2023年7月20日木曜日

6_204 知的生命体の起源 2:コペルニクスの原理

 地球外の知的生命は、科学技術をもっているはずです。科学技術誕生には、どのような惑星の条件が必要でしょうか。その条件とは、生命誕生の条件と一致するのでしょうか。コペルニクスの原理から考えていきます。


 ハビタブルゾーンが設定されるのは、背景に地球生物が誕生の必要条件として水の存在があるからです。地球や地球生物が、宇宙で特別な存在ではなく、平均的、一般的、平凡(凡庸)な存在と考えています。ハビタブルゾーンの概念には、地球や生物で考えられる条件が一般論として適用できる、と考えて構築されています。このような考え方は、「コペルニクスの原理」あるいは「メディオクリティの原理」と呼ばれています。
 ハビタブルゾーンには生命誕生には水の存在が不可欠であるという考えは、「コペルニクスの原理」に基づいて設定されています。水の状態は、惑星表層が水で覆われた水惑星だけでなく、天体内であっても、必要な条件がそろっていれば、生命が誕生できる可能性があると考えられています。
 例えば、氷の地殻の下に存在する地下の海(内部海)でも、素材とエネルギーなどがそろっていれば、生命が誕生できるかもしれません。このような天体は、太陽系にも候補(木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドゥスなど)があり、生命の発見が期待されています。
 一方、技術痕跡(technosignature)の担い手である技術的知性(Technological Intelligence、TI)は、陸上で進化したと考えられます。なぜなら、科学技術は、電気や電波を用いたものなので、陸上でないと使えません。科学技術に至るためには、水蒸気やガソリンのエンジンなどの動力を使用した工業が発展していたはずです。工業に至るためには、農業や酪農などをする産業が必要で、火の使用する文明がなくてはなりません。知性をもつに至る生物へは、陸上で進化していったことを前提としています。これも技術的知性に至るための「コペルニクスの原理」の適用です。
 生命誕生には海の存在が、技術的知性には陸の存在が不可欠となります。海で誕生した生命が、段階的に進化をして、やがて陸上に進出していく必要があります。その間、惑星の環境が維持されなければなりません。つまり、技術的知性には、海と陸の恒常的存在が不可欠となります。
 生命誕生においてハビタブルゾーンは必要でしょうが、「コペルニクスの原理」によれば、技術的知性の探査には海と陸の存在が不可欠になります。惑星表層で占める海と陸の比率が問題となります。海と陸の存在を探査で知ることはできません。その可能性を、統計を用いて探求するアイディアがあります。次回としましょう。

・暑い夜・
現在は、論文作成に専念しています。
連日、蒸し暑い日が続いていますが、
借りている部屋では
入ったときから、
襖や障子をはずしていました。
風通しはいいのですが、
それもでエアコンを必要な時にはつけています。
しかし、寝るときは、扇風機で過ごしています。
寝苦しい日もありますが、
あと少しこの状態を続けてみようと思っています。

・近隣の散策・
北海道では、夏は野外調査の最盛期なのですが、
四国では、夏は野外調査には向かない時期です。
四国での7月上旬の調査は、
蒸し暑くでヘトヘトに疲れました。
幸い、もともと8月下旬まで、
調査は休止の予定にしていました。
その間は山里で、じっと過ごす予定です。
ただし、週日のうち、2日間、昼食を外食しながら
半日ほど出かけるようにしていきます。
これは来たときから続けています。
家内があまり地元を知らないので
我が家の休日として
近隣をあちこち回るようにしています。
次はどこにいこうか、と考えるのを
楽しみにしています。

2023年7月13日木曜日

6_203 知的生命体の起源 1:条件と仮定

 系外惑星の探査は、現在も盛んに進められています。多くの系外惑星が発見され、多様な惑星の存在がわかってきました。探査では、水、生命、知性などがキーワードですが、それらには仮定と条件が絡み合っています。


