月の起源については、すでに紹介していたと思っていたのですが、どうもまだ一度も紹介したことがなかったようです。4月に月の起源に関する新しい証拠が提示されました。その論文とともに、これまでの月の起源についても紹介していきましょう。
月は、地球から見える一番身近な天体です。全く見えなない新月から、少しずつ太りだし、明るい満月になり、また少しずつ痩せて新月になるという、非常に規則的な満ち欠けをします。その規則性は、暦としても利用されてきました。規則的で、不思議な形態の変化は、古代の人々に、月に対する神秘さを与えたことでしょう。また、月の表面には不思議な白黒の模様があり、古代の人々は、そこにいろいろなイメージを見出してきました。
人は古くから、月に不思議さ、神秘性を見出してきました。月にちなむ神話や伝説も多数あります。日本では、かぐや姫(竹取物語)が映画にもされ、最近さらに有名になりました。
20世紀になると科学技術が進歩してきて、月の実態が明らかになってきます。人工衛星による探査、またアポロによる有人探査もおこなわれ、月は、人類がはじめて降り立った地球外の天体となりました。
アポロの有人探査により、大量の試料を地球に持ち帰ることができました。その試料を分析することで、地球に次いで詳しく調べられた天体となりました。今まで間接的にしか調べることができなかった地球外の天体が、直接分析などできる対象になったのです。
さて、月の起源についは、古くからいくつもの説が提唱されてきました。それらの説は、捕獲説、共成長説、分裂説の3つに大別されています。これらの3つの説は、人間関係になぞらえ、捕獲説は他人説、共成長説は兄弟説、分裂説は親子説という呼び方をされることもあります。なかなかわかりやすい命名でもあります。
捕獲説とは、太陽系の別の場所で形成された天体(小惑星や準惑星と呼ぶべきか)が、何らの原因でそれまでの公転軌道が乱された、地球の引力に捕らわれて、衛星となったと考える説です。太陽系のどこか全く別のところの天体が、たまたま衛星となったことになります。成因や形成時期などが、ばらばらでもかまわないという利点があります。しかし、本当にそんなに都合よく衛星となることができるのかという疑問もあります。力学的はなかなか難しい過程になります。
共成長説とは、地球と月が現在の軌道上で、同じ条件で同時に形成され、惑星と衛星という関係になったというものです。これだと、地球と月の起源を一緒に考えられ、同時にできたことになるので、比較的解明がしやすくなります。また化学的、物理的共通点の説明がしやすくなります。ただし、地球と月の運動量(角運動量といいます)を合わせると、かなり大きな量になります。もし隕石のような材料物質の集積によって、両者が同時にできたとすると、そのような大きな運動量は説明できないという問題があります。
分裂説とは、地球が形成され、何らかの原因(自転や遠心力など)で地球の一部がちぎれて飛び出し、その破片が月になったという説です。この説では、地球と月の化学的性質の共通点と相違を説明しやすいという利点があります。ところが、そのような現象を起こすには、かつての地球の自転が非常に速くなければなりません。さらに、月の物質が飛び出したあとは、現在の自転の状態にならなければなりません。そのようは急激な自転の変化を起こすメカニズムは、現在わかっていません。
このように、どの説も一長一短があり、なかなか合意がえられませんでした。ところが、現在では、衝突説で決着をみています。衝突説は、他人説と親子説の合わさったような説です。この説の説明は、次回としましょう。
・探査計画・
こんなに身近な月なのですが、
アポロ計画をピークにして
その後は有人探査がなされていません。
費用がかかりすぎることと
アポロが十分な成果を挙げたためでしょう。
その後も、無人探査機や周回探査機は
何度か送り込まれており、
日本も探査機「かぐや」を送っています。
その内容は、このエッセイでも紹介しました。
「5_67 かぐやが見たもの:日本の月探査」(2007.11.22)
「5_68 かぐやが描く地図」(2008.07.10)
「かぐや」の後継機の計画があるようですが、
なかなか進展していないようです。
現在、月の探査は一段落しているようです。
注目を惹き大きな予算をとるような
目標設定がなかなかできなからでしょうかね。
・蒸し暑さ・
北海道らしい好天の前後は、
じめじめとした蒸し暑い日がありました。
本州の梅雨と比べると、
湿度や暑さは大したことがないはずです。
しかし、北海道の家の多くは、
暖房はあっても、エアコンがない家も多いです。
もちろん我が家もそうです。
冷房や除湿がないと、
昼間の蒸し暑さなかなか耐え難いものです。
しかし、夜には気温が下がるので
なんと眠ることができますが。
2015年6月25日木曜日
2015年6月18日木曜日
2_131 ハビタブル・トリニティ 5:生命誕生の条件
シリーズの最後に、第二の地球が存在する可能性ですが、これがなかなか大変かもしれません。丸山さんたちの提示されたハビタブル・トリニティは、いくつかの厳しい条件をクリアしなければ、生命は誕生しないと考えられます。
さて、このシリーズの最後として、地球の生命から学ぶべきことをまとめておきましょう。丸山さんたちは、初期的な大陸(列島)の地溝帯で火山活動が激しい場を提案しています。地球生命の誕生の場は、これまで深海底の熱水噴出孔が有力だったのですが、ハビタブル・トリニティを考えると、より陸地に近い環境が適していると考えています。地溝帯では固有の火山活動が起こっており、生命誕生や維持に必要な栄養素がそろいやすいと指摘しています。これは、今までにないアイディアです。
また、現在の太陽系がの惑星探査で見つかっている惑星系には、大きく3つのタイプがあります。巨大ガス惑星が太陽に近いところにある(ホット・ジュピター)、遠いところにある(クール・ジュピター)、ガス惑星のない惑星系(ジュピター・レス)の3つです。
ホット・ジュピターでは、地球型惑星は氷惑星の位置で形成されたものがハビタブル・ゾーンに移動するので、大量に水を持ってしまいます。大量の水は、ハビタブル・トリニティを満たしにくくなります。ジュミター・レスでは、地球側惑星は太陽に近づきすぎて、ホット・スーパー・アースになっていきます。クール・ジュピター・タイプだけが、ハビタブル・ゾーンに地球型惑星ができます。ただし、その惑星は水の量が少なすぎて生命誕生には適さないようです。ほどよい水の量の惑星は、外側から移動してきたものだと考えてます。それも少しはあるだろうと考えています。かなか難しい条件なので、地球型惑星で地球程度の水は彗星の衝突で水を供給するという可能性も指摘しています。
生命誕生のためいは、いくつかの厳しい条件をくぐり抜ける必要がありそうです。ハビタブル・ゾーンに、適切な大きさの惑星として、大気を保持し続けて、なおかつ多すぎない水の量をもっていなければなりません。この初期条件を満たすことが、生命の星になる重要な条件になります。こ
