2018年10月25日木曜日

2_161 ムカワリュウ 2:手取層群

 もっとも有名な恐竜はティラサウルスでしょうか。北米大陸で主に見つかっていました。20世紀末あたりから、日本や中国でも見つかってきました。それらの発見で、ティラノサウルスのルーツは、アジアであることがわかってきました。

 1978年の岩手県でのフタバスズキリュウの発見以降、1980年代になると、熊本県や群馬県でも、恐竜の化石が次々と発見されてきました。石川県・富山県・福井県・岐阜県にかけて広く分布する手取(てどり)層群という地層が注目されていました。
 手取層群は、中生代のジュラ紀中期から白亜紀前期(約1億8000万年~約1億2000万年前)にかけて堆積したものです。この時期、日本列島は、まだ大陸の一部になっており、ユーラシア大陸の縁に位置していました。手取層群からみつかっていた植物化石は、高緯度地域の温暖で湿潤な環境で育つものでした。
 1999年、福井県の手取層群から見つかった、1本の歯の化石の記載報告が出されました。この歯の化石は、肉食の恐竜のティラノサウルスの仲間のものということがわかりました。
 ティラノサウルスは、北米大陸で立派な化石が多数産するので有名です。ティラノサウルスの仲間は、白亜紀の終わりの北米大陸で広く繁栄していました。最も古い化石は、白亜紀後期までしか遡りませんでした。北米大陸で、独自に進化していた可能性もありました。
 石川県の手取層群からも、類似のティラノサウルスの仲間の化石がみつかってきました。手取層群の堆積時には、ティラノサウルスの仲間が多数生息していた環境であたことがわかってきました。
 さらに、類似の肉食恐竜の化石が、中国の遼寧省からも発見されています。ユーラシア大陸の東部には、ティラノサウルスの仲間が広く生息していたことになります。北米大陸でティラノサウルスの仲間が繁栄していた白亜紀後期よりずっと以前、白亜紀前期には、ユーラシア大陸ですでに出現していたいたことになりました。
 白亜紀後期初頭、アジアと北米両大陸が陸続きになったことがわかっていますので、その時、ティラノサウルスたちは北米大陸に渡っていったと考えられるようになりました。
 現在では、日本では、恐竜化石の産地は、15都道府県で30地点以上あります。今回、北海道芦別市で2016年に見つかった恐竜の化石は、ティラノサウルスの仲間の化石でした。地層は、手取層群より新しい白亜紀後期(8630~8980万年前)の地層からでした。その詳細は次回としましょう。

・残念・
先週末、道南へ調査にでかけました。
今回の調査は、好天に恵まれました。
秋の盛りの素晴らしい景色の中、
3日間かけて、道南で野外調査をしました。
天気と景色は最高だったのですが、
調査の成果は今ひとつでした。
予察で見かけていた地層を調査したのですが
思っていたほどのものではありませんでした。
もう一つ、もしかしたらと思っていたものがあったのですが、
そちらは変成作用を強く受けていたので、
やはり目的にはかないませんでした。
なかなか、こちらの思っているように
自然は胸襟を開いてくれないですね。

・冬へ向かって・
調査から帰ったら、急に天候が荒れてきました。
冷え込みはそれほどではないのですが、
風が強く、雨も混じっています。
これでわが町の、紅葉も一気に終わってしまうのでしょうか。
雪虫は、わが町で大量発生は見れませんでしたが、
道南でみることができました。
雪虫をみると、秋の終わりを感じます。
先日、自家用車を冬タイヤにしました。

2018年10月18日木曜日

2_160 ムカワリュウ 1:1934か1978か、それとも21

 恐竜の化石の発見は、日本でも最近はよく聞くニュースとなりました。しかし、化石の発見は、ほんの40年ほど前のことです。恐竜研究や研究者養成は、もっと後のことでした。

