /><br />・分割した論文・<br />論文に関しての話題が続きまます。<br />前回投稿予定の論文は、重要な内容で<br />長いものになりました。<br />編集担当の人に相談したら、長編の論文は掲載できない。<br />しかし、同一著者の別の論文の掲載は可能だ。<br />ということなので、<br />いくつかに分けることにしました。<br />すると3編の内容に分割でき、<br />そのうち2編を雑誌に投稿しました。<br />そして残りの1編を、<br />別の雑誌に投稿するつもりで完成させました。<br />その時、上記の新たな論文のアイディアが<br />次々と湧いてきたのです。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-59738004656054689652024-02-08T00:00:00.004+09:002024-02-08T00:00:00.143+09:001_210 テクタイト 4:地下のクレータ地形<p> インドチャイナイトは広域に分布しているのに、クレータが見つかっていません。クレータ地形が地表に残されていないためです。砂漠の地下から見つかったクレータの証拠を紹介していきましょう。<br /></p><hr /> 広域に分布しているテクタイト(オーストラライト、インドチャイナイト、チャイナイトなどの名称がありますが、ここではインドチャイナイトと呼びます)のクレータは見つかっていません。しかし、前回紹介したように、衝突クレータの位置が限定できたという論文が報告されました。<br /> この論文では、人工衛星による重力および地磁気の探査データから、中国北西部のバダイン・ジャラン砂漠に落ちたと考えました。探査データでは、地下にクレータ構造があることがわかってきました。クレータは、テクタイトの飛び散っているもっとも北の外側にあり、位置的にも合うところでした。しかし、そこは砂漠地帯なので、地形的な痕跡は残されておらず、これまで発見されなったのでしょう。<br /> 衛星から探査されるのは、重力や磁気の平均的な値との差です。重力であれば、地下の物質の密度差があるところ、磁気であれば、通常と異なった磁気的性質の岩石の地域が検出できます。その異常の分布が、クレータの形状になっているかを探ります。表層に現れていない地下の様子を、衛星を用いて広域に探る手段にできます。<br /> 重力では、負と正の異常の分布の状況で、位置が特定されました。ここでは、負の重力異常のところを正の異常が環状に取り囲んでいました。負の重力異常が直径50kmほどあり、その周りを正の重力異常が100kmほどで縁を囲んでいました。地形では見えない地下に、存在していたクレータを見つけたことになります。<br /> このような重力異常が形成された仕組みは、衝突した地点で、クレーターの中央が持ち上がり山地になります。破壊された岩石なので低密度なので、負の重量異常になったと考えられました。一方、破壊されていない元々の岩石があるところは、正の重力異常の部分となります。<br /> 地磁気のデータでも、磁気異常が乱れているのですが、その分布がクレータの縁に沿っていることがわかり、クレータの存在を支持していました。<br /> 今回は、地下に隠れているクレータらしきものを、探し当てたという報告でした。しかし、地形にでていませんし、シャッターコーンの存在やその分布など、直接の証拠は見つかっていません。衝突クレータだろ確定するためには、掘削などして、なんとか直接の証拠を見つけなければなりません。ただし、200mほど掘らないとわかりそうにありませんが。<br /> インドチャイナイトというテクタイトについては、衝突クレータがみつかっていないことから、いろいろな研究がなされてきました。次回以降は、このテクタイトについて研究を、いくつか紹介していきましょう。<br /><br />・静かなキャンパス・<br />大学は定期試験と追試が<br />そして一般入試も終わりました。<br />外見上は一段落しているように見えます。<br />4年生の卒業がかかっていますので<br />教員には採点評価が早急に求められています。<br />学内の競争的資金の申請の締め切りもあります。<br />来年度のシラバスの作成、入力も必要になります。<br />入試判定、卒業、進級、資格認定の審査<br />などの会議も続いていきます。<br />大学からは、学生の姿が少なくなります。<br />そのため、キャンパスからは慌ただしさが消えて、<br />落ち着いた日々が流れていきます。<br /><br />・研究に励む・<br />現在、論文1編と本2冊の執筆を<br />並行して取り組んでいます。<br />静かなキャンパスであることが助かります。<br />いろいろと校務は続くのですが、<br />時間的にはもっとも余裕ができる時期になります。<br />今年が、ライフワークをまとめる<br />最後のチャンスとなっています。<br />日々、自身が課したノルマをこなすため<br />あくせくと研究に励んでいます。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-35706015596496950972024-02-01T00:00:00.004+09:002024-02-01T00:00:00.133+09:00 1_209 テクタイト 3:不明のクレータ<p> テクタイトとクレータの対応できないものもあります。その中でも、もっとも広く分布しているテクタイトのクレータが見つかっていません。そのクレータ探しが進められています。<br /></p><hr /> テクタイトが見つかっていても、クレータが見つからないことがあるのを、前回、紹介しました。テクタイトの分布から、落ちた場所は、推定することができるはずです。なのに、なぜ見つからないのかが不明です。<br /> もし古い衝突であれば、侵食や地質変動などで消えていくこともあるかもしれません。しかし、新しい衝突であれば、その付近を探索すれば、クレータの証拠が見つかるはずです。それでも見つからないクレータがありました。<br /> インド洋からオーストラリア、インドネシア、東南アジア、南極大陸まで、最も広く分布しているテクタイトがあります。広域に分布しているので、各地で別の名称が付けられていました。オーストラリアではオーストラライト(Australite)、西南アジアではインドチャイナイト(Indochinite)、中国ではチャイナイト(Chinite)などと呼ばれています。しかし、そのクレータは見つかっていませんでした。<br /> テクタイトから、衝突の年代は79万年前だとわかっています。新しい時代の衝突なのに、クレータが見つかっていませんでした。テクタイトの分布から、アジア大陸の東部だと考えられています。このように広域にテクタイトを飛ばす衝突であれば、直径20kmのクレータができていたと推定されます。<br /> かなり大きなクレータができたずです。候補として、カンボジアからラオスのボーラウェン高原に分布する玄武岩台地が、その衝突の結果できたのではないかと考えられました。衝突で地殻下でマグマが発生して、溶岩層になったので、クレータが消えているのではないかとも考えられました。<br /> 2023年、サエンスレポート誌にカリミ(Karimi)らの共同研究で、<br />Formation of Australasian tektites from gravity and magnetic indicators(重力および地磁気の指標によるオーストラライトの形成)<br />という論文が報告されました。この論文では、人工衛星からの重力と地磁気のデータを用いて、中国北西部のバダイン・ジャラン砂漠に落ちたという提案がされています。<br /> その詳細は次回としましょう。<br /><br />・寒波・<br />先週の大寒波での大雪は大変でした。<br />交通は運休部分があり、<br />各地で間引き運転となっていました。<br />ちょうど定期試験がはじまる日にあたっており<br />担当の科目の試験があました。<br />交通障害で多くの学生が来れず、<br />大人数が追試を受けるのではないかと<br />心配になりました。<br />大人数になるのなら<br />追試も2クラスになるかもしれず、<br />もしそうなれば、試験問題も作り変えるつもりでした。<br />ところが、ほとんどの学生が出席しており<br />追試の受験者も少な目になりそうです。<br /><br />・2月になりました・<br />2月になりました。<br />1月には大学では、いろいろな行事がありました。<br />後期の講義も定期試験も終わりました。<br />そして2月には大学入試がはじまります。<br />教員は監督、採点、合否判定などが続きます。<br />1月の正月明けから2月までは<br />慌ただしい日々が続きます。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-57053902235205791002024-01-25T00:00:00.004+09:002024-01-25T00:00:00.261+09:001_208 テクタイト 2:クレータとの対応<p> テクタイトには、いろいろな形、色、透明度などのものが見つかります。隕石ごとに、その種類や落ちた場所の特徴が異なっているためです。テクタイトには、隕石の落下位置がわかっていないものもあります。<br /></p><hr /> 隕石が衝突した証拠として、隕石の破片やクレータがあれば、すぐにわかります。他にも、シャッターコーンや衝突石英、そして間接的なものとして高温高圧鉱物、特別な元素や津波堆積物や煤の層なども証拠になることを紹介しました。<br /> 前回残していた、テクタイト(tektite)について紹介していきましょう。隕石が衝突した時、高温高圧状態が発生します。隕石と地球の岩石が溶けて、一緒になった液体が飛び散ります。溶けた液体(マグマ)が、飛んでいるうちに、冷え固まりガラス状になったものが、テクタイトになります。<br /> テクタイトは、成分によって黒色、緑色、黄色、茶色だったり、透明から不透明なものまで、多様なものがあります。また、液体の粘性と飛翔速度によって、形状も、ボタン型や流線型、滴状など、衝突の条件ごとに異なった見かけのものができます。<br /> テクタイトは、衝突地点の周辺に飛び散ります。特徴のある見かけをしているので、見つかりやすいものです。一つ見つかれば、同じような見かけをしているので、一気に多数見つかっていきます。<br /> テクタイトは特徴があるので、それぞれ名前がつけられています。モルダバイト、ベディアサイト、ジョージアアイト、アイボライトなどがあります。<br /> 隕石が衝突した方向に応じて、テクタイトの飛び散る方向も決まってきます。ですから、テクタイトの分布からクレータを探すこともできます。テクタイトと対応するクレータが見つかっているものもあります。モルダバイトは1500万年前に衝突でできたドイツのリース・クレータより飛び散ったものです。ベディアサイトとジョージアアイトは、3400万年前のアメリカのチェサピーク湾クレーターから、アイボライトは100万年前のガーナのボスムツイ湖クレータに由来していることがわかっています。