2012年3月29日木曜日

6_98 生命の起源2:生命の材料

生命にとって必須のDNAをつくる材料が隕石から発見されました。それが、地球外で形成され、地球のもたらさたことを慎重に検証されました。生命の材料が地球外でも形成可能だというインパクトのある結論になります。その研究の概要を紹介しましょう。

 地球外生命に関わる報告は、2011年8月のアメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されたました。論文のタイトルは、"Carbonaceous meteorites contain a wide range of extraterrestrial nucleobases"(炭素質隕石は地球外の核酸塩基を広く含む)というものでした。NASAの研究者のCallahanたちが報告でした。
 隕石は生命の地球外起源説の検証するために非常に重要な素材となります。なにしろ隕石は地球外の物質で、太陽系のどのタイプの小惑星から由来したのかが検証されてきました。前に紹介したイトカワから持って帰った試料の成果が出はじめたためです。
 隕石の中には、炭素をたくさん含んでいる炭素質隕石というタイプがあります。その中には、有機物を含んでいるものがあることがわかっています。隕石の有機物について議論をするとき、地球の生物由来の「汚染」ではないかという問題がつきまといました。
 そのような疑問を解消するために、Callahanたちは、12個の隕石を分析しました。そのうち7個は南極で発見された隕石を含んでいました。分析の結果、アデニンとグアニンを発見しています。これらは、DNAの構成する塩基の4つのうち2つにあたります。生命活動に重要なヒポキサンチンとキサンチンという有機物も発見しています。
 さらに、地球上ではまれな3つの核酸塩基類似体(2,6-ジアミノプリンと6,8-ジアミノプリンというもの)も発見しました。これら2つの成分は、地球上の生物活動ではできないもので、地球の汚染ではないことを示しています。それらの成分は、隕石が発見された場所の土壌や南極の氷を調べたところ、そこからは発見できないものであり、地球外のものであることを示しました。これらの検証は、信頼できる手続きを経ているといえるます。
 生物にとって不可欠である有機物が隕石にあることはほぼ確定されました。太陽系内の小惑星の母天体で生命の材料の一部が合成可能であること、また地球にもたらされるときの衝突による激しい熱や圧力でも分子が壊れず、地表に達し、残ることを意味します。地球外で生命の材料が合成され、地球に供給され、地球でそれらを組みたてればいいという仮説をサポートすることになります。
 もっと視野を広げると、他の大きな天体(火星や木星や土星の大きな衛星など)でも、生命の素材はある程度揃えることが可能であることを示ししています。
 一方、生命の地球内起源説でも、新たな展開がありました。地球の生命の誕生の場は、深海の熱水噴出口ではないかと考えられています。これも何度も議論されて、多くの研究者がこの立場で研究しているのですが、そこで新しい証拠が見つかりました。

・まぐまぐに感謝・
3月26日から4月1日まで家族で
故郷に帰省しています。
独居の母に会うためです。
来年度は子どもたちが
卒業、入学の時期になるので動けません。
今年が春に出かけられる少ないチャンスとなりました。
長期の不在となるので、
このエッセイも事前に作成して予約配信しています。
おかげで長期出かけるときでも
定期的にエッセイを発行することができます。
ありがたいシステムです。
まぐまぐに感謝です。

・b-mobile・
出かけるときでも、いまでは多くの人が
インターネットに接続しています。
ある人はスマートフォンでおこなう人もいるでしょう。
ある人はデータ通信専用の機器を持っている人もいるでしょう。
私も1月まではデータ通信専用の機器を使っていました。
四国に滞在しているときは、docomoも通信専用機器を
2年契約で使用していました。
もちろんそれなりの通話料は支払っていました。
使わない時も基本料金が必要でした。
今では解約してので、出かけるときにネットに繋ぐことができません。
以前購入していた3ヶ月50時間使用できる
b-mobileの通信装置を数年ぶりに
セットアップして接続しました。
新しいソフトを見つけて、インストールしたら
無事動いてくれました。
これは3Gで300kbpsなので、
日頃高速の数MBのスピードで使っていると
すごく遅く感じます。
まあ、快適さは逆戻りはできないので、
旅先だと思って気にしないでおきましょう。

2012年3月22日木曜日

6_97 生命の起源1:信頼度

生命の起源について、何度かこのエッセイでも取り上げています。新しい事実や考えが提示されたことをきっかけに、話題として取り上げきました。時間と共にそのようなデータは集まってきます。しばらくし間が開くと、話題がたまってきました。ここ1年ほどの間に、集めた話題をまとめて紹介しましょう。

