2010年6月24日木曜日

5_88 はやぶさ:日本の宇宙探査3

 この「日本の宇宙探査」シリーズを書き始めたときは、宇宙のことがあまり注目されていなかったのですが、「はやぶさ」のおかげで、一気に宇宙への注目も高まりました。問題は、試料が取れているかどうかなのですが・・・。


 「はやぶさ」は、火星と木星の間に多数ある小惑星のひとつ「イトカワ」を探索するための探査機です。小惑星は非常の遠くにあるため、地球から信号を送っても届くのに10分以上かかるため、地球からの制御では、危機回避ができません。そのために、自立的に考えて行動できる能力を持った探査機でした。
 火星より遠くの小惑星からの試料を持って帰るという非常に難しいミッションも含まれていました。隕石をのぞけば、人類が手にしている地球外の天体の試料は月だけです。「はやぶさ」には、小惑星から試料を持ち帰るというミッションも含まれていました。
 2003年5月9日の打ち上げから7年以上の長きにわたる探査を終え、6月13日オーストラリア上空で試料採取カプセルを分離して、機体は大気圏の摩擦によって燃え尽きました。夜の暗い空に、「はやぶさ」の燃える光は、最後の輝きと記憶に残るものでした。その映像を、ご覧になられたでしょうか。インターネットの動画で今でも見ることができます。
 「はやぶさ」は、小惑星「イトカワ」に着陸して試料を回収するためのミッションをもっていました。長いメガホーン(サンプラー・フォーンと呼ばれています)をイトカワの表面につけ、その中で玉を打ち込んで、飛び出た石の破片を回収しようというものでした。地表に降りてきたカプセルは、イトカワの試料が入っているかもしれないものなです。「はやぶさ」は人類初の試みばかりに挑戦するもので、試料回収も非常に意義のあるミッションでした。
 試料回収の作業は行われたようですが、試料が実際に入っているかどうかは、回収されたカプセルを開けてみないとわかりません。18日未明には相模原の施設にカプセルが搬入されています。その後の開封せずにX線で調べられたところ、1mm以上の大きさの粒子がないらしいことがわかりました。もし破片が入っていたとして、非常に小さな粒子になるので、慎重な処理が成されなければなりません。そのために時間が必要になりそうです。
 もし試料が入っていたとしたら、現在の化学分析の技術非常に進んでいるので、ごく微小、微量でも分析可能です。サイズでいえば数10μm(マイクロメートル)、重さでいえば数10μg(マイクグラム)の試料があれば、いろいろな情報を読み取ることができます。期待したいものです。
 そもそも今回の「はやぶさ」の一番の目的は、いろいろなミッションをこなす技術を実証的に開発することでした。ですから、地球への帰還、試料回収もあわよくばというミッションでもあったと思います。地球を離れる前に制御不能になったり、小惑星に向かう前に行方不明になる危険性だってありました。実際に何度も故障があったり、通信が途絶えたり、さまざまな困難がありました。それを乗り越えての帰還、そしてカプセルの回収だったのです。

・ニュースバリュー・
私は、吉田 武著の「はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語」を
以前読んで、はやぶさのいろいろな危機があったことを知りました。
今回のミッション終了を受けて
続編を期待したいものです。
それにして、せっかくの「はやぶさ」帰還直前の
いろいろなニュースが、
6月2日の鳩山首相の突然の辞任劇で
あまり伝わらなかったのは残念です。
非常に偉大な業績であったのに、
ニュースバリューが低くなったのは
今後の予算獲得に影響がありそうで不安です。
できれば、小さくてもいいですから、
試料が発見さればと思います。
そんなニュースが仕分け作業中に届き、
予算が削減されなければと思います。

・梅雨・
久しぶりの本州の生活で、
梅雨の洗礼を受けています。
かつては長年本州で暮らしていながら、
北海道の涼しい夏に馴れたせいか
梅雨の蒸し暑さに参っています。
支所では、暑ければエアコンが入りますが、
自宅では、扇風機が一台あるだけです。
谷間で、標高200mほどしかないですが
裏には標高400mを越える山が控えています。
ですから、夜になって山風が吹けば
結構過ごしやすいのではないかと期待しています。
暑さに耐えられる馴れを持つことの方が重要なのでしょうかね。

2010年6月17日木曜日

5_87 あかつき:日本の宇宙探査2

 日本の探査機の技術は、非常に優れています。「かぐや」の航行は、月が地球に近いため、燃料も少なくてすみます。しかし、遠くなると燃料がたくさん必要になり、その分、装置がコンパクトで厳選されたものでけねればなりません。惑星探査機「あかつき」を紹介しましょう。


