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2025年9月11日木曜日

5_208 惑星形成 1:理論と観測

 惑星の形成は、シミュレーションが主で、観測が難しくて実体はよくわかっていませんでした。観測技術の進歩とともに、徐々に形成過程がわかってきました。形成過程を、詳細に観測した結果が報告されました。


 惑星系の形成過程については、コンピュータを用いたシミュレーション(理論)と、新しい恒星の周辺を観察(観測)することで進められています。理論だけでは、検証できません。観察だけでは法則性や原理がわかりません。両者がそろって確実性が高まってきます。理論と観測の両輪で、研究が進められています。
 惑星の形成過程のシミュレーションは、1960年代から京都大学の林忠四郎を中心としたグループが、世界をリードしていました。「林モデル」という惑星形成モデルがつくられてきました。林モデルによると、中心にある恒星の形成のスタートの直後(100から1000万年経過)に、恒星の周辺に円盤状に集まった物質内で惑星が形成されていくと考えられてきました。惑星形成の場所は、「原始惑星系円盤」と呼ばれています。
 シミュレーションがはじまった時は、観測技術はまだ進歩していなかったのですが、進歩とともに、実際に若い恒星の周りに原始惑星が形成されている円盤が存在することが確かめられました。
 観測は難しかったのは、ガスやチリが多くある恒星周辺は通常(可視光)の観測では見えないからです。ガスやチリの内部の観測は、赤外線、あるいは可視光・近赤外の散乱光の観測、ガスやチリの吸収線や放射線のスペクトル解析、そしてミリ波・サブミリ波の観測などで、実施する必要がありました。
 赤外線の観測では、チリの分布や円盤の温度構造がわかります。可視光・近赤外の散乱光の観測では、円盤の傾きや厚み、形状を調べることができます。
ガスやチリの吸収線や放射線のスペクトル解析では、円盤内の分子を見分けることができます。そしてミリ波・サブミリ波の観測では、いくつかの分子の区分や分布、ガス分子(COなど)の運動、そしてチリのリングや隙間の存在を見つけることができます。
 そのような各種の観測技術の発達と、それぞれの特性を組み合わせることによって、シミュレーションの結果が確認されてきました。いずれも難しい観測になるので、詳細な観測はまだ不足していました。
 また、ひとつの惑星系を調べることは、ある時期のある状態の惑星系を調べていることなります。ですから、惑星の形成「過程」をみていることにはなりません。形成「過程」を調べるには、形成中のさまざまな段階にある、惑星系を同じ精度で調べていく必要があります。
 今回、そんな研究が大規模になされました。まだ成果の解析や報告の途上にある研究プロジェクトですが、その概要を紹介していきましょう。

・地球の調べ方・
この「地球の調べ方」のセッションは
前回は、タンデムモデルのシリーズでした。
その配信は2023年9月28日が
最後になっています。
この時期は、四国にサバティカルで滞在していて
北海道に戻って来る直前に
配信したエッセイとなっていました。
かなり間があいてしまいました。
久々のこのセッションのシリーズになります。

・休暇・
今日から、休暇をとることにしています。
1週間、北海道の田舎で
のんびりと過ごすことにしました。
コロナ禍前はこのようなことをしていたのですが、
その後、サバティカルから退職時期と
バタバタしている時期があったので、
今回、久しぶりに北海道の田舎で
夫婦でのんびりすることにしました。
滞在記は、機会があれば、紹介していきましょう。

2023年9月28日木曜日

5_207 タンデムモデル 7:新しい提案

 タンデムモデルは、後発の仮説なので、これまでの標準モデルの課題を克服しているます。もっと重要なことは、これまで説明されることのなかった事実を取り込んで、より詳細なモデルを提案している点です。


 タンデムモデルは、太陽系惑星や系外惑星の形成モデルとして、これまでの課題を克服した。しかし、他にも、いろいろとメリットもありました。それを紹介していきましょう。
 タンデムモデルでは、岩石惑星と氷ガス惑星の違いを、すっきりと説明できました。このような違いは、他のモデルでも達成できていました。タンデムモデルでは、より精度の高い提案がなされています。
 小惑星帯では、太陽からの距離と固体物質の違いがありました。水の量の変化と酸化還元の変化です。小惑星帯の分布で、この傾向がわかっていました。
 ただし、この傾向を地球まで広げていく必要があります。拡大した視点で見ていくと、H2Oは、太陽に近づくと、氷から水、水蒸気となります。惑星の材料で考えるには、固体物質に取り込まれている必要があります。氷ならそのまま惑星の材料になります。水なら含水鉱物として含まれています。それより太陽に近づくと含水鉱物が分解されて、無水鉱物になっていきます。その位置は、地球より外側になります。したがって地球の位置は、無水鉱物だけからできている条件になります。
 地球は、無水の還元的な材料からできたと推定されます。太陽に近くなと、珪酸塩鉱物(酸化物)も還元されていくと推定されています。そのような隕石も稀ですがあります。エンスタタイトコンドライトと呼ばれる隕石です。エンスタタイトコンドライトの特徴は、還元的な条件であることもわかっています。
 地球は、大気も海洋もなく(裸でドライな地球と呼ばれています)、還元的な条件という、今とは全く異なった状態、姿からスタートしたことになります。原始地球の表面は、マグマオーシャンが固化した斜長岩の地殻からできています。そこにカンラン岩質の溶岩(コマチアイト溶岩)や鉄が多い玄武岩溶岩(KREEP 玄武岩)などもありました。現在の月を構成している岩石に似ています。
 このような地球からは、海や大気、さらには生命の起源が説明できなくなります。これは大きな問題となります。ところが、別の条件があることもわかっています。
 月のクレータや岩石の年代研究から、43.7億年前から42億年前までの2億年ほどの間に、隕石が大量に落下したことがわかっています。このような現象を、後期隕石重爆撃と呼んでいます。月で起こった後期隕石重爆撃は、同じ公転軌道にある地球にも、起こったはずです。
 後期重爆撃が起こった原因は、ガス惑星で軌道不安定が起こることにより、周辺の小惑星(隕石)の軌道が乱されます。その結果、この時期に後期重爆撃が起こったと考えられています。
 氷ガス惑星の形成場付近の小惑星なので、氷や揮発性成分(炭素質コンドライト)を含んだものになります。それらの小惑星が、内惑星の領域にも入り込み、後期重爆撃を起こします。
 その結果、地球には大気や海洋の成分が加わるとともに、還元的鉱物と水との激しい反応が起こります。その時、初期生命に必要な反応が進んだと考えられています。
 海や大気、生命の起源も、材料から重要な束縛条件を示していくことができるようになってきました。
 今では、後期重爆撃で揮発成分がもたらされせるモデルが主流になってきました。主のモデルには、レイトベニア説(Late Veneer)説やABEL(Advent of bio-elements 生命構成元素の降臨)爆撃説などがあります。これは、また別の機会にしましょう。

・現在進行中・
このエッセイが、サバティカル期間に配信する
最後のものとなります。
書いている論文で注目していたモデルとして
このタンデムモデルがありました。
タンデムモデルを、サバティカル期間に
最後まで紹介することができてよかったです。
一般に、研究は、データが積み上がってくると
これまでにない新しい知見も見つかってきます。
それをうまく取り入れたモデルがあれば
より有効性の大きなものになってきます。
今回のタンデムモデルも、そのようなものになります。
ただし、新しく提案されたモデルでは
修正、検証が必要な部分も多々あるはずです。
それが、現在進行中で進められています。

・感謝・
今回のサバティカルでは、
いろいろな目標を立てていました。
目標や計画は、
どうしても盛りだくさんなになっていきます。
想定外の事態も起こり、
予定通りに進まないこともありました。
目標をすべては
達成することはできませんでした。
予定通りにいかないことは、
もちろん想定内でしたが。
半年という期間ですが、
1年分に匹敵するほど、
実りの多いものになりました。
受け入れてくださった関係者や
地域の方々のおかげだと思います。
半年間ありがとうございました。

2023年9月21日木曜日

5_206 タンデムモデル 6:境界領域

 このシリーズの5回目にして、やっとタンデムモデルの紹介になります。比較的新しく提唱されたモデルですので、まだまだシミュレーションで検討の余地がありそうです。条件を変更すると、いろいろな変化が現れます。


