2011年12月15日木曜日

2_100 嫌気性細菌:古い化石 2

地質学では、同じような地域で、何度も似たテーマで議論が沸き起こることがよくあります。そんな地域は、地質学において、重要な役割があり、潜在的な可能性をもっているため、今後も同じような議論を湧き起こすことになるはずです。今回の古い化石の見つかったピルバラも、そんな重要な地の一つです。非常に広大ですが。

 西オーストラリアのピルバラ地域から発見された約34億年前の化石は、20年来、科学者の間でもいろいろな議論がありました。近年では、化石であることが多くの研究者から認められてきました。その認定のプロセスは、なかなか大変なものでした。
 恐竜の歯や植物の葉などの化石であれば、化石どうかの疑問はでません。形だけで、だれもの化石だと認めてくれます。しかし、最古とか、非常に古い化石では、それが生物かどうかは、いろいろなプロセスを経なければ認定されません。最初の頃(一番最初かどうかは永年に謎です)の生物は、微小で、単純な形態の単細胞生物のはずです。このような化石は、化石らしいものではありません。逆に化石ぽく見えても、化石でない結晶や自然の産物の可能性があります。生物と無生物との区別が、大切になります。以下ではそのような化石の認定について考えていきます。
 化石であると判定するためには、形態、サイズ、サイズのばらつき、そして生化学的化学組成などの客観的データが必要となります。
 形態とは、生物がもっているべき形のことです。未知の形態は、説得材料にはなりません。現世の既知の生物との類似性が必要です。形態は、直感的、視覚的ですので、重要な根拠です。しかし、決め手にはなりません。球状や繊維状などの形態は、無機的に、つまり生物のかかわりなく化学反応としてできることがあるからです。生物も、簡単で単純な形態を持っているのです。研究者は化石らしきものを、見つけようとしているのですから、そのような形態のものが、まずは候補となります。研究者自信も、それなりの先入観をもって化石探しをしています。ですから、第一歩は形態からでもいいのですが、さらなる証拠は不可欠になります。
 形態がもっているサイズも、生物として持ちうる大きさでなければなりません。火星の生物化石の報告は、化石っぽく見える写真で、インパクトがあり、真実味もありました。しかし、DNAが入らないほどの小さいサイズしかないことが、否定的な見解を生みました。生物がもっているべきサイズは、確保されていなければなりません。むやみに大きのも問題ですが。
 サイズのばらつきは、ある一定の範囲でおさまっているべきです。似た形態の化石が多数見つかっているのであれば、そのサイズの統計的ばらつきは、その生物種が持っている一定の大きさに収まるはずです。統計的に大きなばらつきがあるものは、無機的な成因を反映している可能性があります。初期のピルバラの化石の報告でも、このようなサイズが正規分布している状態を根拠の一つとして示されていました。
 生化学的化学組成とは、今では当たり前になりましたが、化石の構成物質から生化学的にデータを発見することです。生物しか作りえない化学成分(バイオマーカーと呼ばれています)を見つければ、化石が生物であったことの重要な根拠になります。しかし、それはそれでなかなか難しい問題もあるのですが。
 以上のような証拠をいろいろ積み重ねて、化石かどうかを判定していきます。 杉谷らやワーシーらの両グループは、電子顕微鏡や化学分析値などを根拠に化石であること主張しています。化石のサイズはわずか10μmほどで、細菌の細胞の形状をしているといいます。鉄と硫黄からなる結晶(黄鉄鉱(pyrite))もあることから、硫黄などを用いて代謝していたと考えられています。
 そして最後に、化石から得られた生物像と地質調査から得られた形成環境が一致しなければなりません。
 ピルバラの化石は、ストロマトライト(最初に提唱された生物像)が形成される浅海ではなく、メタン生成菌(東京工業大学の上野たちが最初に提唱)やイオウ細菌などの嫌気性細菌が生息していた深海底の熱水噴出孔ではないかというものになりました。このような生物像は、地質調査から得られた環境とも一致して、議論は収斂しつつあるようです。

