2015年10月29日木曜日

3_144 地下5kmのダイヤモンド 1:いろいろな産状

 ダイヤモンドについて、これまでたびたび紹介してきましたが、再度取り上げることにします。新しい産状のダイヤモンドが発見されました。今回は、科学的に予測されて見つかったものです。なかなかおもしろいアプローチです。

 このエッセイでは、ダイヤモンドについて何度かシリーズで紹介してきました。一番新しいものとしては、昨年紹介したオフィオライトからダイヤモンドが発見されたという話題でした(3_128~13_132のシリーズ)。そのちょうど1年後にまた、日本人を含む研究グループがダイヤモンドに関する新しい成果を報告しました。それをシリーズで紹介していきます。
 その概要を紹介する前に、ダイヤモンドの形成条件と実際の地球で発見されているものを、まとめておきましょう。
 ダイヤモンドは、宝石の一種で、透明で硬いことが特徴です。炭素が高温高圧条件になったときにダイヤモンドは形成されます。低温低圧(地表の条件)になると、ダイヤモンドではなくなり、炭素からなる別の結晶に変わってしまします。そのため、地表でダイヤモンドで存在するためには、他の結晶に変わる前に、一気に低温低圧(地表)に達する必要があります。深部からダイヤモンドのまま、地表まで上昇するためには、1時間ほどで上昇する必要がありました。それは、時速100kmや200kmなどの非常に高速でなければなりません。
 そのような条件を満たすのは、キンバーライトと呼ばれる火山岩です。そのような火山噴火は、非常に激しいものであったはずです。古い大陸地殻内で活動したもので、幸いながら現在はそのような火山活動は起こっていません。キンバーライトには、大きなサイズのダイヤモンドも含まれ、宝石として利用されています。キンバーライトは古い時代に活動したもので、現在は起こっていない火山活動です。ですから宝石にできるような天然ダイヤモンドも、有限な資源なのです。
 超高圧変成岩と呼ばれるものでも、ダイヤモンドが見つかります。ただしそのダイヤモンドの大きさは0.1mm程度の小さいもので、宝石にはなりそうもありません。大陸同士の衝突によって高温高圧条件が出現したものです。別の鉱物が変成作用を受けることにより、ダイヤモンドができる条件に達します。ただし、圧力は高くなるのですが、温度はそれほどではなかったとされています。変成岩は、変成作用の受けた後、再度地表に上がってくることになります。大地の営みですので、ゆっくりとしたもので、本来であれば上昇するとき別の鉱物に変わるはずです。しかし、変成作用の温度自体が低かったので、別の鉱物に変わるためには、長い時間が必要だったためダイヤモンドのまま上昇できたと考えられます。
 また、高温高圧の発生条件として、隕石の衝突場が考えられます。隕石が衝突すると、瞬間的ですが高温高圧条件が発生します。そのような場を詳しく調べると、高温高圧で形成される各種の鉱物ができていることが知られていました。そこを詳しく調べてダイヤモンドも発見されました。
 このように地質学の進歩によって、いろいろな条件や場所でダイヤモンドができることがわかってきました。他にも予想に反する場所からの発見がありました。以前紹介したものですが、次回はその概要を紹介しましょう。

・初雪・
月初めには、街からみえる山並みが初冠雪でした。
そして、とうとうわが町でも初雪が降りました。
週末に冬型の気圧配置になり、
嵐とともに雪になりました。
アラレだったり雪だったりでしたが、
朝起きたら、道路や畑は白く雪景色でした。
まだ、紅葉が残っているのですが、
今年は、少々早目の初雪でした。

・年賀状の季節・
今年も郵便局から
年賀状の購入紹介のダイレクトメールが届きました。
書店にいったら、年賀状を印刷するソフトとイラスト集が
400円、500円で山積みになっていました。
私のもっているソフトとは違っているのですが、
一番安いものを購入しました。
あまりに安い。
これでいいのでしょうか。
多分商品で並んでいるということは、
これでも成り立つビジネスモデルあるのでしょう。
無理のない経済活動であればいいのですが。

