2019年2月28日木曜日

5_163 ケプラーからTESSへ 2:トラブル

 どんな装置であっても、トラブルは発生します。そのため、あらゆるトラブルを想定して装置は設計されています。ところが、トラブルはその人智を超えたところで起こります。そんなトラブルにも人智で対処するしかありません。

 ケプラー宇宙望遠鏡は2018年11月15日、NASAはシステムを完全に停止するためのコマンド「goodnight」を送ることで、運用が停止されました。11月15日は奇しくも、天文学者ケプラーの死亡した日でした。
 この最後の日を迎えるまで、ケプラーはさまざまなトラブルに見舞われました。地球外にあるので、人がいって修理や補修をすることができません。プログラム上の不具合であれば、上書きなどである程度は対処できますが、ハード上の破損は補修が不可能となります。しかし、トラブルの度に、努力や工夫で、危機を脱出してきました。
 運用当初の2009年6月、エラーが出てセーフモードになりました。セーフモードとは、コンピュータがトラブルを起こしたとき、その診断用のモードになることです。その原因は電力低下のためでした。なんとか回復して観測できるようになり、6月19日には、はじめての観測データを送ってきました。
 その後、順調に観測を続けていたのですが、2010年3月、42個のCCDセンサーのうち2個が使えなくなるというトラブルが発生しました。これは回復することはできないトラブルでした。視野の75%が観測できなくなる領域が生じましたが、観測は可能でした。その状態で観測は継続されました。2012年7月、姿勢制御装置の8つのリアクションホイールのうちのひとつが故障し、2013年5月には、もうひとつが故障しました。制御不能になっていたのですが、別の姿勢制御機構であるスラスターを使用することで、制御が回復されました。2018年7月には、スラスターのトラブルで休止モードに入りましたが、9月には復旧して、再びデータが送信できました。このようにさまざまなトラブルに見舞われながらも、ケプラーの運用は続けられました。2018年10月30日には、とうとう推進剤がなくなり、NASAはケプラーの運用を終了することにし、2018年11月15日「goodnight」を送信しました。
 さて、ケプラー宇宙望遠鏡は、星の明るさの変化を測定する方法での観測をしてきました。このような方法は、トランジット法といいます。恒星の前を惑星が通り過ぎる(transit)という現象で、明るさが変わる様子を観測する方法です。データを詳しく解析すると、減光の程度から恒星と惑星の半径比、減光の継続時間から惑星の軌道角度と恒星の密度、またたのデータと組み合わせることで、惑星がガスでできているか、岩石のような密度の大きなものできているかなど、いろいろな情報を読み取ることができます。なかなか優れた方法です。
 この方法を引き継ぐ、次なる宇宙望遠鏡がすでに運用が始まっています。それは次回としましょう。

・愛着の装置・
機械や装置は、トラブルがつきものです。
どんな高性能、あるいはアナログ装置であっても故障します。
装置によっては、高性能な装置には
自動修正機能をもったものもあります。
それでも、対処できないトラブルは起こるります。
そんなときは、装置を熟知した専門家が
トラブルに対処することになります。
専門家も対処不能の装置は、
寿命として諦めるしかありません。
代替のある装置なら取り替えればいいわけです。
ところが代わりがないものは、
本来の性能がでなくても、
なんとか寿命をのばして使うように努力されていきます。
そんな装置は、非常に大切にされ
専門家や、使用者からも愛着をもれるようになります。
ケプラー宇宙望遠鏡もそんな装置になったに違いありません。

・帰省・
先週から今週はじめにかけて、
京都に帰省していました。
半年ぶりに母と近くに住む弟に会いました。
弟とも久しぶり盃を交わしました。
市内に住んでいる長男にも会い、
周辺をいろいろ案内してもらいました。
次男と家内も、それぞれ別の日に京都に出向き、
日曜日に母の実家で家族が集合することができました。
今後は、息子たちが京都にいるので
私たち夫婦が出向いて母のいる京都で
家族が集合することになるでしょうかね。

