2012年8月30日木曜日

1_108 LHB 4:シミュレーション

 LHBは本当にあったのでしょうか。LHBをサポートする論文を紹介します。しかし、よくみると論文の展開は、シミュレーションになっています。過去の大事件ですが、人にとって過去は、推定するしかありません。その推定が本当かどうかは、検証のしようがありません。最終的には、信じるか信じないか、それしかないのでしょうか。

 地球上で見つかっている、いくつかの衝突スフェルール床をもとに、LHBに関係する論文が2つ書かれていることを、前回、紹介しました。その論文の内容を紹介します。
 一つ目は、
 Impact spherules as a record of an ancient heavy bombardment of
Earth.(地球の古い重爆撃の記録としての衝突スフェルール)
という論文で、スフェルール床の厚さから、衝突した天体の大きさを見積もります。
 この方法は、白亜期末(K-Pg境界)の恐竜を絶滅させた隕石に用いられたものです。隕石に特徴的にみつかるイリジュウム(Ir)を用いて、衝突で飛び散ったIr総量(地層中のIr量×地層の厚さ×地球表面積)を見積もります。隕石のIrの濃度から、隕石の大きさを推定します。この方法を用いれば、スフェルール床があれば、対応するクレータがなくても、小惑星の性質を探ることが可能となります。
 論文では、時代ごとのスフェルール床と他の天体のデータ(月、火星)を照合しながら、小惑星の衝突頻度、サイズ分布を割り出し、昔ほど多いことを示しています。その結果、35億年前のほうが衝突が激しかったことを示しています。つまりLHBが38億年前ころをピークに、爆撃は衰えていったことに対応しているというものです。
 もうひとつの論文は、
 An Archaean heavy bombardment from a destabilized extension of
the asteroid belt.(小惑星帯の不安定外縁部からの太古代の重爆撃)
で、スフェルール床がいくつもあることから、LHBは今まで考えられていたものよりもっと長い期間継続していたというものです。その原因を、ある特別な軌道をめぐる小惑星帯の変動としています。
 月の41億から37億年前の10個の盆地を形成したクレータから、ある軌道をもった小惑星の衝突に由来することが判明しました。その軌道は、地球と火星の間を回わるもの(Eベルト)ですが、現在ではこの軌道をめぐる小惑星は少なく、残っているのは軌道が大きく傾斜したグループ(ハンガリア小惑星群)だけです。
 ハンガリア小惑星群のサイズ分布を調べると、37億から17億年前までの間に、地球に70個ほどのクレータを、月に4個、K-Pg境界の衝突以上のクレータができたことを示しています。このような衝突頻度は、衝突スフェルール床と月のクレータの頻度とも一致していました。
 Eベルトの小惑星は、LHBの時期に巨大な惑星が移動したことによって、運動が不安定になり、軌道が乱されたと考えられています。その結果、多くの小惑星は、地球や月に衝突し、今では軌道上の小惑星は、ほとんどなくなっているとされています。
 さてさて、シミュレーションと実測データが混在した話でした。実体はそこにあるでしょうか。古い時代を推測する話です。信じる信じないは、人それぞれでしょうね。

・仮想から現実へ・
シミュレーションは、
現実を仮想化された世界で再現したもの
だといえます。
ですから、現実では見れないような
条件を再現して見せてくれます。
今回は、地球の過去の歴史でです。
シミュレーションは、仮想世界ですから
最終的には、信じる信じないの判断になります。
個人やいち研究者のレベルの判断ならいいのですが、
シミュレーション結果が、
組織や国、国際的な判断に利用するのは、
注意が必要なはずです。

・暑い夏・
北海道は、8月下旬にもかかわらず、
蒸し暑い日が続いています。
いつものなら、もう秋風が吹いても
おかしくない頃なのですが・・・。
今年は太平洋高気圧が頑張っているようです。
今週は多少の雑用はありますが、
やっと一息つける時期となります。
この期に、メインに使っている
デスクトップパソコンを更新しています。
今まで使っていたものが不調になったので、
新しいものに先日更新しました。
その移行作業を先週末からやっています。
大量のデータをコピーしています。
夜間は、トラブルがあると嫌なので、
パソコンの前にいる時だけ、
データのコピーを続けています。
ですから、余計に時間がかかるのですが、
以前、壊れていたファイルがあり、
そのファイルのために、突然再起動が起こり、
ハードディスクを傷つけたことがあります。
今回も一度原因不明の突然の再起動が起こりました。
これがあると、システムを壊すことがあるので怖いです。
今のところ大丈夫のようですが。
しばらくは、暑い夏になりそうです。