2015年10月22日木曜日

4_126 残念シリーズ 5:横倉山

 このシリーズも今回が最後になります。最後は四国の残念をお送りします。横倉山は、2度の失敗に終わっているところです。そのうちなんとか目的を達成したいと考えているます。いつになるかは未定ですが。

 今まで、このシリーズを、9月に出かけた九州の地で進めてきたのですが、今回は5月にいった四国の話になります。紹介するのは横倉山です。高知県高岡郡越知町にある山です。標高は793mですが、下から見るとけっこう険しい山稜となっています。この山が石灰岩からできている山だからです。
 険しい山なのですが、車で標高600m付近までいけ、登山道もしっかりしているので、登りやすい山でもあります。
 ここには2度訪れ、2度とも途中で調査を断念しています。いずれも横倉山の調査が一番の目的ではなかったためでした。ついでに寄ったり、条件が悪くて、出直す時間もなくて途中で断念してしまったのです。
 一度目は、2010年でした。いの町に向かう途中、はじめて横倉山の近くに来たので、地質学では有名な地なので、立ち寄りました。でも十分な下調べもせず、車で向かう途中で軽く石をみていこうかな、と思っていました。その日は、午前中移動で、午後に付近の石灰岩のカルスト(少々残念でした)、佐川町の佐川地質館、越智町の横倉山自然の森博物館を見た後、横倉山に車で行けるところまで行こうと進んでいました。あわよくば岩石が見ることができればと思っていました。何箇所かで岩石の露頭をみましたが、風化が激しいものでした。
 駐車場に車を停めたのは、午後のかなり遅い時間でした。そこから少し山を歩いてみようと思い、急いで歩き出し杉原神社まで行きました。そこは、静かな落ち着いた場所で、神々しさや荘厳さを感じるところでした。古い杉が林立しているので暗く、日もだいぶ傾いてきたので、急いで撮影だけして、降りることにしました。結局、目的の石灰岩をみることなく、山を降りることになりました。
 2度目は今年の春でした。今年は、層状チャートを見るつもり時間がとっていたのですが、予定が変わったので、横倉山に登ろうと考えました。一番上の駐車場まで車で上がり、そこから登りました。その日は、あいにくの雨でした。傘をさして、杉原神社を過ぎ、さらに上の横倉宮までいきました。宮の周辺では石灰岩の露頭をみることはできました。時折激しく降る雨のために、この時も横倉宮で断念して引き返しました。
 横倉山は、黒瀬川構造帯と呼ばれるもの岩石類がでているところです。黒瀬川構造帯は、九州から四国、紀伊半島まで、点々と分布する地質体で、非常に古い岩石から構成されています。大陸を構成した岩石、火山噴出物、浅海堆積物、熱帯の海で形成された石灰岩などがその構成岩石です。不思議な構成の岩石で、その起源についはまだ決着をみていません。
 横倉山では、古い時代(シルル紀)のサンゴ、三葉虫、層孔虫、腕足類などの化石がでることで有名でした。それを見たいと思っていました。しかし、残念な結果に終わったままです。なかなかチャンスに恵まれないのですが、次回は横倉山を目的に登りたいと考えています。いつになることでしょうかね。

・優先順位・
今回の残念ながら「残念シリーズ」は終わりです。
いろいろ調査にでかけますが、
すべての目的が達成できるとは限りません。
調査では、優先順位をつけています。
今回の横倉山も優先順位が低かったのです。
そのうち、優先順位を上げて、
きっちりと見る日が来ることを願っています。
優先順位は研究テーマと深い関わりがあるので、
研究計画にもとづいて決めています。
今年は、層状チャートが中心になっていました。
近いうちに黒瀬川構造体も重点テーマにする予定もあります。
そのときはぜひ見に来たいと思っています。
いつかは、まだ未定ですが。

・深まる秋・
我が家では、ほぼ毎朝ストーブをたくようになりました。
夜は気温次第でたかない日もありますが。
この1週間ほどで、北海道に一気に秋が深まりました。
紅葉も進み、落葉の一気に進んでいます。
晴れの日があまり続かないので
少々物足りない秋に感じます。
しかし、着実に秋は深まっています。