生命誕生にいたる道は、なかなか険しいようです。ただし、その条件さえ満たせば、かなりの可能性をもって生命が誕生しそうです。また、条件を維持することも、それほど難しいことではなさそうです。
陸地(列島)が形成されれば、生命誕生の場が生じ、誕生することでしょう。陸地が広がると、地球の環境は非常に多様になります。誕生したた生命は、多様な環境で、生物の多様が起こります。
丸山さんたちは、生命誕生の場が初期地球だけのものでなく、現在の地球にも存在するのではないかと考えています。日本のある場所で、不思議な化学反応をしている生物がいることを発見しています。まだ途上の研究ですが、このような生物が現在生まれている生物だとしたら、私の生命観、進化観は大きく変更が迫られます。丸山さんたちの研究が、今後どのような展開を見せるかなかなか楽しみです。
・初夏なのに・
YOSAKOIも終わりました。
6月も中旬になってきました。
春から6月の初夏にかけても、
晴天の日が少なく思えます。
本来はこの時期は、
雪国ではもっと快適な時期になるはずなのですが、
曇っていたり、風が強かったり
北海道らしい快晴の心地よい日が
あまりに少なく思えます。
・地質学・
地質学の話題のうち、火山、地震、津波、地滑りなど
人の命や財産を危険にさらされるものは、
メディアにも大きく取り上げられます。
それ以外の成果としては、
自然科学の中でも地質学は
かなり地味な取り上げ方しかされないようです。
恐竜の化石などは、花形の分野になっていますが、
しょっちゅう珍しい化石が
発見されるわけでもありません。
化石も、科学的重要性も考えると、
話題として取り上げられる頻度は
そうそう多くはないように思われます。
かといって、地質学が科学的重要度が
低いわけではありません。
今回の論文のようば壮大なテーマと
そのインパクトの強烈さは、
地質学の醍醐味を感じさせて
くれるものではないでしょうか。
さて、このシリーズの最後として、地球の生命から学ぶべきことをまとめておきましょう。丸山さんたちは、初期的な大陸(列島)の地溝帯で火山活動が激しい場を提案しています。地球生命の誕生の場は、これまで深海底の熱水噴出孔が有力だったのですが、ハビタブル・トリニティを考えると、より陸地に近い環境が適していると考えています。地溝帯では固有の火山活動が起こっており、生命誕生や維持に必要な栄養素がそろいやすいと指摘しています。これは、今までにないアイディアです。
また、現在の太陽系がの惑星探査で見つかっている惑星系には、大きく3つのタイプがあります。巨大ガス惑星が太陽に近いところにある(ホット・ジュピター)、遠いところにある(クール・ジュピター)、ガス惑星のない惑星系(ジュピター・レス)の3つです。
ホット・ジュピターでは、地球型惑星は氷惑星の位置で形成されたものがハビタブル・ゾーンに移動するので、大量に水を持ってしまいます。大量の水は、ハビタブル・トリニティを満たしにくくなります。ジュミター・レスでは、地球側惑星は太陽に近づきすぎて、ホット・スーパー・アースになっていきます。クール・ジュピター・タイプだけが、ハビタブル・ゾーンに地球型惑星ができます。ただし、その惑星は水の量が少なすぎて生命誕生には適さないようです。ほどよい水の量の惑星は、外側から移動してきたものだと考えてます。それも少しはあるだろうと考えています。かなか難しい条件なので、地球型惑星で地球程度の水は彗星の衝突で水を供給するという可能性も指摘しています。
生命誕生のためいは、いくつかの厳しい条件をくぐり抜ける必要がありそうです。ハビタブル・ゾーンに、適切な大きさの惑星として、大気を保持し続けて、なおかつ多すぎない水の量をもっていなければなりません。この初期条件を満たすことが、生命の星になる重要な条件になります。こ
生命誕生にいたる道は、なかなか険しいようです。ただし、その条件さえ満たせば、かなりの可能性をもって生命が誕生しそうです。また、条件を維持することも、それほど難しいことではなさそうです。
陸地(列島)が形成されれば、生命誕生の場が生じ、誕生することでしょう。陸地が広がると、地球の環境は非常に多様になります。誕生したた生命は、多様な環境で、生物の多様が起こります。
丸山さんたちは、生命誕生の場が初期地球だけのものでなく、現在の地球にも存在するのではないかと考えています。日本のある場所で、不思議な化学反応をしている生物がいることを発見しています。まだ途上の研究ですが、このような生物が現在生まれている生物だとしたら、私の生命観、進化観は大きく変更が迫られます。丸山さんたちの研究が、今後どのような展開を見せるかなかなか楽しみです。
・初夏なのに・
YOSAKOIも終わりました。
6月も中旬になってきました。
春から6月の初夏にかけても、
晴天の日が少なく思えます。
本来はこの時期は、
雪国ではもっと快適な時期になるはずなのですが、
曇っていたり、風が強かったり
北海道らしい快晴の心地よい日が
あまりに少なく思えます。
・地質学・
地質学の話題のうち、火山、地震、津波、地滑りなど
人の命や財産を危険にさらされるものは、
メディアにも大きく取り上げられます。
それ以外の成果としては、
自然科学の中でも地質学は
かなり地味な取り上げ方しかされないようです。
恐竜の化石などは、花形の分野になっていますが、
しょっちゅう珍しい化石が
発見されるわけでもありません。
化石も、科学的重要性も考えると、
話題として取り上げられる頻度は
そうそう多くはないように思われます。
かといって、地質学が科学的重要度が
低いわけではありません。
今回の論文のようば壮大なテーマと
そのインパクトの強烈さは、
地質学の醍醐味を感じさせて
くれるものではないでしょうか。
2015年6月11日木曜日
2_130 ハビタブル・トリニティ 4:海水の量
生命の進化には、惑星として満たすべき条件がさらに必要だといいます。海水の量です。海水が多ければ大陸の岩石できたとしても、陸地ができないことになります。生命の進化には絶妙の条件が必要なのかもしれません。
丸山さんたちの説では、生命は、軌道条件(ハビタブル・ゾーン)と質量条件を満たした惑星で、なおかつ水、大気、岩石の「ハビタブル・トリニティ」から由来する成分が常に供給され続けるところで、誕生したというものでした。
複雑に進化した生物であれば、これらの成分を蓄えたり、取りに行ったり、集めたりすることができます。動物であれば、水を飲みに水辺にいくことができますし、植物なら根や実、茎などに養分として蓄えることができます。
生命の誕生や単細胞のような単純な生物であれば、環境として継続される必要があります。さらに、生命の誕生を考える場合、これらの3つの成分が、常に存在し、いろいろな化合物が繰り返し合成されているところでなければ難しいでしょう。
「ハビタブル・トリニティ」として成分が循環している環境が生命の誕生の場として望ましいところとなります。生命が誕生した後、進化し続けるためには、このような成分が、継続的に循環している環境が存在しなければなりません。
