2008年7月31日木曜日

5_71 有機物:炭素3

 有機物は、炭素の循環において重要な役割を果たします。それは、私たち生物を構成しているものだからです。でも、有機物も恒久のものではなく、さまざまな変化をしながら、地表を循環しています。

 生物は、有機物からできています。有機物は、生物にとって、なくてはならないものです。有機物の主成分が、炭素です。炭素は、有機物の骨格ともいうべき役割を果たしています。
 炭素が、どのように、何個連なるかは、自由に選ばれます。炭素は、非常に多様な結びつき方をして化合物をつくっていきます。炭素原子は、4価のイオンになります。炭素は、結合するためにの「腕」が最大4つあるということになります。4つも結合できる「腕」があるため、さまざまな原子と結合できます。結合には、何通りかのタイプがあります。
 有機物では、炭素は、主として水素(H)、酸素(O)、窒素(N)、塩素(C)、イオウ(S)、リン(P)などと、共有結合をします。共有結合とは、2つの原子が、足りない電子を共有しあって結びつくことです。原子は、外側の電子の数が希ガスの数の状態になっている時が安定してます。もし、電子が足りないときは、足りない原子同士が、電子を共有して電子の対を形成して、補っていきます。このような結合の方法が、共有結合と呼ばれています。共有結合は、他の結合(イオン結合や金属結合)と比べても強いため、安定した化合物をつくることができます。
 また、炭素は、炭素原子同士が結びつくことがあります。2つの炭素が、一つの共有結合(単結合)の場合、2つの共有結合(二重結合)、3つの共有結合(三重結合)する場合まであります。
 さらに、多数の炭素原子が、鎖状や環状に結合していくことがあります。
 以上のように、炭素は、複雑な結合の仕方をし、炭素が少数から多数までいろいろな数になれるので、多様な化合物ができます。大きな化合物では、分子量が数十万や数百万に達するようなものもあります。種類も数え切れないほどあります。
 有機物は、生物の構成要素でありながら、地表を循環する炭素の一部でもあります。生物が死ぬと、有機物が分解されます。その分解を促すのは、他の生物です。分解を促す生物は分解者とよばれていますが、複雑な有機物を食べ、単純な有機物(排泄物)や二酸化炭素(呼気)として体外に出します。単純な有機物も、他の生物の栄養になり、最終的には、二酸化炭素になっていきます。
 二酸化炭素は、分解者によって、大気や海水中に放出されます。大気や海水中の二酸化炭素は、植物が光合成をするときの材料となります。光合成とは、水(H2O)を光で分化するときのエネルギーで二酸化炭素から、有機物(炭水化物など)をつくる作用です。そのときに、副産物として酸素が形成されます。
 光合成によって得られた有機物は、植物の栄養として成長させます。植物は草食動物の餌になり、草食動物は肉食動物の餌になります。植物や動物も、排泄物や死体は、分解者の栄養となります。そして有機物として生物間を循環していきます。これが、食物連鎖と呼ばれるものです。
 生態系が健全である限り、生物に利用されている炭素は、姿かたちを変えますが、その総量はそれほど大きく変わりません。木の切って燃やしても、再び木が生えてくれば、長い目で見れば、炭素の収支は合います。しかし、過剰な森林伐採や都市化などで、生物(特に植物)の総量が極端に減少すると、炭素の収支のバランスが崩れます。
 かつて生物が、大気や海洋中の二酸化炭素を、有機物として取り込み、体を形作っていました。その生物の遺骸が、地層の一部として貯められ、炭素が濃集します。石炭や石油、天然ガスなどが、それです。今では、エネルギー源として燃焼させられています。
 燃焼した炭素は、大気中に二酸化炭素として放出されることになります。もともと大気中にあった二酸化炭素が、時間を経て戻ることになります。これは、炭素の大きな循環です。
 人類のエネルギー消費が少なかった時は、このような循環は、問題を起こさなかったのですが、消費が激しくなると、人為による二酸化炭素が、温暖化として問題になっています。
 次回は、炭素が二酸化炭素になっているときの様子や変遷を見てきましょう。

・二酸化炭素・
地球温暖化が言われてだいぶ時間がたっています。
今や、二酸化炭素が犯人扱いをされ、
悪者のようになっています。
しかし、二酸化炭素を出している張本人は人類なのです。
それを忘れてはけません。
二酸化炭素は、人類が犯した犯罪の証拠であって、
犯人ではないのです。
しかし、二酸化炭素の排出を伴うエネルギーの恩恵によって
現在の文明は成り立っています。
これを忘れて議論をしてないでしょうか。
気をつけなければなりませんね。