・いよいよ年末・
師走も中旬となり、
世間はクリスマス気分なのでしょうか。
大学では、卒業研究の提出など、
ばたばたしているので、
そのような浮かれ気分はありません。
もちろん、4年生を担当している教員だからでしょうが。
今度の週末に、久しぶりに家族で街に出ます。
私は、先日の忘年会で街にでたのですが、
なんとなく、まだクリスマス気分になれません。
今週提出が終わります。
ただ、1月末に発表会があるので、
12月末に予行演習をおこなう予定です。
それが終われば、私たちは一段落となります。
御用納めのある28日ですが。

・根雪・
北海道は、今年は定期的に積雪があり、
一度に激しいドカ雪は、局地的に有りますが、
広域には今のところありません。
歳ごとに積雪の状態は違います。
12月中旬なのですが、
もう根雪の様相を持っています。
こんな雪景色が、北海道の冬らしくていいです。
ただ、寒いのはつらいですが。

2011年12月8日木曜日

2_99 先取権:古い化石 1

もう師走ですが、今回のシリーズは、今年の夏に流れたニュースからです。本当はもっと前から、その研究の口火は切られていました。研究の先取権とも関わっていますが、新しい発見は名誉なことでありますが、それよりすごいものが見つかると、その名誉もほんの一時のものとなります。あるいは以前のすごい発見に新しい発見を付け加えるとき、どう売り出すか。そんことが背景にある古い化石をめぐる話題です。

 今年の夏に、最い化石が発見されたというニュースがあちこちのメディアに流れました。ニュースを見た方もおられるでしょう。しかし、このニュースは最古の化石の新発見ではなかったのです。最古の化石は、以前にも別の研究者たちが、発表しているものなですが、このたびイギリスの科学雑誌「Nature Geoscience」のオンライン版にニュースが出たので、大きく伝えられることになりました。今回は、その化石をめぐるニュースを紹介しましょう。
 最古の化石探しの舞台に、グラーンランドのイスア周辺の38億年前の堆積岩が、たびたび登場していました。このエッセイでも何度か紹介しました。しかし今のところ、確実に化石だと認定さているものは、まだ発見されていません。
 少し時代は新しくなりますが、西オーストラリアのピルバラ地域も、最古の化石探しの舞台として、何度か重要な役割を演じました。ピルバラ地域には35億年前から29億年前の堆積岩が分布しています。グリーンランドより地の利があるのと、露出がいいので、調査はしやすい地域ではあります。ただし、荒野で岩石砂漠のような地帯なので、過酷な地でもありますが。
 1993年にピルバラの35億年前の地層から、小さな化石の発見の報告がありました。その後の再検討によって、化石の根拠、化石の種別や堆積環境の推定に疑問が起こり、一時はその信憑性が危ぶまれました。しかし、2000年代後半になって、相次いでこの地ので、化石の研究がなされてきました。最も古い化石として、2006年10月23日の科学雑誌「Nature」に、約35億年前のものが報告されました。東京工業大学の上野たちが発見されたもので、深海底の熱水噴出孔で生息するメタン生成菌であることを示されました。
 名古屋大学の杉谷や三村さんたちも調査を継続されてきました。杉谷さんたちは、2007年にはその成果を発表され、その後も研究を継続されてきました。2010年にはアメリカの科学雑誌「Astrobiology(宇宙生物)」で発表され、その重要さから、雑誌の表紙にもなっています。そのような地道な研究の結果、それらが化石であることが、受け入れられるようになりました。35億年前には化石に残るような生物がすでにいたことを、多くの人に認知されつつあります。
 今回のニュースは、西オーストラリア大学のワーシー(Wacey)らとイギリスのオックスフォード大学の研究グループによるものです。化石は、34億2600万から33億5000万年前に浅い海でたまった堆積岩(Strelley Pool層)からみつかたものです。杉谷さんたちが調べた地層と同じものです。ただ、杉谷さんたちは、チャートから化石を見つけました。一方、ワーシーたちは、チャート層より下にある砂岩から化石を見つけています。地質学的には下にある地層の方が古いので、ワーシーたちの化石の方が古い可能性があります。
 両チームの化石の産地は、数10kmも離れたところだそうです。地層の比較から、時代差は5000万年程度あるのではないかと、ワーシーらは見積もっていますが、そこには正確さはありません。ワーシーたちの成果は後発なので、発見した場所と岩石の種類の違いと、なによりも時代がより古いことを強調しています。そして、より権威のある雑誌に掲載されることで、ニュースバリューを持たせることに成功しました。
 どんな化石であったかは、次回、紹介しましょう。

