2001年4月26日木曜日

1_7 冥王代のイベント(2001年4月26日)

 地球の始まりの時期(冥王代(めいおうだい))には、どのようなことが起こったのでしょうか。そのとき、地球にとって始めてのことばかりが起こったと考えられます。では、どのようなことが起こったのでしょうか。始めての物語を見ていきましょう。
 地球の始まりの時期を、冥王代(めいおうだい)といいます。冥王代は、46億年から38億年前の間です。46億年前とは地球の形成の時代です。39億年前とは地球の最古の地層の形成された時代です。つまり、冥王代とは、地球の形成から最古の証拠の出てくるまでの暗黒の時代を意味します。
 冥王代に起こった一番のイベントは、なんといっても地球の形成です。すべての始まりはこの地球の誕生からです。すべての物語は地球で演じられます。地球ができてすぐのころは地球は、どろどろに溶けていました。マグマの海(マグマオーシャン)から地球は始まりました。
 地球がどんなに熱くても、宇宙空間は極低温の世界です。地球の内部で熱が発生しない限り、地球はやがて冷めていきます。外から冷めていくと、原始の大気に含まれていた水蒸気が液体の水として落ちてきます。最初の雨です。水蒸気の抜けた大気は、原始の大気から第二の大気に変貌しました。
 最初に降った雨は、熱い地表ですぐに蒸発します。雨は、次々と降って、大地を冷やしていきます。雨によってマグマの海の表面は冷えて固まり、最初の大地となります。
 雨は、水蒸気がなくなるまで降り続けます。降った雨は大地の上を低いほうへと流れていきます。最初の川です。
 川は大地を削りながら一番低いところにたまっていきます。一番低いところには、地球中から集まった水がたまります。大気中の水蒸気の大部分が雨となって降ってしまうと、大量の水がたまり、最初の海となります。水蒸気のなくなった大気からは、晴れ上がり、太陽の光が大地に注ぎ始めます。最初の青空と太陽の日差しです。
 地球内部の熱がマグマとして、固い大地を破ってあちこちで放出されます。つまり火山です。あるものは海の中での噴火となります。最初の水中噴火です。
 最初の海には、川が運んできた土砂と共にさまざなま化学成分がたまります。水中噴火では、火山に含まれていた各種の成分が海に加えられます。あるいは、火山の熱によって今までにない成分が海の中で形成されました。それは、やがて生命の材料になっていったのです。
 海の水が冷えた岩石とともに地中にもぐり込むことによって、水の入ったマグマ形成が起こります。このようはマグマが固まりますと、大陸の岩石である花崗岩類が形成されます。
 このようにして冥王代には、地球の大地、海、空、そして生命の誕生の舞台ができあがったのです。

2001年4月19日木曜日

3_6 天体のリズム

 最近、太陽の活動が活発になっています。巨大な黒点が出現したり、オーロラがたくさん発生したりしています。太陽はいったいどうしたのでしょうか。太陽の活動から天体のリズムが見えてきます。


 太陽の活動には、周期があります。その周期は、11年ごとです。11年ごとに、太陽の活動が活発になります。このように、太陽の活動の活発な時期を「極大期」といいます。極大期には、黒点の活動が活発になり、太陽表面での爆発現象(フレア)も盛んに起こります。爆発によるガスやイオンが地球にまで達すると、磁気嵐と呼ばれるものが起きます。磁気嵐が起きると、オーロラが頻繁に見えたり、電波障害が起きたり、送電線に障害が起きたります。
 去年から今年にかけて、太陽の極大期にあたっています。3月後半だけでも300回近い爆発が確認されています。3月29日には、北米の高緯度地域ではラジオの電波が途絶しました。3月31日には、北海道のような低緯度の地域でもオーロラが観察されました。
 このような太陽の周期的な活動は、地球にさまざまな影響をもたらします。天体の周期的な活動では、太陽の11年周期以外にも、地球に影響があるものがあります。
 太陽と地球の関係でいえば、24時間周期の昼と夜があります。365日周期の季節変化があります。人間の生活や生理だけでなく、地球全体にも大きな影響を及ぼしています。1日の昼と夜は、地表温度に変化を与えます。1年の周期的変化は、夏と冬、乾季と雨季などの気候や季節変化を与えます。このような周期的変化が、地球の大気や海洋をかき混ぜる原動力の一つとなっています。
 月と地球にも、周期的変化があります。12時間周期の潮の満ち引き、28日周期の月の満ち欠けがあります。月と地球の周期では、海水だけでなく大地も15cmほど上下動しています。人間の女性の生理が1月周期といいうのも、もしかすると月の周期に関係しているのかもしれません。月と太陽と地球の関係では、14日周期の大潮や小潮などがあります。潮の満ち引きは、沿岸に生きる生物には大きな影響を与えます。
 天体と地球の織りなす周期的な活動は、さまざまなリズムものがあります。ここでは、人間にわかりやすいリズムのものだけを示しましたが、もっと長いものもたくさんわかっています。それは、別の機会に紹介しましょう。