<br /> テクタイトが形成されるような隕石は、かなり大きなサイズだったはずです。衝突でできたクレータも、大きなものだったはずです。クレータが大きくなるほど、衝突の頻度は稀な現象となります。衝突も古い時代のものになります。<br /> また、地球は3分の2は海で、大陸でできたクレータしか見つかりません。大陸でできた古い時代の衝突のクレータは、大きくても侵食で消えていくこともあります。<br /> そのため、テクタイトが見つかっていても、クレータがわからないものもあります。実はもっとも広域に分布するテクタイトで、由来したクレータが見つかっていないものあります。次回としましょう。<br /><br />・後期終了・<br />大学の今年度の後期の講義が終わり、<br />現在定期試験の期間に入っています。<br />担当の講義、2クラスで試験を実施します。<br />多数の学生が受けるので<br />採点も、なかなか大変になります。<br />定期試験のあとには、大学入試が続きます。<br />その直後には、後期の成績提出となります。<br />講義が終わってから、<br />バタバタと忙しい時期がきます。<br />いつものことですが。<br /><br />・帰省・<br />次男が、現在、帰省しています。<br />長男は3月に帰省するはずです。<br />子どもたちも、<br />それぞれの道を進むようになっていくので、<br />1家4人がそろうのは、<br />なかなか難しくなっていきます。<br />これもが家族の時間変遷でしょう。<br />最後には、夫婦ふたりの生活が基本となってきます。<br />それに備えて、生活ルーティンや人生設計を<br />進めていくしかないでしょうね。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-76012796933847944842024-01-18T00:00:00.003+09:002024-01-18T00:00:00.246+09:001_207 テクタイト 1:衝突の証拠<p> 隕石の衝突によって、地球表層では、いろいろな現象や変化が起こります。隕石が見つかる場合もありますが、大きな衝突ほど、隕石は見つかりません。それでも、衝突の証拠は残されています。<br /></p><hr /> 隕石の落下は、そのサイズを問わなければ、常時至る所で起こっています。しかし、大きな隕石ほど衝突でなくなっていったり、古い隕石ほど風化な埋没などで分からなくなっていきます。<br /> 隕石本体が見つかっていなくても、落下した証拠が見つかることがあります。一番わかりやすいものとして、クレータがあります。クレーターが見つかれば、隕石がなくても、衝突があったことがわかります。<br /> 他にも衝突の証拠はあります。テクタイトやシャッターコーン、衝突石英などがあります。他にも、間接的ですが、高温高圧鉱物(コーサイト、スティショバイト、ダイヤモンドなど)、特別な元素(イリジウム)や津波堆積物や煤(すす)の層などもあります。<br /> 聞き慣れないものが、いろいろ出てきましたので、説明していきましょう。テクタイトは、今回のテーマなのであとで説明することにして、それ以外のものについて、紹介しておきましょう。<br /> シャッターコーン(shatter cone)とは、隕石が衝突した時、周辺の岩石を衝撃波が通り抜けて、その模様が残された岩石のことです。溝は、円錐状の細いスジになっています。衝突の中心から放射状にできます。シャッターコーンのスジから、衝突の位置が推定できます。どのような岩石でも衝撃波は通り抜けますが、細粒で緻密な岩石に残されています。大規模な核爆発の際にも、形成されることがわかっています。<br /> 衝突石英とは、もともとあった岩石中の石英が、衝撃による圧力で結晶構造が変形したものです。特殊な顕微鏡(偏光顕微鏡)てみると、特異な縞模様となって現れます。<br /> 高温高圧鉱物とは、衝突時に瞬間的ですが高温高圧条件が生まれ、その時変成作用が起こります。他の変成作用と比べても、異なっているので、衝突変成作用とも呼ばれます。大きなクレータの内部などで、石英の高温高圧鉱物のコーサイト(1960年にアメリカのバリンジャー・クレーターから発見)やスティショバイト(1962年に同じくバリンジャー・クレータから発見)、石墨の高温高圧鉱物のダイヤモンド(1972年にロシアのポピガイ・クレーターから発見)などができています。<br /> 特別な元素として、イリジウム(Ir)が有名です。白亜紀の終わりに恐竜などの大絶滅が隕石によるものだと知られれています。隕石の衝突の証拠になったのが、イリジウムでした。地球表層には稀な元素ですが、隕石には多く含まれていることから、衝突の証拠となった元素です。<br /> 津波堆積物や煤の層は、隕石の衝突によって起こった巨大津波や大規模火災によって形成されたものが、地層となるほどの量あったことになります。だたし、津波も火災も他でも起こる現象なので、他の証拠がないと隕石衝突と結びつけるのは困難です。<br /> さて、テクタイトですが、少々長くなってきたので、次回としましょう。<br /><br />・共通テスト・<br />多くの大学で実施されていた<br />大学共通テストは無事終わりました。<br />監督する側としては一安心です。<br />一般入試を受ける受験生は、<br />これからが本番となります。<br />我が大学も、2月に入試があります。<br />一年で一番寒い時期の入試は<br />北国では雪や暴風の危険性が常にあります。<br />公共の乗り物を基準にしていますので<br />遅延や運休があると、<br />配慮しなければなりません。<br />コロナ罹患や今回の能登地震への対応と同じように<br />代替の試験準備しておかなければなりません。<br />なかなか大変ですが、配慮すべき事態なので<br />致し方がありません。<br />試験時期が、冬場でなければ、<br />トラブルは少なくなるのでしょうが。<br />夏の新学期制度は、すべての教育機関で<br />進まなければならないので<br />なかなか難しいでしょうね。<br /><br />・大学入試・<br />一般入試までの期間に、<br />大学での後期の講義が終わります。<br />その後、定期試験も終わっています。<br />そして、大学も受験生も<br />いよいよ入試態勢へとなっていきます。<br />受験生は、合格すると一過性のイベントになりますが、<br />大学では、毎年の年中行事になります。<br />大変ですが、重要な行事なので、<br />かなり前から準備をしていきます。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-40946173046068044252024-01-11T00:00:00.003+09:002024-01-11T00:00:00.147+09:002_218 生命誕生の条件 13:多数の試行錯誤で<p> いよいよ、長かった本シリーズも最後となりました。今回は2つ目の疑問への解決案を考えていきましょう。冥王代だから、ありえる考え方となっています。そんな解決策に納得できるでしょうか。<br /></p><hr /> 生命誕生の条件における疑問の2つ目です。生命の誕生にかけられる時間が短すぎる点です。これまで述べてきたシリーズの復習にもなります。<br /> 水や大気が形成され、ハビタブルトリニティが整うのは、後期重爆撃が落ち着く42億年前だと考えられます。また、41億年前には生命の痕跡(化学化石)が見つかっています。これらがの年代が正しければ、1、2億年ほどの期間で、生命が誕生することになります。条件が整えば、短期間に生命が誕生していくような時間に思えます。<br /> これまで述べてきたように、生命に必要な化合物を合成するための条件がわかってきました。その条件は多様で、プロセスも複雑なことがわかってきました。化合物の合成には、非常に多く環境や条件で、多数の試行錯誤が必要だったはずです。その試行錯誤を、長くても2億年ほどの期間で進めていかなければなりません。<br /> プロセスの複雑さを考えると、短期間に生命合成にたどり着くには、非常に困難に見えます。克服するためには、非常に多くの試行を繰り返す必要があるはずです。生命誕生においては、多数の環境で多様な条件があり、そこに多数の試行がなされなければなりません。多数の環境や条件は、どのようにしてできたのでしょうか。<br /> 天然の原子炉説が、合成場として有効だと紹介していきました。天然の原子炉では、放射性元素の235Uが使われています。235Uは超新星爆発で形成された元素で、太陽系にもともとあった元素で、その後は崩壊していきます。半減期が7億年なので、冥王代には現在よりもっと多く(30倍以上)あったはずです。<br /> そして、ウランは固相に入りにくい元素なので、マグマオーシャンができて、固化する時に表層の大陸地殻に集まる元素です。また、ウラン鉱物は隕石からも供給されます。そのため、冥王代の表層にはウランが多くあったはずです。<br /> 後期重爆撃で揮発成分が供給され、海ができ、大気、大地で水が循環しだすと、水に溶けやすいウランが移動し、地層中への濃集が起こり、天然の原子炉ができる条件が整います。冥王代には、大陸地殻の地下に多数の原子炉ができたと考えれます。<br /> 原子炉で、多様な化合物が合成されます。地表では、大きな大陸はまだ少なく、多数の列島のサイズの陸地だったと考えられ、火山活動も活発な多様な環境ができていました。そこに間欠泉から吹き出された化学合成された多様な分子を含む溶液が流れ出します。多様な環境に溶液がもたされ、新たに化合物ができ、付け加わっていきます。その一部は、地下水となって、再度、別の原子炉に入ってきます。そんか繰り返しが、陸地周辺で繰り返されます。<br /> 冥王代固有の多数の原子炉と、地表の多様な環境で、化合物の合成と循環が継続され、多数の試行錯誤が、同時並行してなされます。その結果、1、2億年ほどの短期間で、最初の生命が誕生したと考えられます。<br /> 長いシリーズで、生命合成に関する新しい考え方を導入しながら、生命誕の条件を見てきました。天然の原子炉という少々奇異なシステムを想定した仮説を紹介しました。近年の多くの成果が盛り込まれた仮説です。今後も検証、修正作業が続いていくでしょう。<br /><br />・新しい仮説の評価・<br />最後にこの仮説の感想を述べておきましょう。<br />天然の原子炉と間欠泉の仮説をみたときは、<br />あまりにも荒唐無稽に思えました。<br />20億年前の天然の原子炉であるオクロの存在は<br />以前から知っていました。<br />現在には存在しない天然の原子炉を冥王代に想定して<br />仮説が組み立てられています。<br />本当に妥当だろうかという疑問も持ちました。<br />新しい科学的仮説ですから、<br />これまでの問題点や課題を克服して<br />なおかつ利点をもったものになっています。<br />心理的に受け入れがたくとも<br />理性的に科学的に判断していくべきでしょう。<br />この仮説に関する論文を<br />いくつも精読していくと、<br />だんだんと納得できるようになってきました。<br />今後、この仮説の問題点を議論し、<br />それが仮説内で解決できるかどうかを<br />繰り返していくことになります。