・研究動機・
この地層での化石発見の先取権は
杉谷さんたちにあります。
もちろん地域が違うので別物という見方はできるでしょう。
後発の報告は、より大きな成果を謳わなければなりません。
その一つが、より古いことをより有名な雑誌で、
強調することになったのでしょう。
でも、杉谷さんたちの発見した化石の多様性の方が
多くなっています。
これはより詳細な調査を繰り返してきた証でもあります。
まあ、科学的にはだれが記録したかより
その化石が本物かどうか、
あるいはその化石の数や、多様性のほうが重要です。
しかし、科学は研究者がおこなうものですから、
人の営みには、動機が必要になります。
先取権は大きな動機になります。

・宇宙生物学・
杉谷さんたちの発表の舞台が
宇宙生物学の雑誌であったことは、
なかなか興味深いものです。
なぜなら、最古の化石は、
生命誕生に直結するような証拠となります。
最古の化石の発見された環境が
ある種の惑星でも達成できそうなものであれば、
地球以外でも生命が誕生した可能性を示せます。
ですから、最古の化石は宇宙に関わる研究者も
大きな関心を持っているのです。

2011年12月1日木曜日

5_97 新定義への期待:キログラム 4

今までの質量の定義には、問題がありました。質量の新しい定義を決めることになりました。ところが、その定義の方法は、まだ決まっていません。手順が逆のような気がしますが、これは、人類の英知や将来にかけた決定ともいえます。私たちは、その期待を叶えられるのでしょうか。

 前回も紹介しましたが、質量の定義が、見直されてることが、決まりました。2011年10月21日、フランスでおこなわれたた国際度量衡総会で、その決議がなされました。キログラム原器が、現代の科学技術の精度や扱いにおいて、もはや充分な役割を果たしえないということになったからです。質量の基準に関わる問題は、多くの研究者も知っていました。新しい基準を定義しなおすことが、この度やっと決まりました。しかし、非常に困難な障壁が、そこには待ち構えています。
 質量の定義をどうするかは、実は現在でも、まだ決まっていないのです。現代の技術を持ってしても、質量の定義は、困難なものであることを意味します。
 もちろん、いくつかの方法は提案されています。
 ひとつは、原子を正確に数えていくという方法です。元素としては、ケイ素が候補となります。かつては炭素が候補でしたが、今ではケイ素が候補になっています。ICTにかかわる各種の技術の進歩が背景にあります。ケイ素の純度は高い結晶がつくれるようになっています。ケイ素の原子を、一個ずつ扱える技術もあります。ただし、大量の個数を扱うことになるので、どのように数えるのかが問題となります。そのための技術を開発していくために、日本と米国、英国、ドイツが共同で取り組んでいますが。しかしそこには、競争もあります。
 ある質量数のケイ素(28)をアボガドロ数(6.022 141 29×10^23)、集めれば、1molになります。1molとは、質量数のグラムになります。ケイ素であれば、正確に28gになります。それを質量の基準とする方法です。
 操作中に原子の数が変動しないようにしなければなりません。さらに、アボガドロ数を正確に定義しておく必要があります。モルは、もともと12Cでつくられた定義ですから、そちらを正確にしていく必要があるかもしれません。
 もうひとつの方法は、非常に精密な天秤をつくって、コイルに電流を流した時の磁力と、分銅を釣り合わせるというものです。その過程で、コイルの動き(距離とスピード)と電流と電圧を精密に測り、質量を定義していこうというものです。これは、アンペアを定義するのに用いられテクニックの逆用でもあります。1Aの電流が流れたときの質量を、1kgと定義していこうというものです。
 距離とスピードは長さと時間の測定なので、厳密さを持っています。ところが、電流は質量が用いられている単位となっています。これは、自己矛盾しているようにみえます。まあ、それなりの解決策があると思います。この方法は、即効性はありますが、将来性は少々危うい気がします。
 アインシュタインのE=mc^2という式を用いる方法もあります。ある振動数の光子のエネルギー(E=hν)と等しいエネルギーを持つ物体の質量から、1kgを定義しようとするものです。
 今後、数年かけて決定していく予定となっていて、いろいろな提案がされています。私は、原子を数える方法が、大変ですが、シンプルでいいと思います。まだ、技術も確定されていないものでに定義を委ねています。未来の技術に委ねたことになります。さて今の人類は、その期待を叶えることができるでしょうか。非常に困難な技術だと思いますが、日本の貢献にも期待したいと思います。