地球は、「ハビタブル・トリニティ」を有し、すべての条件を満たしていました。これらの条件は、水の惑星であれば、簡単に満たせるように思われますが、そうでもなさそうです。多くの制約条件があり得ることを、丸山さんたちは指摘しています。
まず、水惑星として水があり、プレートテクトニクスが働けば、大陸を構成する岩石が形成されます。大陸の岩石である花崗岩や安山岩は、プレートテクトニクスによって海洋プレートが沈み込んだ時、列島で形成される岩石(安山岩)が起源となります。だから水さえあれば、花崗岩は形成されるはずです。
水は不可欠な存在ですが、水の量が重要になります。
水が多ければ陸地が形成されません。大陸の岩石があったとしても、海面上にでることがなければ、大陸の成分として海に持ち込まれる量は、非常に少なくなります。大陸があると、岩石の中の成分が風化、浸食、運搬によって、大量に海に持ち込まれるからです。大陸の適切な量が必要なのです。
太古代(約25億年前)まで大陸と呼べるほどの規模のものはなく、列島があちこち散在する状態だと考えられています。そのような陸地の条件であれば、陸からの栄養素の供給量も少なく、また安定した供給が難しく、生命の進化にはあまり適さなかった環境だと考えられます。生命体を構成するには、栄養素として広い陸地、大陸が必要だったと、丸山さんたちは主張しています。
地球には常に海が存在していました。しかし、その量(あるいは海水面)は、数100mの範囲で変動してきたと考えられています。6億年前くらいから、海水が「マントルへ逆流」しはじめ、海水量は現在も減っていると考えられています。
生命誕生や初期の進化では、海洋で多くの時間をかけておこなわれていました。海水があまりに少ないと、その環境を維持するのが難しかったかもしれません。大陸と海水の量にも、ある限られた条件が必要だったと考えられます。
・マントルへの逆流・
海水のマントルへの逆流は、
これまた丸山さんが思いつかれたアイディアです。
地球は内部に蓄えたエネルギーが外部へ放出され
地球が冷めていく過程でとみなせます。
それを原動力として、地球のいろいろな営みが起こっています。
沈み込み帯の環境も、昔と現在まで変わってきています。
水(実際にはOH)を含んでいた鉱物は
昔は温度が高かったため、
分解され水が抜けてた鉱物に変わっていました。
ところが、温度低下により、水をもったままの鉱物として、
沈み込めるようになりました。
これは量は少しずつですが、
マントルに水が持ち込まれているということになります。
その量は海水面にして数100mであったと見積もっています。
これを称してマントへの海水の逆流と呼んでいます。
これもなかなか壮大な話です。
・天候不順・
5月下旬から6月上旬にかけて
天候が不順で肌寒い日が続きます。
先日も自宅でストーブを焚いてしまいました。
稀なことではありますが、
このような天候は時々あります。
北海道にいると、天候不順がいつも気になります。
冷夏や日照不足にならなければいいと思ってしまいます。
なんといっても北海道は農業が重要な産業ですから
天候不順は非常に気になるところです。
丸山さんたちの説では、生命は、軌道条件(ハビタブル・ゾーン)と質量条件を満たした惑星で、なおかつ水、大気、岩石の「ハビタブル・トリニティ」から由来する成分が常に供給され続けるところで、誕生したというものでした。
複雑に進化した生物であれば、これらの成分を蓄えたり、取りに行ったり、集めたりすることができます。動物であれば、水を飲みに水辺にいくことができますし、植物なら根や実、茎などに養分として蓄えることができます。
生命の誕生や単細胞のような単純な生物であれば、環境として継続される必要があります。さらに、生命の誕生を考える場合、これらの3つの成分が、常に存在し、いろいろな化合物が繰り返し合成されているところでなければ難しいでしょう。
「ハビタブル・トリニティ」として成分が循環している環境が生命の誕生の場として望ましいところとなります。生命が誕生した後、進化し続けるためには、このような成分が、継続的に循環している環境が存在しなければなりません。
地球は、「ハビタブル・トリニティ」を有し、すべての条件を満たしていました。これらの条件は、水の惑星であれば、簡単に満たせるように思われますが、そうでもなさそうです。多くの制約条件があり得ることを、丸山さんたちは指摘しています。
まず、水惑星として水があり、プレートテクトニクスが働けば、大陸を構成する岩石が形成されます。大陸の岩石である花崗岩や安山岩は、プレートテクトニクスによって海洋プレートが沈み込んだ時、列島で形成される岩石(安山岩)が起源となります。だから水さえあれば、花崗岩は形成されるはずです。
水は不可欠な存在ですが、水の量が重要になります。
水が多ければ陸地が形成されません。大陸の岩石があったとしても、海面上にでることがなければ、大陸の成分として海に持ち込まれる量は、非常に少なくなります。大陸があると、岩石の中の成分が風化、浸食、運搬によって、大量に海に持ち込まれるからです。大陸の適切な量が必要なのです。
太古代(約25億年前)まで大陸と呼べるほどの規模のものはなく、列島があちこち散在する状態だと考えられています。そのような陸地の条件であれば、陸からの栄養素の供給量も少なく、また安定した供給が難しく、生命の進化にはあまり適さなかった環境だと考えられます。生命体を構成するには、栄養素として広い陸地、大陸が必要だったと、丸山さんたちは主張しています。
地球には常に海が存在していました。しかし、その量(あるいは海水面)は、数100mの範囲で変動してきたと考えられています。6億年前くらいから、海水が「マントルへ逆流」しはじめ、海水量は現在も減っていると考えられています。
生命誕生や初期の進化では、海洋で多くの時間をかけておこなわれていました。海水があまりに少ないと、その環境を維持するのが難しかったかもしれません。大陸と海水の量にも、ある限られた条件が必要だったと考えられます。
・マントルへの逆流・
海水のマントルへの逆流は、
これまた丸山さんが思いつかれたアイディアです。
地球は内部に蓄えたエネルギーが外部へ放出され
地球が冷めていく過程でとみなせます。
それを原動力として、地球のいろいろな営みが起こっています。
沈み込み帯の環境も、昔と現在まで変わってきています。
水(実際にはOH)を含んでいた鉱物は
昔は温度が高かったため、
分解され水が抜けてた鉱物に変わっていました。
ところが、温度低下により、水をもったままの鉱物として、
沈み込めるようになりました。
これは量は少しずつですが、
マントルに水が持ち込まれているということになります。
その量は海水面にして数100mであったと見積もっています。
これを称してマントへの海水の逆流と呼んでいます。
これもなかなか壮大な話です。
・天候不順・
5月下旬から6月上旬にかけて
天候が不順で肌寒い日が続きます。
先日も自宅でストーブを焚いてしまいました。
稀なことではありますが、
このような天候は時々あります。
北海道にいると、天候不順がいつも気になります。