 かつて日本では、恐竜の化石はほとんど見つかることがなく、恐竜発掘や研究は欧米での話だと考えられていました。ですから、恐竜研究をしたければ、アメリカやヨーロッパにいって、そちらの標本を借りて、研究しなければならない状況でした。日本では、恐竜の研究者も少ない状態でした。
 日本で最初の恐竜の発見は、1934年のことでした。北海道大学の長尾巧教授のもとに、恐竜の化石が発見されたという一報がありました。場所は、当時日本領であった樺太の川上炭坑(現シネゴルスク)の病院の建築現場でした。化石を取り出すために、建築中の病院を壊しています。3年かけて発掘した結果、全身の60%(40%とも)の骨が発掘されました。今でも、日本でもっとも保存状態のよい恐竜化石となっています。
 その恐竜は、ニッポノサウルス・サハリネンシス(Nipponosaurus sachalinensis)として、1936年に報告されました。通称、ニッポノサウルスという名称と呼ばれています。しかし、この化石の詳しい研究は、ほとんど進められることなく、北大に埋もれたままになっていました。その後、2004年に再び研究されて、ハドロサウルス科の恐竜で、大人になる前のもの(2歳~3歳の亜成体)だとわかりました。復元骨格のレプリカがつくられ、現在では、北海道大学総合博物館と国立科学博物館に展示されています。
 樺太は当時日本領だったのですが、現在はロシア領になっています。ですから、日本産とはいいづらいものがあります。
 日本国内での発見は、1978年、岩手県岩泉町茂師(もし)で発見されたフタバスズキリュウ(学名:Futabasaurus suzukii フタバサウルス・スズキイ)です。首長竜のプレシオサウルスの仲間です。上腕骨が発見され、発見場所にちなんでモシリュウと呼ばれています。これも、2006年に佐藤たまきと真鍋真主、長谷川善和館さんたちが記載して、新属の新種の首長竜と判明しました。
 最初の恐竜の発見が40年前のことですから、日本の恐竜発掘の歴史は、浅いものです。また、恐竜の記載の状況を見ると、恐竜の研究者も、21世紀になって、やっと何人も育ってきたように見えます。今では、日本各地から恐竜の化石が、各地で研究者が育ってきました。

・復元骨格・
ニッポノサウルスの復元骨格には、少々、思い出があります。
当時国立科学博物館の地学部長をされておられたSさんと
ある学会誌で博物館の特集を組むことになりました。
その時、一緒に編集作業をしているとき、
Sさんから、国立科学博物館で
ニッポノサウルスのレプリカを作成している
という話を聞きました。
それはいい思い、二人で相談して、
その特集の表紙をニッポノサウルスの復元骨格で飾ることにしました。
その表紙は、なかなかいい出来だったと思っています。

・雪虫・
北海道は、ここしばらく、
はっきりしない天気が続いています。
一日のうちで、晴れたり、曇ったり、
雨が降ったり、それが繰り返されます。
先日の晴れた日の夕方、
今年はじめての雪虫を見ました。
しかし、大量発生ではなく、少ない数でした。
雪虫が飛ぶと初雪が近いと言われていますが、
今年の秋の深まりは、人にも雪虫にも、
ややこしいようです。
でも、着実に、冬は近づいています。

2018年10月11日木曜日

6_157 TESS 3:ミッション

 新しい宇宙望遠鏡には、新たなミッションが託されます。その結果は、科学者の期待を裏切るほどであって欲しいものです。TESSの主たるミッションは、地球のような惑星が、特別なのか普遍的なのか、を検証することです。

 TESSは、Transiting Exoplanet Survey Satellite、「トランジット系外惑星探索衛星」の略なので、トランジット法を用いて系外惑星を見つけようというものです。トランジット法とは、惑星が恒星の前を通るときの明るさの変化をとらえるものでした。宇宙空間ですから、大気の影響を受けないで精度良く観測できます。
 最後に、TESSのミッション(使命)について、説明をしていきましょう。TESSは、安定してはいるのですが、不思議な軌道を用いています。月の共鳴軌道と呼ばれるもので、大きな楕円の軌道で、月によって安定したものだそうです。これまで使われたことがない軌道でが、地球からかなり離れたところめぐります。そのため、地球近辺のデブリや大気の影響で、観測装置や本体の損傷が最小限になると考えられています。
 この軌道で、13.7日ごとに地球に近づくことになります。そのため、観測データを近づいた時、3時間ほどで一気に送信する仕組みとなっています。4台のカメラで、最初の1年は南天を、あとの1年は北天を観測して、全天のほとんど(85%)を網羅することが、ミッションになっています。
 探査は、主系列星の恒星を対象にしています。主系列星でも、太陽に似たG型と赤色矮星(M型矮星)やそれに近いK型を中心に観測されます。赤色矮星とは、私たちの太陽より暗く小さい天体なのですが、その数は非常に多くなります。惑星で、恒星に近いところを巡っているのものが、見つかりやすくなります。赤色矮星でそのような軌道の惑星であれば、表面に水がある可能性が高くなります。
 TESSのミッションでは、太陽系に近い(地球からおよそ300光年以内)、50万個の恒星が対象になり、これまで見つけることが難しかった、地球程度のサイズの惑星で、比較的長い(2ヶ月)の公転周期の天体なども見つけられるのではないかと考えられています。
 TESSの最初の写真が、2018年5月に送られてきました。そこには、ケンタウルス座近辺の天体が20万個以上写っているそうです。ケプラー宇宙望遠鏡は、多様な系外惑星の発見し、私たちの太陽系が、惑星系の典型ではなく、多様性の一つに過ぎないことを教えてくれました。TESSでは、地球のような水や生命が存在しうる惑星が、特別なのか、普遍的なのかを教えてくれることが期待されます。今後も注目していきたい話題です。