2012年8月23日木曜日

1_107 LHB 3:衝突スフェルール床

 LHB(後期重爆撃)の反論への議論がでてきました。LHBがあったとする考えに基づいて、古い地層から見つかった新たなデータ、衝突スフェルール床からの展開でした。

 前回、LHB(後期重爆撃)に対する反論があることを紹介して、主な反論として、2つを紹介しました。反論は、「データに偏りがあるのではないか」と「継続していた爆撃の最後の衝突ではないか」というものでした。これらの反論に対するさらなる反論(このようなものを議論と呼びます)は、なかなか困難であるということも紹介しました。
 ところが、2012年5月3日のイギリスの「ネイチャー」誌に、2編の論文が掲載されました。
 Impact spherules as a record of an ancient heavy bombardment of
Earth.
(地球の古い重爆撃の記録としての衝突スフェルール)
 An Archaean heavy bombardment from a destabilized extension of
the asteroid belt.
(小惑星帯の不安定外縁部からの太古代の重爆撃)
というものです。これらの論文は、LHBの現象に、新たな知見を加えるものでした。つまり、LHBがあったという立場で書かれた論文です。
 2つのいずれの論文も、古い時代の地層から見つかっているスフェルールの濃集した「衝突スフェルール床」を用いて調べられたものです。
 スフェルールとは、激しい衝突が起こると、落ちた隕石や衝突された地球の岩石が、溶けたり蒸発して飛び散ります。やがて冷えて小さな液滴となり、球状に固まります。球状に固まったものを、流星塵、宇宙塵などの分類に基いてスフェルールと呼んでいます。この論文では、「衝突スフェルール」とよんで、宇宙塵のものと区別しています。
 大きな衝突が起こると、スフェルールは、広い範囲に飛び散ります。白亜紀末の恐竜の絶滅を起こした隕石が、直径10kmでした。このサイズの衝突があると、全地球にその放出物が飛び散ることが確認されています。
 ですから、大きな天体(直径10km以上)の衝突があり、土砂がたまりやすい場に降ったスフェルールは、地層の中に薄い層として保存されていることが起こります。そのような濃集層を、「衝突スフェルール床」と呼び、何枚かみつかっています。
 今までに、34億7000万から32億3000万年前の間に7床、26億3000万から24億9000万年前の間に4床、21億から17億年前の間に1床が発見されています。今後も、衝突スフェルール床は、注意深い調査がなされれば、見つかる可能性があります。
 これらのスフェルール床を基礎データとして、論文は展開されています。その詳細は、次回としましょう。

・テクタイト・
小さな隕石で宇宙塵、流星塵と呼ばれるものが、
定常的にたくさん降ってきています。
その塵には、そのまま落ちてきたものと
地球落下時に溶けて球状になっているものがあります。
溶けて球状になっているものを
スフェルールと呼んでいます。
他にも、スフェルールに似たものとして、
テクタイト(tektite)があります。
テクタイトも、隕石の衝突によってできたもので、
溶けて液として飛び散ったものが
飛んでいるときに固まったガラス状のものです。
飛びながら固まったガラスは、
流線型や滴状、ボタン状などの
飛行していたような形態をしています。
スフェルールと起源は同じですが、
サイズが大きくものをテクタイト、
小さいものをスフェルールと呼んでいるようです。

・集中講義・
今週は集中があるので、
多分このメールマガジンを書いている余裕がありません。
ですから、一週前に予約送信しておきます。
一日4時間の授業を3日間することになります。
初めての経験です。
講義の準備はできているのですが、
体力と声が心配です。
50名あまりの学生受講しています。
本当はもっと少ない受講生を予定していたのですが、
広い教室で授業をすることになります。
まあ、頑張るしかありませんね。

2012年8月16日木曜日

1_106 LHB 2:反論

 LHB(後期重爆撃)という地球創世時に大事件があったという考えがあります。ただし、それに対する反論も古くからあります。その反論は、なかなか手ごわいもののようです。その反論を紹介しながら、LHBの意味を考えていきましょう。