・卒論が佳境・
学生の卒論が佳境となりました。
あと10日ほどで提出なります。
連日、だれかの卒論の添削をしています。
やる気の問題で進展ぐわいは違います。
でも、やればやるだけ、内容は前進していきます。
本来ならもっと早く、
自分の置かれている状態を
気づいて欲しいのですが。
人間とは、切羽詰らないと
気付けないのものでしょうね。
できれば、生涯最高の達成感を
味わって欲しいものです。

・師走・
とうとう12月になりました。
本当に1年の経過は早いものです。
昨年は四国にいましたから
師走も例年とは違っていました。
今年はいつもの師走です。
そして、いつものように
私は、時間に追い回されています。
いつになったら、時間を
気にせずに生きていけるのでしょうか。
時間は、正確に定義されていますが、
体感時間は変化します。
せめて気持ちだけは、
ゆったり流れる時間を味わいたいものです。

2011年11月24日木曜日

5_96 単位の定義:キログラム 3

単位は、厳密に定義されていなかれば、現代のような技術は成り立ちません。その単位の中でも、基本単位は非常に重要になります。ところが、7つの基本単位のうち、4つがどうも怪しいようなのですが。すべての原因は質量にあります。

 すべてのはかるべき数値の中で、基本となる単位は、たったの7つだということを前回紹介しました。それを基本単位と呼び、時間、長さ、質量、電流、温度、物質量、光度の7つだと紹介しました。それ以外の計測値の単位は、この7つの単位を組み合わせて、導き出すことができます。そのため、基本単位以外を、組立単位と呼んでいます。
 基本単位をみていくと、問題点があることがわかってきました。それを紹介していく前に、まずは、基本単位の定義をみていきましょう。
 まずは、時間です。単位は、秒(second、s)です。1967年まで、1秒は、地球の公転速度を利用していました。地球が太陽のまわりを、ちょうど一周したときを1年としていました。1年を、365(日)、24(時)、60(分)、60(秒)で割れば、1秒が決められます。ところが、地球の公転周期は正確でなく、ぶれやばらつきがあることがわかってきました。そこで、1967年に1秒の定義は「セシウム(133Cs)の発する放射の91 9263 1770 周期の継続時間」と修正されました。半端な値になっているのは、それまで使っていた1秒に合わせるためです。
 この定義は、正確で、地球以外でも適用できます。現在でも、10桁の有効数字がありますが、必要とあれば、小数点以下にゼロをつけていけば、いくらでも正確な定義とできます。非常にいい定義だといえます。
 次は、長さで、単位はメートル(meter、m)です。かつて、1mは、地球の北極から赤道までの長さ(子午線)の1000万分の1(1×10^-7)とされていました。19世後半ごろから、北極から赤道までの子午線が一定ではないことがわかってきました。1889年には、光速を利用して、1mは「光が真空中で1/(2 9979 2458) sec の間に進む距離」と決められました。半端な数値は、昔使っていた定義にあわせるためです。長さも、地球以外でも正確に再現できる非常に有用な定義となっています。
 温度はケルビン(Kelvin、K)で、1Kは「水の三重点における熱力学的温度の 1/273.16」と定義され、非常に普遍的なものとなっています。
 問題は質量です。単位は、キログラム(kilogram、kg)です。かつて、1kgは「1気圧最大密度の温度における水1000cm^3の質量」とされていました。厳密に再現するのは非常に困難な作業です。さらに問題は、密度と気圧の決定には、質量が含まれているので、論理的も矛盾をきたしていることです。
 そこで、1889年に、上の定義に正確に一致しているに国際キログラム原器を作成して、その質量を1kgの基準としました。国際キログラム原器は、直径も高さも4cmほどの円柱の白金とイリジウム(9:1の比率)の合金でできています。日本の質量の基準は、国際キログラム原器と同時につくられた日本国キログラム原器となっています。
 国際キログラム原器を、後に厳密に測定したところ、定義と原器に違いがあることがわかりました。また、質量は、原器がないと正確な値を得ることができないという問題もありました。
 物質量はモル(mole、mol)で、1molは「0.012kgの12Cに含まれる原子の等しい数(アボガドロ数、6.022045×10^23)の構成要素を含む系の物質量」と定義されています。この定義には、質量が用いられています。
 電流はアンペア(ampere、A)で、1Aは「真空中に1mの間隔で平行におかれた無限に小さい円形断面を持つ無限に長い2本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の長さ1mごとに2×10^-7Nの力をおよぼし合う一定の電流」と定義されていますが、力の単位(ニュートン、kg・m/s^2)では質量を用いています。
 光度はカンデラ(candela、cd)で、1cdは「周波数540×10^12Hzの単色放射を放出し所定の方向の放射強度が1/683W・srである光源のその方向における光度」と定義されていますが、放射強度の単位は仕事率(ワット、kg・m^2/s^3)がつかわれ、質量が用いられています。
 つまり、質量が原器に依存している限り、他の3つの基本単位も正確にできないという問題があります。これを、改善するというニュースが流れてきました。その話題を次回紹介しましょう。

