2004年12月30日木曜日

1_37 原生代2:海水のマントルへの逆流(2004年12月30日)

 地質時代シリーズ、原生代の2回目です。今回は、海水がマントルへ逆流しだした事件について紹介します。

 原生代後期、10~6億年前に大事件がおきました。それは、顕生代への移行期(エオカンブリアンとも呼ばれています)の頃でした。大事件がおこったという証拠として、氷河に関係した地層と陸や浅い海でたまった地層などがあります。
 氷河に関係した地層には、ティライトなど各種の氷河堆積物がありますが、それは地質時代シリーズの次の回で詳しく紹介します。陸や浅い海でたまった地層の証拠としては、蒸発岩(石膏、岩塩など)、赤色砂岩、正珪岩(オルソクォーツァイト)と呼ばれる岩石がみつかります。
 蒸発岩とは、内湾や湖で、海水や水に溶けていた成分が、水分が干上がることによってできたものです。そこには、暑く乾燥気候があったことが分かります。乾燥気候は、大きな大陸の存在を意味します。赤色砂岩は、干潟のような酸化しやすい環境でできた堆積岩です。正珪岩(オルソクォーツァイト)とは、よく円磨された石英の粒からだけでできたもので、砂漠のようなところできた砂がたまってできたものです。
 これらの証拠を詳しく調べていくと、2つの事件がおこったことがわかりました。一つは、7.5億年前に起こった海水のマントルへの逆流と、もうひとつは、7億5000万年前~5億8000万年前にあいだに起こった全球凍結(スノーボールアース)というものです。
 海水のマントルへの逆流は、浅い海でたまった地層が大量に形成されたことと、変成岩の中に見られる鉱物が時代変化していることの2つから推定されています。
 大量の堆積物の形成されるには、大きな河川が多数必要で、これは陸地が広くなったことを意味します。つまり、海水が減った可能性があるのです。上で述べた赤色砂岩や正珪岩(オルソクォーツァイト)は、大陸が広がり、その大陸が海面上にあったことを示します。
 海水の逆流は、地球の冷却が、その原因だと考えられています。地球は、内部に蓄えている熱を、マントル対流として地表に放出しています。地球が今より熱を持っていて暖かかったときは、水を含む鉱物がプレートの沈み込むときに分解されていました。ところが、地球が冷めることによって、水を含む鉱物がプレートと伴にマントルに沈み込めるようになりました。それは、地表に出てきた沈み込み帯で形成された変成岩の中の鉱物の種類が時代変化として見られるということです。それが、7億5000万年前頃に見つかりました。その頃に、海水がマントルに逆流をはじめたのです。
 7億5000万年前ころから5億5000万年前ころにかけて、海水は徐々に減っていきました。海の深さにすると、200~300m分の海水が、マントルに入ったと考えられています。そのために、陸地が広がったのです。陸地は地球の表面積の10%くらいだったのが、現在の30%くらいにまで広がったと推定されています。
 水を含むようになったマントルは膨れ、陸がより上昇します。広い大陸ができ、砂漠や氷河もできるという多様な陸上の環境が形成されます。大河の形成もおこり、堆積物もより多く形成されます。
 広がった陸地から、大量の陸の成分が溶け込み、海水の塩分濃度が上昇したと考えられています。また、堆積物が増加すると、その中に含まれていた有機物が分解されずに、岩石中に残っていきます。これは、炭素が、大気-海洋-生命のサイクルから取りのぞかれることになり、大気中の酸素が増加していくことになります。
 マントルに水が入ると、マントルは軟らかくなり、暖かいマントルが上昇しやすくなり、火山活動が活発になります。その結果、マントルに逆流する水と、マグマの活動によって、新しいマントルの安定状態ができ、海水の減少も止まります。このような安定状態に5億5000万年前ころに達したと考えられます。
 全球凍結(スノーボールアース)については、次回紹介しましょう。