 月の形成史の研究から、40億年前から38億5000万年前の間に、激しい隕石の衝突、LHB(Late Heavy Bombardment:後期重爆撃)があったことがわかりました。月の母星せある地球にも、同じようにLHBの事件が、起こってたと考えられています。
 LHBの認定に関しては、古くから反論があります。反論は大きく分けると、2つの点についてで起こっています。
 一つ目は、データの偏りの可能性です。
 年代のデータは、アポロ計画で持ち帰られた試料に基づいています。持ち帰った試料の大部分が、「雨の海」という大きな一つの衝突クレータの近くから飛び散ったものではないかという疑問です。「雨の海」のクレータは巨大です。その衝突は激しく、その衝突によって飛び出した放出物が、かなり大量であったと考えられます。実際にシミュレーションの結果もでています。もしかすると、アポロ計画の着陸地点すべてが、「雨の海」からの放出物に覆われている可能性もあります。
 クレータのあったところが、どんな時代の岩石でできていても、その年代は衝突によって消されてしまいます。衝突の高温高圧の条件によって、岩石が溶けて飛び散るときに、年代が新しくなってしまいます。これが、39億年ころに年代が集中している原因ではないかという批判です。
 これは、あり得ることです。この反論に対抗するには、「雨の海」の影響をあまり受けない地域からの試料で、年代測定を実施することが確実でしょう。ところが、アポロ計画以降、人類は月に調査にはいってないので、新たな試料を入手することができません。反論への反論もなかなか難しいようです。
 2つ目の反論は、LHBが継続していた衝突の最後のものに過ぎないというものです。
 月も地球も激しい衝突がずっと継続していたのですが、39億年前の衝突で終わったという考えです。ある時期に激しい衝突があると、それ以前の表面の物質の年代が、すべてリセットされたのではないかというものです。激しい衝突によって、大量の放出物が飛び散り、地表を覆ってしまうはずです。39億年前に激しい衝突が終わると、39億年前の物質に表面がすべて覆われているはずです。
 飛び散ったものがすべて溶けるわけではなく、溶けずに飛び散った古い岩石の破片もあるでしょう。そのような破片は、年代測定できないくらい小さく、情報が読み取れていないのかもしれません。
 これもなかなか手ごわい反論です。いろいろな古い年代の物質がないことを示さなければなりません。ただし、小さい破片までも39億年前の年代であったとしても、反論を否定できません。なぜなら、激しい衝突が表面を覆い尽くしたかもしれないからです。
 このような反論を考えていくことは、地球や月の歴史について考えていくことにもなります。逆にどちらかの反論に根拠が与えられると、LHBの存在が危うくなります。
 最近、LHBを支持する2つの論文が提示されました。その内容は次回としましょう。

・科学の進歩・
ある分野で、ある新説がでると、
それに対する反論がよくでてきます。
そんな新説には、重要な意味があるということです。
新説に注目されているということで、
その分野の研究に携わっている
研究者が多いということを示しています。
注目されている分野では
今もいろいろな考え方があり、
まだ結論がでていないということです。
このようにして、科学は進んでいくのではないでしょうか。

・洪水・
近畿地方で激しい雨で各地で
洪水の被害が出ました。
皆さんは大丈夫だったでしょうか。
私の実家周辺でも被害がありました。
幸い実家は被害がありませんでしたが、
親戚(叔母)の店舗が2度ほど水に浸かったようですが、
幸い大きな被害はなかったようです。
せっかくのお盆休みで
出かける予定がダメになった人も
いるかもしれませんが、安全無事がなによりですね。

2012年8月9日木曜日

1_105 LHB 1:ないことの意義

地球の年代区分は、岩石の記録にもとづいておこなわれます。岩石がなければなりません。記録が「ない」ことに、もし理由があれば、「ない」ことにも意味があるのかもしれません。今回は、後期重爆撃(Late Heavy Bombardment:LHB)があったのか、なかったのか、の話題です。