・返事・
今回のエッセイを読んで、
地震防災や地盤調査をされているTAKさんからメールを頂きました。
そのメールに対して、私は以下のような返事を書きました。
「地質学の野外調査では、それほど難しい計測をすることなく、
単位系変更で混乱もあまり感じませんでした。
ところが、新しい分野の勉強をはじめると
聞き慣れない単位は、とっつきにくく感じました。
高校の物理の教科書で質問に来る学生がいるのですが、
そのとき単位系の違いを感じさせられることがあります。
単位の混乱、そしてその背景にある精度保証など、
研究者の混乱が伝わることなく、
数値だけが独り歩きすることがよくあります。
マグニチュードの数値と桁数の意味も理解しづらいものでしょう。
今回の一連のエッセイは、最終的に国際キログラム原器の
廃止のニュースへと導く予定です。
ベクレルやシーベルトも、初期のニュースでは
いろいろ工夫されて報道されていましたが、
「喉元すぎれば」で、最近はあまり注意を払っていないように感じます。
ベクレルもその大きさに最初は戸惑いを感じましたが、
今では聞きなれたものとなりました。
市民全体がその単位を理解し受け入れた結果ではなく、
頻繁に耳にするため、煩わしいから、もう細かい説明は抜きで
数値だけが述べられているのでしょう。
メディアの責任もあるのでしょうが、
国民のリテラシーの問題も背景にあるのではなかと思っています。
つまりは教育の問題です。
学生をみていても、考える力、考える姿勢が足りない
あるいは考えることを簡単に放棄する学生が多いように思います」
最後は、愚痴っぽくなりましたが、
教育が行き届いた日本でこの状態ですから、
事件や事故あったとき、
その説明を、他の国ではどうしているでしょうか。
政府に信頼や指導力があれば、政府を信じればいいのですが、
政府に信頼度がないとき、
国民は自分のリテラシーで対処するしかないのでしょう。
それが今の日本では充分でない気がします。
そのようは国が先進国といっていいのでしょうか。
またまた愚痴っぽくなりました。

・母の来道・
先日、北海道も大荒れで、かなりの雪になりました。
幸い私の地域は積雪は数cmほどで大したことがありませんでした。
時期的にも根雪には早いので
天気さえよければ融けるのでしょう。
いよいよ北海道の冬も本番となりました。
この時期に、母を京都から呼びました。
次男の小学校の学芸会があったので、
それにあわせて呼びました。
毎年少なくとも一度は呼んでいるのですが、
昨年は私が単身赴任だったので、
北海道には呼びませんでした。
今年は次男の学芸会にあわせて呼びました。
長男の中学校も開放日があったので、
見学に連れていきました。
私は、怪我をした次男と自宅で留守番をしていたのですが。
1週間の滞在予定ですので、
久しぶりに母とゆっくりと話しました。

2011年11月17日木曜日

5_95 基本単位:キログラム 2

属性を測定して示すために必要最小限の基本的な単位(基本単位)は、たったの7つです。この7つの単位があれば、他の単位(組立単位)がすべて表現できます。この基本単位が、20年ほどの前に変更されました。

