2014年6月26日木曜日

3_131 ダイヤモンド 4:疑問点

 オフィオライトからのダイヤモンドは、事実として認めるしかないのですが、研究者かにとっては常識を覆す事実です。なぜ、それがそこにダイヤモンドがあるのか。いろいろ疑問が湧いてきます。

 オフィオライトからダイヤモンドが見つかることを紹介しました。ところが当初これは、オフィオライトの研究者にとっては、信じがたいことでした。最初の発見論文は間違いだと否定されたのも、そのような気持ちを反映していたのではないでしょうか。
 オフィオライトとは、海洋地殻とその下のマントルの岩石が、付加作用や衝突作用によって、陸に持ちあげられたものです。ダイヤモンドが見つかっているのは、海洋地殻の形成しているマグマだまりの底あたりですから、海嶺での地殻の厚さは6kmほどで、厚くてもせいぜい10km程度です。一方、ダイヤモンドが形成される深度は、100km以深であることが、さまざまな検証や合成実験からも知られています。つまり、オフィオライトあるいは海洋地殻やそのマグマだまりのあたりの条件では、ダイヤモンドができるには浅すぎるのです。
 また、ダイヤモンドは炭素からできているので、形成環境として炭素をたくさん含んだ場でなければなりません。ところが海洋地殻の形成は、そのような場でありません。海洋地殻は、「枯渇したマントル」が溶けてマグマが形成されます。
 「枯渇したマントル」とは、地球の材料物質である隕石から考えられる初期的マントル(始原、あるいは初生マントルと呼ばれています)と比べると、一度はマグマを出した経歴をもつマントルのことです。その違いは、微量元素でチェックできます。溶けた経歴をもったマントルは、溶けたとき最初にでていく元素(インコンパティブル元素)が極端に少なくなっています。そのような状態を「枯渇」(delpleted)と表現します。
 「枯渇」に対比される言葉は「富む」、「肥沃」(enriched)という言葉になります。インコンパティブル元素に富んだ物質は大陸地殻を構成している岩石や堆積物です。始原マントルから大陸地殻の成分が抜けて、枯渇したマントルが残ります。炭素はインコンパティブル元素にあたり、大陸地殻や堆積物に富んだ成分となります。
 ダイヤモンは、「肥沃なマントル」の中で形成されます。炭素の供給過程として、沈み込む海洋プレートに伴って堆積物の潜り込んだものや、大陸下部の物質のマントルへの落下、始原マントル内での炭素などのインコンパティブル元素の農集など、肥沃になるための特殊なプロセスが必要になります。
 しかし、オフィオライト、つまり海洋プレートはそのようなプロセスを受ける場とは考えられないのです。ダイヤモンドの形成場として、「枯渇したマントル」由来のオフィオライトではいろいろな難点があります。では、それはどのように解決されるでしょうか。次回としましょう。

・快晴・
北海道は清々しい天気がやっと戻ってきました。
朝少し雲があっても、しばらくすると晴れてきます。
ここ最近の青空は、今までの曇天を取り返すような
素晴らしい快晴です。
心地よい初夏の風が吹いています。
北海道の一番いい季節でもあります。

・教員採用試験・
いよいよ今週末、教員採用試験があります。
学科の多くの学生が受けますが
今までの努力の結果が問われます。
しかし、まずは先生になりたいという
意志が強いかどうかが重要です。
その意志さえあれば、
たとえ採用試験に失敗しても
たとえ何年か臨時教員をしても、
努力を続ければ目標は達成できます。
学科の多くの卒業生たちがそれを証明してくれています。
あとは、その意思を継続するだけです。
そんな心境になってくれればいいのですが。

2014年6月19日木曜日

3_130 ダイヤモンド 3:産状

 オフィオライトからのダイヤモンドは、数千個という数が見つかっています。ダイヤモンドの岩石の中での産状もわかってきました。では、オフィオライトの中でダイヤモンドがどのように形成されるのか、それが問題なのです。