 いよいよタンデムモデルを紹介していきましょう。タンデムとは、席が2つ並んでいるものをいいます。自転車や車などでツーシートの場合にタンデムと呼ばれています。太陽系形成で、惑星の形成場が二箇所できるというモデルになることから、タンデムと名付けられました。
 タンデムモデルは、標準モデルで課題となっていた、原始星の磁気回転の不安定性の影響を考慮しています。それらを重視してシミュレーションをしていくと、円盤内に乱流ができるところと静穏になるところができました。乱流が二箇所でき、乱流域と静穏域の境界があります。この境界が重要で、そこに形成時に物質が移動して集中してくる特別な場になることがわかりました。
 外側(5~30AU)の境界では、空隙の多い多孔質の氷粒子が多く集まる場ができます。内側(0.3~1AU)の境界では、岩石粒子だけが集まり岩石惑星ができていきます。惑星の形成の場は、二箇所での2種類の惑星(岩石惑星と氷惑星)が形成されることになります。
 そこでは、暴走的な成長が起こり、100万年以内に地球サイズになります。できた惑星は、ある程度の大きさに成長すると、内側に移動します。そして、次の惑星ができていきます。
 太陽系に見られる岩石惑星と氷とガス惑星の2種類の形成過程の違いを、このモデルでは説明できました。
 タンデムモデルで、標準モデルの課題を解決しようと、10年ほどの前に提唱された比較的新しいモデルです。シミュレーションにおいて磁気の強度の程度を変えていくと、系外惑星で見られた多様やタイプの惑星が、このモデルでかなり説明できそうなことがわかってきました。
 今後も、改善されていくでしょうが、今のところ有力なモデルとなっていきそうです。

・予約送信・
このエッセイが発行日は
サバティカルで最後の帰省の最中です。
そのためエッセイは予約送信しています。
家族が一同に会することが
今回が最後になりそうです。
長男が今年で就職します。
遠くに住むことになります。
次男の就職はもう一年先ですが、
東京での就職先を探しています。
そうなると、あとは来年の正月くらいが
家族全員が集まれる機会となりそうです。
さてさてどんな宴席になるか楽しみです。

・新しいアイディア・
現在書いている論文で必要なため、
タンデムモデルを調べていきました。
ここ10年ほどに、地球初期、生命起源などの研究に
大きな進展がありました。
当然新しいモデルでは、
これからも課題や修正も必要でしょう。
新しいモデルは、いくつか重要な事実がわかり
それらを説明する必要に迫られています。
そこには新しいアイディアが盛り込まれています。
今回のタンデムモデルでも
重要な事実をいくつか説明して、
そこから新しいアイディアが生まれています。
次回で少し紹介できま

2023年9月14日木曜日

5_205 タンデムモデル 5:Grand Tack モデル

 惑星形成の標準モデルは、いくつか課題もありました。その課題を解決するために、新しいモデルが提唱されてきました。そのうちのひとつとして、グランドタックモデルが、有力なものとして知られています。


 惑星形成の標準モデルは、固体の粒子が円盤の中心面に落下しながら、小石サイズへと成長していきます。中心面の円盤では、小石が重力不安定性を起こして微惑星へと成長していきます。お互いに衝突することで、成長してていき、惑星になっていきます。
 しかし、課題もいくつかありました。例えば、ガス円盤内に乱流はないと磁気回転不安定が生じました。固体成分の密度が足らずに、重力的に不安定になります。固体は中心円盤内では移動がないと考えられていたのですが、固体粒子は移動することがわかってきました。微惑星の衝突による成長の速度が遅すぎました。
 これらの課題を解決するモデルはいくつかあったのですが、グランドタック(grand tack)モデルが有力でした。それを紹介していきましょう。
 このモデルは、太陽から離れH2Oが氷となる位置(3.5AU、AUは地球と太陽の距離を1とする天文単位)でできた木星が、内側(1.5AU付近)まで移動してきます。土星も内側に移動していきます。移動した先で、木星と土星が共鳴することにより、木星は外に向きを変えて移動し現在の位置(5.2AU)で停止します。土星も外に移動してきいます。
 木星が、内側から外側へと移動方向が反転することになります。舟のセーリングで風上に方向転換をすることを「タッキング」と呼びます。このモデルでは木星が移動方向を転換することから、この名称になりました。
 火星のサイズが小さいことと組成が異なっていることや、小惑星帯の軌道が歪(離心率と傾斜角が大きい)ことと全体の質量の小さいことなども、グランドタックモデルで、説明できました。
 ただし、グランドタックモデルをうまく機能させるためには、いくつかの条件が必要になります。
 木星と土星が移動しているときは、物質の合体や追加は無視しています。また、外に移動していくためには、軌道にはガスが存在する必要あります。しかし、ガスがあるので、質量の追加が起こらないというのは、矛盾しています。
 共鳴の状態によっては、タックが起こらないこともありました。時には、太陽に落下していくことになります。
 木星が、1AUまでの粒子を集めてしまうこともあり、地球などの岩石惑星の形成が進まなくなります。1から10AU間には、現在、種類の異なった物質が並んでいます。このような物質の勾配が、木星と土星の移動で消されてしまいます。
 このような問題が存在しているのですが、いろいろとシミュレーションの条件を調整することによって、解決が目指されてします。しかし、多様な系外惑星をグラントタックモデルでは、説明できないものもあるようです。

・野外調査終了・
サバティカルの期間の野外調査が
先週で終了しました。
台風の影響で一時激しい雨に見舞われましたが、
一応、予定通りのコースで、調査を進めました。
もっと見たい地域もありました。
天候不順で十分に調査できない地域もありました。
しかし、野外調査は自然相手なので、
予定通りにすべてが進むことはありません。
そんな名残を残した調査が、次回に繋がります。
まあ、サバティカルは今月で終わります。
四国の野外調査は、
最後のチャンスになるはずだったのですが、
仕方がありません。

・帰省・
来週、京都に帰省します。
今回が2度目となります
本来ならもっと2度ほど帰省する予定でしたが、
親族が対応してくれたので、半分の帰省ですみました。
今回の帰省では、子どもたちの在京のスケジュールが調整でき
なんと一緒に食事をできることになりました。
今回が、家族が一同に会する
最後の機会になるかもしれません。
いつもと同じような宴席となりそうですが。

2023年8月24日木曜日

5_203 タンデムモデル 3:多体問題

 太陽系形成を方程式から考えていく方法は、答えが出ない問題でした。しかし、計算方法を工夫して、コンピュータを駆使して、なんとかシミュレーションをすることができます。そして太陽系の形成過程がわかってきました。


 古典的な太陽系形成の標準モデルは「京都モデル」と呼ばれ、今日では「微惑星集積説」へと発展してきました。当初は、物理学的な方程式から、どのような状態、変化していくを考えていました。しかし、コンピュータの発達によって、方程式をシミュレーションしていく方法が導入されてきました。
 なぜ、コンピュータの導入が必要になったかというと、この方程式には解がないことがわかっているからです。宇宙空間にある粒子の挙動に関する方程式で、そこには重力の方程式が用いられてます。
 この問題は、質点が2個の場合は、ニュートンの方程式で解くことができます。しかし、質点の数が3個以上になると、多体問題と呼ばれ、一般解がないことがわかっています。これは、ポアンカレによって証明されました。
 物理的には厳密に解けない問題であることが明らかになっています。多体問題を解くには、現象を単純化して近似として解いたり、特別な条件や制約のもとで解いたりしていくしかありません。それぞれの方法を改善して、精度をいかに上げていくかということになります。
 ところが、コンピュータの発達によって、数値計算によるシミュレーションができるようになってきました。短い時間に区分した二体問題にして、それを解いた結果を反映した質点と別の質点で計算していきます。これをつぎつぎ繰り返しながら、質点全体を計算して、別の時間区分へと進んでいきます。
 精度を上げるためには、質点の数を増やしたり、時間の刻みを小さくしていくことになっていきます。精度を上げていこうとすると、計算ステップが爆発的に増えていきます。コンピュータの性能がシミュレーションの精度を決めていくことになります。コンピュータが高速になれば、質点を増やしたり、規模を拡大したり、2次元を3次元(平面を球体)にしたり、時間を長くしたりして、精度を上げることができます。
 太陽系形成の微惑星集積説ですが、シミュレーションを用いた方法は重要なアプローチになりますが、すべての過程をシミュレーションすることはまだ不可能です。いろいろな条件や状態や場面を設定してシミュレーションが進められています。その条件や状態を考えることで、まだまだ新しい仮説がでてくる余地があります。
 そんな条件の中から、タンデムモデルが出てきました。