 前回、指数と有効数字を利用すれば、どんな大きな数値、どんな小さな数値でも、簡便にそして正確に示すことができることを紹介ました。これで、一つの属性はひとつの単位で示すことができることになります。しかし、属性はいっぱいあります。はかるべき属性は、少ないほうがいいはずです。必要不可欠な属性とはどのようなものでしょうか。つまり、はかるべき属性の単位は、あったいいくつあればいいのでしょうか。
 速さには、時速○km(km/時)や秒速○m(m/秒)、光年などがあること、密度でもg/cm^3、kg/m^3など表し方があることを示しました。単位を統一すれば、速さはm/秒、密度はkg/m^3としたしましょう。
 さて、よく見ると、速さは、時間と長さから導かれています。密度は、質量と体積から、体積は長さから導かれます。つまり、速さと密度を表すには、時間、長さ、そして質量の3つの単位があればいいことになります。2つの属性ですから、はかるべき属性が増えてたようにみえますが、このような整理を多くの属性に対しておこなっていけば、多数の単位があっても、より少ない単位で表現することが可能なはずです。
 いろいろな単位のうちで、基本となるべき単位のことを、基本単位と呼んでいます。速さと密度では、時間、長さ、質量が必要な単位でしたが、これらは基本単位となっています。速さのm/秒や密度のkg/^3は、基本単位を組み合わせることで生み出すことができます。このような単位を組立単位と呼びます。
 組み立て単位は、属性の数だけあるはずです。では、基本単位はいったいくつあるのでしょうか。すでに、先人が考えています。7つ基本単位があればいいことがわかっています。その単位は、基本単位は、時間、長さ、質量、電流、温度、物質量、光度です。本当にこんなに少なくていいのかと思えるほどの少ななさです。
 質量をgにするかkgにするか、長さをmするかcmにするかなどの選択によって、物理的な定数が変わってきます。その組み合わせによってMKSA(m、kg、sec、A)系やCGSA(cm、g、sec、A)系などがありす。1960年の国際度量衝総会で、MKSA系を拡大したSI系に変更されました。そして今では聞きなれた力のN(ニュートン)や気圧のPa(パスカル)が導入されました。日本でも1990年代からその導入がおこなれ、現在に至っています。私が学生の頃は、CGSA系の単位で物理がや科学を習いました。しかし、その後新しい単位系に移行しましたので、馴染むのに時間がかかりました。
 では、7つの基本単位とは、どのようにして定義されているのでしょうか。次回紹介します。

・移行・
単位系がCGSA系からSI系に変わっても、
物理や科学の基本は変わりません。
しかし、定数の数値は変わります。
どの単位を簡単に表現できるかによって
単位系の個性が現れます。
日本では1990年代からSIへの移行が進みました。
小学校では1992年、中学校では1993年、
高等学校では1994年から導入されました。
今の学生は、気圧のバール(bar)や
力のkgfなどという単位は知らないのでしょう。
これも時代の流れなのでしょうね。

・雪・
先日、北海道各地で平野部での積雪がニュースになりました。
確かにここ数日寒かったですが、
わが町でも、15日、16日と連続的に夜半に雪になり、
明け方まで雪が残っていました。
いよいよ寒くなってきました。
我が家の車も冬タイヤにかわりました。
暖かい秋を味わいましたが、
長い北海道の冬の到来です。

2011年11月10日木曜日

5_94 指数と有効数字:キログラム 1

 何かの物事を調べたい時、科学的なアプローチとして、実験、観察によっていろいろな性質を計測していくことがよくあります。そのとき、物事の属性によって、はかるべき装置や測り方はいろいろです。いったい私たち人類は、どれくらいのものをはかってきたのでしょうか。そして、究極の属性とは、何を調べればいいのでしょうか。その答えは単位に隠されています。