2015年10月15日木曜日

4_125 残念シリーズ 4:阿蘇山

 9月に阿蘇山が噴火したというニュースは記憶に新しいものです。特に私はその直前に阿蘇山を訪れていのたで複雑でした。ほんの2、3日の差でした。噴火は恐ろしいものですが、地質学者としては、その瞬間に立ち会いたいものでもあります。阿蘇山での残念を紹介します。

 阿蘇山の中岳が、9月14日、9時43分に噴火しました。噴煙が2000mにも達する噴火となりました。阿蘇山は、昨年11月から噴火活動は活発化していたので、警戒レベル2となっており、火口周辺への立ち入りが禁止されていました。9月10、11日にも活発化していて、小規模な噴火が起こっていました。今回の噴火に対しては、それなりの対処がなされていて、なおかつ大きな噴火ではなかったので、事なきを得ました。
 私が阿蘇山を訪れたのは、9月7日と8日でした。その時も噴煙は出ていました。幸い7日は天気もよかったので、たなびく噴煙を見ることができました。噴煙の変化をしばらく眺めながら、かなりの数の撮影もしていました。8日も再度訪れたのですが、朝のうちは雲がかかっていたので、残念ながら噴煙を見ることができませんでした。
 訪れた時すでに噴火警戒レベルが2だったので、火口への有料道路も閉鎖され、ロープウェイも動いていませんでした。しかし、ロープウェイ駅にある施設(阿蘇スーパーリング)は開いていて見学できました。その数日後に、噴火しました。警戒レベルも3になって、火口から4.5kmへの立ち入りが禁止されました。草千里にある阿蘇山火山博物館は見学できますが、そこより先へは進めず、ロープウェイ駅のある山頂近くを経由して阿蘇山をめぐる道は通ることができなくなりました。
 私にとって阿蘇山では2つの残念がありました。ひとつは、カメラの設定ミスをしていたことで、7日の撮影が全滅していたことです。訪れる前日、夜に撮影したので、ASA感度を変更していたのですが、間違って露出を変更したのを気付かずに、翌日も撮影を続けていました。そのため、露出不足の暗い写真しか取れていませんでした。そこで翌日、同じコースを巡って撮影することにしたのですが、雲がかかっていたので噴煙を撮影できませんでした。他の景観は補うことができたのですが、残念でした。
 2つ目の残念は、少々不謹慎かもしれませんが、噴火を見れなかったことです。今回の噴火はそれほど大きなものはなく、被害がほとんどなかったので、落ち着いてみることができたはずです。ほんの少しの差で、噴火に遭遇できなかったことが残念でした。10日にも少し噴煙を上げていました。私がいた時と、ほんの2日の差でした。14日の大きめの噴火があり、噴煙が上がりました。もしその時期に、阿蘇山に滞在してたなら、きっと予定を変更して見ていたはずです。もちろん、近くにいくことは難しいでしょうが、遠くから観察することはできたはずです。噴火に居合わせていなかったのが残念でした。
 規模が大きければそれどころではなかったでしょうが、今回は小さい噴火だったので、比較的近く(草千里などから)からでも、観察できたようです。火山博物館も14日は休館しましたが、15日からは通常通り開館していました。
 阿蘇山は、雄大な火山です。その中央火口の中岳での噴火です。まだ噴火警戒レベル3が継続中のままですから、安心はできないでしょうが、火山国に住んでいることを感じさせる出来事でした。

・雪虫・
北海道は一気に冷え込んできました。
朝夕のストーブは当たり前になってきました。
ただ、天候が不順なので、紅葉の秋を楽しむより、
肌寒さと寂しさを感じる季節になっています。
先日の晴れ間に雪虫を見ました。
雪虫は、北国の冬の訪れを告げます。
ただ、まだ数は少なかったので
もう少し秋が続きそうです。

・感覚・
昨年来でしょうか、
各地で噴火が続いているように思えます。
まあ、これは感覚的なものなので、
本当はきちんと統計を取る必要があります。
人も生きものなので、
どうしても日常生活では
感覚を頼り考えてしまいます。
私のように、通勤で長時間、外を歩くと
寒暖や気候への感覚が
より一層印象付けられます。
今年は天候不順で秋が短い気がしています。
本当はどうでしょうかね。