2_10 生命誕生の条件

 生命は、どのように誕生したのでしょうか。その答えはまだ得られていません。しかし、多分こうだと考えられるシナリオは描かれています。現在、一番もっともらしいものを紹介しましょう。
 生命誕生のシナリオは、さまざまなものが考えられてきました。時代毎に、一番もっともだというシナリオは変わってきました。最上のシナリオを選ぶには、いくつかの条件を満たしたものを採用しなければなりません。
 まず、最初の前提条件は、「生命の誕生」があったということです。そのためには、宗教的な神や、ずっと昔から生命があったという立場は否定されます。そして、最初の生命は単純なもので、やがて現生の複雑な生命に至るという進化を認めることです。これが、生命誕生のシナリオにおける最初の前提条件です。生命の誕生や進化については証拠があります。しかし、それは別のエッセイで紹介しましょう。
 つぎに、誕生の舞台をどこにするかです。無条件に地球というのは早計です。パンスパーミア説というシナリオがあります。その説は、地球以外の天体で誕生した生命が何らかの作用で地球にもたらされたというものです。これもれっきとした科学者が唱えた説です。ある程度、説得力を持っています。もし、生命の起源が地球以外だとしたら、ではそこでどのように生命に誕生したのかが、問題となります。ふりだしに戻ります。そしてそこの環境はまったく不明ですから、問題はさらに混迷を深めます。パンスパーミア説が、地球の生命起源の真実かもしれませんが、ここでは採用しません。この説を否定する根拠はありません。また、肯定する根拠も同様にありません。不可知論です。
 では、生命誕生の舞台は原始の地球とします。ですから、生命の材料は地球の表面あるいは、地球の表面近く(大地、大気、火山活動でもたらされた)ものです。そして生命の合成は、地球の表層でごく普通にあった作用でおこなわなければなりません。これが、生命誕生のシナリオにおける、誕生の場の条件です。
 生命の誕生に関する時間的制限条件があります。それは、化石による証拠です。化石の証拠を生命進化の材料とするには、最初の生物をルーツとしてその生物が現在の生物の祖先となっている考えます。これは、実は根拠がありません。例えば、地球の最初の頃には、生まれた生物はしょっちゅう絶滅していたと考えることも可能です。そうすると最古の生物化石は、現在の生物の祖先とはいえなくなります。でもそうすると、現在の生物の祖先はいつから始まったかという検討が必要となります。少なくとも現在生きている生物は、一つの祖先から出発したという証拠があります。でも、不可知論を避けるために、最古の生物まで現在の生物の祖先と考えることとします。
 最初の生命の痕跡は、38億年前のものです。38億年前の化石はまだ信憑性は定かではなく、はっきりと化石といえるものが見つかっていません。もしそれが生命であるとすれば、環境は縞状鉄鉱層とチャートが交互に堆積する環境です。そして燐酸(りんさん)を利用する生物ということはいえます。
 35億年前には、化石に残る生物が登場します。その生物は、3000メートルほどの深海の熱水噴出口付近で生活し、細胞分裂をしていました。その生物は一種類だけでなく、何種類かの生物がいました。ですから、地球誕生が約45億年前ですから、10億年間で、熱水噴出口で生きている何種類かの生命が、誕生しているという時間的制限条件を生命誕生のシナリオは満たさなければなりません。
 これが現在得られている生物の誕生のための条件です。生命誕生の物語は、この条件を満たすシナリオでなければなりません。