・野外調査・
このエッセイは、現在野外調査中なので、
予約配信しています。
今回の調査は、高知と愛媛の県境付近と
愛媛の県立科学博物館と鉱山跡の見学も考えていきます。
移動距離は比較的短いのですが、
山道が多いので、疲れそうです。
このエッセイが跛行される日に
戻ってきます。
1月半ぶりの野外調査となります。

・お盆が終わる・
お盆も過ぎたので、
交通量や人でも少し減ったようです。
天気のほうが今ひとつです。
台風7号が通過して以降、
晴れても、毎日にように夕立があり
湿度も高い状態です。
まるで梅雨が戻ってきたようです。
しかし、お盆も過ぎたので、
暑さもピークが過ぎたようです。
夜も涼しくなり、寝やすくなりました。

2023年8月17日木曜日

5_202 タンデムモデル 2:シミュレーション

 太陽系形成のモデルは、古くはアイディアが先行していました。その後は、物理学の法則で考えられてきました。近年では、より精密な各種の方程式を導入して、コンピュータを駆使したシミュレーションになってきました。


 太陽系形成の二つ目の説である潮汐説をみていきましょう。
 太陽の近くを他の天体が通り、その時の潮汐力で太陽の物質が飛びだし、それが惑星になったという説で、古い時代からあったありましたが、現実的でないので消えていました。ところが、1901年にチェンバレンや1905年にモールトンが再度唱えました。太陽の近くを別の恒星が通り過ぎたときに、2つの星で潮汐作用が働き、恒星のガスが飛び出し、放出されたガスが冷却して惑星になったという「近接遭遇説」です。
 1919年にはジーンズは、近接遭遇説で、ガスがそのまま惑星となったと考えました。1935年にはラッセルや1936年のリットルトンは、太陽がもともとは連星で、別の星である伴星との接近で、潮汐作用が働いてガスが放出されたと考えました。
 潮汐説が唱えられていたのは、19世紀後半に、星雲説の問題点、例えば角運動量など観測と合わない事実がわかってきたためです。遭遇説では、そのような観測事実に合わない星雲説の課題を説明することができました。しかし、遭遇説にも問題があり、そもそも別の恒星との遭遇が非常に稀れな現象であること、それに飛び出したガスも散逸するので固まる可能性がないことがわかってきました。
 いずれの説も問題がありましたが、20世紀後半になると、星雲説をより緻密にした「微惑星集積説」に修正されてきました。この説は、1969年にサフロノフ、1972年に林忠四郎らが唱えたものです。
 恒星の周りにガスとダスト(小さな固体粒子)からできた円盤(原始惑星系円盤)が形成されます。ダストが集まり成長していくと微惑星ができて、微惑星が集積して原始惑星ができるというものです。大きく成長した固体惑星には、ガスも集まりガス惑星ができます。
 このような「微惑星集積説」は、それぞれの場や過程に働く原理をもとに、惑星の成長を方程式を考えて計算していきました。また、もともとの太陽組成、ダストの面積当たりの密度分布、雪線(スノーライン、H2Oが固体になる条件)、天体のサイズや質量などの初期条件を定め、厳密に検討を進めていきました。これらの研究は、林らの京大の研究グループが精力的に研究したため、「京都モデル」と呼ばれるようになりました。
 物理学的な方程式を導入して、現在の状態がどのようにできてきたかのを説明していく方法は、シミュレーションの一種と考えられます。現在では高速のコンピュータを用いて、緻密に進められています。

・停電・
先週は、非常にゆっくりとした台風6号の影響で
時々激しい雨や風になりました。
しかし、台風が直撃したのではなかったので
涼しくていいくらいに思ってました。
ところが、我が地区だけが停電しました。
調べたら、1200戸ほどが停電したようです。
朝の9時45分頃に起こった停電でしたが
11時40分には復旧しました。
多分、電力会社の人が、現地入して
原因究明をしてすぐに修復したのでしょう。
2時間弱ほどで復旧したので助かりました。
その間、読まなければならない
文献を読んでいたので、
停電の時間は無駄にはなりませんでした。

・ファイルの復旧・
突然の停電だったので、アセリました。
作業中にパソコンが、突然切れました。
まめにWordのファイルは保存していたのですが
イラストレータのファイルは何度か修正していたのですが
最終版は保存していませんでした。
修正中の途中のファイルは
保存した記憶があります。
それより、パソコンが壊れていなか心配でした。
電気が復旧後、また停電すると困るので
15分ほど待ってからパソコンを立ち上げたら、
また、数分で停電しました。
その後は、パソコンを立ち上げても作業はせず
昼食を食べてから、作業をはじめました。
イラストレータのファイルも途中段階のものが
「復元」用ファイルとして
アプリが保存していくれました。
優秀です。それで被害なくてすみました。

2023年8月10日木曜日

5_201 タンデムモデル 1:空想から科学へ

 太陽系形成について、考えていきます。今ではコンピュータを用いたシミュレーションが研究の主流となっています。そこに至るには、太陽系形成の考え方には、先駆者がいました。


 私たちの太陽系がどのように形成されたのかについて、古くから考えられてきました。大きく星雲説と潮汐説の2つの流れありました。
 星雲説は、デカルトからはじまります。1677年、デカルトは星雲説から渦流によって惑星が形成されたという説です。カント(1755)に高温の回転している星雲が冷却しながら収縮して惑星ができる説です。ラプラス(1796)はカントの星雲説を力学的に修正した説、などがあります。
 かつて、宇宙は現在のように真空ではなく、架空の「エーテル」で埋め尽くされているとされていました。エーテルが、天体の運動を駆動していると考えられていました。
 デカルトも、エーテルを利用しました。エーテルが渦を巻いていて、太陽系星雲の物質が渦の中心に集まっていき、それらが太陽や惑星となり、円運動をするようになったと考えました。
 カントの星雲説は、ゆるやかに回転していた高温の星雲が、重力により収縮をしていき、いくつかの軌道上に環ができ、やがて環の中で球状の天体ができるとした。
 デカルトやカントの星雲説は概念的、定性的でしたが、ラプラスの説は、力学的で精密でした。力学では3体以上の多体問題は、一般的な解法はないことがわかっているのですが、ラプラスは、摂動法と呼ばれる近似計算で太陽系の惑星の運動を計算し、天体の運動は安定していることを示しました。このような物理学的手法を、太陽系形成にも導入して説明していきました。
 最初、高温の太陽系星雲が回転していました。冷却にともなってガスが収縮していくと、角速度が増えていき、赤道付近に物質が集まり、遠心力で周囲のガスから分離していきます。温度低下にともなって、その収縮と分離が進行していきます。中心部に原始太陽が生まれ、赤道面にガスからなる環ができていきます。収縮が進むと、やがて原始太陽は太陽に、環の中では惑星が成長していきます。土星の環はその名残だとしました。
 このような星雲説の他に、潮汐説もありました。次回としましょう。

・帰省・
今年のお盆は、本来なら実家の京都に
帰りたかったのですが、
お盆の京都への移動は、
混在もさることながら、
泊まるところが異常に高くなっているので
帰省を諦めました。
長男の来年度から就職するので
家族が集まれるのは、
この機会が最後になるかと思い
サバティカルが終わる直前の
9月に京都に帰省することにしました。
ところが、ちょうどその日、次男は就活で
不在になるかもとのことです。
なかなか家族全員集まるのが
難しくなってきました。

・暑い夏・
8月になって、北海道でも真夏日など
全国的な酷暑のニュースを毎日にように聞きます。
家内は、自宅でできるだけエアコンを
使わないようにしているようです。
あまり無理しないでつけるようにいっているのですが、
昼食のときはつけているとのことです。
夕方になると、かなりへばっています。
私が自宅に帰ると、
居間と台所のエアコンをつけます。
台所は家内しか使わないのですが、
つけています。
梅雨が終わって蒸し暑さがましになったので
扇風機が有効になります。
寝ているときは、扇風機が不可欠です。
しかし、エアコンも必要です。