<br />このような議論を重ねていくことが、<br />もっとも科学的姿勢でしょう。<br /><br />・充実した冬休み・<br />今年の大学の冬期休業の期間は、<br />月曜日の8日が祝日になっているので、<br />通常の正月休みより長くなっていました。<br />9日から講義が再開しました。<br />正月の三ヶ日は休みましたが、<br />年末も大晦日まで、正月も4日から、<br />いつものように大学にでていました。<br />その間、大学は静かなので、研究がはかどりました。<br />おかげで、論文の粗稿が、なんとか完成しました。<br />あとは推敲を重ねていくだけです。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-1651203490094630422024-01-04T00:00:00.007+09:002024-01-04T00:00:00.141+09:002_217 生命誕生の条件 12:構造侵食<p> 明けましておめでとうございます。正月早々ですが、昨年まで連載していた、途中であったシリーズ「生命誕生の条件」を続けていきましょう。長くなっているのですが、あと2回で終わる予定です。<br /></p><hr /> 「生命誕生の条件」のシリーズで、生命合成のためには、天然の原子炉と間欠泉というモデルが、現在有力だと紹介してきました。しかし、そこには大きな疑問も2つありました。その1つ目の疑問が、冥王代の年代の砕屑性ジルコンは残っているのに、なぜ岩石が残っていないのか、というものでした。<br /> 鉱物が存在しているということは、冥王代にはマグマができ火成作用が起こって固まり、岩石になった過程があったことになります。間接的ですが、地殻があったことになります。ところが、40億年前より古い岩石は見つかっていません。証拠のない時代「冥王代」との定義通りの時代となります。<br /> 原因のひとつには、古い証拠ほど残りにくくなるという「時間の淘汰」があります。砕屑粒子は残っているのが岩石がないのは、なんらかの作用や原因があったのではないかと考えられます。<br /> ふたつの要因が考えられています。ひとつは後期重爆撃で、もうひとつが構造侵食です。<br /> 後期重爆撃は、地球に揮発成分をもたらす現象でした。それ以前の地球は、揮発成分がない状態で、硬い地殻が、厚く覆った状態でした(スタグナントリッドテクトニクス stagnant lid tectonics と呼ばれています)。プレートテクトニクスは機能せず、大きな変動はなく、火山が噴出するだけの状態だったと考えられます。<br /> しかし、43.7~42.0億年前にかけて、大量の隕石の爆撃が起こります。小惑星帯や木星のあたりの軌道から、小天体や隕石が大量に飛んできて、地球に衝突します。厚い地殻が破壊され、揮発成分がマントルへ追加されることで、地球に大きな変化が起こります。<br /> 後期重爆撃で多数のクレータができ、地球の岩石は破壊され飛び散り、時には岩石を溶かしてマグマができます。激しい衝突で、地球の岩石が大半が破壊されたと考えられます。月では、表層はレゴリスと呼ばれる、破砕された礫や砂のようなもので覆われています。レゴリスは、重爆撃で形成されたものがあります。隕石が地球の公転軌道の外側から来ても、地球は自転しているので、表層の岩石が、万遍なく破壊されていきます。表層はレゴリスで覆われ、岩石は破壊され、表面からはなくなっていた状態だと考えらます。ですから、海や大気だできても、堆積作用で移動するのは砕屑性の礫や砂だったのでしょう。<br /> 衝突で揮発成分がマントルにも加わります。するとマントルの流動性が大きくなって、マントル対流が起こります。流動性の増加とともに、対流は大きくなり、やがて破壊された地表付近まで達します。プレートテクトニクスがはじまり、表層でプレート運動が起こります。<br /> 海洋プレートが形成され、沈み込みもはじまります。この時、構造侵食として、地表にあった冥王代の地殻の岩石の大半が、マントルに持ち込まれていきます。その結果、冥王代の岩石の痕跡がなくなったと考えられます。<br /> 残っていたとしても、レゴリスとして砕屑物だったのでしょう。これが、冥王代の岩石が残っておらず、砕屑性ジルコンは残っている理由ではないかと考えられます。<br /><br />・新鮮な気持ちの正月・<br />COVID-19の感染対応も消えて<br />久しぶりに普通の正月を<br />迎えることができました。<br />初詣も、正月の買い物も、<br />マスクなしに、出かけることができます。<br />4年前には当たり前であったことが<br />3年間、当たり前ではなくなりました。<br />そして以前の日常がもってきました。<br />新鮮な気持ちで正月を迎えられます。<br /><br />・大学の日常・<br />大学の1月の講義の再開は、<br />土日祝日の関係で9日(火)からです。<br />13、14日は大学入学共通テスト<br />この日には、行事もあり、飲み会もあり、<br />忙しい一日になります。<br />こような忙しさも、大学に日常が<br />戻ってきた証拠でしょう。<br />大変ですが、味わっていきましょう。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-33295084982291815142023-12-28T00:00:00.005+09:002023-12-28T00:00:00.242+09:004_181 自身の思索を巡る旅<p> COIVD-19によって、数年間、野外調査が自由にできないときがありました。自粛で調査自体を、自身の地質学、地質哲学への思索を考えさせれることになりました。自粛期間、自身の内面、思索を巡る旅をしていたようです。<br /></p><hr /> 今年の5月には、COVID-19も通常の5類感染症に移行しました。COVID-19がなくなったわけではなく、インフルエンザのように通常の感染症となったわけです。自粛で旅行もできなかったり、旅行するものはばかられたりと、のびのびとはできない旅となっていました。しかし、5類へに移行で、自由に各地を調査で巡ることができるようになりました。これは今年になっての大きな変化となりました。<br /> 今年は、サバティカルで4月から半年間、愛媛県西予市城川に滞在しました。サバティカルと5類への移行が重なったことは、大きなメリットになりました。サバティカルの間、四国全域で宿泊を伴った野外調査や、西予周辺の日帰りの調査もたくさんできました。また、サバティカル終了後も、北海道での宿泊を伴う野外調査もしました。なにより、自由で旅できる喜びが味わえました。<br /> 観光地では、人が多くて、のんびりと巡れない時もありましたが、観光業にとっては喜ばしい状況でしょう。多くの観光客が来ることで、店や旅館、ホテルの設備やサービス全般も充実してきます。これは、出歩く人にとってもメリットになっています。コロナ前の状態よりもっと活気が戻ったようです。<br /> 自粛を経て、自由にどこでも、野外調査にでかけられるという、当たり前にできていたことが、如何に大切なことだったのかを感じることができました。ただ以前の状態に、何も変わらず戻っただけなのでしょうか。何か変わったことはないのでしょうか。少なくとも、自身には大きな違いが生まれていました。<br /> 自粛前にも、地質哲学へと向かっていくとき、野外調査を重視していたのですが、哲学的思索と野外調査の関係について、その結びつきについての視座が定まっていませんでした。自粛中、野外調査に行けない時期、野外調査あるいは露頭や地質学に関する、より深い思索へと入っていきました。<br /> 自身の著書のタイトルを見ても、その変遷を見ることができます。自粛前は、地質学に立脚したタイトルになっていました。内容には哲学的思索を進めていた部分もあったのですが、例えば2018年の「地球物質の多様性形成機構と火成作用の役割」や2019年の「地層の時間記録 規則性のある時間記録の解読」などとなっており、本のタイトルには哲学的思索の色合いは出ていませんでした。<br /> 自粛になってから、思索が深まっていきました。2020年には「弧状シンギュラリティ: 島弧と沈み込み帯の地質学的重要性」として、哲学的思索の部分がタイトルに現れてきました。2021年には「地質哲学方法序説 地質哲学のための Organon を用いた普遍的テクトニクスへの Instauration」として、デカルトとベーコンの著書のタイトルから引用したものを用いていました。哲学的思索への傾倒が深まりました。<br /> また、地質学や科学教育の実践でも変化が現れてきました。2022年には「地質学的野外調査の解体: 地質学への新しい方法論の導入」として、これまで自身で実施してきた地質学での野外調査で導入し実践してきたいろいろな手法を「方法論」として総括しました。タイトルでは、キースやドーキンスの著作を借りています。2023年には「科学教育の拡張された方法論: 試行錯誤の実践の先へ」として自身の科学教育の「方法論」を総括してきました。これもドーキンスの拡張された表現型という考えを借りました。これら2冊では、自身の長年の各種の研究方法や試行を新しい「方法論」として、哲学的にどう捉えていくかを、実施したものになりました。<br /> かつては、これまでの地質学で通常に用いたいた手法(野外調査、科学教育)を深く考えずに、そのまま適用していました。しかし、自粛によって、いままで当たり前で進めてきたことを、立ち止まって再考、沈考することができました。これまで通り進めていいもの、もう一度深く考えるべきもの、考え直すべきもの、そんな機会になりました。<br /> 本来であれば、これらの総括や方法論をもとづいて、次なる、そして新たなる地質哲学や方法論へと進んでいくべきでしょう。しかし、来年度一杯で現職が定年となります。次年度1年で、これまでの地質学と地質哲学の総括をしていきたいと考えています。<br /> それは、過去の研究テーマのやり直しにもなります。20数年前に追い求めた地球の起源と生命の起源を含む「冥王代」に関する地質学的のテーマがあり、一応の決着を見ていました。そのテーマに関して、ここ数年の大きな進展、特にブレークスルーがいくつかありました。それをもとに、20年目にして、再度総括のなり直しをする論文を、ここ数年書き続けています。<br /> それらをまとめて、さいごの著書にするつもりです。さいごの著書は、自身の「はじまり」をテーマにします。そんな「はじまり」が、さいごでもいいのではないでしょうか。深く考えた末の原点回帰です。<br /> 少々長くなりましたが、ここ数年のCOVID-19から今年のサバティカルを経て、自身の思索を巡る旅の話でした。<br /><br />・自身の変化・<br />自粛後、景観や露頭が少々違って見るように感じます。<br />自粛が空けた結果、観光地での人の多さや混雑、<br />あるいは訪れる人々の影響などは、<br />表面的なこと、ささやかなことでしょう。<br />何かもっと大切なことが起こったよう感じます。<br />景観や露頭は自然物なので、<br />COVID-19の前後で変わることはありません。<br />それを見ている自身の気持ちや見方が<br />変わってきたためでしょうか。