・読者の皆様への感謝・
今年は、これが最後のメールマガジンとなりました。
この1年間、購読ありがとうございました。
そしてメールをいただいた方、本当にありがとうございました。
大変励みになりました。
このようなメールマガジンは、
購読されている方が存在するとういことが重要です。
購読されている方がいれば、
メールマガジンとはいえ、独りよがりな発言は自粛します。
また、乱暴な考え方、常識はずれの考え方を
自分自身で深く考えながら、方向も修正をできます。
このメールマガジンは2000年11月末にスタートして
4年以上が経過しました。
毎週書くことが習慣となってきました。
時間がないときは、書くのがつらいこともありました。
でも、興が乗ると、2、3回分を一気に書くこともありました。
このメールマガジンを書くことが、
自分のペースメーカーのような役割を持ってくるようになりました。
私自身にとって重要なものとなっています。
その背後は読者がおられることが、
やはり何ものにも換え難い重みがあります。
どうもこの1年間も購読いただきありがとうございます。
よろしければ来年も購読をお願いします。
では、よいお年をお迎えください。
新年号は、1月6日発行の予定です。

・新しいメールマガジンの発行・
前回もお伝えしましたが、新しい月刊メールマガジンを発行します。
1年間、暖めた企画で、「大地を眺める」というものです。
大地の景観を、地形や地質のデータから眺めたら、どう見えるか、
毎回、日本の各地を題材にして見てきたいと考えています。
固いものではなく、読みやすいエッセイで綴ろうと考えています。
地形を鳥瞰しながら、大地の造形に隠された仕組みに、目を向けます。
2005年正月に創刊特別号を発行するつもりです。
毎月中旬に連載をお送りします。
http://terra.sgu.ac.jp/geo_essay/index.html
から申し込めますので、よろしくお願いします。

2004年12月23日木曜日

1_36 原生代1:地球の特徴の形成(2004年12月23日)