2022年8月4日木曜日

5_199 小惑星の有機物 7:隕石の核酸

 次の話題は、「隕石」からの有機物の発見となります。素材は、隕石なので、由来もリュウグウとは違っています。見つかった成分は違うものですが、関連がありそうです。


 次の話題は、はやぶさ2が持って帰ったリュウグウの試料とは異なった材料を用いています。中村さんたちの報告(2022年6月10日)より少し前に発表された論文でした。2022年4月のNature Communications誌で公表されたもので、
 Identifying the wide diversity of extraterrestrial purine and pyrimidine nucleobases in carbonaceous meteorites
 (炭素質隕石中の地球外のプリン、ピリミジンの核酸塩基の大きな多様性の発見)
というタイトルで、北大低温研究所の大場康弘さんと共同研究者によるものです。
 この研究では、炭素質隕石として、マーチソン隕石(Murchison)、タギッシュレイク隕石(Tagish Lake)、マレー隕石(Murray)の3つを用いて分析しています。
 これらの隕石すべてから、18種の核酸塩基が検出されました。このうち、隕石からはじめて見つかったものが、10種類も含まれています。核酸塩基以外の窒素化合物も含めて、20種類が検出されています。
 非常に微量の成分を検出し同定する技術となっています。速液体クロマトグラフィー/電子スプレーイオン化/超高分解能質量分析法というものです。隕石1g当たり72ngという微量の分析をしています。
 さて、核酸塩基とは、生物のDNAやRNAの材料となっているもので、ウラシル、シトシン、チミン、アデニン、グアニンのうち4種類が使われています。シトシンとグアニンがペアに、またDNAではアデニンとチミンが、RNAではアデニンとウラシルがペアになり、二重らせんの構造をつくります。いずれも遺伝や生物の基本的設計となる成分です。
 これら5種の核酸塩基も検出されたものの中に含まれていました。これまで、核酸塩基のうち3種までは発見されたことがあります。5種が同時に発見されたことはなく、はじめてのことでした。
 論文のタイトルにあった、プリンとピリジンはいずれも核酸の構成成分となっているとともに、誘導体として核酸をつくりだすのに、重要な役割も果たしています。プリンはアデニンとグアニンの、ピリジンはシトシン、ウラシル、チミンの重要な誘導体とともに構成物となっています。これらの化合物が見つかったということは、核酸の形成が、その場で起こっていたことを意味しています。
 その詳細は次回とします。

・定期試験週間・
8月になりました。
わが大学では、これまで順次、
教室にエアコンが設置されてきました。
今週は、試験週間になっていますが、
暑ければエアコンをつけることができます。
コロナ感染対策で教室内では
常時マスク着用と換気が義務付けれています。
マスクでも、暑い時期でも、
集中して試験に望めようになっています。

・蒸し暑い日々・
北海道は7月末から暑くなってきました。
今年は、湿度も高くて蒸し暑いので
過ごしにくい日々になっています。
ただ、朝夕には涼しくなってくるので
自宅はエアコンがないのですが
なんとか耐えられています。
ただ、寝る部屋は風が通りにくいので
窓を開けていても、寝苦しい夜もあるので
寝不足になる日もあります。

2022年7月28日木曜日

5_198 小惑星の有機物 6:形成場

 リュウグウの試料からは、有機物とそこに同位体異常がみつかりました。有機物は高温で分解しますので、同位体異常は保存されないはずです。リュウグウは、高温に曝されることになく、できたままの状態を保持したようです。


 これまで、隕石で同位体異常が発見されていたのは、高温に耐えられた鉱物からでした。リュウグウの粒子には、もっとも熱の影響を受けてない隕石(炭素質コンドライトのCIと呼ばれるタイプ)より、酸素とクロムで高い同位体組成をもっていました。これは、より熱の影響を受けていない環境であったことを意味します。
 隕石には、一部太陽系以前の成分(プレソーラー粒子と呼ばれています)が残っていましたが、高温に曝され均質化した素材からできていました。そのため、原始太陽系星雲は一度高温にさらされてから、隕石として凝縮してきました。その後、隕石ではさまざまな程度の温度に曝されていきます。ところが、リュウグウには一度も高温に曝されることがない成分がありました。それは、今回報告された、有機物の組成からわかります。
 その有機物に、水素、炭素および窒素、ネオンで同位体異常が見つかりました。ネオンの同位体異常は、宇宙線の照射に曝されてできる成分でした。太陽系外縁で宇宙線に曝されてでできた成分を含んでいました。つまり、太陽系外縁でリュウグウの有機物はできたことになります。その後も有機物は高温に曝されることなく、保存されてきたことになります。
 そこから、次のようなリュウグウ形成のシナリオが考えらえました。
 太陽系の材料物質は、初期の高温期には、内側では高温の変成作用、外側では水質変質(炭素質コンドライトが受けたもの)を受けました。太陽系の外縁部は、太陽風より宇宙線に強く曝される環境で、そこで有機物が形成されました。有機物は変質を受けることなく、形成されたままのものも残っていました。
 このような異質な成分を含む天体は、氷を主として珪酸塩と有機物を含む小さな天体(数10km)として「リュウグウ前駆天体」ができました。氷天体が破壊され、彗星核が形成され地球近傍を巡る軌道に入ったと考えれます。氷は昇華していき、リュウグウになったと考えられます。
 少々複雑なシナリオですが、太陽系の外縁では、高温に曝されていない初期のままの素材が残っているかもしれません。その一部が、リュウグウとなりました。有機物とその化学組成がその根拠になっています。隕石では見つかっていない成分を含んだタイプの小惑星が、太陽系の外縁に多数ある可能性も示しています。

・前期終了間近・
今週で講義がすべて終わりました。
祝日などの関係で、15回の講義が
同じ回数をこなせない曜日ができます。
最後の週では、水曜日の講義が2回行われます。
担当している講義が水曜日には3つあるので
それが金曜日に振り替えられます。
今週は少々大変ですが、
その後、定期試験の期間になります。
それでやっと前期が終わります。

・論文投稿・
前期の講義の終わる前に、
論文の締め切りが今週末にあります。
このマガジンが発行されるときには、
投稿しているはずです。
査読を受けるので、その後に修正も生じるのですが、
とりあえずは一段落です。
途中で止まっている大きなプロジェクトを
進めなければなりません。

2022年7月21日木曜日

5_197 小惑星の有機物 5:同位体異常

 太陽系の材料は、初期に元素レベルで均質化され「太陽系ブレンド」になりました。太陽系の材料にあった多様性が、消えずに残っていることがわかりました。隕石の中に見つかる「同位体異常」と呼ばれているものです。

 中村さんたちの論文は、
On the origin and evolution of the asteroid Ryugu: A comprehensive geochemical perspective
(小惑星リュウグウの起源と進化:包括的な地球化学的見通し)
というタイトルで56ページにおよぶ大著です。副題の「包括的地球化学的見通し」に、大局的な地球化学的視点で見ていこうという意気込みを感じます。
 前回、均質化が太陽系成分の同位体組成にまで及んでいると紹介したのですが、そこに重要な意味があります。同位体とは、同一元素の中で中性子の数が異なるもので、質量数の違いとなります。放射性の同位体がなければ、同じ元素内の同位体の比率は決まっています。まったく起源の違う物質では、異なった同位体組成をもつことになります。
 前回紹介したように、さまざまな起源の元素、さまざまな由来の化合物から太陽系はできたと考えられます。しかし、現在の地球や月、火星、隕石などすべての物質の同位体組成は、均質になっています。太陽系の材料に混じっていた化合物も、元素、同位体にまで均質化されたことを意味します。
 しかし、例外が見つかりました。同位体組成から、稀に均質化を免れた物質が見つかっています。そのような太陽系外の固体物質は、ばらばらの同位体組成をもっているはずなので、当然太陽系の均質化した値とは異なっているます。そのような太陽系外の同位体組成が見つかったので、「同位体異常」と呼ばれました。
 同位体異常は、隕石の中にあるいくつかの粒子から見つかっていました。そのような粒子は太陽系形成前のものなので、プレソーラー粒子(presolar grian)と呼ばれています。何種類かの同位体組成が、何種類かの粒子から見つかっています。隕石で見つかっていた同位体異常を示す物質が突き止められていて、いずれも高温でも残るような鉱物でした。
 今回、リュウグウの有機物で、そのような同位体異常が見つかったという報告です。有機物は高温に弱いので、高温状態にはならない場所に由来するものです。これは重要な発見です。その詳細は、次回にしましょう。