冷夏や日照不足にならなければいいと思ってしまいます。
なんといっても北海道は農業が重要な産業ですから
天候不順は非常に気になるところです。
2015年6月4日木曜日
2_129 ハビタブル・トリニティ 3:ハビダブル・ゾーン
生命の惑星になるためには、惑星の軌道条件(ハビタブル・ゾーン)に質量条件を満たした惑星で、さらにハビタブル・トリニティをも満たしていなければなりません。生命の誕生にはいろいろクリアすべき条件があります。
地球は、青い星、水の惑星などと呼ばれ、「水」があることが特徴となっています。水は生命誕生、そして生命維持、進化においても、なくてはならないものです。
惑星に水が存在するためには、いくつかの天文学的条件を満たさなければなりません。まず、母星である太陽にも条件が課せられます。太陽の明るさと惑星と太陽の距離が適切でなければなりません。近ければ暑くなり、H2Oは気体になり、遠くて寒ければ氷となります。ある限られた軌道にだけ水が存在できます。この惑星の軌道条件は、「ハビダブル・ゾーン」と呼ばれています。
また、天体として水を保持し続けるだけの十分な質量(あるいはサイズ)が必要です。大きすぎると木星、土星のようなガス惑星になり、水があっても表層環境で軌道条件を活かすことができません。小さすぎると水星、火星のように大気が薄く、水の存在できる表層の環境を、長期間維持できなくなります。惑星は質量条件を満たす必要もあるのです。
このような軌道条件を満たした場所に、質量条件を満たした惑星があったときのみ、水が存在します。太陽系でこの条件を満たしているのは、地球だけです。
軌道条件と質量条件の設定は、惑星の表層に海洋(水)の存在でき、維持ができることを限定するものです。ところが丸山さんたちは、水の存在だけでは生命誕生の条件としては足りないといいます。生命の誕生そして維持には、「栄養素」も必要だというのです。その根拠が前回紹介した生命を構成している化学成分になります。
人間(生命)の化学成分(元素組成)として、多い順に酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、リンとなっていました。これらの化学成分は、3つのグループに分けることができます。水素と酸素、炭素と窒素、カルシウムとリンの3つです。これらの3つのグループは、元素が地球のどこから由来しているかに基いて分けられています。
水素と酸素は水(H2O)の素材で、地球での分布場所は、海洋です。炭素と窒素は大気中です。炭素は大気中には二酸化炭素(CO2)として存在し、窒素は2つ結びついた分子(N2)として存在します。二酸化炭素は、現在の地球には量が少ないのですが、かつては大気の主成分として、大量に存在していていたことがわかっています。
カルシウムとリンは、岩石中に含まれている成分です。また生命の維持にはカルシウムとリンの他にカリウムも必要不可欠な元素です。これらの成分は、どの岩石でもそれなりに含まれているのですが、大陸や列島を構成している花崗岩や安山岩に多い成分です。つまり大陸の存在が生命の栄養源として重要な要素だと、丸山さんたちはいいます。
生命に必要不可欠な3つの成分、水、大気、岩石(大陸)を「ハビタブル・トリニティ」と呼びました。軌道条件(ハビタブル・ゾーン)と質量条件を満たした惑星で、ハビタブル・トリニティを備えた惑星こそが、生命誕生に必要な条件になります。
丸山さんたちの考察はここで終わりではありません。まだまた広がってきます。
・個人に属するもの・
急な体調不良が続きダウン状態になりました。
こんなとき大学教員は講義や校務の休む手続きと
それを補う手続きが必要になり
大変な思いをします。
何も大学教員だけでなく
社会人全般のことでしょう。
ただ大学教員は、個人に依存する仕事が多いせいでしょう。
以前の博物館や研究者であった時は、
通常の休みは、電話連絡で済ませられ
損失は自分の仕事がその間ストップするだけでした。
大学の講義や校務は、いろいろ複雑で
あとで代替もしなければなりません。
大学は大きな組織ですが、
講義や研究を考えると
個人に属する部分が大きいのです。
まるで個人経営の自転車操業状態です。
・音での季節変化・
北海道は暑く感じる日が
ときどき訪れるようになってきました。
そんな日にはエゾハルゼミの声も聞こえます。
北海道の6月では、
夏の訪れを感じさせるものが
植物の移ろいだけでなく、他にもいろいろあります。
ヒバリのさえずりからカッコウの鳴き声へ。
エゾハルゼミとYOSAKOIの練習する音楽や掛け声。
音でも季節を感じることができます。
地球は、青い星、水の惑星などと呼ばれ、「水」があることが特徴となっています。水は生命誕生、そして生命維持、進化においても、なくてはならないものです。
惑星に水が存在するためには、いくつかの天文学的条件を満たさなければなりません。まず、母星である太陽にも条件が課せられます。太陽の明るさと惑星と太陽の距離が適切でなければなりません。近ければ暑くなり、H2Oは気体になり、遠くて寒ければ氷となります。ある限られた軌道にだけ水が存在できます。この惑星の軌道条件は、「ハビダブル・ゾーン」と呼ばれています。
また、天体として水を保持し続けるだけの十分な質量(あるいはサイズ)が必要です。大きすぎると木星、土星のようなガス惑星になり、水があっても表層環境で軌道条件を活かすことができません。小さすぎると水星、火星のように大気が薄く、水の存在できる表層の環境を、長期間維持できなくなります。惑星は質量条件を満たす必要もあるのです。
このような軌道条件を満たした場所に、質量条件を満たした惑星があったときのみ、水が存在します。太陽系でこの条件を満たしているのは、地球だけです。
軌道条件と質量条件の設定は、惑星の表層に海洋(水)の存在でき、維持ができることを限定するものです。ところが丸山さんたちは、水の存在だけでは生命誕生の条件としては足りないといいます。生命の誕生そして維持には、「栄養素」も必要だというのです。その根拠が前回紹介した生命を構成している化学成分になります。
人間(生命)の化学成分(元素組成)として、多い順に酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、リンとなっていました。これらの化学成分は、3つのグループに分けることができます。水素と酸素、炭素と窒素、カルシウムとリンの3つです。これらの3つのグループは、元素が地球のどこから由来しているかに基いて分けられています。
水素と酸素は水(H2O)の素材で、地球での分布場所は、海洋です。炭素と窒素は大気中です。炭素は大気中には二酸化炭素(CO2)として存在し、窒素は2つ結びついた分子(N2)として存在します。二酸化炭素は、現在の地球には量が少ないのですが、かつては大気の主成分として、大量に存在していていたことがわかっています。