2019年2月7日木曜日

5_160 西から昇る太陽 1:ユニークな発想

 子どもたちの発想は、ユニークなものが一杯あり、驚かされたり、興味を惹かれたりします。そんなユニークな発想が集まったコンクールがあります。数学に関するものですが、いくつか紹介してきましょう。

 「算数・数学の自由研究作品コンクール」というものをご存知でしょうか。現在第6回目ですから、比較的最近設立されたものです。そのため、あまり知られていなかったのでしょう。しかし、小・中・高校生で、数学好きの人たちは、知っていたようです。コンクールに応募された研究レポートは、1万6485編もあったそうです。海外からも31編が届いているようです。
 夏休みの自由研究や絵画などのコンクールはよく知っていたのですが、数学の自由研究にもコンクールがあるとは知りませんでした。近年できたこともあるのでしょうが、夏休みの自由研究で、算数や数学を題材にする人が、周りにいなかったからでしょう。我が家の子どもたちも、工作や自然観察などはしていましたが、算数をテーマになんて考えもいませんでした。
 このコンクールで受賞したレポートを見ると、なかなかユニークなテーマがあります。小学校3年生の「三年生で習う一番むずかしい漢字は何?」、小学校5年生の「地獄からの復活劇~御釈迦様からの試練~」。小学校6年生の「お掃除ロボットが動くと……。」、高校1年生の「じゃんけんの拡張~大人数でも秒で決着をつけたい~」などです。本当に数学の内容なのか、どんな内容なのか、見てみたい気がしせんか。
 「三年生で習う一番むずかしい漢字」なんて、どうして決めるのでしょうか。その小学生は、漢字の難しさを点数化しました。まずは画数の多さです。これは誰もが思いつくものでしょう。次が、漢字が上下、左右で似ているか、対称性を点数化しています。例えば、「申」は上下でも似ているし、左右で似ているとなり、点数は小さくなります。分解のしやすさというものも点数化してます。5画以下の塊にして分解すると、いくつに分解できるか、ということで点数化します。最後に読み方の多さも、点数化しています。これらの点数を合計していきました。その結果、一番点数の低い(簡単)漢字は、「申」(5点)となりました。なかなかユニークな視点です。では、一番難しいものは・・・・、レポートを見てください。
 5年生「地獄からの復活劇」というレポートは、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」をテーマしています。小説に中では、長い距離を登るとか、蜘蛛の糸に多くの人がぶら下がるという内容があります。そこで作品から条件を導き出し、登るのにかかる時間、糸がどれくらいの重さに耐えられるか、について自身で実験して、それを参考に計算しています。なかなかユニークです。この詳細も、レポートを確かめてください。
 レポートは、
  http://www.rimse.or.jp/research/winner6th.html
で公開されています。興味のある方は覗かれてみてはいかがでしょうか。
 このコンクールを知ったのは、最近その受賞レポートの内容が、ニュースになったためです。それは、「西から登ったお日様」というテレビアニメの「天才バカボン」の歌詞を、計算によって起こりうる現象かどうかを考えたものがあります。この研究が受賞したことでニュースになりました。この詳細は、次回としましょう。

・入試モード・
大学は、いよいよ入試モードにはいっています。
入試は、受験生からすると、
試験当日が本番で重要になりますが、
受け入れ側の大学の内部では、
いろいろな作業や処理、手続きが伴います。
まあ、自身の大学への入学者を選抜するために
重要な手続きですから、
慎重にものごとは進めていく必要があります。

・冬の嵐・
雨のようなベチョベチョ雪が降ったかと思ったら
急激に吹雪や冷え込みがあったり、
変化の激しい天気が続きます。
吹雪ではJRが止まったりしていました。
幸い、我が大学の入試日は
なんとか大荒れの合間をぬって
無事に終了することができました。
ただ、入試で出張している人は、
帰ってこられないチームもいます。
入試日程が違う大学は、
交通のトラブルで困っているかと思います。
冬の北海道は、荒れた時の対処が大変です。