 オフィオライトの中からダイヤモンドが見つかるといいましたが、オフィオライトの岩石群の中の、どのようなところから見つかっているのでしょうか。
 ダイヤモンドは、オフィオライトのカンラン岩とクロミタイトと呼ばれる岩石の中から見つかっています。
 カンラン岩とは、マントルを構成している岩石で、オフィオライトではマグマを供給した「出がらし」の(ダナイトやハルツバージャイトと呼ばれる)カンラン岩と、マグマが冷えてできた結晶が沈降してマグマ溜まりの底に層状にたまった(レルゾライトと呼ばれる)カンラン岩があります。ダイヤモンドが見つかるのは、「出がらし」のカンラン岩から多いようです。
 また、クロミタイトとは、クロム(Cr)成分に富んだスピネル(クロムスピネルと呼ばれます)という鉱物を主とする岩石です。クロミタイトは、レルゾライトのさらに下に、つまり最も早期にマグマから沈殿してできた岩石ています。時には、「出がらし」カンラン岩の中に「さや状」や「マユ状」にできることもあります。ダイヤモンドは、「さや状」クロミタイトから見つかっているようです。
 研究の過程で、オフィオライトから数千個のダイヤモンドが見つかっています。見つかる比率は、300から600 kgの岩石から数十個ほどのダイヤモンドが見つかります。サイズは0.2から0.5 mmの直径で、黄色や黄緑色などの色がついています。Ni-Mn-Coの合金の包有物の中に、ダイヤモンドが見つかることが多いようです。これは、キンバーライトのダイヤモンドとは明らかに違った産状です。
 オフィオライトのカンラン岩やクロミタイトでは、多様な金属元素の合金鉱物が見つかっています。通常岩石中では、金属元素は酸化物になっているので、金属のままであるということは酸素がないか強い還元的な環境でなければなりません。ですから、オフィオライトの中に、特殊な還元的環境が出現するような条件があったことは確かです。
 数千個という大量のダイヤモンドは、大量の岩石から分離されたものでした。岩石の中にある状態のダイヤモンドが、6個だけみつかっています。6個のダイヤモンドは、岩石の中での産状がわかるので重要な試料となります。いずれもクロミタイトから見つかっていて、ダイヤモンドのサイズは0.2から0.5 mmの直径があります。クロミタイトはクロマイトという鉱物からできていますが、ダイヤモンドの周囲は、0.5から1 mmほどのマグネシオクロマイトに取り込まれていて、ダイヤモンドの周囲には非晶質の炭素もあります。このようなクロマイトの中だけに還元的な条件が出現した産状となっています。
 オフィオライトのダイヤモンドは、上で述べたような記載からその存在は確認できました。岩石中での産状も把握されてきました。でも、事実としてわかっているのは、ここまです。
 問題は、なぜオフィオライトからダイヤモンドが見つかるのかという成因です。その推定を、次回、紹介しましょう。

・ザクザク・
ダイヤモンドが数千個も見つかっているというのは、
ザクザクありそうですが、
大量の石を処理しているから見つかっているのです。
大量処理は、鉱業的な探し方でもあります。
研究においても目的があれば、大量処理をして
必要な試料を集めることはあります。
私はやったことがありませんが、
論文で時々見かける手法でもあります。
体力勝負の研究で、非常に労力が必要な手法でもあります。
その結果として見つかるダイヤモンドは、
サイズも小さいく、色も付いていることから、
装飾用としては向いていないのかもしれません。
鉱業としては、成立するかどうかは不明です。
ですから、とりあえずは学術的に調べていくことでしょうね。
成因や産状の広がりなどが明らかになってくれば、
鉱業的に採算がとれるかどうかもわかってくるでしょう。

・天候不順・
北海道の天候不順は、ここ1週間ほど継続しています。
天気が悪く、毎日のように
雨が降ったりやんだりしています。
梅雨明けころに、梅雨前線が北に上がって
エゾ梅雨と呼ばれる現象が起こることがあります。
しかし、今回の雨は、気温も低めで、
梅雨前線も太平洋におりているので
エゾ梅雨とは違っています。
まあ、こんな時もあるのでしょうね。

2014年6月12日木曜日

3_129 ダイヤモンド 2:オフィオライト

(2014.06.12)
 オフィオライトからダイヤモンドが見つかっています。オフィオライトのダイヤモンドの認定については、紆余曲折があった後に、今では確認がされています。ただし、まだすべてのオフィオライトから発見されているわけではなく、一部のオフィオライトからだけです。