 地質時代シリーズです。今回は、原生代です。原生代は、現在にいたる地球の特徴がつくられた時代です。3回にわたってみていきます。

 原生代は、太古代と顕生代の間の時期です。原生代のはじまりは24億5000万年前で、終わりは5億4200万年前となります。原生代の特徴は、一言でいうと、現在にいたる地球の特徴がつくられた時代といえます。具体的には、大気の改変(太古代と原生代の境界の事件)、生命の関係する岩石の形成、大陸の形成、大量の堆積岩の形成、の4つが挙げられます。
 順番に見ていきましょう。大気の改変とは、太古代と原生代の境界の時代に起こった事件です。その事件は、その時期に特徴的に現れる縞状鉄鉱層、ストロマトライト、赤色砂岩が、形成されていることから推測できます。これらの証拠は、光合成をする生物が、浅海に大量発生したことを示しています。つまり、大気が変化してきたということです。
 酸素の急増によって、酸化に対応できた生物だけが生きのびて、繁栄しました。それは、ミトコンドリアを細胞内に持つことです。もともとミトコンドリアは一つの生物でした。それが他の細胞に入り込んで共生しました。入りこまれた生物は、住みよい環境と安全を与え、ミトコンドリアは酸素を処理しました。DNAを区別すためでしょうか、ミトコンドリアに入りこまれた生物は膜の中に入れました。これが真核生物の誕生です。21億年前ころに起こったと考えられます。
 酸素を作った葉緑体やミトコンドリアを体内に持つことによって、生きのびただけでなく、酸素の強力な化学反応のエネルギーを有効に利用できるようになりました。このような新しい機構をもった生物は、大型化できるようになったのです。
 その結果、縞状鉄鉱層、ストロマトライトや石灰岩など生命の関係する岩石が形成されはじめます。また赤色砂岩は大気に酸素が増えた証拠だと考えられています。
 原生代の地層から、28億年前と18億年前に激しい火成活動が起こったことがわかります。このような激しい火成活動は、地球内の何らかの事件に対応しているはずです。28億年前と18億年前頃の2つの事件は別の原因に夜と考えられています。
 28億年前に起こったこととは、マントル対流が、二層対流から、一層対流へ変わった事件だと考えられています。
 一層対流とは、沈み込んだプレートは、670km(上部マントルと下部マントル境界部)にたまり、結晶がより密度の高いものに変化した後、重くなって沈みます。その反動として、核とマントルの境界部から、暖かいマントルが上昇してきます。
 対流の直径にプレートの大きさが、匹敵すると考えられています。二層対流の頃は、700kmくらいのプレートと大きさになり、一層対流になると、3000kmくらいのサイズになります。このサイズのプレートで地球の表面を覆うと、10枚くらいのプレートの数になります。この数は、現在のプレートの数に一致します。
 18億年前の事件は、ウイルソンサイクルがスタートした時期と考えられています。
 ウイルソンサイクルとは、カナダの地質学者ツゾー・ウイルソンが提唱した、海洋プレートの一生をプレートテクトニクスという考えで説明するときに生まれた考えです。
 地球内部の熱の放出は、物質の対流(マントル対流)でおこなわれます。この対流の出口にあたるのが海嶺です。海嶺では新しい地殻がつくられています。地殻とマントルの一部は、かたい板(プレート)として地球の表面を移動します。このようなプレートはリソスフェアともよばれます。10数枚のプレートの水平運動によって、さまざまな大地の営みを考えることをプレートテクトニクスといいます。
 太古代にも堆積岩はあったのですが、その量は少なかったと考えられています。太古代は、大きな大陸はなく、列島(島孤と呼ばれる)や、せいぜい小さな大陸程度(マダガスカル島程度)のものしかなかったようです。大量の堆積岩できはじめるのは、原生代になる直前の28億年前頃からです。大陸には、原生代の初期から中期にかけて、堆積岩たくさん分布します。堆積岩がたくさん形成されるためには、広い陸地がなければなりません。つまり広い大陸が形成されたことを意味します。
 18億年前には、最初の超大陸ヌーナ(ローレンシアと呼ぶ人もいます)が誕生します。ヌーナとは、North Europe and North Americanの頭文字をとったもので、アメリカ、ハーバード大学のホフマン博士が命名しました。超大陸とは、地球の大陸の大部分(80%以上)が、一ヶ所に集まったものです。当時は大陸がまだ少なかったので、ヌーナは、現在の北米大陸の大きさ程度だと考えられています。現在のその破片は、北米大陸、グリーンランド、スカンナビア半島、オーストラリア大陸、南極東部に分散しています。原生代後期には、造山運動が活発になり、造山帯と安定帯の区別がはっきりしてきます。
 大量の堆積岩できると、その中に堆積物として有機物や、石灰岩が保存されます。これは、炭素が、固体として固定されることを意味します。生物が利用する炭素の大部分は、大気の二酸化炭素から供給されています。大気から、二酸化炭素が一方的に取りのぞかれていきます。

・今年のうちに・
いよいよ2004年も押し詰まってきました。
皆さん、今年のうちにしなければならないことは、
すべて終わりましたか。
私は、まだ終わっていないことがあります。
それもたくさん残っています。
どうしましょうか。悩んでしまいます。
でも、愚痴を言っても、終わるわけではありません。
仕方がありません。ひたすらやり続けることです。
今までサボっていたツケが回ってきたようです。
少々乱暴でも、なんとかやりきってしまうことも手かもしれません。
すると、その先で、進めるべき目処が立ちます。
あわよくば、次なるステップに進めるかもしれません。
まあ、これも終わらなければ空論ですが。

・新しいメールマガジンの発行・
このたび、新しい月刊メールマガジンを発行します。
1年間、あたためていた企画です。
「大地を眺める」というものです。
大地の景観には、さまざまな自然の驚異、素晴らしさ、
不思議が隠されています。
そんな大地の景観を、地形や地質のデータから、
地質学者である私が眺めたら、どう見えるでしょうか。
そんなことを毎回、日本の各地を題材にして見てきたいと考えています。
固い内容ではなく、私が訪れたときの感想をいろいろ述べる
エッセイのようなものにしていくつもりです。
また、地形の数値データを使用して
見づらい地形や、特徴的な地質を
鳥瞰することもしていきます。
大地の造形に隠された仕組みに、目を向けて、
楽しんでもらえるものを考えています。
2005年正月に創刊特別号を発行するつもりです。
毎月中旬に連載をお送りします。
もしよろしければ、
http://terra.sgu.ac.jp/geo_essay/index.html
から申し込めますので、よろしくお願いします。