 生命はどこから来たのか。これは、すべての人にとって、そして古くから現代でも非常に興味のある話題であります。最近、いくつかの発見があり、ニュースにもなったことがあります。その中からいくつか紹介していきましょう。
 生命起源の説については、地球内か、地球外か、という大きな考え方に分けられます。
 地球外起源説は、パンスペルミア説(胚種広布説)とも呼ばれ、古くからある説です。地球外のどこかで誕生(地球外でどの程度進化したのかどうは問わない)した生命が、何らかの方法(手段は問わない)によって地球に飛来し、現在の地球生物の共通の祖先となったというものです。地球外といっても、太陽系内か、太陽系外かも重要な問題です。なぜなら、太陽系内なら、現在の技術の延長線で、近い将来に検証可能となります。太陽系外なら傍証は集められたとしても、科学的な検証は困難となります。
 地球内起源説は、地球にあるの何らかの営力によって、化学合成から生命ができたというものです。どこが誕生の場であったのか、どのようなプロセスを経てきたのかということも、議論になります。地球外起源説とも関係しますが、生物の材料が、地球内で合成されたものなのか、それとも地球外で合成され由来したものなのかという議論もあります。
 これらの可能性がいろいろと組み合わさることによって、多様な仮説が登場することになります。科学者がまじめに取り組んで、新発見や成果があると、ニュースになります。ニュースの中には、少々いかがわしいものも混じってくることがあるので、やっかいです。もちろん、科学であれば、好き勝手に仮説を出すことはできません。信頼性が必要になります。
 科学的に重要な発見は、厳重な検査や検証を受けた(査読制度といいます)のち、科学雑誌に掲載されます。その厳重さが、雑誌の信頼度となります。信頼度と権威とは違います。権威を傘にきて、発言することは、科学的ではありません。査読とは、似た分野の利害のない数名の研究者が、論文を事前に読んで、その科学的プロセスや結果や結論に問題ないか、そしてその成果が雑誌に掲載の価値があるかどうかも判断するものです。その審査の度合が雑誌の信頼度となります。
 研究者は成果に応じた信頼度の雑誌に、査読者は雑誌の信頼度に応じて査読判断をします。研究者も査読者も人ですので、雑誌自体が権威の象徴化するので、注意が必要です。実はどんな雑誌にどれくらい論文を書いたのかが、科学者の能力を権威づけています。
 では専門が違う分野の科学者、まして市民は、信頼度をどのように把握すればいいのでしょうか。以前であれば、信頼できるメディアがあったのですが、最近はどうも信頼がなくなってきたので、ニュースソースを直接あたり、そのソースがどのようなところかで判断するしかなさそうです。それは、権威に依存するという自己矛盾が生じることになるのですが、どこかで妥協するしかなさそうです。
 閑話休題。生命起源の話題にもどりましょう。
 1996年8月、NASAの科学者たちが、南極で発見(1984年)された火星由来の隕石(ALH84001)から「生命の化石」を発見したという報告をしました。信頼性の大きい科学雑誌「Science」に発表されたので、大きなニュースになりました。このニュースを私も聞き、すぐに論文を読みました。科学的手続きを踏まえた検証を経ているので、それなりの説得力がありました。そしてなにより雑誌の表紙を飾った写真が印象的でした。芋虫のような化石の写真がありました。もちんサイズはすごく小さですが。今では、どうも化石というには、証拠不十分のようだと考えられています。彼らは火星生命に関しては諦めていないようですが。
 さて、新しいニュースです。2011年3月には、NASAの研究者が、隕石から化石を発見したという論文を発表し、各紙がニュースにしました。NASAの研究者という肩書きだったせいでしょうか、ニュースになり、私もその原著論文をあたりました。報告自体は論文の体をなしていますが、掲載雑誌が怪しげにみえます。本当に多くの人に訴えたいのであれば、信頼性が保証される査読制度のある雑誌に論文を投稿すればいいのと思いました。論文を読む前にもう少し調べたら、この報告に対して、NASAの宇宙生物学研究所長や研究者が、いくつかの難点を上げて、否定的見解を公式に出したようです。まあ、この件は、置いておきましょう。
 2011年8月に、NASAの別の研究者たちが、隕石からDNAに関連する分子を発見したと報告され話題になりました。この雑誌は信頼の高い(権威のある?)雑誌、アメリカ科学アカデミー紀要(PNASと略されています)に掲載されました。その内容は、次回としましょう。