カルシウムとリンは、岩石中に含まれている成分です。また生命の維持にはカルシウムとリンの他にカリウムも必要不可欠な元素です。これらの成分は、どの岩石でもそれなりに含まれているのですが、大陸や列島を構成している花崗岩や安山岩に多い成分です。つまり大陸の存在が生命の栄養源として重要な要素だと、丸山さんたちはいいます。
生命に必要不可欠な3つの成分、水、大気、岩石(大陸)を「ハビタブル・トリニティ」と呼びました。軌道条件(ハビタブル・ゾーン)と質量条件を満たした惑星で、ハビタブル・トリニティを備えた惑星こそが、生命誕生に必要な条件になります。
丸山さんたちの考察はここで終わりではありません。まだまた広がってきます。
・個人に属するもの・
急な体調不良が続きダウン状態になりました。
こんなとき大学教員は講義や校務の休む手続きと
それを補う手続きが必要になり
大変な思いをします。
何も大学教員だけでなく
社会人全般のことでしょう。
ただ大学教員は、個人に依存する仕事が多いせいでしょう。
以前の博物館や研究者であった時は、
通常の休みは、電話連絡で済ませられ
損失は自分の仕事がその間ストップするだけでした。
大学の講義や校務は、いろいろ複雑で
あとで代替もしなければなりません。
大学は大きな組織ですが、
講義や研究を考えると
個人に属する部分が大きいのです。
まるで個人経営の自転車操業状態です。
・音での季節変化・
北海道は暑く感じる日が
ときどき訪れるようになってきました。
そんな日にはエゾハルゼミの声も聞こえます。
北海道の6月では、
夏の訪れを感じさせるものが
植物の移ろいだけでなく、他にもいろいろあります。
ヒバリのさえずりからカッコウの鳴き声へ。
エゾハルゼミとYOSAKOIの練習する音楽や掛け声。
音でも季節を感じることができます。
2015年5月28日木曜日
2_128 ハビタブル・トリニティ 2:生命とは
唯一生命が確認されている地球を例にして、生命誕生の条件を考えていくのは正攻法といえます。そのためには、地球で生命が、いつ、どのようにして誕生したか、あるいはその必要条件などを知っておく必要があります。そんなアプローチとして、ハビタブル・トリニティがあります。
ハビタブル・トリニティ(Habitable Trinity)というのは、生命が存在できるための3条件ということです。最初に考えたのは東京工業大学の丸山さんたちでした。その詳細は、丸山ほか(Maruyama, Ikoma, Genda, Hirose, Yokoyama, Santosh, 2013)やドーム・丸山(Dohm, Maruyama, 2015)で紹介されています。
これらの論文は、生命の起源に対して、不思議なアプローチをしています。地球生命の一番本質的なものとして、化学組成、あるいは栄養素を考え、それが地球のどのようなところに定常的に供給されているかを概観し、生命の誕生の場や時期、条件を考えています。その時にでてくると考え方として、ハビタブル・トリニティが提案されています。なお、2013年にはハビタブル・トリニティの考えは提示されず、2014年の論文で強く提唱された考えでした。
丸山ほか(2013)の論文は、
The naked planet Earth: Most essential pre-requisite for the origin and evolution of life.
(裸の惑星地球:生命の誕生と進化に最も必須の必要条件)
というタイトルです。地球全体の変化や表層環境を総括的にとらえ、地球での生命誕生の条件をみていくものです。そして、地球からの学び(Lesson)として、太陽系外の惑星において、生命や文明のある星を探す方法を提案しています。
丸山さんらしい非常に壮大な構想の論文です。その内容は後にして、ここでは、ドーム・丸山の論文に基づいて、ハビタブル・トリニティとはどのようなものかを、詳しく見ていきましょう。
まずは生命の定義からです。一般に生命の定義として、3つの条件が提示されます。
・膜:水などの生体に不可欠な成分が出入りでき、外界と分けるもの
・代謝:取り入れた成分からエネルギーを生み出す一連の化学反応
・自己複製:生命が続くかぎり継続する自己再生
の3つです。
しかし、丸山さんたちは、これだけでは十分ではないといいます。なぜなら、生命は継続的な化学反応(radical reaction、遊離基反応)がなければならず、そのためには水以外の成分も、恒常的に供給されなければならないからです。
それらの成分を探るために、ヒトを例に、構成元素をみていくと、多い順に、酸素(重要比で65%)、炭素(18%)、水素(10%)、窒素(3%)、カルシウム(1.5%)、リン(1%)、その他(1.5%)となります。ただし、順番やその量比は生物種によって、少々変わってきます。一番目の酸素と三番目の水素は、水の素材になります。ですから、それ以外の炭素、窒素、カルシウム、リンなどが問題となります。
では、これらの成分の由来は?ということが、ハビタブル・トリニティの核心につながります。それは、次回としましょう。
・退職・
丸山さんは、よく知っている研究者で
何度もお世話にもなりました。
4月に退職の祝賀会がおこなわれました。
私は、校務があったので
出席はできなかったのですが、
記念品代だけはお送りました。
すると、今回紹介している論文でも使用されている
地球史の図がそのままデザインされた
バスタオルが送られてきました。
その他にも、丸山さんの顔の金太郎飴などもありました。
まだまだ現役で研究者を続けられるでしょうが、
これからも壮大なアイディアを
尽きることなく提示して、
学界を刺激していって欲しいものです。
・腰痛再発・
完治したと思った腰痛が、
先日の日曜日に、再発しましました。
重い荷物を持ち上げなければならなくなったときです。
気をつけないと思っていたのですが、
予想通り腰に来ました。
前回ほどひどくはないのですが、
やはり痛くて治療に通いました。
癖にならないように
気をつけなればなりませんね。
ハビタブル・トリニティ(Habitable Trinity)というのは、生命が存在できるための3条件ということです。最初に考えたのは東京工業大学の丸山さんたちでした。その詳細は、丸山ほか(Maruyama, Ikoma, Genda, Hirose, Yokoyama, Santosh, 2013)やドーム・丸山(Dohm, Maruyama, 2015)で紹介されています。
これらの論文は、生命の起源に対して、不思議なアプローチをしています。地球生命の一番本質的なものとして、化学組成、あるいは栄養素を考え、それが地球のどのようなところに定常的に供給されているかを概観し、生命の誕生の場や時期、条件を考えています。その時にでてくると考え方として、ハビタブル・トリニティが提案されています。なお、2013年にはハビタブル・トリニティの考えは提示されず、2014年の論文で強く提唱された考えでした。
丸山ほか(2013)の論文は、
The naked planet Earth: Most essential pre-requisite for the origin and evolution of life.
