2014年8月28日木曜日

1_132 ファーストスターの痕跡 1:モンスター星

 前回までの「宇宙の年齢」の話をしているとき、最古の星の話題も扱いました。そんな矢先、「ファーストスター」の痕跡の発見というニュースが入ってきました。「地球の歴史」が連続してしまいますが、「ファーストスター」の痕跡について紹介していきましょう。

 前回のエッセイで、「宇宙の年齢」のシリーズは終りました。ところが、終わった直後の8月22日に、このシリーズに関係するニュースが飛び込んできました。そのニュースとは、私たちの銀河の中に「第一世代の星」が見つかったというものです。「第一世代の星」は最初の星のことで、ここではファーストスターと呼ぶことにします。
 国立天文台の青木和光さんたちのグループが、8月21日付のサイエンス誌に報告したものです。この論文がプレス解禁になり、ニュースとなったのです。論文の内容を少し詳しく紹介したいと思います
 前に種族IIの星には、形成年代の古いものがあり、そのうちの一つが「最古の星」であったことを紹介ました(1_130 宇宙の年齢 3:最古の天体 2014.08.14発行)。ファーストスターの根拠は、星からの光を分析してえられる化学組成のデータでした。今回のファーストスターも、同じ方法による化学組成に基づくものでした。
 この報告で注意すべき点がいくつかあります。論文のタイトルは、
 "A chemical signature of first-generation very-massive stars"
 「第一世代の大質量の星の化学的痕跡」
というものですが、ファーストスターを発見したのではなく、「化学的痕跡」を発見したということです。また、大質量ということにどんな意味があるのでしょうか。そのような点に着目して、少々ややこしい話になりますが、できるだけわかりやすく説明していきましょう。
 この観測は、日本が誇るハワイにあるすばる望遠鏡を用いておこなわれました。今回の発見は、「SDSS J0018-0939」と呼ばれる星で、地球から1000光年ほどの距離にあります。ただし、太陽質量の半分程度という非常に小さな質量しかありませんでした。わざわざ小さい星が調べられたのには、それなりの訳がありました。
 星の寿命は、星の質量に反比例するからです。つまり、小さい質量の星ほど寿命がく、質量が大きい星ほど寿命が短いということがわかっています。ですから、小さい質量の星の中には、ファーストスターの痕跡をもった星があるかもしれません。
 そんな背景から、青木さんたちは、小さい質量の星を狙って観測を続けていました。ただし、ファーストスターを狙っていたわけではありません。狙っていたのはファーストスターの痕跡でした。これが、少々ややこしいところです。
 そもそもファーストスターとは、どのよう星だったのでしょうか。
 ビックバンの直後にできたファーストスターは、宇宙の大きさは今よりずっと小さかったときにできました。材料は近くに大量にあったので、星は大きな質量を持っていたはずです。それは、太陽の数百倍の質量を持っていた「モンスター星」ではないかと予想されていました。
 ところが、どうもそうでないことがわかってきました。それは別のグループの研究になるのですが、次回としましょう。

・帯広へ・
8月下旬から9月上旬にかけての
校務による出張が続きます。
体調を壊さないように注意が必要です。
このメールマガジンの発行日には
校務で帯広に出ています。
日帰りで往復します。
帯広は特急列車で2時間余りでいけるところなので
近い気がします。
まあ、往復となる疲れるのですが、
気分転換と思いましょう。

・北見へ・
先週末は、校務で旭川から北見に行きました。
少々雨に降られたのですが、
移動中に雨が降ったのですが、
肝心の用事のときは、雨には降られずに
なんとか校務がこなせました。
北見は何度か来たことがあるのですが、
今回は、久しぶりの訪問となりました。
有名なオホーツクビールの店にいったのですが、
団体の予約があり満席で、
残念ながら味わうことができませんでした。
北見はかつて薄荷(ハッカ)で有名でした。
しかし、今ではほとんどつくられていません。
その辺の事情は、北見ハッカ記念館で知ることができました。
他にも、薄荷蒸溜所とハーブ園をみることできました。
薄荷の花が咲き始めていました。

2014年8月21日木曜日

1_131 宇宙の年齢 4:宇宙背景放射

 宇宙の年齢が、昨年から137億年から138億年になりました。その理由は、用いたデータが、WMAPからPlanckに変わったためです。年齢が変わったというより、精度が上がったためでした。