<br />自身が感じていることに<br />敏感になっていくべきでしょう。<br />身近なところに、大切なことがあるのかもしれません。<br /><br />・思索の旅・<br />退職後も、研究は進めたいと考えています。<br />地質学の科学的成果を上げるような手法は<br />この大学来たときからとっていません。<br />地質学に関する哲学的思索を進めること、<br />その思索のインスピレーションを野外からえること、<br />この手法であれば、野外を巡り、思索ができれば<br />どこに出かけても、いつまでも、続けられるはずです。<br />そんな思索の旅をこれからも続けたいと思っています。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-67717485796517432002023-12-21T00:00:00.004+09:002023-12-21T00:00:00.250+09:002_216 生命誕生の条件 11:2つの疑問<p> 今回のシリーズは、これまでにない長いものとなっています。現在、取り組んでいる研究論文の主要テーマになっているので、ついつい力が入っているようです。<br /></p><hr /> このシリーズも長くなったので、これまで述べてきた、地球形成や生命誕生の条件もおさらいしておきましょう。そして地球形成と生命誕生で、それぞれで大きな疑問があるので、それもまとめておきましょう。<br /> 地球は、揮発成分を持たない材料(Eコンドライト)から形成されました。地球ができたときは、ドライで裸の状態でした。また、小天体の集積して合体して、原始地球になっていきます。衝突のエネルギーで、表層の岩石が溶けて、マグマオーシャンができました。マグマオーシャンが、地球最初の海といえるかもしれません。小天体の衝突がおさまっていくると、エネルギー供給も終わり、地球の表層が冷えてきて最初の地殻ができます。<br /> 45.2 億~ 44.4 億年前には、大きな原始惑星が地球に衝突するジャイアント・インパクトが起こり、その結果、月が形成されました。いったん形成された表層の岩石は、地殻からマントル(もしくは地球の核)までが、すべて破壊され、リセットされます。月の形成は短期間に終わり、再度地球にも月にもマグマオーシャンができます。地球表層が冷めていき、また地殻ができます。この時にできる地殻は、月と同じような斜長岩や玄武岩からなる岩石だったと考えられます。<br /> ジャイアント・インパクトのように大きな天体ではないですが、小天体が多数衝突する後期重爆撃が、43.7~42.0億年前にかけて起こります。この時また地殻は破壊されていくのですが、かろうじて地殻の破片は砕屑性ジルコンとして残されています。しかし、岩石が残されていないことから、激し爆撃で岩石が鉱物までバラバラにされてしまったようです。<br /> 後期重爆撃をした天体は、小惑星帯や外側かわ来たため、水や揮発成分が多く含んでいました。その結果、地球に水と大気がもたらされました。そして、ハビタブルトリニティが整いました。やっと生物の合成過程がスタートし、1億年ほどの短期間で生物が誕生します。<br /> 地球のはじまりは、激しい事件が、何度も起こったことがわかってきました。そんな激しさをくぐり抜けて、ジルコンの破片が残りました。穏やかな環境になったら、すぐに生物の合成がはじまります。このような生命誕生のシナリオは、条件さえ整えは必然的に起こるような現象に思えます。ここに大きな疑問が2つ生じます。<br /> 最初の疑問は、地球初期の2度めの地殻(月の形成後)のうち、砕屑性ジルコンが残っているのに、なぜ岩石が残っていないのか。これが不思議です。砕屑性ですから、後にできた堆積岩(35億年前)の中の鉱物粒子として入っています。その堆積岩ができた時代には、もととのなるジルコンを含んだ岩石があったはずです。あるいは、岩石はすでになくなっていたのですが、砕屑性ジルコンを多く含んだ別の堆積岩があり、その堆積岩から再度、砕屑され、運搬されて新しい堆積岩に入り込んだのかもしれません。しかしこの由来は、可能性は低くなりそうです。<br /> 次に、水や大気が存在しハビタブルトリニティが整わないと、化学進化がスタートしません。そうなると、後期重爆撃が落ち着く42億年前に、やっと環境が整います。ところが、41億年前には生命の痕跡が見つかっています。条件が整えば、短期間にすぐに生命が誕生するということになりそうです。化学合成の条件の多様さ、プロセスの複雑さを考えると、非常に多くの試行錯誤が必要だったはずです。なのに想定されている期間は、あまりに短いものです。<br /> この2つの疑問を、どう解決すればいいのでしょうか。<br /><br />・寒波・<br />先週末から、毎日のように所用があり<br />夕方に出歩いています。<br />ちょうど寒波がきていました。<br />所用で何度も、寒い外と温かい中を<br />出たり入ったりするので<br />体が変調をきたしています。<br />少々、風邪気味になってきました。<br />年末年始は無理をしないようにしましょう。<br /><br />・年末まで・<br />今週は非常に私用や校務があり<br />忙しい日々を過ごしています。<br />しかし、来週で、大学の講義が終わります。<br />週初めには、担当の講義がない日なので<br />今週で実質的な講義は終わりです。<br />しかし、学生が残った作業を進めに来ます。<br />まあ、月末まで毎日大学には来ていますので<br />対応は問題ないのですが。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-44467863754073008102023-12-14T00:00:00.004+09:002023-12-14T00:00:00.150+09:002_215 生命誕生の条件 10:時間的束縛<p> 生命誕生の条件として、時間的な制限もありそうです。後期重爆撃の終わりから、生命の合成がはじまります。最古の生物の痕跡の時期、もしくはその少し前には生命が誕生していることになります。その期間はあまりに短いです。<br /></p><hr /> 大気も海洋もない地球に、水や揮発成分をもたらしたのは、43.7~42.0億年前の後期重爆撃だと考えられています。42億年前ころに爆撃がおさまると、生物の誕生のためのハビタブルトリニティが整います。その時期から、生命の誕生のための化学合成がスタートすることになるはずです。<br /> 化石の証拠は、どこまで遡れるのでしょうか。<br /> 西オーストラリアのビルバラ地域の34億6000万年前以前のチャートから、化石が見つかっています。また、南アフリカの35億年前のオルフェルワクト層のチャートからも化石が報告されています。少なくとも、35億年前には、形がはっきりと地層に化石として残るような生物が存在していたことになります。生命誕生は、35億年前より古い時代となるはずです。<br /> グリーランドの37億年前より古い地層や38億年前の堆積岩中の黒鉛から、化石ではありませんが、生物の証拠となるような成分が発見されています。カナダのラブラドルの39.5億年前の地層の炭質物からも、生物の化学的痕跡が見つかっています。西オーストラリアのジャックヒルズからは、41億年前の砕屑性ジルコンの中にある鉱物(石墨含有物)から、生物の痕跡があったという可能性が指摘されています。化石のように直接の証拠にはなりませんが、41億年前には生物がいた間接的証拠が見つかったことになります。<br /> 少なくとも35億年前には化石として残るような生物が存在し、41億年前には生物の痕跡がありました。41億年前には生物がいたようです。岩石が残る時代、以前、冥王代に41億年前より前に、生命誕生のプロセスが進んでいたことになります。<br /> 冥王代の42億年前にはハビタブルトリニティが整い、41億年前には生物がいたことになります。1億年ほどの間に、生物合成のプロセスが進んでいくことになります。これらの年代にはいくつかの仮定はありますが、生物合成のために経なければらない複雑な過程を考えると、本当に1億年ほどの期間で、生物誕生まで進めるのでしょうか。<br /><br />・風呂の修理・<br />サバティカルで戻ってきてからしばらくは<br />シャワーを使っていました。<br />寒くなってきたので、<br />風呂に入ろうとお湯を入れました。<br />すると水が激しく漏れていました。<br />いつもメインテナンスを<br />頼んでいるところに相談しました。<br />木の風呂桶なので、水を張ることで木が膨れて<br />漏れがおさまるかもしれないといわれました。<br />しかし、漏れがおさまりませんでした。<br />20年以上使っていた木の風呂が壊れました。<br />風呂をユニットバスに改修することになりました。<br /><br />・不便も楽しみに・<br />木の風呂からユニットバスになります。<br />気に入っていた木の風呂桶なのですが、<br />ものには寿命がありますので<br />しかたがありません。<br />改修には1週間ほどかかります。<br />近くに温泉が3箇所あるので、<br />その間、ローテーションしながら<br />入っていくことにします。<br />不便も楽しみにできればいいですね。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-21173121793570709722023-12-07T00:00:00.004+09:002023-12-07T00:00:00.358+09:00 2_214 生命誕生の条件 9:間欠泉<p> 天然の原子炉の稼働には、地下水が必要です。地下水が原子炉の中に溜まっていれば、化学合成を進めることが可能です。合成物を含んだ地下水が、間欠泉として噴出すれば、複雑な化合物ができそうです。<br /></p><hr /> 生命に必要な材料物質(前駆物質と呼びます)のための化学合成には、かなり大きなエネルギーが必要でした。大きな熱エネルギーでは有機物が分解するので、放射エネルギーであれば熱を加えることなく、化学合成が進められそうでした。しかし、放射壊変で、水は熱くなっていきます。何らかの対応が必要です。<br /> 冥王代に天然の原子炉が多数あったはずで、そこでは化学合成が進んだと考えられています。傍証として、20億年前の天然の原子炉オクロが発見されています。その時期に、真核生物が誕生しました。放射線の放出と同時期に急激な進化は、なにか意味がありそうに見えます。放射線は進化を促すのではないかという可能性です。<br /> もうひとつの課題は、多数の合成条件をどう作り出すかでした。複雑で多数の前駆物質が必要なので、天然の原子炉だけではすべての条件を満たすことは不可能です。一度で生命の化学合成が完成に至ることはありえないので、何度も試行錯誤を繰り返しながら、進めていく必要があります。いろいろな条件をもった環境に、合成物を移動させながら、合成反応を進めていかなければなりません。<br /> そのような要求を満たすモデルとして、原子炉で発生する間欠泉が提案されています。原子炉に水があり、放射エネルギーで溶液の中で化学合成が進みません。原子炉に地下水が常に供給されています。水が溜まって、放射壊変の熱で高温になると、間欠泉として噴出する場を想定しています。