 高性能の宇宙望遠鏡による探査によって、大量の太陽系外の惑星が発見され、その多様な姿が明らかになってきました。それまで、太陽系内の天体が、惑星の多様性の範囲で、それらがいかに形成されたかを考えることが、惑星形成の重要な目的でした。ところが、多様な系外惑星の発見により、これまでの前提が大きく変更されました。
 数ある系外惑星の中で、地球型惑星の探査、そしてハビタブルゾーンにある惑星が注目されてきました。ハビタブルゾーンとは、惑星表層に液体の水が存在する領域で、恒星のタイプと惑星の公転軌道から推定できます。そこに地球型惑星があれば、海が存在する可能性が高くなります。その軌道上に、惑星が安定して長期間あれば、生命誕生と進化の必要条件がそろうことになります。ただし、その惑星に液体の水があること、生命が誕生していること、生命が進化していることを検証すのは困難です。
 ハビタブルゾーンから生命の進化までの推論は、連続した仮説を積み重ねていく論理構造になっています。
 系外惑星の公転軌道と惑星タイプは、観測で検証されていますが、ハビタブルゾーンの存在は推定になります。ハビタブルゾーンが仮定できる条件があっても、地球型惑星に水が存在するかどうかは検証できません。水が存在する惑星があると仮定でできても、そこに生命が誕生するかどうか、さらに誕生した生命が進化を続けていくかどうかは、仮説の上の仮説の連続となります。
 このように、仮定の上に仮定を積み重ねていくことになります。探査機がその惑星に近づかないと、生命の存在は、なかなか検証できそうもありません。
 ところが、地球外文明を探すことは、比較的容易で検証可能です。ここでいう地球外文明とは、科学技術が発達しており、電波を用いているものです。電波であれば、文明から遠く離れた遠隔地からも受信できます。もし受信できれば、その信号の意味や中身が分からなくても、文明の存在を知ることになります。文明の背景の知的生命は、生命や水の探査を一気に飛び越していますが、生命の存在の十分条件を満たしています。
 このような技術の痕跡は、技術痕跡(technosignature)と呼ばれ、その担い手を技術的知性(Technological Intelligence、TI)、あるいは地球外知性(Extra Terrestrial Intelligence、ETI)と呼びます。
 TIの検出に関してベイズ統計を用いた、不思議な論文が報告されました。次回から紹介していきましょう。

・野外調査・
7月上旬でサバティカルにて予定していた
前半の野外調査を終えました。
前半には、野外調査を6回予定していたのですが
そのうち1回は家内に体調不良が起こり
その看護で中止になりました。
中止した地域は、
後半の調査地の予定を変更することで
対処することにしました。
プライベートでの京都への帰省も
前半に2回、後半に1回予定していたのですが、
前半の1回をキャンセルしました。
何事も予定通りには進みませんが、
可能な限り予定消化を目指して
進めていきたいと考えています。
野外調査に専念できるのは
最後のチャンスと考えています。

・集中すること・
サバティカルも折り返しが過ぎました。
あれもこれもと、欲張りながら
日々を過ごしています。
高齢のため、体力や身体は
無理がきかなくなっていますので
労りながら進めていくしかありません。
心身ともに余裕はもちながら
無駄を省いていくしかありません。
短時間で集中して進めていくことです。

2023年7月6日木曜日

4_177 西予紀行 4:大野ヶ原

 西予紀行は、前回の明浜の石灰岩に続き、今回は大野ヶ原の石灰岩です。西予市の西(明浜)の海岸と東(大野ヶ原)の山にある石灰岩です。離れたところですが、いずれも石灰岩が景観をつくっています。