・データ収集・
このエッセイを書くためでもあるのですが、
科学、特に自分が興味を持っている分野に関して、
広く情報を収集しています。
それをファイルにしてとっています。
そのファイルをもとにエッセイを書くことにしています。
最新情報に関しては、関連のデータを
収集するという手間をかける必要があります。
それなりの時間も手間をかけなければなりません。
最新情報の収集も研究の一環、勉強だと思って、
手間や時間を惜しむことなくおこないます。
今回のエッセイも今までニュースが報道され、
情報を集めていたのですが、
エッセイする機会がなかったものです。
バラバラになっていたニュースをまとめて
今回、紹介することにしました。

・リテラシーと知性・
生命の起源は、このシリーズでも紹介しますが
エッセイでは何度も話題になっています。
新しい知見があると、ある仮説に天秤が動き
大きく取りざたされます。
特に地球外生命に関わる話題は
ニュースバリューがあり、大きく伝えられます。
人がその方面に興味を持っているためでしょう。
でも、だからこそ科学的検証は
慎重に厳重におこなうべきでしょう。
情報を隠すことなく、
冷静で公平な報道が望まれます。
メディア側の高いリテラシー、高い知性が望まれます。
今の日本は、大丈夫でしょうか。

2012年3月15日木曜日

5_105 イトカワ 4:検証

イトカワの初期成果は、だいぶ出てきました。その初期的報告の概要をまとめておきましょう。その成果のなかで一番重要なことは、推定が検証されたことではないでしょうか。これからの研究では、新知見が期待されます。

 前回は、最新の論文を紹介しました。イトカワの研究成果は、このシリーズの最初にも書きましたが、2011年8月26日号のアメリカの科学雑誌Scienceに、まとめて6つの論文が報告されています。詳しく紹介すると長くなるので、それらの概略を紹介していきましょう。
 東北大学の中村智樹さんらは、鉱物学の研究から、イトカワ(S型小惑星に区分されている)が普通コンドライト隕石(LL4~6に分類されている)に似ていることを示しました。これによって小惑星のS型とLL4~6隕石の対応が検証されたことになります。さらに、イトカワは、もとは10倍以上も大きな天体(母天体)であり、内部の温度はいったん800℃以上になってから、ゆっくりと冷えてきたという履歴を明らかにしました。そして衝突によってばらばらになり、再び集積してイトカワになりました。
 北海道大学の圦本さんたちは、微小部分の酸素の同位体測定をして、地球のものとは明らかに違う成分を持っていることを確認しました。つまり地球の物質が混入したものではなく、イトカワの由来の物質であるという証拠を示しました。また、隕石の普通コンドライト(LLまたはLグループ)に属し、それらの供給源の天体の1つであることがわかりました。
 首都大学東京の海老原さんたちは、中性子放射化分析という手法で各種の元素をおこないました。その結果、太陽系誕生の最初期に起きた元素の分別過程を残していることを明らかしました。
 大阪大学の土`山さんたちは、X線マイクロトモグラフィという装置を用いて、粒子の形を3次元で調べて、小さな重力しか持たない天体の堆積物(レゴリス、regolithと呼ばれる)であることを明らかにしました。これは小惑星由来であることを別個に検証したことになります。そして、粒子のつくりや鉱物の比率から、普通コンドライト(LL5あるいはLL6コンドライト)であると推定しました。
 茨木大学の野口さんたちは、電子顕微鏡で粒子の表面を調べ、宇宙空間での風化によってできた超微粒子を見つけました。また、LLコンドライトが宇宙風化を受けると、S型の小惑星になることも示しました。
 東京大学の長尾たちは、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン)を分析して、粒子がイトカワの表層にあった証拠を示しました。粒子が、イトカワの表面で、太陽風に、数100年から数1000年間、さらされていたこともわかりました。また、イトカワ表層にある物質は、百万年に数10cmの割合で削られていることも明らかにしました。
 これらの成果には、新知見もありましたが、予想通りに内容も含まれています。予想通りの内容は、イトカワからの粒子であること、小惑星はある種の隕石と類似のものからできていることなどです。しかし、今まで推定にすぎず、今回、小惑星イトカワから物質を入手し分析して、はじめて検証されたことになります。推定に確実な根拠を与え、検証したことになります。これは、新知見と比べると、地味にみえますが、科学にとっては重要なステップとなります。この検証によって、他の隕石と小惑星の類似関係の推定も確からしくなりました。科学にとっては、大きな前進となります。
 さて、基礎的な予備調査は終わりました。今後、試料が配布されるはずですから、新知見が次々と報告されることになるでしょう。ますます期待が高まります。