(裸の惑星地球:生命の誕生と進化に最も必須の必要条件)
というタイトルです。地球全体の変化や表層環境を総括的にとらえ、地球での生命誕生の条件をみていくものです。そして、地球からの学び(Lesson)として、太陽系外の惑星において、生命や文明のある星を探す方法を提案しています。
丸山さんらしい非常に壮大な構想の論文です。その内容は後にして、ここでは、ドーム・丸山の論文に基づいて、ハビタブル・トリニティとはどのようなものかを、詳しく見ていきましょう。
まずは生命の定義からです。一般に生命の定義として、3つの条件が提示されます。
・膜:水などの生体に不可欠な成分が出入りでき、外界と分けるもの
・代謝:取り入れた成分からエネルギーを生み出す一連の化学反応
・自己複製:生命が続くかぎり継続する自己再生
の3つです。
しかし、丸山さんたちは、これだけでは十分ではないといいます。なぜなら、生命は継続的な化学反応(radical reaction、遊離基反応)がなければならず、そのためには水以外の成分も、恒常的に供給されなければならないからです。
それらの成分を探るために、ヒトを例に、構成元素をみていくと、多い順に、酸素(重要比で65%)、炭素(18%)、水素(10%)、窒素(3%)、カルシウム(1.5%)、リン(1%)、その他(1.5%)となります。ただし、順番やその量比は生物種によって、少々変わってきます。一番目の酸素と三番目の水素は、水の素材になります。ですから、それ以外の炭素、窒素、カルシウム、リンなどが問題となります。
では、これらの成分の由来は?ということが、ハビタブル・トリニティの核心につながります。それは、次回としましょう。
・退職・
丸山さんは、よく知っている研究者で
何度もお世話にもなりました。
4月に退職の祝賀会がおこなわれました。
私は、校務があったので
出席はできなかったのですが、
記念品代だけはお送りました。
すると、今回紹介している論文でも使用されている
地球史の図がそのままデザインされた
バスタオルが送られてきました。
その他にも、丸山さんの顔の金太郎飴などもありました。
まだまだ現役で研究者を続けられるでしょうが、
これからも壮大なアイディアを
尽きることなく提示して、
学界を刺激していって欲しいものです。
・腰痛再発・
完治したと思った腰痛が、
先日の日曜日に、再発しましました。
重い荷物を持ち上げなければならなくなったときです。
気をつけないと思っていたのですが、
予想通り腰に来ました。
前回ほどひどくはないのですが、
やはり痛くて治療に通いました。
癖にならないように
気をつけなればなりませんね。
2015年5月14日木曜日
5_129 APT 5:意義
今回の報告は、11名の著者による共同研究です。その対象は、小さな鉱物の部分を針のように尖らせ、ナノメートルのレベルの測定をおこなっています。小さい部分の測定ですが、そこから得られる意義は、大きいものだと考えられます。
ヴァレリー(John W. Valley)らの研究は、別の研究グループが求めた地球最古の鉱物(ジルコン)の年代を、最新の装置を使って検証することが目的でした。これは、非常に重要な意義があることです。その意義を紹介しましょう。
ジルコンは、変成作用にも強い鉱物で、多少の熱の受けても成分や構造を保持できます。ただし、ある程度以上の熱を受けると、原子レベルの移動は起こります。しかし、放射性核種であるウランを2種(235Uと238U)を用いて年代測定をする方法であれば、その変化の影響を回避できます。形成後の変成作用の影響は、U-Pbの年代測定(「1_126 最古の認定 3:コンコーディアとディスコーディア」を参照のこと)として利用されているものです。ある時代に起きた熱変性の事件として読み取ることができ、変成作用の年代も求めることができます。
それでも、年代測定には、誤差がつきものです。鉱物の微小部分の年代測定(SIMSという装置)では、多数の原子を測定して平均化することで誤差を減らすことができます。SIMSでは1000μm^3の範囲の原子を分析します。しかし、APTでは0.02μm^3の体積しかなく、SIMSの10万分の1ほどしか原子の量がありません。APTは、年代測定より原子の分布状況を見ることが主たる目的の装置なのです。
ただしこの報告の目的は、年代測定の精度を検証することでした。古い年代が得られた試料の同じ部分から6個の針状の試料を削りだして、結晶面を求めて測定に用いています。測定されたのは、直径100nmほどの針状の部分を1μm(1,023nm)の長さに渡って核種(Si、Zr、Y、Yb、Pb、Al)の測定しています。
結晶の中には、目的の元素である鉛(Pb)が集まっているクラスターがあり、そこには50個ほどの原子ありました。
注目されたのは、Uが放射性崩壊してできたPbです。質量数の比をみると、そのクラスターは異常に高い207Pb/206Pb比をもっていることわかりました。形成後、熱変成による変化を受けたこと(ディスコーディアを形成するような事件)を示しています。これは、すでに得られていたSIMSの年代と同じ値でした。
以上のことから、原子レベルで古いジルコンの年代測定は、信頼性があるということを検証したことになります。この試料から得られた地球最古の鉱物年代が、44億0400万年前と確定したことになります。
同じような検証が、履歴やタイプの違うジルコンでなされ正しいことが判明したら、今後ジルコンにおけるSIMSの年代測定は、すべて信頼できるものであることになります。今回の報告は、鉱物のナノメートルレベルの小さな部分の報告ですが、彼らが目指している目的には大きな意義がありました。
・極小と極大の連結・
小さな部分の最先端の測定ですが、
その検証が目指しているものは、
非常に大きく重要なゴールなのです。
同じようなことが、違う分野でも起こっています。
巨大な実験装置で未知の素粒子を探したり、
大きな天文観測装置でビックバンの名残を探したり、
地下深部の巨大なプールに水を入れたカミオカンデで
陽子の崩壊やニュートリノの素粒子の挙動を観測したり
しています。
そこで得られる成果は、大きな意義を持っています。
このような極小と極大の連結は
それぞ研究の醍醐味といえるものではないでしょうか。
・心残りままに・
ゴールデンウィークは、研究の時間をとるつもりでした。
3日と5日は自宅で家事をいろいろしていましたが、
それ以外は大学に弁当持ちできていたのですが、
研究はあまりできませんでした。
調査の準備と校務が入り込んできました。
このエッセイも予約送信しておくことにしていたので、
その原稿もいくつか書いていました。
Maさんへの返事も書いていません。
考えること、することがいろいろあり
なかなか思ったようにことが進みませんでした。
どうしてでしょうか。
まとまった時間取れるはずだったのに、
少々心残りのまま調査にでました。
ヴァレリー(John W. Valley)らの研究は、別の研究グループが求めた地球最古の鉱物(ジルコン)の年代を、最新の装置を使って検証することが目的でした。これは、非常に重要な意義があることです。その意義を紹介しましょう。
ジルコンは、変成作用にも強い鉱物で、多少の熱の受けても成分や構造を保持できます。ただし、ある程度以上の熱を受けると、原子レベルの移動は起こります。しかし、放射性核種であるウランを2種(235Uと238U)を用いて年代測定をする方法であれば、その変化の影響を回避できます。形成後の変成作用の影響は、U-Pbの年代測定(「1_126 最古の認定 3:コンコーディアとディスコーディア」を参照のこと)として利用されているものです。ある時代に起きた熱変性の事件として読み取ることができ、変成作用の年代も求めることができます。
