新たに培養されたアスガルド古細菌は、marumarumayae(マルマルマヤエ)と呼ばれています。MK-D1と似た形態や共生をしていました。より短期間に、より高精細な形態を明らかにし、一歩進んだ解明となっていました。
ストロマトライトのマットの下層のアスガルド古細菌に着目して、培養されました。2026年4月、ノブス(Nobs)さんたちによって、Current Biology誌に
An Asgard archaeon from a modern analog of ancient microbial mats
(太古に類似した現代版の微生物マットからのアスガルド古細菌)
として公表されました。
ノブスさんたちも、井町さんたちと同様に、苦労して培養に成功しています。嫌気性の環境で、さまざまな炭水化物やアミノ酸、微量栄養素に、抗生物質も加えて、5年にも渡って培養されてきました。その結果、アスガルド古細菌が濃縮されてきました。その中に、ロキ城の熱水噴出孔でみつかったアスガルド古細菌(MK-D1)と似ているものが見つかり、Loki-ASV2と命名されました。
また、新種となるアスガルド古細菌(Nerearchaeum marumarumayae)も見つけて、最大89%の高濃度で培養することに成功しました。この新種は、Nerearchaeum marumarumayaeと命名されました。
Nerearchaeum(ネレアルカエウム)がギリシャ神話の海神Nereusと、古細菌を意味するarchaeumを組み合わせたもので、marumarumayae(マルマルマヤエ)は、シャークベイ地域の先住民であるマルガナ人(Aboriginal Malgana)の言葉で「古代の故郷、または古代の家」を意味しています。
そして、このmarumarumayae古細菌は、硫酸還元バクテリアと共生していることも明らかになりました。marumarumayaは、水素(H2)、酢酸、ギ酸、亜硫酸などがつくれました。共生している硫酸還元バクテリアは、アミノ酸やビタミンを合成していることもわかりました。
電子線クライオトモグラフィーという手法が用いて、marumarumayaeの形態も、明らかにされました。この手法は、液体窒素や液体ヘリウムで、生きた状態のままの細胞や高分子を氷で包み込み、電子顕微鏡で三次元的に撮影して立体構造として表現していきます。ナノメートルスケールで、細胞と構造体を可視化しました。
前に紹介したMK-D1と同様に、marumarumayae古細菌は、小胞を多数放出し連なり、繊維状の突起が小胞とつながっていました。新たにmarumarumayae古細菌と硫酸還元バクテリアが「細胞間ナノチューブ」で直接つながっていることもわかってきました。これは、両者が細胞間の管状繊維を通じて、硫酸還元バクテリアが、直接相互作用できることが明らかになりました。
そこから上記のmarumarumaya古細菌は水素や亜硫酸などを与え、バクテリアはアミノ酸やビタミンを供給していると考えられるようになってきました。共生の実態が、より詳しくわかってきました。
井町さんたちが示した、アスガルド古細菌が真核生物へと進化していく途上の姿を示しているというモデルを考えました。井町さんたちのモデルでは、ミトコンドリアを取り込むタイミングや必然性が未解決でした。ノブスさんたちのモデルなら、ストロマトライトのマットがあるので、好気性と嫌気性の境界付近には酸素が少量存在する環境(微好気性)があります。そこでは、ミトコンドリアの祖先となるバクトリア(アルファプロテオバクテリア)が生存可能となり、アスガルド古細菌と共生すれば、真核生物へと進化できます。
後発のノブスさんたちのモデルが有力そうに見えますが、まだまだわからないこともあります。しかし、今回紹介したように、現生の生物を用いて、大きな進化の過程を明らかにできるのは、非常に興味深いですね。
・資金力・
電子線クライオトモグラフィーという手法は
使ったことはありません。
論文に示された図を見ていると、
高解像度で、まるで生きている状態で
観察しているような写真が
多数掲載されています。
すいごい説得力のある画像となっています。
しかし、このシステム本体も高額で
維持費も膨大になるそうです。
いい研究にも資金力がものをいう場合もありますね。
・マンパワー・
古細菌の培養には、大学院たちのチームとして
長年培養を続けてきたそうです。
このようなチームワークのおかげで、
5年で単離できたのかもしれません。
井町さんは、ほぼひとりで培養を継続していたので、
12年以上かかっています。
研究を一気に進めるには
マンパワーも重要ですね。