・別刷り・
先週のエッセイでイトカワの研究成果について書いたら、
中村さんから別刷りが送られてきました。
たまたでしょうか、それとも
エッセイをご覧になっていたのでしょうか。
研究所のある地元で科学者110名を集めて
シンポジウムが開催されたようです。
その一環で市民向けの催しもなされ、
多数の子供を含む15000人もの人が訪れたようです。
宇宙探査や地球外生命に関する科学の最前線の話題を
興味をもって聞いていたようです。
その市民向けの催しのニュースは読んでいたのですが、
エッセイに書くのを忘れていました。
別刷りに同封されていた手紙にも
その様子が書かれていました。
盛況だったようです。
なかなか遠くて、研究テーマも違ってきたので
センターには行けないところとなりましたが、
活躍されている様子を遠くから拝見しています。
今後も活躍されることを期待しています。

・卒業・
国立大学は今は2次試験が終わり、
その集計中でしょうか。
私立大学は、いよいよ卒業式のシーズンです。
我が大学は、今週金曜日に卒業式がおこなわれます。
人数が多いので、大きな施設を借りての卒業式となります。
その後は、ホテルでの祝賀会、
さらに学科の謝恩会が続きます。
めでたい行事が一晩でおこなわれます。
その後、若者たちは旅立ちの日を迎えます。

2012年3月8日木曜日

5_104 イトカワ 3:クレーター

先日、イトカワの試料から小さなクレーターが発見されたというニュースが流れました。イトカワの試料を初期分析している過程で発見されたものです。その内容を、速報として紹介しましょう。

 2月27日付けのアメリカの科学雑誌(科学アカデミー紀要の電子版)に岡山大学地球物質科学研究センターの中村栄三さんたちが、イトカワの試料から小さなクレーターを発見したという報告がなされました。5つの試料を初期分析している過程で発見されたものです。
 論文では、50μmから110μmの5つの試料を用いています。その粒子の表面の観察と分析をもとに新たに発見されたものです。これらの粒子は、いく種類かの鉱物(カンラン石、輝石、長石)とガラスからできていました。鉱物の成分から、普通隕石に分類されるものであることがわかりまして。他の粒子からも同じ結論がえられています。
 鉱物の検討から、いったん900℃ほどの高温になったことがわかりました。現在のイトカワでは、けっしてならない高い温度です。したがって、イトカワは、今の大きさになる前に直径数10kmの小惑星(母天体)があり、それが衝突、破壊され、再度の集積したものだと考えられます。
 粒子の表面には、いろいろな小さいの粒がついているのですが、その粒の中には、平たいディスク状のものがありました。衝突で溶けた物質が飛び散り、固まったものです。ディスクの表面には、含まれていたガスが抜けた穴が見られます。彼らの推定では、1/1000秒ほどで溶け、1mほど飛んだとされています。非常に小さなサイズの衝突、溶融事件があったことになります。
 今回の粒子の表面に0.数μmのクレーターがいくつも見つかりました。このような小さなクレーターは、数十nm(ナノメーター)の小さな隕石が、かなりの高速で(秒速数10km)衝突したためです。いくつものクレーターがあるということは、そのような衝突事件が頻繁に起こったことになります。ただし、事件の時期は不明です。クレーターの形成がある時期に集中して起こったのか、定常的に起こっているのかは不明です。
 さらに、太陽からの飛んできた粒子による侵食の様子も発見されています。太陽からは、水素イオンがプラズマとして、常に大量に飛び出しています。これを太陽風と呼びます。太陽風がイトカワの粒子にあたり、表面を削っています。その結果、表面がサメ肌状になっていることもわかりました。
 イトカワは、穏やかに宇宙空間を漂っているように見えますが、その形成にいたる履歴には、想像もできないいろいろな事件があったことが、小さな粒からも読み取られています。

