2015年11月26日木曜日

2_132 41億年前の生命 1:化学化石

 生命の起源や最古の生命にかんする最新情報は、多くの人の興味を惹きます。新知見がでてくるたびに、ニュースになります。そのような報告は、研究者の間でも、すぐに真偽のほどが議論となります。最近も最古の生命化石の報告がなされました。

 生命起源にかんして新しい展開がありました。生命の起源が41億年前まで遡れるではないという報告が、2015年10月19日の科学雑誌でなされました。最古の生命探しは、魅力的なテーマですが、論証や検証がなかなか困難な作業となります。そのため、最先端の装置や手法が導入されていることもよくあります。それでも、そこには不確かさが伴っているため、最古の生命の真偽には、賛否両論が起こります。
 そもそも最古の生命の有無は、化石で判断することになります。化石とはいっても、非常に小さな、ささやかな痕跡にすぎません。
 生物の一部や形、成分であっても、誰が見ても生物や生物の一部と納得できる化石がであればいいのです。例えば、骨や歯、貝殻、葉、種などが出てくれば、多くの人が化石といっても納得してくれます。
 最古の生命では、なかなか明瞭な化石は出てきません。初期生物の化石は、単純な構造の単細胞で、生物の痕跡が残っているだけのはずです。決して化石らしくないものでしょう。そんな化石らしくないものを、もとは生物だ、あるいは生物の一部であったことを示さなければなりません。今回の報告にかんしても、今後議論が起こりそうです。
 現在、多くの研究者が認めている最も古い化石は、35億年前ころのものです。この化石は、生物の形が岩石の中に残っています。形がいかにも細胞の形状をしているので化石と認めていい気がします。その化石では、炭化物が細胞の形状に残されているだけで、殻や成分がそのまま残っているものではありません。このような形だけでは根拠が弱いので、他の証拠が必要になります。報告では一部の成分、化合物の化学組成が残されており、それが生物の特徴となっていました。ただし、その分析は繊細で巧妙な着眼によるものでした。
 このような化学組成に基づく化石の認定は、「バイオマーカー」あるいは「化学化石」として利用されています。形がなくでも、化学化石があれば生物がいた証拠になります。ただし、その化学組成によっては、無機的(生物の関与しない化学反応)にもできる可能性もあるので、注意が必要です。
 現在、化学化石として、35億年前より古いものとして、38億年前のものがありますが、これは賛否両論あり、まだ確定はしていません。
 38億年前までの化石探しは、堆積岩が利用されていました。最古の堆積岩が38億年前なので、化石探しができるのは、この時代までです。なぜなら最古の堆積岩が、化石が見つかる最古の時代だからです。
 しかし、地球上では38億年前より古い岩石がありますが、例えば、40億年前の火成岩があります。火成岩は、マグマが固まったものなので、化石は期待できません。もっと古い物質もあります。砕屑性の鉱物であるジルコンと呼ばれるものです。43億8000万年前にできたものです。今回の最古の生命はそこからの発見でした。詳細は次回以降です。

・すばらしい研究・
研究には、同じ素材、試料であっても、
新しいアイディア、最新の手段があれば、
新知見がでてくことがよくあります。
最新の装置による分析は
研究者の能力や独創性によるものではありません。
研究者より道具がすごいのです。
もちろん、すごい道具とすごいアイディアを
合わせたものもあります。
見通しのたった研究もいいのですが、
予想外、想定外の結果がでてきて、
それをどう考え新しい知見に導くのかにも
研究の醍醐味あると思います。
もちろん高価な最新装置を導入する努力は
大変なものだったのでしょうが、、
それは本来の研究ではありません。
やはり道具による研究よりは、
知恵やアイディアの独創性がすばらしいと思えます。
そんな研究は、既存のデータからでも
導けることもあるかもしれません。
もちろん、それは誰にでもできる研究ではありませんが。

・雪景色・
北海道は、連休明けから
真っ白な雪景色になりました。
週末に雪が降るという予報だったのですが
それが外れたのですが、
2日ずれての雪となりました。
連日の激しい降雪で、
北国は一気に冬模様です。
でも、根雪にはまだまだと思いたいのです。

2015年11月5日木曜日

3_145 地下5kmのダイヤモンド 2:化学気相成長法

 ダイヤモンドは高温高圧の条件でできるのですが、それ以外にもその領域に達する方法があります。そんなちょっと不思議な原理で合成されているダイヤモンドもあります。もし、地球のそのような環境があるとしたら・・・・。

 前回は、古くから宝石として利用されてきたダイヤモンドの話でした。そのダイヤモンドは、キンバーライトとよばれる特殊な火山岩が、地球深部でできたダイヤモンドを高速で地表にまでもってきました。これが宝石としてのダイヤモンドの主な由来でした。
 他にも、高温高圧条件を生み出した変成作用と隕石衝突によるダイヤモンドも発見されるようになってきました。これは、形成条件に着目すれば、そこにダイヤモンドがあっても不思議ではない高温高圧条件があったものの発見でした。
 他にも、予想外の発見もありました。日本列島のような沈み込み帯(以前のエッセイ3_70~3_73)の火山岩や昔の海洋地殻が沈み込んだオフィオライトと呼ばれるもの(3_128~3_132)などから見つかっています。これについては、想定外の発見となりました。
 ダイヤモンドの形成過程にも、いろいろなものがあることがわかります。ダイヤモンドは、人工的に合成されているものもあります。当初は高温高圧条件を発生させて合成されていました。この方法は、高温高圧のコントロールも大変ですし、エネルギーを大量に使うのでコストもかかり、また大型の結晶を合成するのはなかなか大変でした。
 ダイヤモンドは、宝石以外でもいろいろな目的に、特に工業的にも重要な役割をもった素材になっています。そのために、安価に大量に合成する方法が必要になってきました。そのような方法が、現在ではいろいろ開発されています。
 化学気相成長法を呼ばれるものがあります。本来は高真空での合成方法ですが、今ではそれほど真空ではなくても作られるようになりました。管にある物質(基板と呼ばれます)をおいて、管の内部を減圧して、中の気体をプラズマ状態にします。その気相の反応を利用して、ダイヤモンドの合成をおこなうものです。蒸着とも呼ばれている方法です。この化学気相成長法による合成は、他の方法と比べて安価にでき、現在工業用ダイヤモンドとして利用されています。
 ダイヤモンドは、自然では1200~2400℃の高温、5万5000~10万気圧の条件で形成されているのですが、化学気相成長法では、実験室レベルでは500℃、1000気圧の条件での合成が可能になってきています。
 地球の現実の場でこのような条件が出現するのでしょうか。もしあるとすると、どのような場でしょうか。それがわかれば、化学気相成長によるダイヤモンドが見つかるかもしれません。そんな発想のもとに、探し、見つかったのが、今回の報告となっています。

・工業用・
以前、鉱物の展覧会にいったとき
工業用ダイヤモンドの見本をもらって、
それを机の引き出し入れてもっていました。
黄色い色をしたものでしたが
工業用ですから面白い資料でした。。
残念ながら、今では手元にありません。
以前いた博物館にダイヤモンドの展示で使うために
寄贈してきました。

・秋から冬へ・
11月になりました。
北海道は秋から冬に変わろうとしています。
紅葉はかなり進み、
落葉もかなり進みました。
初雪はすでにあったのですが、
冬に着実に進んでいることを感じます。