 2010年5月18日に打ち上げが予定されていたH-IIAロケット17号機は、気象条件が整わなかったため、延期となりました。5月21日に変更された打ち上げは、無事、成功しました。このH-IIA 17には、「あかつき」という探査機が載っていました。「あかつき」の総重量は約500kg、半分は燃料および酸化剤となります。そのうち観測機のために35kgほどしか残されていません。軽量コンパクトが観測装置の必須条件となります
 「あかつき」は、金星を探査することが目的です。金星は、地球より太陽に近いところで公転をしています。太陽に近いため、地球から見ると太陽の近くに見えます。ですから、日の出の直前(明けの明星)や日の入り直後(宵の明星)の短い時間しか見ることができません。水星とともに観測しづらい天体となっています。
 金星は、大きさや質量が地球に似ているため、「兄弟星」や「双子星」と呼ばれています。金星の起源やたどった惑星の履歴は、地球と似ているはずなので、金星の探査は、地球の謎の解明にも役立つと考えられます。
 兄弟星と呼ばれる金星ですが、地球とは表層環境があまりに違います。地表の温度が約460度という苛酷な環境です。厚い雲に覆われていて、可視光では、地表を見ることができません。空には硫酸の雲が浮かび、二酸化炭素が主成分の大気です。金星は243日かけてゆっくりと自転しています。ところが、大気の動きは激しく暴風(スーパーローテーションと呼ばれています)が吹き荒れています。その速度は自転の60倍(時速400km)もあり、4日間で金星を1周してしまいます。そのメカニズムは不明です。
 「あかつき」は、そんな金星の不思議な気象を調べることを目的としています。さまざまな波長で大気を観測するためのセンサーが搭載されいています。
 近赤外線を調べるための1μmカメラ(IR1と略されています)と2μmカメラ(IR2)は、大気を突き抜けて観測できるので、地表面の様子や低い位置の雲や水蒸気を調べます。地表面の撮影によって鉱物分布や活火山についても調べられると期待されています。波長10μmの中間赤外カメラ(LIR)では、雲の最上部の温度分布を調べたり、雲の上のでこぼこや風の様子を調べます。紫外線の紫外イメージャ(UVI)では、二酸化硫黄を調べ、雲の形成メカニズムや風を調べます。雷放電発光をとらえる雷・大気光カメラ(LAC)では、超高速撮影ができ、雷が起こっているかどうかを調べます。また、雲の上にある酸素も調べることができます。
 「あかつき」によって金星の気象が解明されることが期待されています。
 実は、H-IIA 17には、「あかつき」のほかにも、小さな衛星3個と「IKAROS」という衛星も搭載されていました。「IKAROS」は、帆を広げて太陽の光子を受けて航行します。その実験するための衛星です。帆には薄い太陽電池がはってあり、電力も帆から得ることができます。
 H-IIA 17のすべての衛星は、無事切り離しができ、「あかつき」も順調に飛行を続けています。2010年末には金星に到着する予定となっています。そして2年間(金星は3回公転します)、金星を観測し続けます。金星でも日本の貢献が期待されます。

・蛍の撮影・
近所で蛍が一杯飛び交っています。
毎夜写真撮影に挑戦しています。
蛍の撮影は簡単のようでなかなか難しく、
人工の灯りがないことが一番重要な条件となります。
街頭や人家の明かり、車の往来などがあると、
30秒ほどの露出で撮影しますので、
失敗の撮影となります。
しかし、比較的暗いところセットして、
30秒の連射を設定すると、
車の往来が稀にあるところでも、
いずれかのショットはOKになります。
蛍の光は暗いので、あとで画像合成をすることになります。
でも、完成した写真はなかなか幻想的なものとなります。
撮影は一度スタートすると、
カメラ任せで連射をさせるだけです。
30分ほどじっとしているだけです。
その間ただただ蛍の飛び交うのを
真っ暗らな川原の土手で眺めています。
心静かなで豊かな時間を過ごしています。

・JAXAチャンネル・
YouTubeのJAXAのチャンネルには、
面白いコンテンツがいろいろあります。
日本の宇宙開発のさまざまなプロジェクトを
市民に分かりやすく広報するための番組が
いろいろ用意されています。
でも、このようなYouTubeに公開されていると、
いつでもみられるのですが、
ついつい見入ってしまいます。
ほどほどにしないと
仕事が滞ってしまいます。