それでも、年代測定には、誤差がつきものです。鉱物の微小部分の年代測定(SIMSという装置)では、多数の原子を測定して平均化することで誤差を減らすことができます。SIMSでは1000μm^3の範囲の原子を分析します。しかし、APTでは0.02μm^3の体積しかなく、SIMSの10万分の1ほどしか原子の量がありません。APTは、年代測定より原子の分布状況を見ることが主たる目的の装置なのです。
ただしこの報告の目的は、年代測定の精度を検証することでした。古い年代が得られた試料の同じ部分から6個の針状の試料を削りだして、結晶面を求めて測定に用いています。測定されたのは、直径100nmほどの針状の部分を1μm(1,023nm)の長さに渡って核種(Si、Zr、Y、Yb、Pb、Al)の測定しています。
結晶の中には、目的の元素である鉛(Pb)が集まっているクラスターがあり、そこには50個ほどの原子ありました。
注目されたのは、Uが放射性崩壊してできたPbです。質量数の比をみると、そのクラスターは異常に高い207Pb/206Pb比をもっていることわかりました。形成後、熱変成による変化を受けたこと(ディスコーディアを形成するような事件)を示しています。これは、すでに得られていたSIMSの年代と同じ値でした。
以上のことから、原子レベルで古いジルコンの年代測定は、信頼性があるということを検証したことになります。この試料から得られた地球最古の鉱物年代が、44億0400万年前と確定したことになります。
同じような検証が、履歴やタイプの違うジルコンでなされ正しいことが判明したら、今後ジルコンにおけるSIMSの年代測定は、すべて信頼できるものであることになります。今回の報告は、鉱物のナノメートルレベルの小さな部分の報告ですが、彼らが目指している目的には大きな意義がありました。
・極小と極大の連結・
小さな部分の最先端の測定ですが、
その検証が目指しているものは、
非常に大きく重要なゴールなのです。
同じようなことが、違う分野でも起こっています。
巨大な実験装置で未知の素粒子を探したり、
大きな天文観測装置でビックバンの名残を探したり、
地下深部の巨大なプールに水を入れたカミオカンデで
陽子の崩壊やニュートリノの素粒子の挙動を観測したり
しています。
そこで得られる成果は、大きな意義を持っています。
このような極小と極大の連結は
それぞ研究の醍醐味といえるものではないでしょうか。
・心残りままに・
ゴールデンウィークは、研究の時間をとるつもりでした。
3日と5日は自宅で家事をいろいろしていましたが、
それ以外は大学に弁当持ちできていたのですが、
研究はあまりできませんでした。
調査の準備と校務が入り込んできました。
このエッセイも予約送信しておくことにしていたので、
その原稿もいくつか書いていました。
Maさんへの返事も書いていません。
考えること、することがいろいろあり
なかなか思ったようにことが進みませんでした。
どうしてでしょうか。
まとまった時間取れるはずだったのに、
少々心残りのまま調査にでました。
2015年5月7日木曜日
5_128 APT 4:装置
今回からやっと、APTの仕組みを紹介していきます。その原理は比較的わかりやすいのですが、原子ひとつひとつになされる操作なので、そこにはいろいろなアイディアと、極限的な技術が組み込まれています。
前置きが長くなりましたが、いよいよ本題のAPTという装置についての説明に入りましょう。前にも紹介しましたが、APT(atom-probe tomography)の用語の意味として、アトムとは原子のことで、プローブとは束(たば)で、トモグラフィとは断層撮影のことで、直訳すると原子束断層撮影となります。名称はこれくらいにして、装置の仕組みと原理をみていきましょう。
APTによる分析は、2つの技術を合体させたものです。電界イオン顕微鏡(Field Ion Microscope:FIMと略されます)と、飛行時間型質量分析器(Time-of-Flight mass spectrometer;TOF、あるいはリフレクトロン;reflectronとも呼ばれることがあります)を組み合わせたものです。
FIMでの分析は、試料を鉛筆のように尖らすことからはじまります。ただし、鉛筆は比喩で、実際の試料の直径は100 nm(ナノメートル、100 nm=0.1μm)ほどの尖った針のようにします。この技術もいろいろ工夫があるのようなのですが、ここでは略します。この針状の試料を、真空中で高電圧をかけると、先端の原子がイオン化されて飛び出していきます。この現象を電界イオン化と呼びます。ここのいろいろ複雑な技術がありますが、省略します。
針の先から放出されたイオンが、電極に向かって飛んでいきます。電場によって反対極に向かうのですが、飛び出した原子は放射状に広がります。この広がったイオンをマイクロチャネルプレートとよばれるもので検出します。検出の結果、試料の針の先端の原子を凹凸や分布状態を観測できます。これが電界イオン顕微鏡の原理です。観測するときの倍率は、試料の半径(50 nm)と倍増管までの距離の比によって決まるので、100万倍ほどになります。
つぎに、マイクロチャンネル・プレートに穴(プローブ・ホールと呼びます)のあけて、イオンの一部を通過させます。プローブ・ホールは2 nmほどです。穴を通りぬけたイオンを、後ろに置いた飛行時間質量分析計に入れて、別の原理での測定に利用します。
TOFは、原子の種類を質量数を測定することで調べる装置です。試料を飛び出たイオンに一定の電場がかかっていると加速されます。加速されたイオンが、定まった距離を飛ぶのにかかった時間(飛行時間)を測定すれば、イオンの電荷と質量数に応じた値(質量電荷比といいます)が得られます。この値から質量数、核種の判別ができます。
APTは、FIMとTOFの組み合わせによって、原子レベルの分布状況と同時に一部ですが核種をも決定していきます。この測定を、連続的に時間かけておこなっていくと、試料の針が減っていきます。減っていくということは、試料の針の深さ方向の原子の構造と種類を調べていくことになります。これが、一次元APTと呼ばれる装置になります。
この方法は、効率の悪いものです。なぜなら大量にでたイオンの大半はマイクロチャンネル・プレートでとらえられますが、原子の種類は判別できません。質量分析されているのは、プローブ・ホールを通り抜けたものだけです。できればすべてのイオンで質量分析したいものですが、この仕組では原理的に無理です。
技術の進歩が、この困難を解決しました。位置敏感型検出器(position sensitive detector)というものが開発されました。この検出器は、面でイオンを捉えながら、イオンが衝突した位置と飛行時間を同時に決定できるものです。つまり、飛んできたイオンを質量分析する微小装置を平面的に並べたものです。位置敏感型検出器が導入されたとことにより、針から飛び出した全イオンを面的、つまり2次元で測定することが可能になりました。この仕組みで連続的に時間をかけて測定を続けていくと、試料の3次元的な原子の分布が、核種の識別をしながら、測定することが可能となります。
この分析装置は、原理はわかりやすいのですが、実際に分析をするにはいろいろ困難なことがあります。例えば、試料の準備で、目的の場所をいかに尖らせるか。尖りぐあいが分析の精度を左右していきます。多元素の場合、質量数が同じでも別元素が含まれる可能性もあります。