・面談練習・
大学はいよいよ前期最後の講義になってきました。
8月上旬からは定期試験となります。
並行して学科の4年生の教員採用試験のために
面談練習をしています。
8月初旬まではバタバタしています。
昨年は、オリンピックの開催のため
教員採用試験のスケジュールも変更されていました。
それが以前の状態に戻りました。
1次試験の発表から2次試験がすぐなので
準備期間が短くなりました。
集中的にできるのでいいのかもしれません。

・論文の締め切り・
7月下旬に論文の締め切りが迫っています。
現在、まだ完成していません。
空き時間は論文にかかりきりになっています。
毎年、論文の締め切りではバタバタします。
一方、著書の出版には、締め切りがないで
自分のペースで進められます。
精神的には非常に楽なので健全です。

2022年7月7日木曜日

5_195 小惑星の有機物 3:リュウグウの岩石タイプ

 イトカワは、もっとも一般的なタイプの小惑星で、隕石とも対応しました。では、リュウグウはどうなっているのでしょうか。今回から、リュウグウの特徴を紹介していきましょう。


 これまでのエッセイでは、イトカワの岩石の特徴を見てきました。イトカワは、小惑星の反射スペクトルでは最も多いS型タイプで、隕石の中で最も多い普通コンドライトとは異なった特徴もありました。試料で確かめられた結果、イトカワは普通コンドライトと一致しました。惑星表面での宇宙風化によってスペクトルが変化していくことも、明らかにされました。これまで謎であったスペクトル型と隕石の違いが、サンプルリターンで解消されました。
 さて、リュウグウは、望遠鏡での観測ではC型スペクトルをもち、炭素の多い天体と推定されていました。炭素の多い隕石は炭素質コンドライトで、リュウグウはそれに相当すると推定されていました。ただし、炭素質コンドライトは、落下比率が5%程度しかなく、稀なタイプとなります。それが今回の試料分析から炭素質コンドライトであることが確認されました。
 炭素質コンドライトは、水も炭素も多く含むのが特徴となっています。普通コンドライトは高温状態を経験していることが多いのですが、炭素質コンドライトは高温の状態を経験することなく、地球に落下したことになります。炭素質コンドライトをもたらした天体(母天体と呼びます)は、内部が高温になったり、溶融したりすることのない状態で、太陽系初期からある小さな天体であったことになります。
 また、リュウグウの試料は、炭素質コンドライトの中でも水分に富むCIコンドライトであることがわかりました。CIコンドライトは、最大では重量比で20%まで含み、炭素も3wt%も含んでいますが、高温包有物(CaとAlに富む包有物でCAIと略されています)を含みません。ところが、CIコンドライトと比べて、密度が小さいこと、反射率が低いことなど異なる点もあることもわかってきました。
 水による変質を受けているかもしれませんが、太陽系初期の固体物質の特徴を、そのまま残している隕石の可能性があります。
 では、リュウグウの試料から、どのような新しいことがわかったのでしょうか。それは次回としましょう。

・野外調査終了・
前期の調査が先週分ですべて終わりました。
今回は雨が少し降りましたが、
幸いなことに海岸沿いでは
晴れ間が多くて助かりました。
予定地域はほぼ調査することができました。
内陸はフェーン現象で高温になっていたのですが、
海岸沿いは涼しく、調査も順調でした。
しかし、自宅にもどったら暑くでぐったりしました。

・夏・
いよいよ後期の授業も2、3回となりました。
暑くなってきたので、学生も教員も大変です。
定期試験が最も暑い時期にあります。
しかし、北海道にある我が大学の教室にも
エアコンが設置されました。
酷暑の中での試験がなくなりました。
幸いなことですね。
しかし、研究室にはエアコンはないので暑いです。

2022年6月30日木曜日

5_194 小惑星の有機物 2:イトカワの岩石

 小惑星のスペクトル分析と隕石との対比から生まれた、不一致という問題がありました。イトカワのサンプルリターンから解決されました。小惑星からの実物試料の重要性が示されました。


 日本では、小惑星のイトカワとリュウグウからサンプルリターンをしています。両者の天体は、恒星岩石の種類が異なっていました。それは、事前にわかっていました。小天体の表層部分の成分は、スペクトル分析によって知ることができるからです。
 スペクトル分析とは、直接処理できない物質を、光を詳しく調べること知る方法です。未知の物質が発する光の波長(あるいは周波数)と波長ごとの強度(エネルギー)を測定します。その測定値と、既知の成分(元素)ごとの波長と強度を比べることで、未知の物質の成分を推定する方法です。
 天文学では、光を発する恒星では放射光によるスペクトル分析をしますが、光を発しない天体では、恒星からの光を反射した光(反射スペクトル)の分析をしていくことになります。いずれでも、スペクトル分析が可能です。入手できる隕石のスペクトル分析と比較することで、天体の構成物を推定することができます。
 多数の小惑星の反射スペクトル分析がされており、そこから天体の区分ができています。S型に区分されるタイプが最も数が多く、小惑星帯の内側(太陽に近い側)に多く分布していることもわかってきました。
 一方、隕石でもっとも多いタイプは、普通コンドライトと呼ばれるものです。隕石が小惑星帯から飛んでくるとすると、S型が普通コンドライトに一致すれるはずです。
 ところが、S型の小惑星と普通コンドライトのスペクトは一致しませんでした。普通コンドライトよりは、石鉄隕石に似ていることがわかってきました。これは、大きな謎でした。スペクトルが一致していませんので、もしかすると未知の隕石からなる小天体や、別の原因があるのかもしれませんでした。
 スペクトルの不一致に対して、いくつかの仮説が提示されていました。
 小惑星帯から地球に落下する隕石は偏った軌道でそこには普通コンドライトが多いという説、地球から観測できないほどの小さいサイズの天体は普通コンドライトが多いという説などがありました。いずれも、S型と普通コンドライトは異なっているという考えの説でした。
 一方、小惑星の表面は宇宙風化(太陽風や宇宙塵の衝突など)を受けるという説がありました。もともとは普通コンドライトだったものが、宇宙風化でスペクトル型が変化したという説です。
 イトカワはS型と呼ばれるスペクトル区分で、実際に入手された試料から、普通コンドライト隕石であることがわかりました。また、はやぶさが接近して観測しているので、宇宙風化の様子も確認されました。以上のことから、これまで謎であった、S型小惑星が普通コンドライトで、スペクトル型が異なっているのは宇宙風化のためであることがわかってきました。
 イトカワの試料が入手でき、分析することで、これまでの謎が解決できました。実物試料があれば、さらに詳しい分析ができます。
 普通コンドライトは、鉄の量で区分されているのですが、鉄の量からEコンドライト、Lコンドライト、そして鉄も金属も少ないタイプがLLコンドライトに区分されています。イトカワは、LLコンドライトで、さらにLL4からLL6に分類される試料が多いこともわかってきました。
 このように実際の試料をもとに調べていくことで、多くの情報をえることができます。リュウグウについては、次回としましょう。

・野外調査へ・
今週後半から、野外調査にでます。
前期では最後の調査になります。
大雪から道北を周っていきます。
何度も訪れているところですが、
調べる内容が違うので、
記載内容も少々異なってきます。
最近は道内各地を調査しているので、
主だった道路はたいてい走っています。
ですから、通いなれたところになります。
でも、自然や景観は毎回異なっているので、
気持ちが癒やされ、リフレッシュされます。

・面接練習・
前期の野外調査が7月以降できなくなるのは、
7月から8月までは校務が細切れにつまってくるためです。
6月下旬に教員採用の1次試験がありました。
次は面接が中心の2次試験になります。
7月以降、4年生の面接練習をしていきます。
毎日にように個別面接の練習をしていきます。
数日単位で大学をあけることができなくなります。
8月上旬の2次試験が終わるまでは
野外調査ができなくなります。
毎年のことなので、致し方がありません。

2022年6月23日木曜日

5_193 小惑星の有機物 1:サンプルリターン

 2022年6月6日、リュウグウから有機物が見つかったというニュースをご覧になられた方もいるかと思います。今回からシリーズで、小惑星における有機物についての話題をいくつか紹介します。