・夏休み・
私の大学は、今日で前期の定期試験が終わります。
明日から、学生は夏休みになります。
教員は、採点と成績評価をすることになります。
忙しい夏が始まります。
定期試験のときは、平常の授業があるときと
同じような体制で校務があります。
子供たちが夏休みでも、親は仕事となります。
ですから、家族サービスは、8月になってからです。
今年は、北海道の中央に位置する然別周辺に出かける予定です。
旅行中、いろいろな行事に参加する予定をしていますが、
どなるでしょうか。
私は、体調がまだ本調子でないのが不安材料です。
まあ、心配しても始まりません。
なるようになるでしょう。

2008年7月24日木曜日

5_70 カーボンナノチューブ:炭素2

 炭素に関して20世紀後半に、新構造が相次いで発見されてきました。このように炭素の新しい構造が次々と発見されてくるのは、私たちの知らないことがまだまだいっぱいあることを物語っています。そしてそこでは日本の研究者が重要な役割を果たしていました。

 炭素は、私たち人類にとって、非常になじみのある元素です。私たち生物の体は、炭素を中心に構成されています。ですから、炭素は私たちにとって必須の元素ともいえます。そのため、炭素の関する私たちの知識も、他の元素と比べれば非常に多くなっています。文章にすれば、知識の体系は、教科書何冊分にもなるはずです。
 そころが炭素に関する私たちの知識は、まだまだ不十分なのです。それは未だに、炭素に関係する新しい発見ががあることもからもわかります。そんな発見のいくつかを紹介しましょう。
 炭素だけがつくる結晶構造としては、石墨(グラファイト)の層状結晶やダイヤモンドの硬い結晶があることは、古くから知られていました。ところが、20世紀後半になってから、炭素には、いろいろな新しい構造があることがわかってきました。
 1961年、当時通商産業省工業技術院の進藤昭男さんが、炭素繊維(カーボンファイバー)を発明しました。また、進藤さんは、1967年に、金属よりも丈夫な炭素繊維の製法を開発しました。その後も技術は進み、今では炭素繊維はいたることろで使われる素材となってきました。
 1985年、炭素が60個集まってサッカーボール状のフラーレン(C60フラーレンと呼ばれる)という構造があることが、アメリカとイギリスの研究者によって発見されました。ところが、このC60フラーレンの発見に先立って、豊橋技術科学大学の大澤映二さんは、ベンゼンの構造の研究から、サッカーボール状のC60も存在しうると予言していました。しかし彼がその予言を書いたのは、日本語の雑誌でした。欧米の科学者には、その予測を知られていませんでした。実際の発見は、予言から15年どの後のことでした。
 1991年には、NEC筑波研究所の飯島澄男さんが、炭素のフラーレン構造体をつくっている途中に、カーボンナノチューブをたまたま発見しました。カーボンナノチューブとは、炭素(カーボン)の小さい(ナノ)チューブのことです。炭素が6個環状につらなったものが、筒状の構造を持ちます。
 カーボンナノチューブの発見の経緯は、あちこちで紹介されていますから、御存知の方も多いことでしょう。偶然の発見ですが、そこには常日頃研究対象に向き合っていたこと、そして発見をするための技術を持っていたことが重要なカギになりました。
 カーボンナノチューブは、ナノという名称がついているように、ナノサイズ(10億分の1m)の非常に小さいものなので、その発見は、電子顕微鏡の操作に長けた飯島さんだからできたといえます。また、飯島さんは電子線回折という仕組みを使って、炭素が小さいな筒状(ナノチューブ構造)をしていることを突き止めました。この構造の解明が、カーボンナノチューブの発見となります。
 現在では、カーボンナノチューブについて、いろいろ調べられています。構造にもいくつのもタイプがあることや、6個の環が、時々5個になったり、7個になるような乱れもあることが分かってきました。
 カーボンナノチューブ特有の性質がも分かってきました。鉄の数百倍もの強度をもつこと、電気を通すのですが、ある構造になると半導体になること、ガス(特に水素が注目されている)をよく吸着すること、熱をよく伝えることなどの性質がわかっています。ですから、新素材として注目されています。
 判ってきたことは、いいことばかりではありません。悪いこともわってきました。それは、カーボンナノチューブが、アスベストと似た健康被害を起こす可能性があることがわかってきました。ですから、取り扱いには注意が必要だとなってきました。
 私たちは、炭素という身近な元素をよく知りだしたのは、最近のことです。そして、今も新しいことが次々と発見されています。炭素は生命にとって重要で不可欠な元素であるのですが、まだまだ分からないことがいっぱいあるようです。