・秋めいて・
北海道は、秋が本格的になってきました。
日が出ているうちは、室内は暑いくらいでしたが、
日が陰ると、一気に肌寒くなりました。
先日の日曜日、自宅で、はじめてストーブを焚きました。
しかし、2時間ほど焚いたら、暖かくなったので切りました。
そんなストーブを焚いたり消したりの日々が
少しずつ増えてくる季節になりました。
いよいよ秋が深まってきました。

・入試・
大学は、入試が始まっています。
AO入試は9月から始まっていますが、
いよいよ本格的になります。
続いて、推薦入試、そして一般入試となります。
来年度から新しく大学入試共通テストが実施されるのですが、
今年の11月には、そのプレテストが行われます。
高校2年生が対象のプレテストとなります。
まだ私たちには、、詳細は知らされていないので、
どのようになるのでしょうかね。

2018年10月4日木曜日

6_156 TESS 2:ケプラー宇宙望遠鏡

 宇宙からの観測は、費用がかかるし、動かすためのエネルギーも必要だし、メインテナンスもできないし、などという欠点は多々あります。大気の影響がないという点は、非常に大きなメリットになっています。

 前回は系外惑星の最初の発見の経緯を紹介しました。1995年の最初の発見を契機に、次々と新しい惑星が見つかってきました。最初の発見は、前回説明したようなドップラー法でしたが、惑星が恒星の前を通るときの明るさの変化をとらえるトランジット法、手前の天体の重量により実際より明るく見える効果を利用する重力レンズ法、などいろいろな方法でも、系外惑星が発見されるようになってきました。
 地表の望遠鏡を用いた系外惑星の発見を受けて、2009年に、NASAはケプラー宇宙望遠鏡を打ち上げました。大気の影響のない宇宙空間から観測をするためです。ケプラーは、恒星の明るさの変化を調べるトランジット法で観測をおこないました。惑星の存在や特徴も調べていくものです。
 当初の運用計画では、3年半で10万個の恒星の観測をすることになっていました。その結果、多数の4000個以上の惑星候補を発見しました。惑星候補とは、今後検証が必要ですが、惑星の存在の可能性を捉えたということです。今後の詳細な観測で確定してくことになります。
 運用期間を5年以上も過ぎた2018年には、推進剤がなくなりそうなので、観測は休止になりました。しかし、2016年5月15日までに、2325個の系外惑星を発見しています。大きな成果となりました。
 多数の系外惑星の発見から、多様な惑星系ががあることわかってきました。多様な惑星として、ホット・ジュピター以外にも、特異な軌道を持つもの(エキセントリック・プラネット、逆行惑星)、木星より小さい海王星サイズの惑星(ホット・ネプチューン)、地球の数十倍から数倍のサイズの惑星(ミニ・、ネプチューン、スーパー・アース)、そして地球に似た惑星、水がありそうな惑星(海洋惑星)など、多様な惑星が発見されてきました。私たちの太陽系の惑星は、多様な惑星系のひとつに過ぎなかったのです。
 宇宙からの観測は、非常に有効であることが、ケプラー望遠用によって、証明されました。そこで次期の宇宙望遠鏡としてTESSが打ち上げれました。詳細は、次回としましょう。

・台風の影響・
10月になり、北海道は秋めいてきました。
ただし、不順な天候もあり、
紅葉の進み具合があまりよくないようです。
先週末に調査にでたのですが
台風の影響で、2泊のところを1泊にしました。
札幌周辺は台風の影響はほとんどなかったのですが、
大雪から十勝にかけてはなかり雨が降ったので、
途中で中止してよかったです。
今週末にも、また台風が・・・

・はやぶさ・
宇宙望遠鏡は、手間も時間もかかる観測になります。
アメリカのように国力ある国では
一国で打ち上げ、運用することできます。
日本では、一機ずつの費用を抑えて、
特化した目的での観測となります。
はやぶさ、はやぶさ2などはその典型でしょう。
最近は、はやぶさの調査も気になっています。