2015年10月1日木曜日

4_123 残念シリーズ 2:祇園山

 今回は、宮崎の山奥での残念の話です。五ヶ瀬に10年ほど前に一度きたことがあるのですが、その時は、祇園山には来ず、通り過ぎただけででした。今回は、祇園山周辺を見に行きました。

 黒瀬川構造帯という地質体があります。黒瀬川というのは愛媛県西予市城川町にある地名や川の名前に由来しています。この地域に分布する岩石の際立った特徴から、地名を地質学の名称として用いられました。では、そこにどんな特別な岩石が出るのでしょうか。まわりにある岩石とはまったく起源や形成年代の違う岩石が出るのです。それも、日本で一番古い化石が見つかったのが黒瀬川構造帯からでした。その後もっと古いものが見つかっていますが。黒瀬川構造体の重要性は今も健在です。
 黒瀬川構造帯の岩石は、城川町の黒瀬川だけでなく、点々とですが、東は紀伊半島から、西は九州まで断続的に続いています。私は、各地で見るようにしています。四国では何箇所か見て、紀伊半島でも見ています。しかし、九州では、まだ見ていませんでした。それを見たいと思っていました。
 9月に九州に調査に行った時、九州の黒瀬川構造帯を見ようと、半日とりました。分布している場所は、宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬(ごかせ)町にある祇園山(ぎおんやま)というところでした。祇園山の位置はわるのですが、どこでどのような石がでるかは、詳しくはわかっていませんでした。
 岩石としては、石灰岩と酸性凝灰岩が主体です。その石灰岩から、シルル紀のサンゴや三葉虫、貝などの化石が出ることで、古くから有名でした。それを見たいと思っていたのですが、あいにくの雨で、分布地帯の林道を車でうろうろしたのですが、きれいな露頭がないので、諦めました。一箇所で酸性凝灰岩を見たのですが、いかにも新しそうなので、違うもののように見えました。
 他の地域でもそうですが、山の中に出ている古い地層は、一般に黒瀬川構造帯も含めて、露出があまりよくないことが多いのです。古いものは長く侵食を受けているからです。ただし、古くても、石灰岩だけは、露頭として露出することが多いのです。
 石灰岩は、化学的侵食には弱く、機械的、物理的侵食には強いという特徴があります。化学的侵食が起きやすく、成分(炭酸カルシウム)が単調で栄養が少ないので、植生がつきにい岩石です。一方、機械的侵食には耐えるため、雨や川の侵食には強く、リッジ・メーカーと呼ばれ、峰や崖をつくることが多くなります。
 実は、今回も、そんな露頭を期待していたので、急峻な地形を見つければ、そこにあるだろうと思って探したのですが、見つけることができませんでした。場所が違ったのか、川沿いを丹念に歩く必要があったのかもしれませんが、残念な結果に終わってしまいました。別の機会になりそうです。

・先人たちがみた露頭・
祇園山の石灰岩から化石が発見されたのは、1959年のことでした。
前の職場で館長をなされていた浜田氏が、その発見者でした。
露頭は、開発が入ると一気に様相が変わります。
露頭が見やすくなる場合と見れなくなる場合があります。
見やすくなる場合は、道路が新しく拓かれ露頭がきれいになる場合で
見れなくなる場合は、露頭にコンクリートがまかれる場合です。
ただし、あまり開発がはっていないところは、
昔のままの露頭が今もみることできます。
黒瀬川構造帯でいうと、高知県の横倉山がその条件にあたります。
祇園山も同じような条件ですので、先人たちがみた露頭を、
今も見ることができると思ったのですが、残念でした。

・北国の秋・
北海道は、シルバーウィークは変わりやすい天気でした。
昼間は暑いくらいでしたが、突然雨がぱらついたりしました。
ただ、朝夕は秋が感じられる季節になりました。
9月16日にはすでに、旭岳で初雪が観測されています。
例年、札幌では、10月下旬から11月上旬になります。
あと一月もすれば、冬の気配が近づきます。
今は、北国の秋を堪能しましょう。