・実用化・
炭素のさまざまな構造の発見には、
日本の研究者が関わっていました。
このような発見は、日本が誇るべきことだといえます。
発見からある程度時間が経過して、研究が積み重ねられると、
その特性を活かした、新しい素材が生まれ、実用化されます。
先行した炭素繊維は、今ではいろいろなところで利用されています。
また、フラーレンは、潤滑剤として実用化がはじまっています。
カーボンナノチューブは、発見されてまだ新しいためでしょうか
実用化はまだです。
研究が進めば、いろいろな実用化が進められるでしょう。

・不調・
咳がなかなか抜けません。
私は、風邪をひくと咳が長引くので、
今回はその症状がひどいようです。
咳のため、腰痛もでています。
だいぶ納まってきたのですが、
まだまだ本調子でありません。
無理せずにいきたいのですが、
締切りのある原稿、こなさなければいけない講義や校務、
そして今週末からは、定期試験がはじまります。
すると採点と成績評価がまっています。
なかなか気の抜けない夏休みですが、
なんとか体調を戻したいと考えています。

2008年7月17日木曜日

5_69 化合物:炭素1

 炭素は、非常に身近な元素です。地球の表層においても、物質循環において重要な役割を果たしています。シリーズで炭素や炭素の化合物も挙動を探っていきましょう。

 炭素は、二酸化炭素の主成分です。炭素を燃やすと、炭素が空気中の酸素と結合して、二酸化炭素になります。その時にエネルギー(熱エネルギー)を出します。それを私たちは利用しています。燃焼によって出てきた二酸化炭素は、地球温暖化問題の主原因として、悪者扱いされています。しかし、二酸化炭素は悪者ではなく、二酸化炭素を必要以上に排出していることが問題なのです。炭素はただ自然に摂理に従って二酸化酸素という化合物を作っているに過ぎないのです。
 では、私たちは、炭素や二酸化炭素の振る舞い(挙動)や、地球の歴史の中で果たしている役割を、どれほど知っているのでしょうか。このシリーズでは、炭素やその化合物が、地球で果たしている役割を見てきます。
 炭素は、元素記号C、原子番号6の原子で、軽い方にホウ素(B、原子番号5)、重い方にに窒素(N、原子番号7)があります。炭素原子の最外殻には、4つの電子があるため、4価または2価のプラスイオンになりやすい性質をもちます。同じような性質を持つ元素として、原子番号14の珪素(Si)があります。珪素は、マントルや地殻の岩石の中では主役(主成分)になっていますが、地球表層では炭素の方が主役を演じます。
 物質には、液体、固体、そして気体として変化します。炭素自体も3つの状態(三態)がありますが、地球表層では三態すべてが生じるわけではありません。地球の表層では、通常炭素は固体です。しかし、炭素はさまざまな化合物をつくります。それらさまざまな化合物が、地球では重要な役割を果たしています。その概要を見ていきましょう。
 炭素の単体は固体で、石墨(グラファイト)という鉱物になります。炭素が高温高圧状態になるとタイヤモンドになります。ダイヤモンドも炭素の単体です。
 炭素の気体の化合物としては、二酸化炭素が重要です。別の回で詳しく説明しますが、二酸化炭素は、昔の地球や惑星の大気として主成分となっています。ですから惑星の表層環境を考えるとき、二酸化炭素は重要な役割を果たします。
 炭素は、通常の状態では液体にはなりません。しかし、炭素が酸化されて二酸化炭素になると、その一部は炭酸(CO3)という2価の陰イオンとなり、水に溶けこみます。溶ける量は、溶解度によって表されますが、温度が低いほどたくさん溶けこみます。
 溶けた炭酸は、地球表面に多く、水に溶けやすいカルシウム(Ca)の2価の陽イオンと結びついて、炭酸カルシウム(CaCO3)という化合物をつくります。炭酸カルシウムは、ある程度水に溶けますが、一定量以上になると、固体として沈殿していきます。二酸化炭素やカルシウムの供給が続くと、沈殿も続きます。地球規模で見ると、海底下の沈殿物では下の方が固まり、方解石という鉱物になります。方解石は石灰岩という石になります。
 炭素の化合物には、固体でもなく、液体、気体でもない不思議な物質があります。それは、分散系と呼ばれるものです。分散系とは、小さな粒子が、液体、気体、あるいは固体の中に溶けることなく均質に混じっている状態です。私たちの体をつくっているものは、有機物がその主成分ですが、その存在形態が分散系になっています。分散系は複雑な振る舞いをするものもあります。最近では、そのような特性を活かして、いろいろなものに応用されててきます。スライム、ゲル、ジェルなどとして商品化が行われています。
 シリーズでは、地球の表層で重要な役割を果たしている化合物をいくつか取り上げていきます。上で、炭素の単体は固体で石墨という鉱物になっているといいましたが、実はカーボンナノチューブという不思議が固体もあります。次回は、シリーズの本題からは少し外れますが、カーボンナノチューブを見ていきます。