2004年12月16日木曜日

3_39 ゼロ・エミッション:サブダクション・ファクトリー4

 サブダクション・ファクトリーをシリーズでお送りしましたが、これで完結となります。今回は列島の下でおこなわれる作用が、非常に効率的に大陸地殻をつくるという話です。


 大陸地殻の平均は、トーナル岩あるいはカルクアルカリ安山岩の組成でした。そのようなマグマが大量に活動しているのは、日本列島のような、プレートの沈み込み(サブダクション)があるところでした。もちろん火山だけでなく、深部でゆっくりと固まっていく深成岩の活動もあります。
 列島のマグマの活動は、火山のようなマグマの噴出だけでなく、巨大な花崗岩のマグマ、あるいはトーナル岩のマグマなど、さまざまな性質、種類のマグマの活動が起こっています。しかし、列島では、平均すると安山岩質のマグマで、実際に安山岩質の火山噴出がたくさん活動する場所であります。
 列島の下での物質収支を見積もる試みが、海洋科学技術センターの巽好幸さんによってなされています。まだ、完全に証明されたものではありませんが、その全貌が明らかにされつつあります。
 沈み込むプレートから水や水に溶けやすい成分が、列島の下のマントルに供給されます。条件によってはプレート自体が溶けることも起こります。これが、列島の下への物質供給です。出がらしや溶け残りのプレートは、マントルへと沈みこんでいきます。
 供給された水は、マントルを溶かして、まずは玄武岩質のマグマをつくります。列島の地殻が薄いときは、そのまま火山として噴出し、玄武岩の火山ができます。列島が厚い地殻になっているときは、玄武岩質のマグマが、すでにある玄武岩を溶かして花崗岩質のマグマを形成します。
 また、玄武岩質のマグマが地殻にたまった堆積岩を溶かすと、大量の花崗岩マグマをつくります。この堆積岩は、列島にある岩石が浸食されて溜まってできたものです。列島で、物質は自給されているものです。
 花崗岩質のマグマが、そのまま固まれば、深部で花崗岩になります。しかし、列島の下では、溶かした玄武岩質のマグマか別の玄武岩質のマグマかはわかりませんが、花崗岩質のマグマと混じるということがよく起こります。混じる比率によって、玄武岩に近いものから花崗岩(火山岩ではデーサイトや流紋岩とよばれます)まで、多様なものができます。しかし、列島で安山岩質のマグマがたくさん活動していることから、玄武岩と花崗岩の間の安山岩になることが多いとわかります。
 玄武岩質マグマと花崗岩質マグマが混じってカルクアルカリ安山岩ができるということは、柵山さん(残念ながら若くして地質調査中に亡くなられました)が、日本列島の火山の研究から、すでに明らかにされています。
 列島では、プレートがもぐり込むときに圧力が上がることによって必然的に起こる脱水作用が引き金になっています。列島の下で溶け残り物質は、残存物として、マントルに沈んでいきます(デラミネーションと呼ばれています)。このような特殊な履歴を持った物質は、マントル深部に貯蔵されます。
 もし、このような特殊な物質がまったく利用されることがないと、私たちはこのモデルが本当かどうか証明のしようがありません。ところが、これらの物質は、マントル対流やプルームとよばれる上昇流として、火山活動をしているところがあります。ですから、残存物が存在することが判明しています。
 まるで、地球全体が、廃棄物ゼロ(ゼロエミッション)の工場のように、無駄なく大陸地殻を形成しているようにみえます。巽さんは、このような作用を、工場に見立ててサブダクション・ファクトリーと呼んでいます。

・日本の貢献・
4回にわたって続いたサブダクション・ファクトリーですが、
今回で終わりとなります。
私たちの住む日本列島が、
その秘密の解明の舞台となっています。
そして、それを主導的に解明している人たちも日本人です。
日本列島を調べることことで、地球の大陸のでき方から、
地球の物質循環まで、解明されつつあります。
日本人が、科学の進歩に大きな貢献をしていることです。
なかなか痛快なことですね。