2001年4月12日木曜日

6_6 有人宇宙ステーションミール

 ミールはロシアの宇宙ステーションで、2001年3月23日、日本時間で午後3時ころ、南太平洋落下しました。ミールの落下の軌道が、日本に落ちる可能性もあったため、マスコミの大々的に取り上げ、騒がれました。ミールは危険な厄介ものになりましたが、その果たした役割は大きなものがありました。ミールの果たしたことを振り返ってみましょう。

 ミールはロシア語で「平和」や「世界」という意味があります。ミールは、1986年2月20日に打ち上げられました。1986年3月15日には、2名の宇宙飛行士がミールに乗りこんで以来、有人宇宙ステーションとして活躍していました。以来約10年間にわたって常に宇宙飛行士が常駐していました。その後も断続的に宇宙飛行士が滞在して、2000年6月に2名のロシアの宇宙飛行士が帰還して、約15年にわたって活躍してきた有人宇宙ステーションのミールの歴史は終わりました。そして、2000年11月に、ロシア政府は、老朽化と財政難のためにミールの廃業を決定しました。
 ミールは宇宙でさまざなな成果をあげてきました。ミールのコア・モジュールはもともと5年の運用のつもりで設計されたものでした。そのためミールの後半生は、数々のトラブルに見まわれました。1997年2月には船内で火災、1997年6月にはプログレスのドッキングテスト中に衝突事故などがありました。しかし、死傷者はなく、致命的な故障もなかったので運用が続けられました。2000年2月には民営化され、宇宙飛行士も訪れ整備がされました。しかし、資金の調達がうまく行かず運営できない状態となりまし。
 ミールは、約15年以上にわたって科学実験や人体への無重力の影響の調査、宇宙観測などさまざな実績をあげてきました。今までに人類が宇宙で構築した最大の建築物です。最大延長33m、質量140tもありました。ミールは日本とも関係が深く、1990年12月には、秋山豊寛さんが日本で最初に宇宙に滞在しました。
 ヒトは、宇宙に定住できるのか。このような疑問に対する一つの回答がミールにありました。その現状での回答は、短期間であれば人は宇宙で滞在可能であること、現状では長期滞在は困難であることでした。しかし、何らかの工夫をすれば長期滞在も可能であることや、ある種の病気治療が可能であることを明らかにしました。宇宙は危険なところです。そんな危険なところへもヒトは進出しようとしています。これは地球生命が共通に持っている「新しい環境への進出」という性質なのです。

3_5 火星の火山

 地球の大地の多くは、マグマの活動によってつくられます。マグマの活動で一番私たちがよく知っているのは、火山活動です。記憶に新しいところでは、長崎県の雲仙普賢岳、北海道の有珠山、伊豆諸島の三宅島の火山活動があります。では、火山活動とは地球だけの特徴なのでしょうか。


 実は多くの惑星で火山活動があったと考えられています。しかし、現在活動している活火山があるのはそれほど多くはありません。一番有名なのは、木星の衛星のイオの火山活動です。1979年3月8日、惑星探査機ボイジャー1号が、イオの火山噴火の画像を送ってきたときは衝撃的でした。しかし、イオの火山は、木星との潮汐作用によってイオウが噴き出す火山でした。地球の岩石が溶けたマグマの火山と比べれば、イオの火山は変わったものでした。
 火星や金星では、多くの火山が見つかっています。ですから金星や火星では、かつては火山が活発に活動していたと考えられてます。それは、地球に似て、岩石の溶けたマグマによる火山です。
 火星には地球をしのぐ巨大な火山があります。オリンポス火山は、現在知られている中では、太陽系で最大の火山です。直径700km、高度25kmという、とてつもなく巨大な火山です。地球最大の火山は、ハワイ島で、直径200km、海底からの高度9kmと比べれば、その巨大さに驚きます。火星は地球より小さい惑星なので、惑星の内部の熱も少なく、もう冷めてしまった星だと考えられていました。つまり、もう新たな火山活動などないような、死んでしまった惑星だと考えられていました。
 2001年3月14日付けのCNNニュースで、アメリカのテキサス州ヒューストンで開かれた学会で、火星で2つの火山が現在も活動している可能性があるという報告がなされました。NASAの火星探査機マーズ・グローバルサーベイヤーの高精度の画像を調べたところ、南半球に2つの火山が見つかりました。ティルヘナ・パテラとハドリアカ・パテラの2つの火山は、35億年にわたって活動を続け、現在も活動をしている可能性があることが示されました。さらにこの火山周辺では、火山の熱で地表の氷が溶けて、火山の周りに運河を形成していることも明らかになりました。
 火星は死んだ惑星ではなく、現在もささやかながら活動を続けている可能性が出てきたのです。とすると、火山活動で、水が定期的に供給される環境が長く維持されれば、生命が発生し、進化している可能性があり、現在も生きているかもしれないのです。ぜひ、その真偽のほどを確かめてみたいものです。