 5月下旬、どんよりとした日でしたが、大野ヶ原にいきました。日吉から稜線に登る林道(東津野城川林道)を使いました。舗装されたいい林道ですが、以前と比べると少し荒れてきているようです。その後、6月下旬に、友人がジオミュージアムに来たので、皆で一緒に西予市のジオサイトを周るときに、同行しました。その時、同じルートで大野ヶ原に上がりました。下りは別ルートでしたが。巡検では、各地にお住まいのガイドの方に、案内をしていだきました。
 最初に大野ヶ原にいったとき、林道沿いで造材がされており、そのために拓かれた道沿いに露頭ができていました。そこで蛇紋岩の産状がよくみえるところがありました。以前にも尾根沿いに蛇紋岩の露頭があったのですが、風化が進んでいるので、産状が分かりにくいものでした。今回、新しくできた露頭では、広く新鮮な面がでていました。黒瀬川帯の蛇紋岩となるのでしょうか。造材が終われば、この露頭も、風化、侵食が進んでいくのでしょう。
 ガイドの人から、地質だけでなく、この地の起こりや伝説、歴史、そして現在の生活について伺いました。ガイドの方は、植物にも詳しく、石灰岩の中にある断層の両側で、植物種が異なっているとのことです。
 大野ヶ原は、四国山脈の西方延長に当たります。四国山脈には、石灰岩台地が点々と分布しています。石灰岩が広く分布している大野ヶ原のようなところでは、カルスト台地となっています。石灰岩の侵食地形をいろいろ見ることができます。石灰岩は、秩父帯北帯に属するもので、東に向かってその先20kmには、日本で有数の石灰岩採掘地の鳥形山があります。ガイドさんの話では、源氏ヶ駄場からは、天気がよければ、鳥形山も見えるとのことです。しかし、この日は濃い霧に包まれて、眺望はできませんでした。
 大野ヶ原は、稜線沿いの高原に、牧草地が広がっています。斜面の牧草地はには石灰岩が点々とあり、牛とのコントラストが面白いです。山並みの中に平らな地域に集落があります。カルストの中で石灰岩が溶けてできたくぼみで、ドリーネ、ウバーレ、そしてポリエと成長してきてものです。くぼみなので水がたまりやすく、畑作ができます。ポリエに集落と耕作地があります。また、小松ヶ池という地下水がたまっているところがあります。この池はドリーネにできたものです。池の中には、ミズゴケでできた浮島があり、動くこともあるそうです。
 大野ヶ原に「森の魚」という小さな店があり、そこで2度ともソフトクリームをいただきました。初回には土産にミルクパンを2種買って帰りました。店のご夫婦からいろいろ話しを聞かせていただきました。
 ご主人は、大野ヶ原のジオサイトでガイドをしてくださいました。下は蒸し暑かったのですが、上がると半袖では寒いほどでした。ガイドの人も、まだ上では長袖でないとダメだと仰っていました。
 仕事をしている支所の標高は130mで、自宅では200mになっています。大野ヶ原は、標高が1400mもあります。標高100mで気温が0.6℃下がります。下から大野ヶ原まで上がると、7℃ほど下がります。下界が茹だるような暑さでも、大野ヶ原まで上がれば、一気に涼しくなります。
 7月中旬から8月下旬までは、夏の最中なので、野外調査は休みます。その間に、下界が暑いときは、避暑に大野ヶ原に上がっていくつもりです。

・森の魚・
ソフトクリームをいただいた店の名前の「森の魚」は、
そのテーマで彫刻された作品に由来しています。
石でできた魚の彫刻で、力強い作品です。
作者は、藤部吉人(ふじべ よしと)さんで、
三間町に生まれたのですが、
大野が原で製作をされていました。
「森と魚は表裏一体:
森から水が生まれ、そして海に流れ、
生命を育み、大地に恵みを与える」
というテーマで彫刻されています。
独特の個性と力強さをもった作品です。
愛媛の各地で見かけます。

・作品の記録・
作者の藤部吉人についてお店で聞いたら、
だいぶ前に亡くなられたとのことです。
調べたら、2013年12月3日に
67歳で亡くなられていました。
西予や愛媛各地に森の魚の作品はあるので、
目についたら記録に残しておこうと考えています。