・苦労は報われる・
日本列島は、色々な岩石が少しずつでるような
まるで標本箱のような地域です。
標本採取をするには便利なのですが、
鉱物資源を採掘するには、地質が複雑であるために、
大量に採集することができず、ハンディがありました。
しかし、苦労して採掘した結果、
石炭を地下深くで探がしたり、掘ったりする技術は、
世界の一流になりました。
露天掘りする国では、技術はそれほどいらず進歩もしません。
しかし、そんな国でも、地表の主だった石炭が採り終わると、
次は地下で採掘していかなければなりません。
日本は、その技術を輸出することができます。
今回は、列島の研究から大陸の起源を調べる研究を
輸出することなりそうです。
今回のサブダクション・ファクトリーでも
今までの苦労が報われるといいですね。

2004年12月9日木曜日

3_38 列島の岩石:サブダクション・ファクトリー3

 前回までに、海底の岩石は玄武岩で、大陸の平均的な岩石は、列島のカルクアルカリ安山岩の化学組成に似ていることを示しました。それはトーナル岩と呼ばれるもので、実際に日本列島でも見つかっているという話をしました。今回は、列島の岩石について見ていきましょう。


 列島には、さまざまな岩石があります。火成岩、堆積岩、変成岩、それこそありとあらゆる岩石が見つかります。
 その比率は、理科年表のデータからみていくと、堆積岩が58%、火成岩が38%、変成岩が4%となっています。これは、どのようにして求めたかというと、日本の地質図から上の3種の岩石を読みとり、その岩石の分布する面積を、岩石の占める比率とみなしたものです。
 堆積岩が一番多く、ついで火成岩、変成岩となっています。堆積岩が多いのは、日本列島が、つねに激しい風化や浸食を受けていることを示しています。陸地はどこでも程度の違いはあるでしょうから、風化や浸食を受けているはずです。しかし、多くの堆積岩ができるということは、激しく変動している地域であるといえます。その変動は、火山であったり、断層であったり、褶曲であったり、大規模な大地の営みが激しく起こっている場所です。このような地域を変動帯と呼んでいます。日本は変動帯なのです。
 日本の火成岩の内訳をみると、火山岩が26%、深成岩が12%となり、火山岩が深成岩の2倍以上あります。ですから、日本列島の現在見られる姿は、火山岩で特徴づけられているといえます。
 深成岩はマグマ地下深部でゆっくりと冷えてできたものです。その中には列島の下で新たにつくれた深成岩がたくさんあります。深成岩の中では、花崗岩が圧倒的に多くなります。深成岩が地表に顔を出すには、上にかぶさっている地層や岩石が、大地の営みによってなくならなければなりません。新しい時代にできた深成岩が、地表に顔を出しているのは、上で述べた侵食によるものです。
 マグマの活動の激しい日本列島では、現在も花崗岩がつくられているはずです。多くの花崗岩は、まだ地下にあり、地表に顔を出していないのですから、深部には多くの花崗岩があると思います。でも、それは私たちにはわかりません。
 堆積岩も変成岩も、元になる岩石があったわけですから、その元をたどれば、いくつの岩石を経由するかはわかりませんが、最後には火成岩にたどりつくはずです。火成岩が日本列島の岩石の特徴を決めると考えられます。
 まずは、深成岩として花崗岩がたくさんあることは、心にとめておきましょう。列島のマグマの特徴を、多少の誤差があるでしょうが、現在活動している火山のマグマが代表しているとみなしましょう。そのマグマがどのような性質のものかを見ていきます。それには、現在(第四紀の火山とします)の火山岩の性質をみればいいいことになります。
 日本列島も厚い地殻のある地域や、薄い地殻の地域などさまざまですが、典型的な列島として、厚い地殻ある東北地方を列島の代表としてます。玄武岩から流紋岩まで幅広くありますが、安山岩が圧倒的に多くなっています。そして安山岩もカルクアルカリ安山岩と呼ばれるものが多くなっています。こうして、とうとう列島のマグマが、カルクアルカリ安山岩をつくる性質のものであるとういことにたどり着きました。
 3回の話で、地球の各地の岩石の様子をみてきました。さて、次はいよいよサブダクション・ファクトリーでの大陸地殻製造工場の説明です。