 キンバーライトという火山岩に伴うものが現在の宝石の供給源で一番多くのダイヤモンドを産出しています。その他のダイヤモンドの産状として、衝突ダイヤモンドも超高圧変成ダイヤモンドを紹介しましたが、量も少なく、大きさも小さいものでした。もう一つの産状として、近年見つかってきた、オフィオライトに伴うダイヤモンドがあります。
 オフィオライトとは、海洋プレートが海溝で沈み込むときに、大陸の縁や島弧に一部が持ち上げられて、大陸に保存されたものです。過去の海洋プレートの「化石」のようなものです。オフィオライトに見られる岩石の並び(層序と呼びます)は、下からマントルの岩石(カンラン岩の一種のハルツバージャイト)、次にマグマだまりの底に沈殿した岩石(いろいろなカンラン岩やクロミタイトなど)、マグマだまりが固まった岩石(斑レイ岩)、噴出するときのマグマの通り道となった岩脈群(ドレライト)、海底に噴出した枕状の溶岩(玄武岩)、その上に海底に沈殿した生物の遺骸(層状チャート)となります。
 1993年には、オフィオライトのカンラン岩からダイヤモンドが見つかったという報告がなされましたが、なんらか(自然か人為)の原因による汚染ではないかと考えられていました。その原因として、岩石を顕微鏡で観察するときに研磨するのですが、研磨剤にダイヤモンドを使うことがありました。そのような人為的にダイヤモンドが紛れ込んだのか、あるいは自然状態であるが、オフィオライトの岩石が形成されるときに同時にできたのではなく、何らかの理由で紛れ込んだのではないかと考えられていました。つまり、オフィオライトの中でダイヤモンドが形成されたのではなく、汚染物質としてダイヤモンドが紛れ込んなのではないかとされてきました。
 ところが2000年代になって、ダイヤモンドの存在は、汚染ではないことがわかってきました。各地のオフィオライトで、何人も研究者がダイヤモンドが検証され、他の高圧鉱物も見つかっていることから、ダイヤモンドの産出は確からしいと考えられてきました。もちろんそれらのダイヤモンドは、大きなも宝石になるようなサイズではなく、1mmに満たいないマイクロダイヤモンドですが。
 ダイヤモンドが見つかっているオフィオライトの多くは、チベットの衝突帯からです。この地域は、インド大陸がユーラシア大陸に衝突したとき、間にあった消えたテチス海を構成していた海洋プレートの断片が、オフィオライトになっています。ダイヤモンドの産地は点在していますが、2000kmの長さにわたって、ダイヤモンドを含むオフィオライトが分布していることになります。現在のところ、チベットでは8箇所のオフィオライトから見つかっています。
 他にも、天山山脈やウラルのオフィオライトからも、マイクロダイヤモンドが見つかっていますが、いずれも大陸の衝突や島弧の衝突でできたオフィオライトのようです。
 マイクロダイヤモンドは、大陸が衝突した地域のオフィオライトだけに見つかるのか、それとも他のタイプのオフィオライトからも見つかるのかは、今後の研究を待たなければなりません。
 さて、オフィオライトの中のダイヤモンドは、どのようなところから見つかるのでしょうか。実際の産状についてですが、それは次回としましょう。

・地質学的フレームワーク・
私は、オフィオライトを研究していました。
研究常識からすると、オフィオライトの中から
ダイヤモンドが発見されるとは考えられません。
オフィオライトとは海洋プレートの最上部にあたります。
まして、ダイヤモンドが見つかっているのは
マグマだりの底ですから、
せいぜい10kmほどの深さしかないはずです。
そこはダイヤモンドができる条件からは、かけ離れています。
不思議としかいえません。
オフィオライトのダイヤモンドの成因を解明は
地質学的フレームワークを変更する必要が
でてくるくらいの重要性を持つかもしれません。
今度、もっと研究されるべきでしょう。