原子炉内で、周辺の岩石の成分を溶かした熱水と放射線で合成を進め、熱エネルギーで地下水を温め、間欠泉として合成物を地表に噴出します。<br /> 冥王代は、原子炉と間欠泉以外にも、いくつかの特徴がありました。地表は、現在の岩石とは異なった地殻(斜長岩など)が存在して、火山列なども多数ありました。今とは異なった、間欠泉から合成物を含んだ熱水が放出され、多様な環境境に流れ込めば、多様な化学反応が起こったと想定できます。<br /> また、冥王代には月が地球の近くを短い周期で公転していたので、干潮のサイクルが早く、規模も大きかったはずです。海岸や湖岸での潮汐変動は大きくなり、複雑で周期的な環境もあったことになります。地表を流れている溶液が地下水となり、再度原子炉に戻ってくれば、反応が繰り返すことも可能となります。<br /> 天然の原子炉と間欠泉で、エネルギーと多様な合成条件の困難さを解決していこうとするモデルです。<br /><br />・車検・<br />北海道は、寒波のため、何度か積雪がありました。<br />寒波が緩むと、雪が溶けます。<br />まだ、根雪ではなさそうです。<br />12月は、車検の時期です。<br />車検を通して、もう2年間乗れればと思っています。<br />エンジンや基本的なところは<br />今のところは大丈夫そうです。<br />あちこち、細々としたところが<br />だいぶガタがきています。<br />来年度は道内各地を野外調査で<br />走り回る予定をしているので、<br />なんとか持ってくれれば思っています。<br />次回の車検時には、買い替えを考えています。<br /><br />・家族で会う機会・<br />今週末から夫婦で、京都に帰省します。<br />私用での帰省ですが、親族と子どもたちに会います。<br />子どもたちとは、同日の夕方に予定が立たず、<br />別日に私達と夕食を摂ることになります。<br />それでも家族が会えるのは楽しみです。<br />今後、会える機会は減っていきそうですので。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-22002833238771273402023-11-30T00:00:00.003+09:002023-11-30T00:00:00.137+09:002_213 生命誕生の条件 8:天然の原子炉<p> 冥王代には、天然の原子炉が、たくさん存在していたと考えられるようになってきました。地球の材料や、表層の初期環境から、存在していた可能性が高かったようです。<br /></p><hr /> 生命の材料や前駆物質の合成には、大きなエネルギーが継続的に供給されなければなりませんでした。冥王代の地球に、普通にあったもので、供給されなければなりません。<br /> 従来のモデルでは中央海嶺の熱水噴出孔が生命の誕生の場でしたが、そこではエネルギーは足りませんでした。また、火山のマグマに由来する熱のエネルギーでは、できた化合物を速やかに、高温から低温の場に移動するメカニズムが必要なります。合成の繰り返しが必要ですが、地下水として循環しても、再度、高温になるで有機物は分解されてしまいます。<br /> そこで提案されたのが、天然の原子炉で合成するモデルでした。天然の原子炉というのは非常に唐突なものに思えます。天然の原子炉とは、どのようなものでしょうか。原子炉とはその名の通り、ウランの核分裂によって、高エネルギーを発するものです。<br /> 天然の原子炉が存在する可能性は、1956年に指摘されていました。アフリカのガボン共和国のオクロにウラン鉱山がありました。産出する鉱石のウラン同位体組成に不思議な値をもったものが見つかりました。それは、核分裂を起こした結果だと、1972年に報告されました。理論と自然界で見つかった証拠から、天然の原子炉があったことが明らかになりました。<br /> シナリオは、次のようなものでした。20億年前は酸素が急増した時期でした。酸素が多くなると、水にウランが溶けて運ばれ、岩石中に濃集していき、鉱床ができます。ウラン濃集すると、核分裂が起こる条件に達します。地下水があると減速材となり核分裂が進みます。熱で水がなくなると反応が停止します。鉱床が冷えて、再度水が加わってくると、また核分裂が起こります。計算では30分の核分裂、その後2時間30分は休止というサイクルになったようです。<br /> でも、証拠は20億年前に一箇所だけ見つかっているだけで、冥王代に多数あったかどうかは不明です。本当にあったのでしょうか。<br /> 太陽系の材料になった元素は、一つ前の恒星の超新星爆発で形成されたものです。ウランはその材料にあったものです。放射壊変は時間とともに進むので、放射性元素ウランは、冥王代がもっとも多くあったことになります。<br /> 水のない冥王代に存在したマグマオーシャンや初期地殻の火成作用では、ウランはマグマの残液に濃集しやすく、ウランの多い鉱物として表層にあっていたと考えられます。また後期重爆撃の時に落下した隕鉄にもウラン鉱物が含まれています。後期重爆撃で冥王代の地球表層に水が供給されるとで、ウランの多い堆積物ができ濃集が進み、天然の原子炉が多数できる可能性がありました。<br /> 原子炉であれば、温度より放出される放射線から大きなエネルギーが供給されます。生命合成に必要なエネルギーは、原子炉の周辺では臨界値(10^-2W/cm^2)から数100倍、原子炉の中心部では数1000倍に達します。これれらは放射線ですので、大きなエネルギーを与えたとしても、それほど高温になることはありません。<br /> 地下に天然の原子炉があれば、エネルギー問題は解決できそうです。しかし、それだけでは、多様な合成条件を満たすことはできそうにありません。他にも、別の環境を考えなければなりません。<br /><br />・黒田さん・<br />天然の原子炉が存在する可能性は、<br />研究者たちが理論的に指摘していました。<br />当時、アーカンソー大学の黒田和夫さんが、<br />1956年に報告していました。<br />その後、フランスの物理学者のペランが1972年に<br />オクロのウラン鉱山で天然の原子炉が<br />あったことが報告されました。<br />理論が先で、証拠があとでした。<br />黒田さんは「17億年前の原子炉―核宇宙化学の最前線」<br />という一般向けの本を書かれました。<br />以前読んだですが、手元になく<br />内容も忘れてしまいましたが。<br /><br />・小さめのサイズ・<br />オクロのウラン鉱床では、<br />数cmから数mほどの天然原子炉でした。<br />小さな原子炉ですが、<br />稼働していたようです。<br />冥王代の原子炉はモデルでは<br />サイズは不明ですが、<br />小さめのサイズだと多数あれば、<br />生命の前駆物質の合成のために<br />いろいろな試行錯誤ができそうです。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-75951131969304020662023-11-23T00:00:00.004+09:002023-11-23T00:00:00.159+09:002_212 生命誕生の条件 7:困難な条件<p> 後期重爆撃によって揮発成分や水が供給され、大気と海、そして陸ができました。生命誕生の材料や環境が整ってきました。しかし、それだけでは、生命の化学合成には進めませんでした。満たすべき条件が他にも必要でした。<br /></p><hr /> 後期重爆撃によって、小惑星帯より外側にあった天体から、地球に水や揮発性成分が供給されました。その結果、生命に必要な材料がそろって、ハビタブルトリニティが成立しました。そこから、生命の誕生に向けて、一気に進むはずですが、なかなかそうはいきません。<br /> まだ課題がありました。生命合成のためのエネルギー源と化学合成に必要な条件が多様である点です。<br /> エネルギー源についてですが、生命合成には大きなエネルギーが必要です。ここで用いたエネルギーとは、厳密にはエネルギー密度(W/cm^2)を意味します。冥王代で想定される太陽光、大きなエネルギーをもった紫外線でも足りませんでした。冥王代当時は、現在よりも強かったと考えられる放電や宇宙線でも足りそうもありませんでした。<br /> また、生命誕生の場として、これまで定説となっていた中央海嶺での熱水噴出孔でも、エネルギーは足りません。もちろん、現在の太陽エネルギーや放電、宇宙線でも、まったく不足しています。<br /> 「ユリー・ミラーの実験」として有名な、最初に無機物から有機物を合成した実験では、初期の海洋を模した沸騰した水、雷を模した放電などをエネルギーとして用いました。その時、供給されていたエネルギーは、非常に大きなものでした。その値は、たまたまでしょうが、生命合成に必要なエネルギーの臨界値を、かろうじて超える値(10^-2~10^-1 W/cm^2)であったようです。どのようなエネルギー源を考えればいいかが問題となります。<br /> 火山活動であれば、高温のマグマや高温の熱水もあり、エネルギーは足りそうです。しかし、そのとき注意すべき点があります。大きなエネルギーを与えたとしても、合成場の温度が100℃を超えるような状態になっていると、形成された有機物は分解されてしまいます。有機物を、温度を上げることなく合成するか、もしくは温度が高い場で合成されても、合成後すみやかに高温環境から出ていかなければなりません。火山活動では合成物が速やかに移動するメカニズムを組み込む必要があります。<br /> 化学合成に必要な条件が多様である点につても、課題があることがわかってきました。合成の流れは、無機物から有機物前駆体、生命の構成分子、機能性高分子、そしてそれらが集まってひとつの生命となっていきます。それぞれの部分で、さまざまな化学反応が必要になりますが、その条件が非常に多様になものになります。<br /> それらを整理してまとめているある研究では、還元気相、アルカリ性 pH、凍結温度、淡水、乾燥/乾燥-湿性サイクル、高エネルギー反応との結合、水中での加熱-冷却サイクル、生命の構成要素と反応性栄養素の地球外から流入が必要だとしています。別の研究では、エネルギー源、リンやカリウムなどの栄養素の供給、生命の主要構成元素(C、H、O、N)の供給、濃縮還元ガス、乾湿循環、ナトリウムの乏しい水、きれいな湖沼環境、多様化した地表環境、循環性などにまとめられています。<br /> 材料物質が揃っているという前提で、多様で複雑な合成条件が、適切な順番に働かなければなりません。通常の地球環境、あるいは想定される冥王代の環境で、達成できるかどうか心配になるほど、多様な条件と複雑なプロセスが必要になりそうです。多様な合成条件もエネルギーと同様に困難な課題となりそうです。<br /> どんなに困難な条件であったとしても、地球では達成されたため、生命が誕生して、存在していることになります。このような困難を、どうして解決していくのでしょうか。次回としましょう。<br /><br />・野外調査の終了・<br />北海道は、晴れと曇りが繰り返される<br />はっきりしない天気が続いています。<br />野外調査は終わりました。<br />前回の野外調査は、悪天続きで<br />吹雪や積雪で十分にできませんでした。<br />しかし、今シーズンの野外調査は終了しました。