氷河期があったことは、今では誰もが知っています。氷河期の存在がわかったのは、200年足らず前の1840年ころに過ぎません。氷河期が受け入れられるには、いろいろな人が関わってきました。
ここ1500万年ほど、地球は寒冷化が進んでいることが地質学的にわかっています。そして、数100万年間は、氷河期と暖かい間氷期が繰り返されています。現在は間氷期にあたり、縄文時代(約1万6000年前〜約2300年前)の約7000〜6000年前が最も暖かい時期になっており、年の平均気温が現在より2℃ほど高かったことがわかっています。その結果、日本では、縄文時代に海進(縄文海進と呼ばれています)が進み、海面が現在より約2〜4mも上昇していたことが、関東平野の貝塚の遺跡でも示されています。
現在は、縄文時代より、平均気温は下がっていますが、まだ間氷期の時期になっています。
一方、氷河期は、生物にとっては過酷な時代となります。暖かいところへ移動するか、寒さに適応していくしかありません。人類も火を利用して乗り越えました。もし、現在の社会に氷河期が訪れた、文明社会は、深刻なダメージを受けることになっていくでしょう。
このように氷河期の話題をしても、多くの人は基礎知識として知っていため、理解できます。ところが、かつて氷河期があったことがわかってきたのは、それほど昔ではありません。
スイスアルプスの民間技師のヴェネツ(Ignaz Venet)は氷河期の証拠を集めていました。中でも迷子石(erratic boulder)の由来が大きな問題となっていました。迷子石とは、周囲の地質とは全く異なった巨大な岩塊が、本来あるはずのない場所に、まるで迷子のようにぽつんと存在しているます。ヴェネツは、迷子石から氷河期説を唱え、報告しましたが、誰にも信じてもらえませんでした。
ヴェネツは、鉱山技師のシャルパンティエ(Jean de Charpentier)を、最初に説得しました。そして、1836年夏、ヌーシャテル大学教授のアガシー(J. L. R. Agassiz)が、アルプスを訪れた時、シャルパンティエとおそらくヴェネツも同行して、周辺を案内をしました。そして、アガシーに氷河期説を納得させました。
アガシーは、自身でも野外調査を開始して、先行研究などもまとめ、1837年のスイス自然科学界の年次総会で氷河期について発表しました。その発表は、北半球全体が一つの巨大な氷河で覆われていたという内容でした。発表を聞いた会場は騒然とし、反対意見が多く、論争は3日間続いたとされる「ヌーシャテルの講演」として伝説となっています。
ヴェネツが正しい説を唱えた時は、だれも見向きもしせず、普及することはありませんでした。ところが、当時すでに著名であったアガシーが発表したため、このように大きな反響が起こり、多くの議論が生まれ、最終的には水戸ラメれることになりました。科学にも、名声が必要ば場面があるようです。
アガシーは、1840年に「氷河の研究(Étude sur les glaciers)」を出版して、氷河期を理論化や体系化を進めました。この著者は、氷河期を世に広める重要な役割を果たしました。アガシーが野外調査で集めた証拠とは、氷河が下流に向かって移動する時、周囲の岩盤を削ったり(氷河擦痕)、流路の周囲には氷河が溶けて土砂が残ったり(モレーン)、溶けた周辺の地質とが全く異なった迷子石がありました。これらさまざまな証拠から、かつては大陸全体を巨大な氷床が覆っていた時代(氷河期)があったとしました。
アガシーが氷河期を唱えてから、まだ200年もたっていません。それでも、多くの人は、氷河期が繰り返すことも、現在は間氷期で、もっとも暖かい時代が過ぎたことも知っています。ところが、現在繰り返されている氷河期とは比べ物にならないほどの寒い時期があったことがわかってきました。その詳細は次回としましょう。
・斉一説・
かつて西洋では「大洪水(ノアの箱舟)」などの
聖書に示された考え(激変説)が主流でした。
激変説は、宗教的背景が強くありました。
科学は、観察事実に基づく帰納によって、
現在には想像もできないようなことも証明できる
科学的方法論を構築しました。
これは、斉一説による発見と呼ばれるもので、
近代地質学の基礎ともなりました。
科学による斉一説は、激変説との長い論争を経て
確立されてきました。
氷河期も斉一説に基づく科学的証明でした。
・来週から入院・
来週から、手術のために1週間から10日ほど入院します。
そのため、エッセイを書きだめしています。
2回分は予約配信していくつもりです。
現在の症状は、薬を飲み続ければ対処できます。
しかし、手術でほぼ完治するそうです。
手術は高齢者でも負担が少ないとのことで
講義のない時期に受けることにしました。
現在、常用している薬をやめられる日が
早く来ること願っています。