・炭素シリーズ・
今回から数回に分けて、
炭素とその化合物に関するエッセイをシリーズとして
続けていこうと考えています。
炭素は実は、地球にとっては
重要な役割を果たしています。
しかし、その実態は必ずしも
よくわかっているわけではありません。
どこまでわかっているかを、
このシリーズで示せればと考えています。

・腰痛・
先週末から、腰の筋肉痛で動けなくなっています。
風邪でひどい咳をしばらくしていたら、
もともと弱かった腰に負担がかかり、
腰痛になってしまいました。
風邪で内科にまだかかっているのですが、
同時にマッサージで腰痛のほうも治療をしています。
明日は、出張が入っているので、
痛み止めをもらって、出かけようかと考えています。

2008年7月10日木曜日

5_68 かぐやが描く地図

 「かぐや」は日本の月探査衛星です。その「かぐや」が、また快挙を成し遂げました。七夕にちなんで「かぐや」の成果を紹介しましょう。

 「かぐや」は、月をめぐる日本の人工衛星です。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、2007年9月14日に打ち上げたもので、正式にはSELENE(SELenological and ENgineering Explorer)と呼ばれています。科学と技術における目的がそれぞれあります。科学的な目的は、月の起源と進化を明らかにすることです。また、技術的な目的は、月周回軌道へ人工衛星をもっていき、軌道や姿勢を制御技術を確かめることです。技術的な目的は一応の成功をみていますが、現在は、科学的な目的が重要になってきます。
 「かぐや」は一つの人工衛星のように思われていますが、実は2つの子衛星を従えています。主衛星の「かぐや」は、高度約100kmの両極を通るような円軌道で着くを回るのですが、より高い楕円軌道を周回する2機の子衛星「おきな」と「おうな」から構成されます。もちろん、「かぐや」同様、かぐや姫の話からこれらの衛星の名称はつけられています。
 「おきな」は、高度2400kmまで離れる楕円軌道で、月の裏側の重力場計測のため、地上局と主衛星との間の通信を中継をするリレー衛星としての役割があります。「おうな」は、高度800kmまで離れる楕円軌道にあり、電波を送信することで、月の周りの重力場を測ります。
 「かぐや」については、以前このエッセイでも紹介したのですが、2007年11月7日付けで、日本の月周回衛星の「かぐや」がとったハイビジョン撮影が成功したという話題です。
 4月には、ハイビジョンカメラによる「満地球の出」がテレビで放映され、多くの人の関心を集めました。その映像と前後して、月の全球の地形図が公開されていたのですが、あまり話題になりませんでした。
 「かぐや」に搭載されたレーダ高度計で測定されたものです。その精度は、5mの標高差を見分けられるものです。これまで月の地形図で一番高精度のものは、1994年に行われたアメリカのクレメンタイン月探査の写真測量などによって得られた約27万点の標高基準点のものでした。これは2005年にアメリカの地質調査所(USGS)が公表したもので、ULCN2005(Unified Lunar Control Network 2005)と呼ばれているものです。
 「かぐや」の観測で、3月末までに600万点以上の観測データが集められています。今回の発表されたものは、2週間分の観測データ、約100万点が処理されたものですが、その精度の変化は一目瞭然です。月の地形図は、観測が続けば、さらに精度は上がっていくはずです。
 「かぐや」による探査は、アポロ計画以来の大規模な月の研究が行われれていることになります。そして、日本は今や、惑星や衛星探査においても、予算規模や投入人材は、アポロ計画と比べれば明らかに劣りますが、技術力や科学的成果では、アポロ計画に匹敵しうるほどの実力を持つようになったのです。
 日本の宇宙観測からは、これからも、なかなか目が離せませんね。