 物事の属性は、多様です。属性を定量的に示す方法として、科学では計測をしていきます。時間、長さ、重さ、温度、電流、抵抗、などなど。はかれる属性はいろいろありますが、いったん数値化できれば、比較や計算など、いろいろな操作でき、法則を導き出すことも可能です。数値化は属性の表現として非常に有効で、多用されています。
 小・中学校の理科の実験や観察、高校大学の物理や化学でならった式や定数で、いろいろな単位に出会った記憶があります。その単位こそ、計測可能な属性の本質かもしれません。
 計測できる属性とは、いったどれくらいあるのでしょうか。ちょっと考えただけでも、いっぱいありそうです。例えば、速さでも、時速○km(km/時)や秒速○m(m/秒)、光年など、密度でもg/cm^3、kg/m3など、いろいろな単位を見かけます。この世にはいろいろな物質や現象があるので、それらをはかろうとすれば、多数の単位が必要になるのは、仕方ないことでしょう。
 ところが、同じ属性、例えば速さなら、単位がいろいろあっても、単位ごとの換算は可能です。速さという属性は、さまざまな単位が使われていますが、それは便宜上のことで、必要とあらば、ひとつの単位であわらすことができるということです。
 もちろん一つの単位にすると、大きな数や小さな数は、やたら後ろにゼロがいっぱいついたり、小数点のゼロがいっぱい前にあったりします。大きな数値、小さな数値が、表現しにくくなります。しかし、指数を使えば、どんな大きな数値も非常に小さな数値も、同じ単位で簡単に表現することが可能になります。10の○乗(このエッセイでは10^2と表記します)という表現手法です。1000なら10^3、0.01なら10^-2などと書く数学的な約束事を利用するのです。数学的表現ですが、大きな値のゼロや、小さな値の小数点以下のゼロを、簡略化して表現できます。指数を使えば、単位は一つで済ませることができます。
 1gと1.00gは違った意味を持ちます。計測値は、表されている数の次の桁を四捨五入したものです。1gとは0.5gから1.4gの値のことです。1.00gとは、0.95gから1.04gのことです。同じ1gと1.00gでも、その値の意味するところは違っています。このような数字の桁数に意味があるものを、有効数字といいます。つまり、どこまで正確を示す方法でもあります。
 1gは小数点1桁目を四捨五入したもので、1.00gは小数点3桁目を四捨五入したものという意味です。この有効数字の表現方法を用いれば、どこで四捨五入されたものか、どこまで信頼できる数値なのかがわかります。
 指数と有効数字を利用すれば、どんな大きな数値、どんな小さな数値でも、簡便にそして正確に示すことができます。一つの属性はひとつの単位で示すことができます。しかし、属性はいっぱいあります。はかる属性は、少ないほうがいいでしょう。次回は、必要最小限の属性を考えていきましょう。

・ニュース・
10月下旬、質量の基準となっている国際キログラム原器が
数年後に廃止になるというニュースが流れました。
記事をお読みになった方もおられると思います。
私は、「とうとう来たか」という思いと
「いったにどういう基準にするのか」という思いがありました。
そんな思いからこのエッセイを書きました。
まだ、基準は未定ですが、技術が進んでいるので、
よりよいものになることを見守っていきたいと思っています。

・落ち葉・
今年の冬は少々遅れているようです。
北海道も秋のはじまりは冷え込みありましたが、
穏やかや暖かい秋となっています。
お陰で、落ち葉が完全に紅葉して
木々から落ちて行くのを見ました。
たいていは雪や木枯らしでふき飛ばされるのですが、
今年は天寿を全うした落ち葉となりました。
先日、森を抜けて帰宅したら、
からからした落ち葉が積もっていました。
しかし、ここ数日の小雨でしっとり濡れたでしょうが。

2011年11月3日木曜日

3_103 内在:超大陸 5

 物事を説明する理論に合わないものが出てきた時、前の理論の修正で済むもの、全く一新すべきもの、あるいはより大きな枠組みの理論として新しくなるもの、いろいろな対処法があります。それは選ぶものではなく、結果としてそうなってしまうものです。テクトニクスでは、プレートからプルームへと変わりましたが、プレートを内在するプルームの理論になりました。