・光陰矢のごとし・
6月は、北海道が一番いい季節になります。
ところが、私にとって、6月はあれよあれよという間に、
過ぎていきそうで焦っています。
やるべきこともできずに時間だけが、
ただただ過ぎていきます。
年々忙しだけが増え、
時間が矢のように過ぎていきます。
これは私だけでないのでしょう。
「光陰矢のごとし」という言葉があるのですから、
昔の人も同じ思いに駆られたのでしょう。
でも、ゆったりとした落ち着いた時間が
流れないでしょうか。
それも心の持ちよう次第なのでしょうかね。

2014年6月5日木曜日

3_128 ダイヤモンド 1:いくつかの産状

 以前、日本でダイヤモンドが発見されたというニュースを、エッセイで紹介したことがあります。そのニュースもなかなか興味深いものでしたが、他にもダイヤモンドが見つかるところがあることがわかってきました。今までにないダイヤモンドの産出状態を紹介しましょう。

 ダイヤモンドは宝石として興味を持つ人も多いのですが、研究者も興味を持っています。それは、非常に高温高圧でないと形成されない鉱物なので、そのでき方を探ることは、自然界でどのようにして高温高圧状態ができるかを知ることになります。
 まずは、ダイヤモンドがどこから見つかるかをみていきましょう。古くから知られているのは、キンバーライトと呼ばれる特殊は火山岩に含まれているものです。鉱山としてして採掘されているダイヤモンドのほほとんどは、キンバーライトに由来するものです。
 キンバーライトは、地球深部、100kmより深いところでできたマグマが、高速で上昇してきて噴出したものです。非常に特殊な火山岩です。キンバーライトの他にもランプロアイトとよばれる特殊な火山岩でも見るつかります。いずれも、アルカリ成分に富むマグマの噴出です。
 2007年に見つかった日本のダイヤモンドも、ランプロアイトの火山岩からでした。ただし、日本列島という特殊な環境で見つかったことは重要な意味があります。それは、1_63や3_70から3_73のエッセイを参照して下さい。
 ダイヤモンドは、炭素からできている鉱物で、炭素が超高温高圧状態にされると形成されます。深部でマントル内で炭素の集まっている条件でダイヤモンドの結晶ができ、さらに低温低圧ではグラファイト(石墨)などの結晶に変わるるので、変わる前に上昇してしまう必要があります。そのような条件を満たすものに、キンバーライトやランプロアイトがありました。
 それ以外にも、いくつかの条件を満たす産出状況があることがわかるようになってきました。
 まず、超高圧変成岩と呼ばれる岩石です。大陸同士の衝突で、深く潜り込んだ方の大陸地殻では、高圧条件が出現します。1990年には、そんな超高圧変成岩の中からダイヤモンドが発見されています。120から150kmより深いところまで潜り込んだと考えられています。その後、地表に露出したことになります。超高圧変成ダイヤモンドは、変成作用でできた鉱物であるガーネットや輝石、白雲母、ジルコンなどの結晶の中や境界部でみつかります。ただし、0.1から0.01mmほどの大きさしかありません。
 もうひとつは、激しい衝突などで、瞬間的に高温高圧条件を生み出されたときにできたものです。自然界では、隕石の衝突で発生する条件が考えられます。1997年には、衝突ダイヤモンドが発見されています。シベリアのポピガイ(Popigai)クレーターが最も大きいものとして知られています。ただし、非常に小さな結晶です。
 衝突ダイヤモンドも超高圧変成ダイヤモンドも、いずれも稀で非常に小さいものしか見つかっていません。
 1993年には、別のタイプのダイヤモンドが見つかっています。そのタイプのダイヤモンドは、量も多く、大きさもかなりのもののようです。それは、次回としましょう。

・エゾハルゼミ・
5月末から急に暖かくなってきました。
30度を越える真夏日にもなりました。
今まで、肌寒い日が続いていたので、
やっと夏になった気がします。
暑くなるをまっていたように
エゾハルゼミが盛んに鳴いています。
そして6月4日からYOSAKOIも始まりました。
北海道の初夏の風物詩がそろってきました。

・教育実習・
初夏を迎えたのですが、
私の忙しさは一段と増してきました。
今年は教育実習生が例年の倍ほどいるので、
担当の教員は出かけることが多くなりました。
6月がピークで、7月まで続き、
9月にも再度ピークがきます。
休講ができないので
その調整がなかなか大変です。
補講をすることでなんとかやりくりしています。