・七夕・
今週は七夕なので、月にふさわしい話題を紹介しました。
北海道、いや日本中がサミットでわいていますが、
本来の七夕を味わうには、月を見なければなりません。
いまや月を見る目は、地球からだけでなく、
月にすぐ近くまでに達していています。
それも日本の技術によってです。
スペースシャトルの宇宙の話題が盛り上がりましたが、
科学者たちは、自分に与えられた任務をこつこつと果たしています。
そんな科学者が挙げた成果で、
あまり日の目を見ないものを紹介することにしました。
なお、月の地形図は、
http://www.isas.jaxa.jp/j/topics/topics/2008/0410.shtml
にありますので、興味のある方は、
覗かれてみてはいかがでしょうか。。

・風邪・
先週末から風邪を引いたようで、
咳も出て、少々熱っぽい気もします。
まあ、でも、動き回る元気はあります。
講義は可能な限りおこないます。
講義を休むと補講をしなければなりません。
すると学生に迷惑をかけることになります。
動ける限り、講義を続けるつもりです。
まあ、あまりひどいと講義はできませんので、
ほどほどにしますが。

2008年7月3日木曜日

6_71 地質百選

 地質の名所を案内した「地質百選」というものを紹介します。その目的と意義を紹介します。

 「地質百選」というものを御存知でしょうか。これは、日本の地質に関係する典型的な場所を100箇所選んだものです。
 地質百選は、2005年にNPO法人地質情報整備・活用機構(GUPI)と社団法人全国地質調査業協会連合会が、「日本の地質事象百選」というプロジェクトを提案して、全国から募集をしてきもたのが発端になっています。2006年には、広くメンバーを拡充して、「日本の地質百選選定委員会」を結成しました。「日本の地質百選選定委員会」には多くの関連機関、学協会、行政機関が参加して、非常に大きなプロジェクトとなりました。
 日本列島は、世界的に見ても、「島弧」とよばれる特徴のある地質環境です。そこに島弧を代表する地質がみられる地点を選んでおけば、国際的にもアピールできるし、日本の国民への啓蒙や、地域住民も身近な大地の重要性を理解することにつながります。地質百選の選定事業や選定を行うことで、そのような意識を持ってもらうことが重要な目的でした。地方公共団体や市民からの意見も参考にしました。最終的に全国から400箇所近くの候補が推薦されてきました。
 2007年5月10日に第一次選定として、83箇所が公表されました。この日は、第1回「地質の日」にあたります。また、2007年10月には「日本列島ジオサイト地質百選」が出版されました。選定から公表の時期は、2008年が国際惑星地球年で、2007年から2009年の3年間、国際的な取り組みがなされ、その一環の活動とも位置づけられています。
 本の中で、私のホームページアドレスも紹介されています。友人が北海道の地質百選の一つである神居古潭で、私が書いたエッセイを引用してくれたためでした。
 地質百選は、今後、研究教育だけでなく、観光資源や地質情報資源として整備、保全への取り組み、地域の振興、関連する博物館などの施設の充実、連携に向けて、重要なステップとなることが目指されています。
 ところで、地質百選なのに、83箇所しか選ばれていないのは、少々不思議な気がしませんか。それには、理由があります。「日本の地質百選選定委員会」では、第2期選定を用意していて、あと17箇所を追加する余地を残しています。今回の候補地以外にも、見落とされている地域もあるかもしれません。そのような地域も取り込めるように配慮されているそうです。まだ、次期のスケジュールは公表されていませんが、より多くの候補地が挙がることによって、市民の地域地質への関心が高まるのではないかと期待されています。

・地質見学・
地質百選に関する情報は、NPO法人地質情報整備・活用機構のホームページの
http://www.gupi.jp/geo100/
に詳しく紹介されています。
また、出版物の「日本列島ジオサイト地質百選」は
(ISBN: 978-4-274-20460-9)
オーム社から発行されています。
私も地質案内をホームページとメールマガジンを発行しています。
http://terra.sgu.ac.jp/geo_essay/index.html
興味があれば見てください。
また、旅行などででかけて、近くに地質百選がある際には、
ぜひ足をのばして、見学されてみてはどうでしょうか。

・研究授業・
ゼミの学生が、次々と教育実習をしています。
そして担任は研究授業に立ち会う機会が増えます。
研究授業とは、教育実習生が実習の成果を
指導教諭、他の先生、大学の指導教員などにみせる
実習の総括のようなもので、
実習期間の終わり近くに行われます。
そのため、実習生は緊張をしられるでしょうが、
今までの実習で学んだことを活かして
自分なりの授業をすることになります。
その成果を送り出した大学の教員が見ることになります。
学生の成長のほどを、見学させていただくことになるのですが、
もしミスをしたらとか、生徒たちが騒いだらとか、
まるで親のような心配が湧いてきます。