 前回は、古い天体の年代から宇宙の年齢の下限を決める方法のうち、最新の情報を紹介しました。次に、宇宙の年齢を直接推定するために、観測と理論を結びつける方法を紹介します。
 前に紹介したように、宇宙を構成する物質やエネルギーなどの組成を割り出して、そこから宇宙の膨張率を求めれば、宇宙の年齢をかなり正確に見積もることができます。宇宙の組成を正確に求める方法として、宇宙(マイクロ波)背景放射を観測する方法があります。
 マイクロ波とは、電子レンジで使用されているもので、水分に吸収されやすい性質があります。大気中には水蒸気があるのため、宇宙から届くマイクロ波は地上から観測しづらくなっています。そのため、衛星を打ち上げて、地球の大気の影響を受けないところで観測する方法がとられています。今まで、3度におよぶ衛星観測がなされていきました。
 最初は、COBE(Cosmic Background Explorer)という衛星による1989年から1996年にかけての観測でした。宇宙背景放射と均質性と不均質性(むら)を正確に測定することが目的でした。背景放射の温度である2.73度(絶対温度)の波長(マイクロ波)で測定されました。宇宙は大局的には非常に均質でありながらも、10万分の1のむらがあることがわかりました。この結果によって、ビックバン理論の根拠(均質さ)を示すとともに、ビックバンの様子(むら)を知ることにもつながりました。
 2001年6月打ち上げられたWMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)衛星は、2010年8月まで観測をおこないました。WMAPは、COBEより位置の分解能と感度を上げました。位置の分解能とはより狭い範囲を精度よくはかることで、感度とはより測定精度(有効桁数)を上げて測定することでした。WMAPによって、それまでの宇宙の基本的なデータが、いろいろと書き換えられました。
 宇宙の組成が、バリオン(見えている物質)が4%、ダークマターが23%、ダークエネルギーが73%となり、ハッブル定数(71±4km/s/Mpc)も正確きめられ、宇宙の年齢が137±2億年となりました。この137億年という値が、宇宙の年齢として、広がりました。ただし、±2億年という誤差がつくことなく、137億年がひとり歩きしていきました。
 3機目にあたるPlanck衛星が、2009年5月に打ち上げられ、2013年10月に運用が終了しました。Planck衛星は、宇宙背景放射をより高感度、高分解能で観測するためでした。その結果が、2013年3月21日に公開されました。
 宇宙の組成は、バリオンが4.9%、ダークマターが26.8%、ダークエネルギーが68.3%となりました。そして、ハッブル定数は67.15±1.2km/s/Mpcとなり、宇宙年齢は137.98±0.37億年となりました。これが宇宙の年齢の138億年の根拠となります。
 WMAPと比べるPlanckのデータは、数値としてはほんの少しの変化しか与えませんでした。しかし、その精度は、2桁よくなりました。そしてCOBEやWMAPのデータをより強固なものにし、より高精度になりました。
 今後も観測は続くでしょうが、これらの値は、より下の桁での変動はあるでしょうが、確定されたといえるでしょう。宇宙の年齢も、2013年にだされた138億年で確定となりました。これからは138億年という年齢を研究者が使い、メディアでこの数値が使われるようになります。しばらくすると、この138億年が宇宙の年齢として定着していくでしょう。

・盛夏が終わる・
北海道は涼しくなりだしました。
朝夕は半袖では少々肌寒くなりました。
夜はもちろん窓を閉めきって寝ています。
これからしばらく、雪の降るまでが、
過ごしやすい快適な時期となります。
ただし、私は、後期のはじまる9月下旬まで
毎週末や不定期に雑多な校務があります。
9月になれば1週間だけ調査にでれます。
それだけを楽しみに過ごします。

・人間ドック・
このメールマガジンが発行される日に
私は、人間ドックにいきます。
毎年恒例で、家内とともに1日の人間ドックを受けます。
午後に問診や栄養指導があるのですが、
検診自体は午前中に終わります。
検査後は、所用を済ませて帰るだけとなります。
その所用がいろいろあって少々面倒なのですが。
しかし、人間ドックも私にとっては
休養の一日となります。

2014年8月7日木曜日

1_129 宇宙の年齢 2:膨張を探る

 宇宙の年齢を探るためには、ビックバン理論に基づき、観測から膨張の様子を正確に知ることが重要になります。しかし、そこには、まだ見つかっていない物質やエネルギーがあることがわかってきました。