それらの困難を克服したのが、ヴァレリー(John W. Valley)らの研究成果でした。彼らの成果には、非常に高度な技術的背景があったのです。
・続く議論・
前回紹介したMaさんとの議論は、じつは、今も続いています。
その前に、メールマガジンでMaさんの略号を
WoやMoなどミスタイプをしていました。
Maが正しい表記でした。
Maさん、申し訳ありませんでした。
Maさんからは、冥王代にシミュレーションと
私の別のエッセイで論じた
「時間」に関する話題へのコメントも頂きました。
冥王代については、私が比較的よく知る内容なので
とりあえず、そのちらの返事は書きました。
別のエッセイで「時間」に関する議論では
私の物理学に関する考え方に対して、
誤解やご指摘いただき、別の見方をご教授頂きました。
物理に関しては、Maさんの方がよくご存じで
いろいろ深い考察をご教示いただきましたが、
それに対してどう答えるかは、まだ考え中です。
連休中か、またはもっと時間がかかるかもしれませんが、
考えていきたいと思っています。
よき読者に感謝します。
・製品化・
この3次元APTは実はもう商品化されています。
Cameca製のLEAP 5000という装置があります。
ヴァレリーらの研究は、
この装置の前のバージョンのLEAP 4000で
おこなわれたものです。
・野外調査・
このメールマガジンが発行される日に
私は野外調査のために高知に向かっています。
11日までの4泊5日です。
移動に時間が必要なので、調査は実質、3日間です。
天候が心配ですが、いつも気にしていますが、
こればかりは心配しても詮無きことです。
楽しんで、リフレッシュしてきます。
前置きが長くなりましたが、いよいよ本題のAPTという装置についての説明に入りましょう。前にも紹介しましたが、APT(atom-probe tomography)の用語の意味として、アトムとは原子のことで、プローブとは束(たば)で、トモグラフィとは断層撮影のことで、直訳すると原子束断層撮影となります。名称はこれくらいにして、装置の仕組みと原理をみていきましょう。
APTによる分析は、2つの技術を合体させたものです。電界イオン顕微鏡(Field Ion Microscope:FIMと略されます)と、飛行時間型質量分析器(Time-of-Flight mass spectrometer;TOF、あるいはリフレクトロン;reflectronとも呼ばれることがあります)を組み合わせたものです。
FIMでの分析は、試料を鉛筆のように尖らすことからはじまります。ただし、鉛筆は比喩で、実際の試料の直径は100 nm(ナノメートル、100 nm=0.1μm)ほどの尖った針のようにします。この技術もいろいろ工夫があるのようなのですが、ここでは略します。この針状の試料を、真空中で高電圧をかけると、先端の原子がイオン化されて飛び出していきます。この現象を電界イオン化と呼びます。ここのいろいろ複雑な技術がありますが、省略します。
針の先から放出されたイオンが、電極に向かって飛んでいきます。電場によって反対極に向かうのですが、飛び出した原子は放射状に広がります。この広がったイオンをマイクロチャネルプレートとよばれるもので検出します。検出の結果、試料の針の先端の原子を凹凸や分布状態を観測できます。これが電界イオン顕微鏡の原理です。観測するときの倍率は、試料の半径(50 nm)と倍増管までの距離の比によって決まるので、100万倍ほどになります。
つぎに、マイクロチャンネル・プレートに穴(プローブ・ホールと呼びます)のあけて、イオンの一部を通過させます。プローブ・ホールは2 nmほどです。穴を通りぬけたイオンを、後ろに置いた飛行時間質量分析計に入れて、別の原理での測定に利用します。
TOFは、原子の種類を質量数を測定することで調べる装置です。試料を飛び出たイオンに一定の電場がかかっていると加速されます。加速されたイオンが、定まった距離を飛ぶのにかかった時間(飛行時間)を測定すれば、イオンの電荷と質量数に応じた値(質量電荷比といいます)が得られます。この値から質量数、核種の判別ができます。
APTは、FIMとTOFの組み合わせによって、原子レベルの分布状況と同時に一部ですが核種をも決定していきます。この測定を、連続的に時間かけておこなっていくと、試料の針が減っていきます。減っていくということは、試料の針の深さ方向の原子の構造と種類を調べていくことになります。これが、一次元APTと呼ばれる装置になります。
この方法は、効率の悪いものです。なぜなら大量にでたイオンの大半はマイクロチャンネル・プレートでとらえられますが、原子の種類は判別できません。質量分析されているのは、プローブ・ホールを通り抜けたものだけです。できればすべてのイオンで質量分析したいものですが、この仕組では原理的に無理です。
技術の進歩が、この困難を解決しました。位置敏感型検出器(position sensitive detector)というものが開発されました。この検出器は、面でイオンを捉えながら、イオンが衝突した位置と飛行時間を同時に決定できるものです。つまり、飛んできたイオンを質量分析する微小装置を平面的に並べたものです。位置敏感型検出器が導入されたとことにより、針から飛び出した全イオンを面的、つまり2次元で測定することが可能になりました。この仕組みで連続的に時間をかけて測定を続けていくと、試料の3次元的な原子の分布が、核種の識別をしながら、測定することが可能となります。
この分析装置は、原理はわかりやすいのですが、実際に分析をするにはいろいろ困難なことがあります。例えば、試料の準備で、目的の場所をいかに尖らせるか。尖りぐあいが分析の精度を左右していきます。多元素の場合、質量数が同じでも別元素が含まれる可能性もあります。
それらの困難を克服したのが、ヴァレリー(John W. Valley)らの研究成果でした。彼らの成果には、非常に高度な技術的背景があったのです。
・続く議論・
前回紹介したMaさんとの議論は、じつは、今も続いています。
その前に、メールマガジンでMaさんの略号を
WoやMoなどミスタイプをしていました。
Maが正しい表記でした。
Maさん、申し訳ありませんでした。
Maさんからは、冥王代にシミュレーションと
私の別のエッセイで論じた
「時間」に関する話題へのコメントも頂きました。
冥王代については、私が比較的よく知る内容なので
とりあえず、そのちらの返事は書きました。
別のエッセイで「時間」に関する議論では
私の物理学に関する考え方に対して、
誤解やご指摘いただき、別の見方をご教授頂きました。
物理に関しては、Maさんの方がよくご存じで
いろいろ深い考察をご教示いただきましたが、
それに対してどう答えるかは、まだ考え中です。
連休中か、またはもっと時間がかかるかもしれませんが、
考えていきたいと思っています。
よき読者に感謝します。
・製品化・
この3次元APTは実はもう商品化されています。
Cameca製のLEAP 5000という装置があります。
ヴァレリーらの研究は、
この装置の前のバージョンのLEAP 4000で
おこなわれたものです。
・野外調査・
このメールマガジンが発行される日に
私は野外調査のために高知に向かっています。
11日までの4泊5日です。
移動に時間が必要なので、調査は実質、3日間です。
天候が心配ですが、いつも気にしていますが、
こればかりは心配しても詮無きことです。
楽しんで、リフレッシュしてきます。
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