・補足情報・
膨大な情報が背景にあります。
その粒子は貴重なので、
分析データの持つ意味も違ってきます。
中村さんたちの論文自体は、6ページなのですが、
補足情報(supporting information)として、
5つの粒子に関する詳細な分析方法の記述や
分析結果が膨大な量、つけられています。
補足情報は34ページに及びます。
1mmにも満たない小さな粒が5つに関するものです。
初期分析ではあまり破壊的な分析はしないはずなので
これらくらいの情報ですが、
今後公開された試料で、小さいものは
破壊分析もおこなわれる可能性があります。
すると今以上の情報が得られるはずです。
期待が高まります。

・古巣にて・
今回の報告者の中村さんとは
古くからの付き合いです。
私も岡山大学地球物質科学研究センターに
所属していたことがありました。
思い越せばだいぶ前になります。
最初、中村さんはセンターの助手でこられたとき、
私は分析にいっていました。
意気投合して私は研究生として
センターに移籍することにしました。
二人でいろいろ分析室の改良からはじめました。
私が外部にで職を見つけて出たあとも
センターは進化していきました。
今では、センターは世界に冠たる研究施設になりました。
私は、地球科学の研究をもうやめたので
このような最先端の現場には立ち会えないのですが、
彼らの発見時の高揚した気分は、
遠くの空からも感じてしまいます。
さらなる成果をあげられることを期待しています。

2012年3月1日木曜日

5_103 イトカワ 2:公開試料

イトカワの試料が公開されました。試料の数は多いのですが、非常に小さいため、研究目的もさることながら、分析技術もそれなりの実力が必要となります。公開された試料の概要を紹介しましょう。

 イトカワの試料が研究者に対し公開され、公募が始まったことを前回紹介ました。公開されたイトカワの試料とは、どのようなものだったのでしょうか。まだ、全貌が明らかになっていなのですが、公開されている情報から紹介していきましょう。
 「はやぶさ」が長い航海の末、持って帰ってきたイトカワの試料を、慎重に処理するために、特別な実験室や装置が用意されました。ヘラで慎重に採取するという方法だったのですが、最後にひっくり返したら多数の試料がでてきことはニュースにもなり、ご存知の方もおられるでしょう。以前にもこのエッセイ(6_82から6_85)でも紹介しています。
 回収された試料は、1500個以上になるともいわれ、カプセルにはまだ回収できてない試料が残っていると考えられています。これからも回収作業は継続されていきます。また、回収された試料も、1000個以上はまだ未分析で残されています。今後もカタログ作りは進めれていくはずです。
 まずは、その一部が公開され、国際研究の公募がされたのです。事前に日本で公募された8つの初期分析チームに、2011年4月に約60個のサンプルが配分されました。各チームは試料のカタログ作りもおこなっています。
 今回、190個ほどの試料が公開されました。一部の試料はNASAに送られましたが、それ以外の試料は公開されています。試料の詳しいカタログデータはホームページで公開されています。カタログでは、試料ごとに、番号がつけられ、試料の状態、サイズ、鉱物相など初期分析の結果が示されています。カタログには、配分されたチームが用いた装置による初期分析のデータも示されています。
 ほとんどが100μm(0.1mm)以下の非常に小さい試料で、地球での汚染を受けないように最新の注意を払っての配布となります。今の技術では、100μm以下のサイズの粒子でも、充分に精度のよい分析が可能で、研究成果があげられると期待されます。もちろん、大きければ情報量も増えるので大きいな試料は貴重になってきます。多分も応募も多くなると思います。ただし、100μmを越える試料(貴重なので保存)と10μm以下の試料(現状では充分な成果は期待できない)はデータの公開はされていますが、国際公募には適用されず保存されています。
 これから世界中の「腕の覚えのある」研究機関に試料配分がされていくでしょう。いろいろな成果が出だします。楽しみです。
 次回から、初期分析チームが出した成果を紹介していきましょう。

・公募・
2月下旬は忙しく、苦しい思いをしました。
書きたいことがあれば、
比較的さっさと書けるのですが、
今の2月末締め切りの原稿には手こずりました。
やっとの思い出、原稿も終わり、ほっとしています。
次は研究費の申請書類の作成となります。
このような書類を書くときは、
大変ではあるのですが、
次はどんな研究をしようかと夢が膨らむので
楽しくもあります。
多分イトカワの試料の応募書類を書いている人も
同じ思いなのでしょうね。

・あっという間の2月・
今年の2月は閏月なので
一日多くなっています。
締め切りに一日でも余裕ができたので助かりました。
2月はもともと日にちが少ないのと
しなければならないことや校務が目白押しだったので
あっという間に過ぎてしまいました。
実は3月もあっという間なのですけどね。