 月以外の天体の試料は、日本のはやぶさによるイトカワと、はやぶさ2によるリュウグウの、2つからしかえられていません。これらからえられるデータや知見は、非常に重要となります。
 リュウグウとは、はやぶさ2が訪れた小惑星です。リュウグウは、地球近傍小惑星と呼ばれるグループに分類されています。地球近傍小惑星とは、地球に接近する軌道をもったものです。交差すれば、衝突する可能性もあります。
 その小惑星でも、いくつかに区分され、アポロ群またはアポロ型小惑星と呼ばれるグループがあり、イトカワもリュウグウも、これに属します。アポロ群とは、火星より内側の軌道で、地球軌道の中に入ったり、外にでたりする楕円の軌道をもっています。
 このような小惑星には、地球周辺の軌道に近づくので、太陽からの軌道を大きく変化させる必要がありません。そのため、燃料をあまり使わずに行き来できるというメリットがあります。試料を地球に回収を目指すには、好都合の天体となります。
 はやぶさ2は、リュウグウに2回着陸をしてサンプルを採取しました。そして、試料の入ったカプセルを切り離し、地球に届けました。はやぶさ2の本体は、現在も別の小惑星に向けて、新たな探査ミッションに入っています。
 はやぶさも、小惑星イトカワから試料を採取しています。直径が0.01mm以下、最大でも直径が0.2~0.3mmの、微小な試料が多数採取されました。しかし、1μgにも満たないほどのとても小さいもので、いずれも小さいので質量は測定されていません。約1500個がイトカワの由来と確認され、研究者に配布され、分析されてきました。
 一方、リュウグウの試料は、5.4gが回収されています。イトカワと比べると、非常い多くの試料が持ち帰られたことになます。由来のはっきりとした天体の試料は、月とイトカワについで3番目となります。
 ニュースは、このリュウグウの試料を用いて分析した結果となります。詳細は次回としましょう。

・予約送信・
このエッセイは、予約送信しています。
前回の調査のときは、
ひとつ目のメールマガジンを送信に続いて
ふたつ目の送信をすべきところを忘れていました。
日曜日、気づいて慌てて送信することになりました。
このところ2週間に一度、調査にでているので、
スケジュールが混み合っているため、混乱しています。
今回は忘れないように送信しました。

・4回の野外調査を・
5月から7月初旬まで、
4回の野外調査を予定しています。
7月になると、4年生の採用試験の対応で
時間がなかなか取れなくなるためです。
例年より多くなっています。
それは道外の長期調査が
できるかどうかわからなかったので
道内調査を何度もすることにしました。
秋になったらまた何度かでかけたいのですが、
講義と校務が重なってくるとので
予定を立てるのが難しくなります。
いつでも日程が合えば出かけられるのはいいですね。
以前は、当たり前のことでしたが。

2022年1月27日木曜日

5_191 系外惑星の多様性 6:鉄の含有量

 系外の恒星の化学組成と惑星の質量と半径の観測値から、いくつかの仮説から、個々の惑星の鉄の含有量が推定されました。系外惑星の鉄の含有量に、相関関係とギャップが見えてきました。


 系外の恒星の組成と惑星の質量と半径の観測データがそろいました。そこから惑星の化学組成を推定していくことになります。
 惑星の質量と半径がわかっているので、平均密度が計算できます。太陽系の惑星を参考にして、平均密度から内部がどのような物質が分布しているかを、構造モデルを作成していきます。
 同じ分子雲コアから形成された恒星と惑星は、似た化学組成、もしくは化学組成になんらかの相関があると考えられます。私たちの太陽系では、太陽と惑星の化学組成で、ケイ素、鉄、マグネシウムなどが相関があることがわかっています。これらの元素は、岩石惑星の主成分となっています。
 これら2つの情報、惑星の構造モデルと恒星と惑星の鉄の化学組成の相関関係から、惑星の主成分となる鉄の含有量を見積もっていきます。
 次に、その結果を考察されています。恒星の鉄の含有量が近いもの同士で、系外惑星の特徴を比べていくと、恒星の鉄含有量と、系外惑星の鉄含有率には相関(傾き4程度)があることがわかりました。ただし、推定された鉄の含有量には、多様性があることがわかってきました。つまり、同じ鉄の含有量の恒星でも、惑星の鉄の含有量には幅があり、多様であることがわかりました。
 また、鉄の含有量の多い恒星には、少ない恒星との相関を越えてかなり鉄の含有量が多い惑星も存在していることがわかってきました。鉄の含有量は、連続することなく、鉄の多いものへとジャンプするようなギャップがありました。
 以上ことから、恒星の組成が似ていても、惑星の鉄の含有量には多様性があること、そして特別に鉄が多い惑星もあることがわかってきました。鉄の含有量で系外惑星をみると、非常に多様性があることがわかってきところになります。
 しかし、このような多様性は私たちの太陽系にありました。これについては、次回としましょう。

・豪雪・
わが町や札幌は豪雪が続いて積雪が多く、
除雪、排雪が間に合っていません。
道の脇には除雪された雪がうず高くなり、
道幅も半分以下になってきました。
車がすれ違えないところもあり、
深い雪の轍で埋もれるような道もありました。
幹線道路がかろうじて排雪はなされてきましたが、
公共のバスも2週間ほど運休の路線もあります。
これまで雪が少なかったので
突然の豪雪で対処しきれないようです。

・自粛・
家内は、豪雪なので買い物も最低限にしています。
また、できるだけ食料も備蓄するようにしています。
そこにオミクロン株です。
札幌だけでなく、わが町、わが大学でも
感染が広まっています。
コロナでの自粛も重なります。
またまた不自由な生活が続きそうです。

2022年1月20日木曜日

5_190 系外惑星の多様性 5:恒星と惑星の化学的相関

 恒星とその系外惑星の観測された情報から、惑星の特徴を考えていく方法が提案されました。いくつかのモデルをおいていますが。直接の観測データから考えている点が重要です。


 これまでのシリーズでは、白色矮星の化学組成から、その周囲にあった惑星の化学組成のうち、体積が多く化学組成を反映しやすいマントルを、間接的に探った結果を紹介しました。その結果より、太陽系の地球のマントルのような組成の岩石は珍しいものでした。
 このシリーズでは、もうひとつ直接調べた論文があり、それも一緒に紹介していくことにしていました。2021年10月15日のScience誌に多数の著者(20名)によって
A compositional link between rocky exoplanets and their host stars
(岩石系外惑星と恒星との間の化学的相関)
という報告がされていました。次に、これを紹介していきましょう。
 ハワイのすばる望遠鏡やチリ、カナリア諸島などの世界各地の望遠鏡を用いて観測されたデータを分析した結果です。太陽系外の恒星と惑星の化学組成に関係があるという報告でした。
 とはいっても、直接、系外惑星の化学組成を調べることは未だにできていません。では、どうして調べていくのでしょうか。
 恒星系は、分子雲コアという場で恒星も惑星も一緒に形成されていきます。回転する分子雲コアの中心に恒星が、その周囲の円盤状のところ(原始惑星系円盤と呼ばれています)に惑星ができていきます。惑星に使われなかった材料は恒星に落ちていき、ガスは吹きはらわれていくと考えられます。
 恒星も惑星も、もともとは同じ材料で形成されたはずです。形成環境や形成過程によって、それぞれ違いは生じたでしょうが、恒星と惑星の間には化学的に何らかの関係があったはずです。そのような化学的関係を前提にして考えていきます。
 今回研究には、系外惑星で岩石の表層をもっていると考えられ、観測が進んでいる21個の惑星が用いられました。観測でわかっているのは、恒星のスペクトル分析から推定された化学組成と、系外惑星で質量と半径です。これらの観測データのセットをもとに、いくつかの仮説(モデル)を立てて、系外惑星の化学的特徴を調べたという報告です。
 詳細は、次回以降としましょう。

・暴風雪・
大学入学共通テストが先週末にありました。
初日は、北海道では暴風雪でJRは運休だらけでした。
二日目も少し運休便がありましたが、
かなり復旧していました。
初日は、会場によっては、
繰り下げ開始や別室受験などの
対処がなされたところもありました。
一部支障がでましたが、北海道は
大雪に慣れていて、対処法もできているため、
なんとなったかと思います。
コロナ禍や津波警報、東大の事件の影響を
直接受けた受験生にとっては、
大きなストレスになったと思います。