 一番最後にできた超大陸はパンゲアです。パンゲアの前の超大陸ロディニアが分裂して、ゴンドワナ大陸を分離し、超大陸の名残のロディニア大陸となります。その間には海が形成されます。ウイルソン・サイクルに従えば、できたての海ですから、拡大を続けていき、やがては大きな海になるはずです。しかしなぜか、海の拡大は継続せず、再び閉じてパンゲア超大陸ができていきました。不思議な現象です。
 パンゲア超大陸形成の謎に対して、カナダのJ. B. マーフィ博士たちは、2008年、スーパープルームの上昇によって、大陸が押されて集まったという説を提唱しました。
 スーパープルームとは、マントルの底(核とマントルの境界部)にあった暖かいマントル物質が上昇してくる巨大な上昇流のことです。スーパープルームは、コールドプルームが落下することによって形成されます。
 コールドプルームとは、次のようなメカニズムで形成されます。
 海溝に沈み込んだ海洋プレートは、そのままどこまでも沈み込むのではなく、マントルの中ほどに留まります。それは海洋プレートの密度とまわりのマンとの密度が釣り合うところがあり、そこまでしたもぐり込めないからです。沈み込んだ海洋プレートは、まわりのマントル物質と比べて冷たいため、その存在は地震波で確認されています。
 ある程度時間がたつと、沈み込んだ海洋プレートの岩石は温まり、より密度の大きな鉱物に変わって(相転移といいます)いきます。相転移が進みにつれて、沈み込んだ海洋プレート全体の密度が大きくなり、ある時まわりのマントル物質より重くなり、落下がはじまります。この落下する海洋プレートの塊を、コールドプルームと呼びます。コールドプルームは、まわりのマントルよりはまだ温度が低いので、その存在も地震波で確認されています。
 コールドプルームがマントルの底に向かって落下すると、大きな物質が地球内部に入り込むことになります。物質量の収支を合わすために、コールドプルームに見合った量のマントル物質がマントルの底から上昇しなけれればなりません。上昇しやすいのは、一番密度の小さいマントル物質、つまり一番暖かいマントル物質が上昇してきます。これが、暖かいスーパープルームとなります。
 コールドプルームが形成されるのは、超大陸の周辺となります。なぜなら、超大陸のまわりには、巨大な海洋があり、海洋プレートの大部分は、超大陸のまわりで沈み込むことになります。ですから、コールドプルームは、超大陸の下に形成されます。そして、超大陸の下は、マントルの熱をしばらく放出していないところでもあるので、スーパープルームの上昇してきやすい場所でもあります。超大陸は、やがてスーパープルームによって分裂する必然性を内在しているのです。パンゲア超大陸の分裂も、スーパープルームの上昇があったことを示す証拠があります。
 ところが、ロディニア超大陸は、大陸の分裂を起こしながらも、古くからあった大きな海洋にもスーパープルームが形成され、その力によって再び合体するということが起こったという考えが示されました。
 超大陸形成後のプレートの運動は、ウイルソン・サイクルに従いながらも、プルームにも支配を受けることになります。あり得ることです。そもそも、ウイルソン・サイクルは、上部マントルでのマントル対流に基づく理論でした。プルームの運動は、マントル全体を一層の対流とみなされる運動となっています。現在では、2種類のプルームの運動を組み入れたプルームテクトニクスという考えによって、地球内部の運動は説明されるようになってきました。その中にはプレートテクトニクスが取り込まれています。
 規則を破るような例外があると、理論は修正を迫られます。その時、全く新しい理論に変われば、一種のパラダイム転換といえます。今回のように、修正がより大きな理論へと変貌するのは、パラダイム転換とは少々違います。なんと呼ぶべきはわかりません。
 地球科学は、今でもプルームテクトニクスが大枠の理論となり、詳細はプレートテクトニクスで説明するという研究方法になっています。

・冬間近・
いよいよ11月。
北海道の10月は上旬が少々寒かったのですが、
下旬は以外に暖かく、
過ごしやすい日々が続きました。
11月になっても暖かい日が続いています。
でも、さすがに11月ともなる
冷え込む日がでてきます。
雪もそろそろ降りそうです。
北国の長い冬の到来も間近です。

・異例の特集号・
今回紹介したプルームテクトニクスは、
このエッセイでも何度か紹介していますが、
1990年代にすでに登場していました。
日本の研究成果が重要な役割を果たし、
日本の研究者たちのアイディアによって生まれました。
1994年には地質学雑誌で異例の特集号が組まれ
世界にプルームテクトニクス誕生を高らかに宣言をしました。
記念すべき出来事でした。
その後、緻密なデータを集めたり、
細かな地域現象をプルームテクトニクスで
検証するというものです。
今回紹介した論文は、
プレートテクトニクスの重要な構成要素の
ウイルソン・サイクルの変則性を示す例でした。
変則性は論理の破綻を招くのではなく、
より大きな枠組であれば、
その変則が例外ではなく、
あり得ることとして説明できます。
これが進歩というものなのでしょう。