・異常・
先日の異常な低気圧で、本州はとんでもない風と陽気が襲い、
北海道にはドカ雪が降りました。
そして、週明けの7日には、北海道で、なんと雨が降りました。
6日の朝は、雪が凍りアイスバーンになっていたのに、
なんとも移ろいやすい天候でしょうか。
このようなことをいうと
今年は夏暑くて、台風が多く、地震が多いなどと思い起こし、
地球はどうも異常をきたしている、という意見がでてきそうです。
しかし、確か去年と一昨年の夏は、暖冬、冷夏で
異常気象の話題がありました。
毎年、何らかの天候に異常があるようです。
いつの時も、人は、平年と比べてその年の天候の特徴を考えます。
そしてその特徴が際立っていると、すぐ異常だということをいいます。
地質学からみると本当の異常は、
大絶滅が起こすようなものだと思いますが、いかがでしょうか。
人類が気候の記録をとりはじめてから、
あるいは文字で記録を残しはじめからの変化は、
地球の異常を語るには、あまりにも短すぎます。
それをついつい地球という言葉を重ねて、その異常に重みをつけようとします。
地球という言葉がつくと、私は、ついつい
もっと大きな異変がありましたよ、といいたくなります。
大きなお世話でしょうか。

・事実と真実・
Kogさんから、メールをいただきました。
それは、列島の岩石が大陸になっていくという考えが、
昔の造山運動で語られていたものに似ているのというものでした。
それに対して、私は次のような返事を出しました。
「昔の造山運動は、大地の上下動の垂直運動で
すべての地質現象を説明しようとしたものです。
一方、プレートテクトニクスは、水平運動を原動力としてます。
しかし、基本となる地質学的データは、
いつの時代も、野外調査から得られた事実です。
ですから、そのような事実は、いつまでたっても不変のままです。
また、事実から見えてくる相似性もかなり事実に近い考えのはずです。
大陸周辺部の造山帯が、大陸に付け加わり、
大陸成長していくというのは、昔の造山論の中にありました。
事実に近い相似性も不変に近いのでしょう。
造山論は、当時得られていた事実
もしくは、相似性から作り上げられたモデル、思考です。
事実が増え、そして多様な相似性が得られてくると
そのモデル、思考も自ずから変化していくのでしょう。
季節は移ろい、自然も変化します。大地すら時間とともに変化します。
さまざまなタイムスケールでの変化の集積が、今をつくっています。
比べるまでもなく、もっとも移ろいやすいものは人間の思考の方です。
私たちの知恵は、いったい、いつになったら、
真の自然の姿を見ることができるのでしょうか。
でも、知恵が変化していくので、科学者の興味も尽きないのでしょう。
そしてその延長線上いる私も、それが飯のタネとなるのです。」
というものでした。お粗末さまでした。