・積雪量・
今年の北海道は地域によって違いがあるでしょうが
降雪量や総積雪量が例年になく多くなっています。
わが町の雪情報では、
過去5年平均の積雪量と比べて倍になっているとのことです。
道路も除雪による雪山が高くなり、
道幅も半分になっています。
そのため、車の通行だけでなく、歩行者も危険です。
雪の事故が多くなりそうです。
注意して外出しなければなりません。

2022年1月13日木曜日

5_189 系外惑星の多様性 4:形成と履歴の多様性

 系外惑星を構成していたマントルの岩石は、地球とは異なったものであることがわかってきました。そして、多数派であることも明らかになってきました。そこから見えてきたことは、地質学がより普遍性を求めていく必要性でした。


 前回、白色矮星の化学的特徴の違いから、系外惑星のマントルの岩石としては、石英+斜方輝石の組わせか、ペリクレース+カンラン石の組み合わせになると想定されました。著者らは、このような岩石を、石英輝石岩(quartz pyroxenites)とペリクレイスダナイト(periclase dunites)という名称を提唱しています。
 いずれも、すでに知られている鉱物です。そして、稀ではありますが、地球にも存在している岩石です。しかし、マントルなどを構成する主要な岩石ではありません。地球では、カンラン石+斜方輝石の組み合わせでした。似た鉱物からできていますが、系外惑星の方が、マグネシウムが多く、ケイ素が少いことを反映した鉱物組み合わせとなっています。
 このような組成の異なった惑星が形成されるのは、その恒星系の誕生時の履歴を反映している可能性があります。白色矮星に飲み込まれる惑星は、恒星の近くにあったものです。恒星近傍に、材料物質が集まる時、そこで起こる化学的分化に、太陽系とは、違っていたことを匂わせています。
 調べた23個の白色矮星の中で、地球に似たものが1つで、それ以外がすべて石英輝石岩かペリクレイスダナイトとなるようなマントルを持ったものになっていました。つまり、私の太陽系の惑星形成とは異なった形成プロセスが多数派、普遍的であり、地球が例外のようです。
 地球と異なったマントルの岩石があるということは、形成された惑星でも、地球とは異なった特徴や履歴を持つ可能性があります。
 著者の一人のPutirkaは、地球のマントルよりは多くの水を取り込めた可能性があり、その惑星の海洋の起源に影響を与えた可能性があると考えています。また、地球のマントルより低温で溶けやすくなるため、マグマが大量に形成され、厚い地殻をもっていた可能性もあると考えています。そうなると、プレートテクトニクスも異なった様相を呈することになりそうです。
 地質学、あるいは岩石学、火成論などは、地球をモデルにして、その仕組みを調べ、一般化してきました。その一般論を、他の惑星へと適用してきました。しかし、今回の系外惑星の多様性がわかってきたことで、どうもこれまでの地球でのモデルは、多様性の一つに過ぎないことになりそうです。

・大きな普遍性へ・
このエッセイの最後でも述べましたが、
今回の論文が示した可能性が、
もし多くの惑星系における典型だとすると、
地質学の立ち位置を考えなおさければなりません。
今回の石英輝石岩かペリクレイスダナイトは
地球も存在する岩石です。
根拠をもって、地球とは異なったマントルが推定されたのなら
その惑星は、どのような形成過程があるのか、
またできた惑星でどのような地殻形成やテクトニクスが働くのか、
などを考えていく必要がありそうです。
これは地質学において、より大きな普遍性を探っていく
チャンスかも知れませんね。

・排雪・
北海道は年末から年始にかけて、
繰り返された寒波の到来で
個々数年の冬よりは、積雪は多くなっています。
歩道と車道の間にうず高く積み上がった雪は
道路を横切る時、見通しが悪く危険です。
また、車道の幅も狭くなっており、
車の通行も細心の注意が必要です。
こんな時は、自治体による早目の排雪作業が必要です。
しかし、年ごとに雪の量は異なりますので、
経費のかかる作業で、
自治体としても悩ましい問題でしょうね。

2022年1月6日木曜日

5_188 系外惑星の多様性 3:特異なマントル

 白色矮星の化学的特徴から、もとの恒星の周りに存在していた、惑星の特徴を読み取ろう、という試みを紹介しています。その結果、どのような惑星であったのでしょうか。


 これまで、白色矮星は、大陸地殻(花崗岩)を構成する元素を取り込んでいるのはないかという考えがありました。しかし、今回の研究で、花崗岩の痕跡を示す成分はみつかりませんでした。考えれば、地球全体で大陸地殻が占める割合は、核とマントルと比べると微々たるものです。ですから、地殻の痕跡が見つからないのはあたりめに思えます。岩石型惑星は、質量の比率からみると、マントルと核の成分が主となっているはずです。
 核は鉄を主成分としているので、その核とマントルの比率さえ推定できれば、核の影響は補正可能です。したがって白色矮星の化学組成の特徴から惑星のマントルの特徴を読み取ることが可能になります。
 その結果、白色矮星では、マグネシウムが多く、ケイ素が少くなっていることがわかりました。これは取り込んだ惑星の特徴を反映していると考えられます。
 地球のマントルはカンラン岩からできています。カンラン岩は、カンラン石(olivine)と輝石(斜方輝石 orthopyroxene)が造岩鉱物となります。カンラン石はマグネシウムとケイ素から、輝石はマグネシウムとケイ素、カルシウムからできています。両鉱物ではマグネシウムは鉄と置き換わることにがあります。両者の鉱物の化学組成は、珪酸と鉄+マグネシウムの比率が異なっています。
 このような鉱物の特徴から、マグネシウムとカルシウム、ケイ素の比率を考えていくと、地球のマントル(カンラン岩)の特徴をもっているものは、23個のうち1つしか見つかりませんでした。多くは太陽系の惑星とは異なったマントルの特徴をもっていることがわかってきました。
 その特徴は、石英(quartz)と斜方輝石の組み合わせの岩石か、酸化マグネシウム(ペリクレース periclase)とカンラン石の組み合わせの岩石からなると考えられました。
 このような岩石をもった惑星は、太陽系には見つかっていません。非常に特異な惑星となります。では、そのようなカンラン岩からできたマントルともった惑星とは、どのようなものだったのでしょうか。次回としましょう。

・系外惑星への興味・
明けまして、おめでとうございます。
前回は、2021年最後のエッセイになるので、
コロナ禍の2年間を振り返るものにしました。
今回は、それまでシリーズで進めてきた
系外惑星の多様性の続きをお送りました。
天文学者も系外惑星への興味が高まっているようです。

・寒波・
北海道は、年末年始は、冬型の気圧配置が続き
寒波が繰り返し遅い、
大雪と交通の乱れが続きました。
次男も12月29日に帰省して1月3日に戻りました。
いずれも便に遅延がありましたが
ぎりぎり飛ぶことができてよかったです。
元旦は、千歳で多くの便で発着できず欠航となりました。
翌日以降の空席も埋まり全便満席となっていました。
寒波の厳しい年末年始となっています。

2021年12月23日木曜日

5_187 系外惑星の多様性 2:白色矮星

 恒星の終末には、特別な現象が起こります。終末を迎えた星を調べることで、周りの惑星の特徴を読み取ることができそうです。系外惑星の化学的特徴を知る方法が考案されました。

 系外惑星の化学組成について、直接調べる方法と間接的に調べる方法があり、それぞれ別の論文で報告されました。いずれも恒星の観測値から推測する方法です。系外惑星の化学組成を、観測値から直接推定するか、相関関係を用いて間接的に推定するかが異なっています。
 まず、直接に推定する方法からみていきましょう。ターゲットとする恒星は、白色矮星です。
 恒星が通常の核融合反応で輝いている状態(主系列星といいます)から、さらに進化していくと、終末に向かっていきます。恒星の終末には、恒星のサイズ(質量とも同じ)によって異なっていきます。大きな恒星は超新星爆発をして、中心部には中性子星かブラックホールができます。
 太陽のような小さい目の恒星は、ゆっくりと膨張しながら、温度が下がっていき、赤色巨星と呼ばれる星になっていきます。赤色巨星は膨張していき、その大きさは、地球など岩石惑星のある軌道よりも大きく膨らみます。膨らんだ中にある惑星は、赤色巨星に飲み込まれていきます。膨張がおさまると、外側にはガスの惑星状星雲が残り、中心部には白色矮星が残ります。
 白色矮星はもともと恒星であったので、水素とヘリウムを主成分としていますが、白色矮星から別の元素が観測で見つかることがあります。これはすでに知られていたことです。カルシウム、ケイ素、マグネシウム、鉄など岩石を構成していた成分も見つかっています。
 白色矮星のそれら元素組成は、主系列星で組成範囲から超えていました。このような元素は、赤色巨星が岩石惑星を飲み込んだ時に、白色矮星に取り込まれた成分が、検出されたのではないかと考えました。
 その仮説を検証するために、650光年以内にある白色矮星で、観測されていたデータ23個をもちいました。そこから恒星の周りの惑星の岩石や鉱物の組成を推定していきました。その結果、多様な岩石がありそうなことがわかってきました。
 その詳細は、次回としましょう。