2001年4月5日木曜日

4_7 桂林にて(中国への旅2)

 中国大陸には、日本人が、あるいは誰でもが、感動する景勝地が多数あります。日本の拍子抜けするような観光地に比べれば、圧倒的な迫力と説得力を持っています。中国広壮族自治区にある桂林は、そのような所です。山水画でよく見る、「あの」中国的な景色の一つです。だれもが写真を見れば、「ああ、あそこか」というほど有名な所です。


 2000年10月25日から11月1日にかけて、中国に行った折に、桂林を訪れました。予想にたがわぬ観光地でした。観光地特有のスレた人達が一杯いましたが、その景色には感動しました。異様な地形、日常感覚とは飛び離れた景観です。それが感動的なのです。その感動の元は、地形自体が箱庭的なのに、そのスケールが大規模であることだと、私は分析しています。
 箱庭は何となく、ほっとさせる安心感や、自由さとロマンなどがコンパクトに収まっています。それはそれでいいのですが、やがてその箱庭が巨大で、自分の体の小ささを感じると、畏怖の念が生じます。さらに、そこに息づく自然や生命、人々の生活を目にすると、そのスケールの大きさの中に親しみを生じてきます。
 この桂林の地形は、長い時間と大地や地球の営みがつくり上げたものです。桂林の峰峰を構成しているのは、石灰岩と呼ばれる岩石です。石灰岩は、炭酸カルシウム(CaCO3)からできている方解石と呼ばれる鉱物が主成分です。石灰岩は、生物の化石が見つかることがあります。サンゴ虫や層孔虫などの体やその破片からできています。サンゴ虫や層孔虫は、礁をつくる生き物です。古い時代では、層孔虫が礁をつくり、新しいはサンゴ虫が礁をつくっています。
 石灰岩は、生物がつくった海の中の巨大な島なのです。それが大地の営みによって陸地に上げられたのです。その後、長く雨や地下水などの侵食作用によって、大部分が溶かされたり削られたりして、今の地形となったのです。
 数億年に及ぶ長い時間の流れが、この桂林の地には刻まれています。そして、これからもこの地形は変化を続けいきます。やがてはなくなってしまかもしれませんが、それも地球の摂理かもしれません。

4_6 澄江へ(中国への旅1)