 地球のはじまりの時代は、「冥王代(めいおうだい)」と呼ばれています。冥王代のはじまりは地球の誕生で、終わりが40億年前くらいです。「くらい」といったのは、年代がはっきり定まっていないたいめです。終わりだけでなく、はじまりも、実ははっきりしていません。なぜなら、冥王代は、自己完結的に年代が定義されるものではなく、他力的、受動的に定義されているからです。
 冥王代のはじまりは、地球の誕生時となります。しかし、地球は多数の微惑星の衝突合体によって成長してきたものです。では、どの微惑星を地球とするのか、どの時点から地球と呼ぶか、などよって冥王代のはじまりは変わってきます。それに、今は亡き微惑星や成長中の原始地球を、時代の定義に利用することは、実証的ではありません。それに、定義によって変わります。
 冥王代の終わりは、次の時代の太古代のはじまりに当たります。太古代以降は、地球の年代区分として厳密に定義されています。そもそも年代区分とは、現存する岩石にもとづいて編成されているもので、その時代の岩石がないことにははじまりません。太古代のはじまりは、最古の岩石になります。太古代以降の年代区分は、岩石記載に基づいて構築可能となります。
 現存する最古の岩石は、40億年(正確には40億3000万年前)のものですから、それ以降が年代区分が成立することになります。太古代はじまり頃の岩石は、バラバラになっていることも多いですが、各種の岩石が分布しています。そして、38億年前ころからは、いろいろなところから見つかってきます。堆積岩もみられます。38億年前以降、大陸の面積あるいは体積が、保存可能などに大きくなり、安定して存在していたのかもしれません。38億年前ころからあちこちに岩石が見つかることに、何か意味があるのでしょうか。
 38億年前より古い時代は、陸が少なく、陸の岩石も少ないために、稀にしか残されなかったのでしょうか。陸形成は、海と密接な関係があるので、海が38億年前から安定的に存在できるようになったのかもしれません。
 あるいは、陸はそれなりあったのが、消してしまうような事件が起こったのかも知れません。特別な事件があったというには、それなりに証拠が必要になります。
 アポロ計画で月の岩石が大量に持ち帰られました。月の岩石や砂粒の年代測定に基づいて月の形成史が編まれました。そこから、40億年前(41億年前とすることもあります)から38億500万年前の間に、激しい隕石の衝突があったことがわかりました。これを根拠に、特別な事件が考えられています。
 隕石は、惑星の公転軌道より外から飛来して、軌道を横ぎるときに衝突するものです。地球の衛星の月に隕石が大量に落ちてきたということは、地球にも同じ程度に落ちてきた可能性があります。このような隕石の爆撃は、地球形成時に起こった激しい隕石の衝突よりもあとの時期なので、後期重爆撃(Late Heavy Bombardment)と呼ばれ、LHBと略されています。
 38億年前より古い岩石があったことは、より古い鉱物(42億年前)の存在からわかっています。陸があったとしても、LHBによって地殻がひどく破壊されてしまったので、38億年前より古い岩石が見つからないのかも知れません。しかし、その考えにはいくつかの反論があります。その反論の内容は次回としましょう。

・真夏の夜の夢・
LHBとしましたが、いくつかの名称があります。
月激変(Lunar Cataclysm)や
後期隕石重爆撃(Late Heavy Meteor Bombardment)などがあります。
ここでは、地球に適用しているのでLHBを用いました。
月はアポロ以来人類はいっていません。
無人探査機(かぐやなど)は、月を訪れていますが、
せっかくの人類のフロンティアとして
開拓された月が遠くなっています。
有人火星探査などもいわれていますが、
費用、技術、危険性などを考慮すると
よっぽどの必要性がないと
実施には踏み切れないはずです。
夢として語るのならいいのですが、
現実性を考えるなら、
有人による月探査の再開のほうでしょう。
そんなことを真夏の夜の夢として考えています。

・集中講義・
いよいよ大学は、定期試験も終わり夏休みに入ります。
ただし、集中講義が8月下旬にあり、
受ける人はお盆明けから大学講義です。
私も、集中講義の担当になっています。
その準備をお盆中にしなければなりません。
なかなかきの休まらない日々が続きます。

2012年8月2日木曜日

2_108 ヒ素では生きていけない 2:反論

ヒ素を利用して生きているらしいGFAJ-1をめぐる議論がありました。実験条件の厳密化とDNAの成分分析からの反論です。そこには、重要な内容が含まれていました。反論も含めて議論が深まることで、生命の本質にかかわる重要な鍵が見つかるかも知れません。