2010年6月10日木曜日

5_86 かぐや:日本の宇宙探査1

 あまり話題にはされていませんが、最近、日本の宇宙探査において、さまざまな成果が挙げられています。JAXA(宇宙航空研究開発機構)発のニュースが相次いで、いくつも流されました。しかし、その扱いはあまり大きくありません。このエッセイで最近のニュースをいくつか紹介していこうと思います。


 日本の宇宙探査で私の記憶に残っているのは、最初の宇宙飛行士の秋山さん、2度宇宙に行った毛利さんなどです。日本の月探査「かぐや」は記憶に新しいところです。最近でも、野口宇宙飛行士の宇宙空間での長期滞在、「あかつき」の打ち上げ、「はやぶさ」の帰還など、つぎつぎと重要な成果が報じられているのですが、その扱いはあまり大きくありません。他のニュースの影に隠れていて、非常に残念です。その成果をいくつか紹介していきます。まずは、少し前の成果ですが、「かぐや」からです。
 「かぐや」は、以前このエッセイでも紹介したのですが、2007年9月14日に打ち上げられた月の起源や進化を探るための探査機です。科学探査用機器や高精細の映像を写すハイビジョンカメラも搭載されていました。また、2つの子衛星(「おきな」と「おうな」)と連携した探査もなされました。
 「かぐや」に関するハイビジョン映像を、NHKもニュースや特集番組で何度も流したり、鮮明なカラー画像がいくつも紙面を飾りました。私も、その詳細な月面の地形をみて感動をしました。また、打ち上げ前には、市民からメッセージを集め、それを「かぐや」にとりつけ、月に運ぼうという「月に願いを」キャンペーンをおこなわれました。予想を超える41万人からメッセージが届きました。そのようなNHKやキャンペーンなどのせいもあって、多くの人が「かぐや」には関心を持っていました。
 2009年6月11日、「かぐや」は、月面に落下して、約1年半に渡る役目を終えました。しかし、「かぐや」の得たデータは、これからも解析が続けられます。JAXAでは、ホームページが現在も更新され、SELENE通信ではいろいろ情報が公開されています。
 JAXA ChannelがYouTubeで開設され、「かぐや」が撮影したハイビジョン映像などが、次々と公開されています。2009年10月20日には、30分ほどのハイビジョン番組「遥かなる月へ2009~月周回衛星「かぐや」の軌跡~」が公開されました。「かぐや」の概要を知るためにはいい番組です。
 科学探査の研究成果でも、2009年2月1日発行のアメリカの科学誌「サイエンス」で、「かぐや」に関する特別編集号が組まれました。研究者間にも「かぐや」の活躍が華々しく伝わりました。
 1961年から1972年にかけて実施された6回の有人月探査であるアポロ計画によって得られた試料はデータは、長い年月をかけて研究され、多大な成果があげられました。その後月の探査はあまりなく、今回の「かぐや」の探査データは、持ち望まれたものです。アポロの結果を塗り替えるほどの成果を挙げるはずです。少なくとも、月面の解像度は格段に上がり、月面地図は完全に更新されました。
 市民参加のためのキャンペーンやNHKのハイビジョンの搭載などによって、多くの人の関心を集めました。研究や成果普及なども、「かぐや」ではすべてがうまくいきました。その陰に隠れながら、あまり光が当たらないところで、重要な成果も上がっています。次回から、そのいくつかを紹介します。

・JAXA Channel・
JAXA Channelは、
http://www.youtube.com/jaxachannel
「かぐや」だけでなく、
日本の宇宙探査に関する映像がいろいろみることができます。
YouTubeの利用が少々気になるところですが、
URLが".com"になっていますから、
アメリカ合衆国のドメインになります。
管理がどのようになっているがわかりませんが、
何かことがあったとき、
データは大丈夫かどうか心配です。
JAXAのような大規模な組織なら、
独自の動画サイトを運営してもいいのではないかと思います。
以前はあったようですが、
現在では、動画はすべてYouTubeに移動しているようです。

・場所選び・
先日、香川から徳島の海岸線、
そして中央構造線沿いを調査してきました。
祖谷(いや)の方に入ったときは
雨に降られましたが、
それ以外は天気もよく日焼けしました。
今回が、四国に来て2度目の調査となりました。
毎月のように調査をする予定です。
梅雨を警戒して、6月は早めに調査を実施しました。
7月にも出かける予定ですが、
梅雨明けと暑さを見ながら、
行く場所を選んでいこうと考えています。