・冷え込み・
北海道は先週末から
寒波の到来でかなりの積雪がありました。
積雪は苦でもはないのですが、
冷え込みがひどいです。
我が家は、1階と2階にそれぞれストーブがあるのですが、
いつもはひとつを夜も炊いているのですが
寒波のときは両方をつけていても
冷え込みが厳しく、室内が寒くかったです。
厳冬の冷え込みです。

・クリスマスでも・
大学は、25日(土)まで講義日になっています。
今週末はクリスマスですが、
関係なく講義はおこなわれています。
我が家は子どももいないので
何も特別なことはしません。
淡々と日常を過ごします。
我が家では、年末の暮と正月のほうが
いろいろ行事をおこないます。
次男の帰省する予定ですが、
雪による遅延や欠航もそうですが、
新型コロナのオミクロン株の感染も心配です。

2021年12月16日木曜日

5_186 系外惑星の多様性 1:2つのアプローチ

 系外惑星は遠くにあるため、それぞれの特徴を見分けるのが難しいです。小さいとさらに難しくなります。しかし、地球に似た岩石惑星の特徴を見分ける方法が2つも提案されました。


 多数の系外惑星の発見とその多様性が報告される中、詳細な観測に基づく研究も進められています。系外惑星とは、太陽系外にある恒星を回る惑星を、地球、あるいは地球の周回軌道にある望遠鏡などで調べるものです。
 遠くにある恒星の周りの惑星の探査なので、大きな惑星、目立った惑星から見つかります。大きな惑星で恒星の近くを回るものが、多く発見されています。だからといって地球のような岩石惑星が少ないわけではありません。見つかりにくいだけで、存在しています。
 地球に似た惑星は、小さいため、通常の観測では調べにくい天体になります。しかし、地球に似たサイズの惑星も、いくつも発見されてきました。さらに、水が存在できそうな領域(ハビタブルゾーンと呼ばれます)に存在する惑星も、いくつか見つかってきました。
 さて今回、紹介するのは、系外惑星の化学組成に関する研究です。2つの異なった方法論でのアプローチですが、似た時期に報告されました。合わせて紹介していきましょう。
 ひとつは、Nature Communicationというオープンアクセスの雑誌に、2021年11月2日に紹介されたもので、
Polluted white dwarfs reveal exotic mantle rock types on exoplanets in our solar neighborhood
(汚染された白色矮星から太陽系近傍の系外惑星の異質なマントルの岩石タイプを解明)
というタイトルです。PutirkaとXuが著者となっています。これは、白色矮星という恒星が核融合を終えて死を迎えた天体を用いて、間接的に惑星の化学組成を調べる方法です。
 もうひとつは、Scienceという科学誌に2021年10月15日に掲載された
A compositional link between rocky exoplanets and their host stars
(岩石系外惑星と恒星との間の化学的相関)
という論文で、多数の著者(20名)による共同研究です。こちらは、ハワイのすばる望遠鏡など、地上にある天体望遠鏡で観測された系外惑星の内、実測された化学的なデータを用いています。それらの直接観測されたデータを用いて、惑星と恒星との化学的な関係があることを示しています。
 この2つの系外惑星の化学組成に関する話題を、シリーズで紹介していきましょう。

・大荒れ・
北海道は週初めは大荒れという予報でした。
札幌での積もったようですが、
わが町では、風は強かったですが、
少しの積雪で済みました。
しかし、層雲峡など、ところにより
激しい積雪となった地域もありました。
飛行機の欠航便もあったようです。
このままおさまればいいのですが。

・年末年始・
12月の我が大学の講義は、25日(土)までです。
大学だけでなく、公官庁では
クリスマスなどは祝日でもなく配慮もしません。
宗教儀式は、尊重するのでしょうが配慮しないようです。
「行政機関の休日に関する法律」があるそうで
年末年始(12/29-1/3)は休日と決められています。
明治時代にもそう決めた法律があるそうです。
我が大学も年末年始は休みとなります。
年の変わり目なので、いろいろな行事があるのでしょうが、
昔からそうだからという根拠は
少々不思議な気がしますね。

2021年12月9日木曜日

5_185 酸素と自転 6:底生酸素

 自転速度の変化と酸素濃度の変化の相関がありました。その原因は、生物の酸素の生産量ではなく、海底での埋没量によるようです。今後、天文学的変動と生物活動、そして地球環境との結びつきを再考していく必要があるようです。


 この論文では、酸素の形成と地球の自転の関係を見てきました。地球史の中で、自転の変化と酸素濃度の変化の起こった時代が一致していました。では、なぜこのような一致がみられたのでしょうか。その原因を探っていきましょう。
 まず、現在生きているシアノバクテリアで、光合成による酸素の形成効率を測定します。測定値からモデルを作成して、日照時間の関係を調べていきました。シアノバクテリアも生物ですので、常に酸素呼吸をしています。昼は酸素を使用して光合成もしますが、光合成が勝ります。一方、夜は光合成はできず、酸素の消費だけとなります。シアノバクテリアの光合成の効率は、一日が長くなっても変わらず、一日の酸素の総生産量は一定でした。しかし、酸素の供給が増えることがわかりました。
 論文では、"diel benthic oxygen export"と"resultant daylength-driven surplus organic carbon burial"表現されています。訳すと「日周で底生酸素の輸出」と「結果として起こる日周期駆動の余剰の有機炭素の埋没」という意味にりますが、少々ややこしい理屈になります。
 「底生酸素」とは、本来なら海底に保存されるはずの酸素です。「日周で底生酸素の輸出」とは、日周期が長くなると「底生酸素」として海底から酸素が放出されてくることです。観測とモデル計算から、日周期が長くなると、大気中の酸素量が増えていくことがわかってきました。
 「結果として起こる日周期駆動の余剰の有機炭素の埋没」とは、酸素があれば本来なら海底で有機物を分解をしていくのに使われている酸素が、大気中に放出されていくので、堆積物中に埋没される炭素が多くなるということです。
 酸素の放出されると炭素が埋没されることになり、両者は相反する作用となります。このような原理が働いたため、前回紹介した24億年前頃の大規模な酸化イベント(Great Oxidation Event:GOE)と、6億年前(原生代後期)頃の酸素形成イベンド(Neoproterozoic Oxygenation Event:NOE)が起こったと説明しています。
 これまで、自転速度の変化は天文現象として、酸素量の変化は生物活動として捉えられてきました。その関係はあることは想定できますが、十分検討されてきませんでした。それが解明されてきたので、今後、天文学的運動と生物活動、あるいは地球の自転と大気組成変化(二酸化炭素、オゾン量など)の関係なども、考えていく必要がでてきました。
 昼の時間変化は1年でもおこっているはずです。今回の論文の結果では、酸素の生産量も変化しているはずです。二酸化炭素には季節変化が現れているのは知っていたのですが、酸素量は知りませんでした。調べると、酸素量にも季節変化がありました。また二酸化炭素の年々の増加に呼応するように、酸素量も減少していました。なかなか興味深い現象です。

・冬至・
北海道は、繰り返し積雪がありました。
日中にはすぐに溶けるので、
根雪になっていないのですが、
日に日に寒さが募ってきます。
日の出も遅くなり、日没を早くなり、
一日が短くなっていきます。
今年の冬至は12月22日で、もうじきです。

・卒業研究・
このエッセイが配信される頃には、
卒業研究の提出期間が終わっています。
4年生にとって、大学での学びの集大成となります。
大変な思いをして書き進めていくことになりますが、
長文の報告書の書き方を体験することで
研究の一端を身に着けられることを願っています。
そのため、大半の空き時間を
学生の添削に充てています。