 ヒ素を体内に取り込み生きているバクテリア、GFAJ-1は、以前紹介したウルフ-サイモン(論文の第一著者)らの培養実験で、ヒ素のある環境を好んでいることがわかりました。彼女らの実験では、GFAJ-1は、リンだけ、あるいはヒ素だけの環境では成長できず、リンが極端に少なくヒ素がたくさんある条件でより増殖したというものでした。その結果、GFAJ-1には、リンはある程度は必要ですが、ヒ素が多い環境を好み、不可欠としている生物であることがわかりました。
 以前のエッセイでも書いたのですが、論文の公開前に、NASAが大々的に記者会見までしていたので、そのやり方に少々顰蹙(ひんしゅく)をかっていました。この論文が報告されたあと、同じ条件で実験をしても、同じ結果が得られないという批判がありましたが、公式な反論はこれまでありませんでした。まあ科学ですから、公表の仕方は、論の是非や本質とは関係なく、冷静に論理的に評価、批判しなければなりません。
 正式な反論が、7月8日発行のサイエンス誌(電子版)に公表されました。スイスの工科大学チューリヒ校とアメリカのプリンストン大学の2つの研究グループが、別個に出しました。その2つの論文では、別々に(独立といいます)実験がおこなわれたものなで、その再現性はいいものと考えられます。つまり、信頼できる科学的な反論だということです。
 彼らの実験では、ウルフ-サイモンらの論文と同じ条件でおこなうと、同じ結果を得ました。ここまではいいのですが、リンをもっと減らしていく(ゼロではない)と、GFAJ-1は増殖できなくなりました。さらに問題は、GFAJ-1のDNAを調べたところ、ヒ素が検出されませんでした。あったとしてもごく少量だそうです。ヒ素がDNAのリンの多くを代替しているわけではなかったのです。
 この実験結果は、ウルフ-サイモンらの以前の内容を、否定するものではありません。より厳密に限定していったということです。リンが少量とはいえ、GFAJ-1には必要不可欠であることは、実は、ウルフ-サイモンらも、リンのない条件で培養実験をしているので、知っていたことです。
 問題は、DNAにヒ素がなかったことです。つまり、DNA内でリンの代わりとしてヒ素を使っていたのではないということです。ウルフ-サイモンらDNAにリン酸があることは知っていました。もし、DNAにヒ素はなく、すべてリンであれば、その他多数の普通の生物のDNAと変わらなくなります。
 この反論によって、論点が整理されてきました。
 GFAJ-1が繁殖するためには、ヒ素が必要なことは確かです。ヒ素がGFAJ-1のDNAの主要成分でないことが判明したので、問題は、ヒ素がどこにあり、どのような機能を担っているのかです。
 例えば、DNAをつくるために、あるいはなんらかの代謝をするために、ヒ素が使われているのかも知れません。本質は、GFAJ-1におけるヒ素の役割です。その役割がわかり、他の生物にも普遍化できるかどうかが重要となります。もし生命機能として普遍化できるなら、「第2創世記」があったかもしれません。

・調査行・
もう8月です。
北海道は暑い日が続いています。
今年の講義の後半は、苦しい日々が続きました。
そんな苦しさを解消するためにも
研究調査に出たいのですが、
少々精神的にも疲れて、
動く気力が湧きません。
でも、それではますますストレスがたまるので、
厳しいスケジュールの合間をぬって、
9月上中旬に1週間ほど調査に出ることにしました。
その決意を固めるためにも、
チケットを先日予約しました。
やるということをもう決めてしまいました。
まだ宿はとっていなのですが、
だいたい周るコースを定めつつあります。
久しぶりに四国から離れた調査になります。
ただ、スケジュールが混んでいるので、
体調を崩さないようにしなければ。

・構造浸食・
次の論文のために、新しい論文を
集中して読んでいます。
構造浸食に関する一連の論文です。
重要な意味がありそうです。
いくつか重要な根拠(データ)に基づいていること、
今までの疑問点を解決できそうなことが
素晴らしい点です。
これは、新しい視点を地球科学に導入する可能性があります。
なんといっても重要なのは、
新しい現象を予言している点です。
反証可能性を提示しているのです。
まるで新しいパダライムの提示にみえますが、
パラダイムなるかどうかは、
今後の検証、展開しだいです。
機会があれば、紹介してきたいと思っています。