2025年1月2日木曜日

1_223 過去のプレートテクトニクス 3:コマチアイト

 明けまして、おめでとうございます。本年も、地球や地質に関する話題を、淡々と紹介していきます。今回の話題は、昨年からの続きとなる過去のプレートテクトニクスの痕跡の探求のシリーズとなります。

 地球と環境の通信誌(Communications Earth & Environment)の2024年5巻に中国科学院の欧陽(Dongjian Ouyang)と共同研究者が、
Light oxygen isotopic composition in deep mantle reveals oceanic crust subduction before 3.3 billion years ago
(マントル深部の軽い酸素同位体組成から33億年前より前の海洋地殻の沈み込みを明らかにした)
というタイトルの論文を発表しました。この論文の意義は、いくつかの説明を経て理解していく必要があります。順番に説明していきましょう。
 アフリカ南部に、バーバートンという地域があります。ここには、太古代の岩石が分布していることで有名です。
 バーバートンには、緑色岩帯(グリーンストーン帯)と呼ばれる地帯があります。世界各地の緑色岩帯の多くは、海洋地殻が陸に持ち上げられたオフィオライトであったことがわかってきました。ただし、もともと列島(島弧と呼ばれます)の火山岩類や複雑な地帯の岩石も含んでいることもあります。オフィオライトの玄武岩類が、変成作用を受けると緑色のなっていることから、古くから緑色岩類と呼ばれてきました。緑色岩類が分布している地域を、緑色岩帯と呼ばれ、現在でもその名称が残っているところがいくつもあります。
 今回、分析された岩石は、緑色岩帯中のウェルテヴレーデン(Weltevreden)層の溶岩ですが、通常のオフィオライトの溶岩ではなく、コマチアイトと呼ばれる変わったものでした。
 コマチアイトは、特異な化学組成を持っており、マントルのカンラン岩に似たマグネシウム(Mg)の含有量(18重量%程度)を持っています。このようなマグマで現在は活動していません。主に太古代にだけ活動していた特異なマグマです。マグネシウムの多いマグマをマントルでつくるためには、高温(1600℃)で、マントルのカンラン岩を多く溶かして(45%ほど)いく必要ががあります。そのような高温の条件が今ではないため、マントルが熱かった時代の火山活動になります。
 このコマチアイトの年代は、太古代(40億から25億年前)の前半の32.7億年前となります。ところが、論文タイトルでは「33億年前より以前」というのは、コマチアイトの年代よりものが想定されるとという意味になります。古い海洋地殻の沈み込みの痕跡が、コマチアイトのマグマをもたらしたマントルで見つかったという報告になります。マグマが由来する岩石は、すでにできていた岩石になるので、32.7億年前より古いものになります。
 では、それはどのよう痕跡に基づくものだったのでしょうか。次回としましょう。

・年のはじめに・
月初めは、地球地学紀行にしてきましたが、
新年なので、めでたい地域での話題にしたかったのですが、
思いつきませんでした。
新年ですが、昨年から続きのシリーズを
淡々と紹介することにしました。
この論文を理解するには、
地質学の前提となる知識が
いくつも必要になるややこしいものです。
新しい知見が含まれているので、
詳しく紹介していくことにしました。
ただし、このシリーズでは、論文より先へと
もっと展開していきます。

・いつものように・
正月の三ヶ日以外、
仕事納めから仕事初めの間も
大学で仕事をしています。
いつものことなのでこれはいいのですが
今年は、年初からいろいろと
締切のある校務を
多数、抱えています。
今年の3月に退職するための校務も
そこに加わっているめた多くなっています。
優先順、締切順にこなしていきます。