<br />道内各地の調査は、<br />来年度に再度挑戦したいと思っています。<br /><br />・腰痛・<br />腰痛が再発しています。<br />発生する原因は不明です。<br />サバティカルの間は、プールで泳いでいました。<br />しかし、帰札してからは、<br />通勤の7kmほどの歩行だけはしていますが、<br />しっかり筋肉を使う運動はしていません。<br />筋肉衰えてきているのかもしれません。<br />一度、整形外科にで見てもらおうと考えています。<br />しょっちゅう腰痛が発生するとなると<br />少々心配です。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-77839936625709381802023-11-16T00:00:00.004+09:002023-11-16T00:00:00.144+09:002_211 生命誕生の条件 6:ABEL<p> 形成直後の地球は「ドライで裸」だったと推定されるようになってきました。地球は、形成時から現在の間には、大きな表層環境の変化があったようです。いつ、何が起こったのでしょうか。<br /></p><hr /> 月の表層にあるクレータ年代学から、月が形成されたあとに、激しい小天体の衝突があったことがわかってきました。クレータ形成年代は、43.7~42.0億年前に集中していました。約2億年弱ほどの期間に、激しい衝突がありました。月形成後の衝突だったため、「後期重爆撃」と呼ばれています。<br /> この小天体は、どこから来たのでしょうか。小惑星帯から木星や土星軌道あたりから飛来したと考えられています。その理由は、太陽系形成のモデルが更新されたことから考えられてきました。木星は太陽から離れたところで形成されたのです、形成直後に、太陽系の内側の地球軌道付近まで入ってきました。土星も続いて内側に入ってきます。2つの巨大天体が似た軌道に入ってくると、共鳴し合って、お互いの軌道が乱れて、両者が外に移動していきます。そして、今の軌道に落ち着きます。<br /> このような不思議な天体の移動や運動は、コンピュータによるシミュレーションでわかってきたものです。これまでの太陽系形成モデルでは、太陽系の外側の巨大惑星の成長が、非常にゆっくりとしたものになり、太陽系の惑星形成に期間に、現在の大きさには成長できそうもないという課題がありました。その課題が、木星と土星が移動するというモデルで、解消できるようになってきました。<br /> 木星や土星が、現在位置に戻ると、小惑星帯から外側に多数あった小天体の軌道が乱されます。それらが太陽の引力に引っ張られて、内側に入り込み、地球や月に衝突してきたと考えれます。<br /> 木星や土星の軌道でできた天体は、氷や揮発性成分を多く含んでいるものです。それらが月や地球に、2億年ほどの間に、多数衝突したことになります。小天体の衝突が、揮発成分をもたらしました。揮発成分は、地球の大気と海洋のもとになります。地球は十分に大きく、揮発成分を保持することできました。しかし、月は小さく引力も小さかったので、大気を保つことができませんでした。<br /> 後期重爆撃によって、地球にはじめて海と大気ができたことになり、生物構成元素がそろうことになります。この小天体による元素供給を「生命構成元素の降臨」(ABEL:Advent of bio-elements bombardment)やレイトベニア(Late veneer)と呼んでいます。揮発成分のうち水蒸気は、やがて液体の水になり、海を形成します。海の誕生により、プレートテクトニクスも働きはじめ、大陸地殻ができています。その結果、ハビタブルトリニティが揃うことになります。<br /> 生命の材料となる元素や成分はそろいましたが、次なる課題は、前に述べた生命の前駆物質や生命物質を合成するための多様な条件を、どう揃えていくのかがです。次回以降としましょう。<br /><br />・予約配信・<br />先日まで野外調査にでていたので<br />このエッセイは予約配信としました。<br />北海道の山では、初雪はすでにあったのですが、<br />里ではまだ降っていません。<br />遠出をする時、途中に峠越えがあるときは、<br />スタットレスタイヤにいつ替えるかを<br />この時期にはいつも悩みます。<br />今年は、10月から野外調査にでていますので、<br />10月末の調査に備えて交換しました。<br />ですから、今回の調査での<br />峠越えの道でも安心していけます。<br />ただし、野外調査で雪があると<br />ほとんどデータが取れませんので<br />実質的な成果は乏しくなりますが。<br /><br />・入試のシーズン・<br />大学は、入試のシーズンがすでにはじまっています。<br />9月以降、いくつもの種類の入試制度で<br />受験ができるようになっています。<br />受験生にとっては、いきたい大学や学部学科に<br />なんどもチャレンジできるのでいい制度です。<br />3月まで続くので、大学側の負担は多くなりますが、<br />入学生の確保が、多くの私立大学での<br />至上命題となっていますので、<br />仕方がありませんね。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-14195926320196586192023-11-09T00:00:00.004+09:002023-11-09T00:00:00.152+09:002_210 生命誕生の条件 5:後期重爆撃<p> 過去の地球、それも形成直後の地球の姿を探るため、月の情報が役立ちそうです。月は地球についで、データや情報が多い天体なので、そこから過去の地球の姿が探求されています。<br /></p><hr /> 地球は「ドライで裸」の状態からスタートしたことは、前回紹介しました。現在の地球とは、あまりにもかけ離れた姿でした。これは、小惑星の構成岩石や原始太陽系における太陽からの距離による条件から想定された姿でした。<br /> 現在の地球になるためには、どのような事件があったのでしょうか。まず、地球の衛星の月に着目します。月は、小さいため内部にあった熱は、すぐに放出されてしまっており、地質学的活動は初期に終わっています。また、大気や海洋がないので、侵食はありません。月を見れば、地球軌道上で起こった大きな天文現象の痕跡が残っており、読み取れるはずです。<br /> 月の特徴として、常に同じ面を地球に向けています。地球側には、黒っぽく見える「海」と、白っぽく見える「高地」と呼ばれているところとがあります。裏側は高地ばかりが広がっています。海にはクレータが少なく、高地にはクレータが多くなっています。海は、大きなクレータの地形や形状をしています。天体の衝突クレータができ、そこをマグマが埋めて新しい大地が海となりました。そして、時間経過ととも、新たなクレータが形成されたよう見えます。<br /> アポロ計画で人類が月に降り立ち、各地の岩石を持ち帰っています。岩石があれば、その特徴や正確な年代を調べることができます。海のクレータの中の岩石は新しい玄武岩で、高地は岩石は古い斜長岩であることがわかってきました。<br /> 大きな天体に小天体(隕石)が落下するとクレータが形成されます。もし、隕石の落下が一定の比率だったとすると、一定範囲のクレータの数(数密度と呼びます)と、その大地のできた時期が、相関することが想定されます。海の岩石の年代とその地域のクレータの数密度の相関関係がわかれば、それ以外の地域での形成年代が推定できます。クレータの数密度から大地の形成年代を見積もる方法をクレータ年代学と呼びます。<br /> 大きなクレータの形成年代を見積もっていくと、一様ではなく、ばらつきがあることがわかってきました。ばらつきは,ある時期に集中的にクレータ形成が形成されたことを示していました。<br /> 月が形成された少し後に、クレータが多数形成されたことになります。そのような現象は、小天体が多数落ちてきて、まるで重爆撃がおこったようなので、「後期重爆撃(LHB: late heavy bombardment)」、あるいは「月面激変」と呼んでいます。<br /> 後期重爆撃が、地球の表層変化にどのような影響があったのでしょうか。次回としましょう。<br /><br />・雪虫・<br />先週の晴れた日には雪虫が多くでていました。<br />雪虫は、白い綿のようなものを見つけているので<br />白い雪が舞っているように見えます。<br />北海道では雪虫が舞うと雪が近いといいます。<br />雪虫は飛んでいるのですが、<br />か弱くハラハラとしが飛びません。<br />そのため、歩いていると、人に衝突してしまいます。<br />顔についたり、目や口に入ったりします。<br />衣服についても離れないので<br />薄い色の上着やコートを来ていると<br />雪虫が目立ちます。<br />潰すとシミになるので、<br />注意して払わなければなりません。<br />しかし、雪虫の発生もほんの一時期なので<br />風物詩となるのでしょうかね。<br /><br />・野外調査・<br />今週末から今シーズン最後の野外調査にでます。<br />雪がない地域として北海道の南部にしました。<br />渡島半島を一周して、もどってきます。<br />何度もでかけているところですが、<br />古い岩石からなる付加体、<br />新しい活火山もいくつかあるので<br />同時に見て回ります。<br />野外調査は、寒い時は大変になるのですが<br />最後なので楽しんでこようと思っています。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-70672986537753302322023-11-02T00:00:00.005+09:002023-11-02T00:00:00.135+09:002_209 生命誕生の条件 4:E コンドライト<p> 生命の前駆物質を合成するためには、非常に多様な条件が必要でした。最近では、地球の材料にも新しい考えが登場してきました。その材料から考えられる初期地球は、今まで想像されたことのない姿でした。<br /></p><hr /> 生命誕生の条件には非常に多様なものがあり、ひとつの場での合成は不可能のようです。これまで、ひとつの材料、ひとつの場で生命を合成していくことを考えられてきましたが、それは難しいようです。次に、地球の材料と初期の環境が、これまで考えられていたものではなさそうだ、ということがわかってきたした。それを紹介していきましょう。<br /> これまで、地球の材料は、炭素質コンドライトだと考えられてきました。炭素質コンドライトには、中に大気の成分(二酸化炭素、窒素)、海の成分(H2O)、そして地殻・マントルになる岩石の成分、核の成分(金属鉄)など、すべてが含まれています。炭素質コンドライトが材料ならば、地球ができると考えられてきました。<br /> 現在の太陽系では、地球に水が存在できますが、太陽系の形成時にも同じ条件だったのでしょうか。<br /> 太陽系形成のころの条件を考えていくと、太陽の輝きが不安定で、かなり激しく輝く時期もありました。その証拠として、隕石のコンドライトがあります。コンドライトは、それまであった固体成分がすべて溶さかれています。その後、その後液滴として固まっり集まったものがコンドライトです。