2004年12月2日木曜日

3_37 大陸の起源:サブダクション・ファクトリー2

 海洋地域の岩石は玄武岩の化学組成を持ち、大陸地域の岩石は、平均すると安山岩に似ている、というところまで前回は話をしました。今回は、その続きです。


 大陸地域の岩石は、平均すると安山岩(火山岩の名称でいうとトーナル岩となります)の組成なるということは、多くの地質学者は、知っていました。なぜなら、地震波からみると大陸の上部の岩石が花崗岩(火山岩の名称でいうと流紋岩となります)があり、大陸深部には斑レイ岩(火山岩の名称でいうと玄武岩となります)のような成分の岩石があると推定されていました。ですから、大陸の平均化学組成も安山岩なるだろうというわけです。
 地震波のデータからだけでなく、大陸地域には実際に花崗岩が広がっていることは多くの人が知っていました。また、大陸地域で活動している火山のマグマの中には、深部の岩石が紛れ込んでいるのですが、それには斑レイ岩の仲間の岩石がたくさんありました。地震波のデータを信じたくなるような事実もあったのです。
 大陸地域の岩石の起源を探るには、深部の斑レイ岩の起源と浅い部分にある花崗岩が、それぞれどうしてできたかという2つの問題を、独自に解くことになります。
 昔の海洋の岩石の上に、軽い花崗岩が活動して大陸ができたと考えれば、問題は単純になります。つまり、深部の斑レイ岩の起源は、海洋の岩石がどうしてできたのかという問題に置き換えればいいわけです。それは、海洋地域の岩石の起源に関する結果をそのまま借用すればいいのです。ですから、大陸の起源というと、花崗岩の起源ばかりに議論が集中していました。
 しかし、研究が進むにつれて、思わぬ方向に大陸の起源の話が進むようになってきました。大陸の起源に、列島が重要な役割を果たしているのではないかという考えが出てきたからです。
 そのような考えにいたる理由がいくつかありました。
 まず、大陸地域の岩石の平均化学組成を詳しく見ていくと、列島固有の火山がであるカルクアルカリ安山岩というものに似ていることがわかってきました。また、日本列島の伊豆-小笠原列島の地震探査から、どうもトーナル岩のようなものがあることがわかってきました。さらに、伊豆-小笠原列島の一番大陸側にあたる丹沢山地には、新しい時代(約1000万年前)にできたトーナル岩が上になった地層が削剥されて露出していることもから、どうも列島で大陸の岩石が現在進行形でつくられているのではとい考えられるようになってきました。
 そうなると、大陸の深部の斑レイ岩と上部の花崗岩の起源を別々に考えるのではなく、統一的に考えていく必要ができてきました。それを解き明かすには、列島のマグマがどういう仕組みでできるいるかということを解くことでもありました。それを解いていけば、大陸の岩石の起源を統一的に理解できる答えが得られるはずです。その続きは、次回としましょう。

・列島と島弧・
このエッセイでは、日本列島のように海側に海溝があり、
火山がいっぱいある島の連なりを、
「列島」と呼びました。
列島なら、多くの人が馴染みがある言葉だからです。
地理学では、島がたくさんあるところを
島嶼(とうしょ)と呼びます。
難しい字ですが、嶼とは、小さい島という意味です。
ですから島嶼とは大小様々なしまじまという意味からきています。
地質学では島弧といういい方をします。
英語から来た言葉です。
英語で島弧は、island arcといいます。
列島は一般に島が弧状に並んでできているからです。
弧状列島という言い方もしますが、
地質学では島弧という言葉の方がよく使われています。
字が簡単で島嶼よりは、わかりいい言葉なのですが、
多くの人には、馴染みがないようです。
ですから、ここでは列島という呼び方を使いました。

・水道管凍結・
私の住む北海道の町では、とうとう雪になりました。
今回の雪は、本格的なもののようです。
冬型の気圧配置によって、降った雪です。
10月下旬に一時的に冬型になって初雪が降りましたが、
今回は本格的な冬型のようです。
天気図では西高東低で等圧線が混んでいました。
強い北西風が吹き、やがて激しい雪となりました。
いよいよ冬本番となってきたようです。
我が家では、ついうっかりして、
外の水道を凍らしてしまいました。
水抜きをするのを忘れていたのです。
水道管は破裂しなかったのですが、
地面から立ち上がったところが凍ったようです。
水道管の立ち上がっているところは、
断熱をしてあるので、
凍った部分が奥の方だったら融かすのも一苦労です。
今回は、幸いなことに、蛇口のところだけが凍っていました。
寒い夜を迎える前に何とかしておかなくはなりません。
お湯を掛けただけで融けてくれたので、一安心です。
それまでその水道につけていた
水まき用のホースが凍ってしまいしました。
室内に入れると融けてきて水だらけになります。
ですから、暖かい日にお湯につけて融かすしかないようです。
それまで雪のかからないように軒下に置いておくしかありません。
暖かい日は、いつ来るでしょうか。
まさか春まで来ないということはないでしょうが。
さてさてどうなることやら。