 2000年10月25日から11月1日まで、中国に行ってきました。目的は、古い時代の化石とその産地を見学することと、石灰岩の地形を見ることでした。


 古い時代の化石は、澄江(チェンジャン)という地域に産出します。澄江は、中国南部の雲南省の省都の昆明から車で2時間ほど南にあります。何の変哲もない、小さな田舎都市です。
 澄江が注目されているのは、カンブリア紀直前の時代(5億7000年前こと)の化石がたくさん出るからです。一般に生物の多様な化石が出現するのは、カンブリア紀以降の顕生代と呼ばれる時代です。しかし、その直前から、生物出現の兆しが、いくつかの地域で見つかっています。その地域の中で今一番、一番注目されているのが、この澄江なのです。
 万国地質学会のワークショップが1995年に中国で開かれた時、カンブリア紀とそれ以前プレカンブリア紀の境界の模式的な地域として、この澄江が選ばれたのです。その理由は、ここの地層には、プレカンブリア紀とカンブリア紀の時代境界部が連続的に堆積しているからです。他の地域にも、この時代境界の地層はあるのですが、断層や不整合などと呼ばれる不連続な境界であるために、時代境界で何が起こったかを調べるのには不適切な素材なのです。澄江では、境界部が連続的に残されているので、何が起こったかのかを研究するには最適なのです。
 ではプレカンブリア紀とカンブリア紀の境界は、どうなっているのでしょうか。いくつかのタイプの化石が多数出現してます。生物が這った跡(生痕(せいこん)化石と呼ばれます)は各地層にたくさん出るのですが、少なくとも3つの動物群化石のでるゾーンがあります。
 化石の出るところが境界候補になるのですが、4通りの可能性が主張されており、そのどこを境界にするのかが難しい問題となっています。国際的には、あるゾーンを境界とするという決定をしているのですが、私たちを案内してくれた中国の地質学者はもっと下の地層(もっと古い時代)を境界にしたいと考えています。
 今後も議論は続きそうですが、そのような議論ができるのも連続した地層という研究素材があるからです。

6_5 人類と知恵と

 長期持続できる文明社会への道は険しいかもしれません。しかし、多くの人類が知恵を出し合えば、人類の生き残りへの道筋か拓けるかも知れません。多くの場で、地球や自然について考えることが、大切ではないでしょうか。

 二酸化炭素の放出を削減したり、フロンを使わなくしたり、人類は地球環境を守るために、さまざまな努力をしています。その結果が現れるのは、少し先かもしれません。しかし、何もせず終焉を迎えるよりは、少しでも長生きをする道を選ぶべきです。
 今まで、地球上に存在した生物のすべて種には、寿命があることがわかっています。したがって、人類という種も、遅かれ早かれ滅びるはずです。その「滅び」が利潤追求のために早まることは大いにあることだと思います。
 例えば、二酸化炭素の放出削減は、本当に地球にあるい人類にとって必要な方策なのでしょうか。現在文明を守るためには必要な措置かもしれません。丸山茂徳氏は、科学雑誌「サイアス」で、「現在、地球は寒冷化に向かっている。だから、頑張って二酸化炭素を出さないと長い目で見れば地球の生物全体が、やがては人類が困る」というような内容を述べられてました。人類という種を考えると、文明は滅びても、種を守るためには、寒冷化への対策のほうが大切なのかもしれません。地球を相手にして、地球のタイムスケールで考えている丸山氏の発言には、同業者として共感できるところがあります。
 私たちは人類です。ですから人類の視点で、地球や生命を見ています。その人類であるという視点をはずすと、別の見方ができることを丸山氏は指摘したかったのだと思います。
 「地球環境を守る」ことや「絶滅生物を保護する」こと、どれも大切なことです。しかし、私たちは、清潔な生活環境を維持しようと日々努力しています。その清潔な環境とは、微生物(雑菌と呼ばれます)のいない環境を目指しているのです。そこには、当然ながら殺戮があります。ウイルス性の病気を予防したり、治療するために、ウイルスという生き物を殺戮しているわけです。極端な例ですが、人類中心では見方をすればそうなります。
 「地球環境を守る」ことや「絶滅生物を保護する」というお題目を唱えるときに、そこには人類のエゴイズムが入っていることを自覚するべきです。一つの視点で見ることの怖さを、ここに垣間見ることができます。いろいろな視点があることを理解していく必要があると思います。
 この「地球のささやき」の各所で、いろいろ社会批判めいたことを述べてきました。しかし、このようなことを考えること自体が、人類としての営みがなせる技なのだと思います。考えることができる人類は非常にすばらしいことだと思います。考えなければ、自分自身が滅亡に向かっていることすら気付かずに、絶滅への道を歩むかもしれません。自分自身の将来を予測し危険があれば回避できるということは、非常にすばらしいことです。人類以外の生物は、予測もしないし、自分自身の生き方を変えることもありません。やがて滅びるはずの人類の最後の足掻きかもしれません。しかし、一世代で終わるのが、数百、数千、数万世代経た後の滅びとは、大きな違いがあるかもしれません。現在の人類が滅びても、中生代の恐竜のように、多様な種を擁する新人類の時代が訪れるかもしれません。滅びれば、そのような夢もすら見れません。