当初、太陽系を覆っていた原始太陽系ガスも、初期にすべて吹き飛ばされています。<br /> 太陽の輝きが激しくなっていた時期、地球軌道は非常に温度が高かったときがあったと考えられます。<br /> 現在の小惑星帯を見ていくと、炭素質コンドライトも多数存在しています。その軌道をみていくと、太陽に遠い側に炭素質コンドライトがあります。太陽に近づくと、H2Oを含まない隕石タイプになっていきます。小惑星帯で太陽にもっとも近い内側には、エンタタイト(頑火輝石)コンドライト(E コンドライトと略されています)が多くなっていることがわかります。E コンドライトは、H2Oをまったく含まない特異な隕石で、小惑星帯でも隕石でも稀なものです。<br /> 以上のことから、冥王代の地球軌道には、H2Oや揮発成分を含んだ物質は存在できないと推定できます。地球軌道は、非常に乾いた(ドライ)な物質しかなかったと考えられます。地球軌道では、E コンドライトのような物質があり、それが材料になったのではないかと考えられてきました。<br /> そうなると、できたての地球には、海(水)も大気(二酸化炭素、窒素)もない「裸」の岩石惑星だったことになります。炭素質コンドライトであれば、地球のすべての素材があらかじめ揃っていたのですが、E コンドライトからできたとなると、「ドライで裸」の地球からのスタートとなります。<br /> そこから現在の、海と大気、生命のある地球になるのは、いくつもの事件が必要になりそうです。次回としましょう。<br /><br />・E コンドライト・<br />E コンドライトは稀な隕石です。<br />小惑星帯は炭素質コンドライトが存在する環境で<br />E コンドライトはないところだったためでしょう。<br />E コンドライトは、エンタタイトと金属鉱物からできています。<br />エンタタイトは珪酸塩鉱物で<br />鉄含有量が少ないですが<br />鉄は金属や硫化物に含まれています。<br />この隕石は、非常に還元的で酸素の少ない条件で<br />形成されたことになります。<br />地球もそのような位置にあったと考えられます。<br /><br />・道東の調査へ・<br />このエッセイは、週末から野外調査にでているので<br />予約配信をしています。<br />道東の山に入っていきます。<br />道東にたどり着く前には、<br />日高山脈を超える狩勝峠があります。<br />自動車道では、トンネルになっているため<br />雪の影響はかなりましになっています。<br />トンネルの前後には、長い上り下りの道があります。<br />積雪があれば、冬タイヤでないとだめでしょう。<br />もちろん冬タイヤにしてでかけます。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-64114271653327169992023-10-26T08:09:00.005+09:002023-10-26T08:09:00.172+09:002_208 生命誕生の条件 3:多様な合成条件<p> ハビタブルゾーンからハビタブルトリニティは、生命誕生の条件をより限定していくものでした。しかし、ハビタブルトリニティは、生命誕生のための必要条件にすぎず、もっと多くの条件が必要になります。<br /></p><hr /> ハビタブルトリニティとして、海の存在だけでは生命は誕生できず、大陸や大気も必要になることを示していました。ハビタブルトリニティとは、生命の材料を供給していく場を考えたとき、必要条件になります。しかし、それだけでは足りません。生命の材料から前駆物質をつくるには、物質が流動、循環していなければなりません。そのためにはエネルギーも必要になります。さらに、いろいろな反応が起こし、進めるには、化学的条件も必要です。そのような各種の条件が整っている必要があります。<br /> 生物の前駆物質がどのような化学反応でできてきたのかを検討するために、実験室でその物質を合成していく研究分野があります。材料となる物質から目的の化合物を、自然界にありそうな条件で合成していきます。その時、個々の化合物を合成のために、多様な条件が必要になることがわかってきました。Kitadai and Maruyama(2018)によると、次の8つの反応のための条件が、必要だとわかってきました。<br /> 還元気相、アルカリ性pH、凍結温度、淡水、乾燥/乾燥-湿性サイクル、高エネルギー反応との結合、水中での加熱-冷却サイクル、そして生命の構成要素と反応性栄養素の地球外から流入、の8つの条件です。反応によって、これらの条件がいくつか組み合わせが必要になることがもあります。<br /> 例えば、ヌクレオチドからオリゴヌクレオチドを合成するには、アルカリ性pH、水中での加熱-冷却サイクル、高エネルギー反応との結合、凍結温度などの条件が必要になります。<br /> 生命誕生の場では、それぞれの反応で、必要な条件を満たさなければなりません。複雑で多様な合成の環境がなければなりません。いずれの環境でも、大きなエネルギーが与えられて有機物ができたとしても、100℃以上の高温になると分解されていきます。そのため、エネルギーを与えながら、できた有機物は高温にされない状態にしなければいけません。<br /> 生命誕生の場として、これまで深海の中央海嶺の熱水噴出孔が有力でしたが、エネルギーが足りなさうです。火山地帯や干潟なども考えられていました。いずれも単独の場所では、生命の前駆物質となる多様な化合物はできそうもありません。材料となる必要な化合物が必要な時に、それぞれの環境に供給されなければなりません。<br /> 必要な多様な条件の場に、必要な材料物質が、次々に供給されていかなければなりません。このような条件を考える、生命の前駆物質を実験室のようにつるくことは非常に難しいものです。そのためは、多様な条件の環境が近接して多数あり、お互いに物質のやり取りが頻繁におこなわれ、試行錯誤が無数に繰り返されている必要があります。そんな場は都合のいい誕生の場とはどんなところでしょうか。<br /><br />・短い秋・<br />北海道は10月になってから、<br />北海道は一気に秋が深まりました。<br />紅葉も進んでいます。<br />通勤の道すがら見える山並みでも<br />冠雪が何度も起こっています。<br />今週末には峠越えをして、調査でかけます。<br />来月にも調査を予定しているのですが、<br />今年は秋が短そうです。<br /><br />・日常へと・<br />サバティカルから戻ってきて<br />すぐは戸惑っていましたが、<br />大学での日常にもだいぶ慣れてきました。<br />講義も1月あまり進んだので、<br />講義のための感覚も体力も<br />やっと戻ってきたようです。<br />一日3講ある日は、さすがに疲れます。<br />そんな疲れる日も<br />日常へとなってきつつあります。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-77751629585163929072023-10-19T00:00:00.004+09:002023-10-19T00:00:00.140+09:002_207 生命誕生の条件 2:ハビタブルトリニティ<p> ハビタブルゾーンは天体での水の存在だけを考えていました。それに比べて、ハビタブルトリニティは、より条件を加えることで、生命誕生の場や環境を限定していく考え方です。<br /></p><hr /> 前回、生命誕生には、ハビタブルゾーンだけでなく、ハビタブルトリニティの考えが必要だという話をしました。では、ハビタブルトリニティとは、どのようなものを指すのでしょうか。みていきましょう。<br /> 生命誕生には、液体のH2O、水(海洋)は必要不可欠ですが、量も考慮しなければなりません。水の量が多ければ、天体の表層がすべて海洋となります。また、水が少ないと、海が小さく点在したり、満ち引きが激しかったり、時には干上がったりすることもあるでしょう。生命誕生には、安定した海洋がなければなりません。<br /> 生命の材料は、水の中で合成され、育まれていくと考えられます。そのため、安定した海は不可欠です。しかし、水だけが、生命誕生の十分条件ではありません。他にも必要な要素があります。ハビタブルトリニティでは、大気と大陸(大きな陸地)も必要だと考えました。<br /> 生命を構成している元素をみていくと、多い順に、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)の4元素で96%に達するので、主要成分となります。酸素と水素は、海洋から供給されます。それ以外の炭素と窒素は大気から供給できます。しかし、量は少ないですが、生命に成分として、イオウ(S)、リン(P)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)の順になっています。これらの元素を合わせて99%を占めます。<br /> リン(P)、カリウム(K)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)などは、大陸の形成している花崗岩がもっている成分で、大気の風化作用や河川の浸食、運搬作用で海へと持ち込まれます。花崗岩は、大陸地殻を構成する岩石です。生命の材料の供給源として、大きな大陸地殻がなければなりません。<br /> ハビタブルトリニティとして、海洋、大気、大陸が必要となります。これらの三者が共存しながら、常に物質が流動し、循環していなければなりません。循環にはエネルギーが必要です。太陽エネルギーが、地球表層の水の循環をさせています。水の循環だけでなく、物質を合成するエネルギーが必要になりますが、それは太陽光だけでな足りなさそうです。<br /> それについては、次回としましょう。<br /><br />・道内の調査・<br />先週末から野外調査にでていました。<br />研究計画に北海道に3回の調査を予定していました。<br />実施のための費用には問題はありません。<br />ただ、時期が問題となります。<br />9月までサバティカルで四国の調査をしてました。<br />北海道では、すでに初雪のニュースはありました。<br />雪がありそうな峠越えをするりなら、<br />冬タイヤに交換しなければなりません。<br />そのため、雪が降りそうな峠道を<br />10月に終わらせて、<br />最後は雪の少ない道南にいくことにしました。<br /><br />・気持ちも体も・<br />講義のある日々も2週目となりました。<br />だいぶ、講義への感覚が戻ってきました。<br />気持ちの上では、だいぶ慣れてきました。<br />講義や会議にでてという日常で1週間を過ごすと<br />週末にはぐったりと疲れてしまいます。<br />しかし、これも日常だったはずです。<br />気持ちだけでなく、<br />体も順応していかなければなりませんね。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-48051998165361269032023-10-12T00:00:00.005+09:002023-10-12T00:00:00.165+09:002_206 生命誕生の条件 1:ハビタブルゾーンの先へ<p> 今回のシリーズでは、進展してきた冥王代の研究と、それに伴って生命誕生でも新たな展開が起こってきました。