2010年6月3日木曜日

6_81 何処を目指すのか:人工生命2

 DNAの塩基配列であるゲノムをすべて解読するには、労力も資金力も必要です。しかし、研究や医療などで重要な役割を果たしている生物のゲノムがすべて解読されれば、大きな役に立ちます。そんな目的だけであればいいのですが・・・


 前回紹介した人工的な細胞合成について報告された論文の著者24名全員が、すべて同じ研究所の研究者です。彼らは、J・クレイグ・ヴェンター研究所(J. Craig Venter Institute)というとろこに所属しています。ただし、カリフォルニア州サンディエゴとメリーランド州ロックビルの同名の研究所、2箇所に分かれています。その研究所のリーダーが、ジョン・クレイグ・ヴェンター(John Craig Venter)です。論文の著者名の最後には、ヴェンターの名前もあります。
 ジョン・クレイグ・ヴェンターの名前をご存知でしょうか。ヒトゲノムの解読競争として一時ニュースで騒がれたことがあります。ヴェンターはアメリカの分子生物学者で、かつては国立衛生研究所(NIH)にいたことがあるのですが、遺伝子配列を特許出願して、上司(DNAの分子構造発見者のジェームズ・ワトソン)や他の研究者から批判を受けて、研究所をやめることになりました。そして、各種生物のゲノム研究とその利用を目的に、ゲノム科学研究所を設立しました。現在では、いくつかあった研究所は、J・クレイグ・ヴェンター研究所に統合され、ヴェンターが会長となっています。
 1990年にアメリカが予算を計上して、15年かけて、世界各国の研究施設が協力してヒトのゲノムをすべて解読する計画(HGP)がスタートしました。ところが、ヴェンターは、それに対抗して、セレラ・ジェノミクス社で商業的に利用するためにヒトのゲノムを解読して、特許登録して有料のデータベースをつくろうとしました。そして彼らがヒトゲノムを猛烈なスピードで読み出したと情報が流れました。
 幸いながらヒトゲノムはバミューダ原則(1996年2月)という合意によって、ヒトゲノムの解読結果は公開されることになりました。まあその競争があったおかげで、ヒトゲノム解読が一気に加速したという効果がありました。
 2000年6月26日にゲノムのドラフト版が完成し、2003年4月14日には完成版が公開されました。その情報は、ヒトの全遺伝子の99%の配列が99.99%の正確さで含まれるとされています。現在もその精度を上げる努力が続けられています。
 その後、ゲノムの解読の技術は進み、高速かつ廉価に行えるようになりつつあります。2007年には、ほぼ同時にヴェンターとジェームズ・ワトソン自身の完全ゲノム配列が読めたという報告がでました(ここにも過去の因縁を感じます)。そのような解読技術の進歩を背景に、2008年に始まった国際協力研究では、「1000人ゲノムプロジェクト」というのがあります。3年以内に、異なる民族から1000人分の匿名ゲノムの配列を読むという計画です。このプロジェクトが完成すれば、民族間の違いやゲノムの多様性を理解することができると期待されています。
 ヴェンターが今目指しているのは、、最終的には人に役立つ(商目的に叶うもの)人工生命の合するということです。難病治療や食物増産などという、善意に基づいたものや節度があるものであればいいです。しかし、営利に走りすぎれば、金さえ積めば倫理を外れた行為も可能になるのではという不安もあります。また、すべての研究が公開のもとで行われればいいのですが、あるグループ内で非公開でおこなわれるようなものだと、歯止めが利かなくなるのではという不安があります。そんなことを考えさせられた論文でした。

・蛍・
蛍の季節です。
天候不順のため、
1週間ほどの遅れているようですが、
地もとの蛍のニュースを新聞で見ました。
地元の人に聞くと
どこどこの沢で見たというのも聞きました。
ちょっと蛍をみにうろついてみようかと思っています。

・調査中・
現在、調査中であります。
データ通信カードがあるので、
調査中でもインターネットにつなぐことができるのですが、
できるだけ調査に集中したいのと
山奥にはいることもあるので、
留まったところがDOCOMOがつながらないこともあるかもしれません。
メールマガジンを出さなければという気持ちが働いていると
落ち着かないので、事前に予約してあります。
ですから、このメールマガジンも、
一週間前に配信しています。
エッセイの内容は、前回続きなので、
一気に2話分書いたので、連続性は問題ないと思います。
では調査に集中します。