生命誕生に関する話題をいくつか取り上げて、紹介していきます。<br /></p><hr /> 地球での生命誕生のための条件やシナリオについて考えています。ここ20年ほど、地球最初の時代、冥王代(45.6億から38億年前)の研究で、進展がありました。その中には、生命誕生に関する成果も多く含まれていました。その成果は、冥王代や生命誕生に関する画期的なブレークスルーになるような大発見ではなく、新たなアイディアや地道な研究の進展の積み上げによるものでした。<br /> このシリーズでは、地球生命の誕生についてみてきます。そのきっかけにはいくつかものがありますが、多数の系外惑星の発見があります。系外惑星とは、太陽系ではない、もっと多くの恒星の周りを回っている惑星のことです。系外惑星探査専用の衛星も2機目となり、多数の惑星が発見されてきました。<br /> 系外惑星の多様性は、重要な情報源、そして束縛条件となっています。系外惑星の多様性を説明するには、これまでの太陽系形成の標準モデルへの修正が必要になりました。<br /> 系外惑星における生命誕生への束縛条件も、実際の観測からその頻度もわかってきました。系外惑星で、生命誕生の可能性を探す時、「ハビタブルゾーン」がキーワードになっています。ハビタブルゾーンとは、「生存可能領域」とも呼ばれ、生命が誕生し、生存している可能性がある領域のことです。ハビタブルゾーンとは、その天体に水が恒常的に存在しうるかどうかを、天文学的観測によって推定していきます。<br /> 系外惑星におけるハビタブルゾーンをもっており、地球に似た惑星いまのところ数はかなり少なくなっています。そこには、正確な統計とはなりにくいバイアスがあります。<br /> 遠くの恒星系で、恒星の近くある小さな惑星は、発見しづらいものです。観測している地球から見て、公転面が水平になっているものが、発見されやすくなります。恒星の比較的近の軌道に位置し、小さく、薄い大気と岩石の表層をもった惑星に、ハビタブルゾーンがあります。そのような惑星が発見できる条件を考えると、大きなガス惑星と比べると見つけにくくなっているはずです。それがバイアスとなっている考えられます。<br /> ハビタブルゾーンでいう水の存在は重要ですが、生命が誕生するには、水だけでは足りません。生命の材料として、水(H2O)だけでなく、各種の成分(例えば、炭素、リン、カリウムなど)が必要で、さらに元素から生命の材料を合成するための場(環境)やメカニズム(エネルギー)も必要になります。ハビタブルゾーンだけにでは生命は誕生できず、重要な条件も加味しなければなりません。それをドームと丸山さん(Dohm and Maruyama, 2015)は、ハビタブルトリニティ(Habitable Trinity)と呼びました。<br /> 生命が誕生できる(ハビタブル)条件として、3つ(トリニティ)が必要だとしました。その詳細は次回としましょう。<br /><br />・1週間の疲れ・<br />9月30日にも半年ぶりに帰宅してきて、<br />早1週間がたちました。<br />月曜日から金曜日まで、次々と<br />講義と準備、実施、会議、打ち合わせ、<br />土曜日にも校務がありました。<br />10月1日から毎日休みなく大学にきています。<br />毎日大学に来るのは、いつものことなので<br />大変さは感じません。<br />半年間、西予では片道2kmほどは歩いていたのですが<br />あとは温水プールでの水泳でした。<br />戻ってすぐに片道4kmを、毎日朝夕、<br />往復を歩くことになりました。<br />大学の日常に戻るのに1週間で十分でしたが、<br />長い距離を歩くのが久しぶりなので、<br />体力を思った以上に使っているようです。<br />週末にはぐったりしています。<br />これは体が慣れるまで、続けることでしょう。<br />ぐっすり寝て休養することしかありませんね。<br /><br />・休講と遠隔・<br />サバティカルの最中の9月下旬からから、<br />大学では講義がはじまっていたので<br />1回しか開講しないものは休講として<br />2回開講するのは遠隔授業としました。<br />すべて遠隔授業だけなら対処してきたのですが、<br />一部、それも最初の2回の講義が<br />遠隔授業での実施はつらいものがあります。<br />学生の前提もバラバラなので<br />1、2回目の講義の要約をしなければ進めません。<br />それに時間を取られます。<br />まあ、仕方がありませんが、<br />各講義でできるだけ補うしかありません。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-82734560618189786512023-10-05T08:19:00.005+09:002023-10-05T08:19:00.155+09:00EarthEssay 4_180 西予紀行 7:四国西ジオパーク<p> EarthEssay<br />4_180 西予紀行 7:四国西ジオパーク<br />を発行しました。</p><p>四国西予ジオミュージアムは、<br />西予市でも奥まった城川にあります。<br />なぜ、このような奥まった地にあるのでしょうか。<br />シリーズの最終回として、<br />ジオパークの精神にもとづいて考えていきましょう。</p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.comtag:blogger.com,1999:blog-1612625082018085821.post-43763632907398619562023-09-28T00:00:00.006+09:002023-10-02T08:13:19.050+09:005_207 タンデムモデル 7:新しい提案<p> タンデムモデルは、後発の仮説なので、これまでの標準モデルの課題を克服しているます。もっと重要なことは、これまで説明されることのなかった事実を取り込んで、より詳細なモデルを提案している点です。<br /></p><hr /> タンデムモデルは、太陽系惑星や系外惑星の形成モデルとして、これまでの課題を克服した。しかし、他にも、いろいろとメリットもありました。それを紹介していきましょう。<br /> タンデムモデルでは、岩石惑星と氷ガス惑星の違いを、すっきりと説明できました。このような違いは、他のモデルでも達成できていました。タンデムモデルでは、より精度の高い提案がなされています。<br /> 小惑星帯では、太陽からの距離と固体物質の違いがありました。水の量の変化と酸化還元の変化です。小惑星帯の分布で、この傾向がわかっていました。<br /> ただし、この傾向を地球まで広げていく必要があります。拡大した視点で見ていくと、H2Oは、太陽に近づくと、氷から水、水蒸気となります。惑星の材料で考えるには、固体物質に取り込まれている必要があります。氷ならそのまま惑星の材料になります。水なら含水鉱物として含まれています。それより太陽に近づくと含水鉱物が分解されて、無水鉱物になっていきます。その位置は、地球より外側になります。したがって地球の位置は、無水鉱物だけからできている条件になります。<br /> 地球は、無水の還元的な材料からできたと推定されます。太陽に近くなと、珪酸塩鉱物(酸化物)も還元されていくと推定されています。そのような隕石も稀ですがあります。エンスタタイトコンドライトと呼ばれる隕石です。エンスタタイトコンドライトの特徴は、還元的な条件であることもわかっています。<br /> 地球は、大気も海洋もなく(裸でドライな地球と呼ばれています)、還元的な条件という、今とは全く異なった状態、姿からスタートしたことになります。原始地球の表面は、マグマオーシャンが固化した斜長岩の地殻からできています。そこにカンラン岩質の溶岩(コマチアイト溶岩)や鉄が多い玄武岩溶岩(KREEP 玄武岩)などもありました。現在の月を構成している岩石に似ています。<br /> このような地球からは、海や大気、さらには生命の起源が説明できなくなります。これは大きな問題となります。ところが、別の条件があることもわかっています。<br /> 月のクレータや岩石の年代研究から、43.7億年前から42億年前までの2億年ほどの間に、隕石が大量に落下したことがわかっています。このような現象を、後期隕石重爆撃と呼んでいます。月で起こった後期隕石重爆撃は、同じ公転軌道にある地球にも、起こったはずです。<br /> 後期重爆撃が起こった原因は、ガス惑星で軌道不安定が起こることにより、周辺の小惑星(隕石)の軌道が乱されます。その結果、この時期に後期重爆撃が起こったと考えられています。<br /> 氷ガス惑星の形成場付近の小惑星なので、氷や揮発性成分(炭素質コンドライト)を含んだものになります。それらの小惑星が、内惑星の領域にも入り込み、後期重爆撃を起こします。<br /> その結果、地球には大気や海洋の成分が加わるとともに、還元的鉱物と水との激しい反応が起こります。その時、初期生命に必要な反応が進んだと考えられています。<br /> 海や大気、生命の起源も、材料から重要な束縛条件を示していくことができるようになってきました。<br /> 今では、後期重爆撃で揮発成分がもたらされせるモデルが主流になってきました。主のモデルには、レイトベニア説(Late Veneer)説やABEL(Advent of bio-elements 生命構成元素の降臨)爆撃説などがあります。これは、また別の機会にしましょう。<br /><br />・現在進行中・<br />このエッセイが、サバティカル期間に配信する<br />最後のものとなります。<br />書いている論文で注目していたモデルとして<br />このタンデムモデルがありました。<br />タンデムモデルを、サバティカル期間に<br />最後まで紹介することができてよかったです。<br />一般に、研究は、データが積み上がってくると<br />これまでにない新しい知見も見つかってきます。<br />それをうまく取り入れたモデルがあれば<br />より有効性の大きなものになってきます。<br />今回のタンデムモデルも、そのようなものになります。<br />ただし、新しく提案されたモデルでは<br />修正、検証が必要な部分も多々あるはずです。<br />それが、現在進行中で進められています。<br /><br />・感謝・<br />今回のサバティカルでは、<br />いろいろな目標を立てていました。<br />目標や計画は、<br />どうしても盛りだくさんなになっていきます。<br />想定外の事態も起こり、<br />予定通りに進まないこともありました。<br />目標をすべては<br />達成することはできませんでした。<br />予定通りにいかないことは、<br />もちろん想定内でしたが。<br />半年という期間ですが、<br />1年分に匹敵するほど、<br />実りの多いものになりました。<br />受け入れてくださった関係者や<br />地域の方々のおかげだと思います。<br />半年間ありがとうございました。<p></p>Geologisthttp://www.blogger.com/profile/16373753637145392562noreply@blogger.com