 宇宙の年齢を観測から探る方法として、古い天体を観測して年齢の下限を求める方法がありました。この方法も観測技術が進んで、かなりいいところまではいっていますが、原則的には宇宙の年齢は求めることはできません。限定することと決定することは違います。
 一方、理論では、ビックバンのモデルに基づいて推定するものがありました。理論なので、概数しか求めることができません。正確に求めるには、観測との融合が必要です。理論と観測が融合したハッブルが行なった観測手法をより高精度におこなわれています。
 その原理は、ビックバン理論にもとづき、膨張の様子を観測でとらえ、計算により年齢を求めるというものです。宇宙は、ビックバンの時の勢いのまま、現在も膨張しているはずだと考えられていました。宇宙の膨張の様子を正確に観測すれば、その勢いから大きさゼロの状態に遡れば、宇宙の年齢が計算できるというものです。現在の膨張の観測から、理論に基づき、始まりの時を求めることになります。このとき、宇宙の年齢の決め手になるのが、ハップル定数です。
 宇宙が一様に膨張しているとすれると、ハッブル定数から、宇宙の年齢が簡単にもとめられると考えられていました。ところが、宇宙の膨張がビックバンの時に比べて減速しているのか、加速しているのかによって、宇宙の年齢の見積もりにおおきなズレが生じます。
 その決め手になるのが、宇宙の物質密度と膨張に関するエネルギーです。宇宙の物質密度とは、宇宙に存在する物質の量によって決まり、宇宙が縮もうとする力、膨張を減速させる力になります。宇宙に物質が多ければ、万有引力によって、宇宙は縮もうとする力が働きます。ですから、宇宙にどの程度の物質があるかによって、現在の膨張からいつ収縮に転換するかが変わってきます。もし、物質量が少なければ、膨張を止めることができないかもしれません。物質量を知ることが重要になります。
 これが、なかなかやっかいで、まだ不明な部分があります。
 私たちが知っている、あるいは見ている物質は、バリオンとよばれる素粒子で構成されています。バリオンが占めている比率は、宇宙全体の物質とエネルギーの全量のうち、約5%程度に過ぎないことがわかってきました。
 見える物質以外にも、見えない物質(ダークマター、暗黒物質などと呼ばれています)が、27%ほどあることがわかってきました。なんと宇宙は、見えている物質より、見えない物質の方が、5倍以上もあることになります。この両者が宇宙の膨張を減速させる働きがあります。このダークマターの量を決定することが宇宙の年齢を決める決め手だと考えられていました。ダークマターの実体はまだよくわかっていません。
 すでに気づかれていると思いますが、バリオンとダークマターを合わせて32%にしかなりません。他の70%ほどは何かというと、見えないエネルギー(ダークエネルギーと呼ばれています)だとされています。かつては、このような存在は知られていませんでした。ですから、宇宙の年齢を決めるには、バリオン以外のダークマター探しが重要だと考えらていました。ところが、このダークエネルギーは、宇宙の膨張を加速する働きがあります。ダークエネルギーを考慮しなければ、宇宙の年齢が求められないことになりました。
 宇宙の膨張を減速させるバリオンとダークマター、そして加速させるダークエネルギーから、宇宙は構成されていることになります。非常にやっかいな存在です。宇宙の膨張の様子だけでなく、宇宙の物質とエネルギーの比率、そしてそれらが膨張に与える効果がわからなければ、宇宙の年齢が正確に決めることができません。また、比率が分かったとして、それぞれの膨張に与える効果が、どれほどかを知らなければ、宇宙の年齢を決定するパラメーターが得られないということになります。
 それを決定するために、いくつかの重要な観測がなされました。それは次回としましょう。

・高湿度・
北海道は8月になり、
遅い台風のせいで蒸し暑い天気が続いています。
台風の影響で北海道では前線がずっとかかり、
湿度の高い、梅雨のような天気となっています。
本州などの梅雨と比べると
気温はそれほど高くはないのでしょうが、
北海道人にはこの蒸し暑さが堪えます。
エアコンのない生活なので、
暑さにはじっと耐えるしかありません。
まあ、夜は比較的気温も下がるので
なんとか寝れるので、暑いのですが
体力的は持っているのですが、
校務が次々とあるのでなかなか大変です。

・コツコツと・
大学は定期試験も終わり、
学生たちは夏休みに入ります。
教員は、採点、集計、入力があります。
また4年生の卒業研究へと対応など
なかなか気の休まる時が来ません。
お盆があければ、少しだけ休めそうですが、
その後は、また校務が目白押しです。
忙しいことに愚痴をいっても楽にはなりません。
自分に与えられた空き時間の中で、
すべきことをコツコツとこなすしかありませんね。

2014年7月31日木曜日

1_128 宇宙の年齢 1:求め方

 宇宙の年齢は、138億年という数字が使われているのですが、ちょっと前ままでは137億年で、もう少し前は150億でした。このような数値はなぜかわってきたのでしょうか。その経緯を探っていきましょう。

 宇宙の年齢は、かつては100億年程度、その後約150億年といわれていました。いつの頃から137億年という数値にかわり、そして少し前から138億年となってきました。宇宙の年齢が変わることはないはずなので、求めている人間側の事情で変わってきたはずです。宇宙の年齢は、どのようにして求め、なぜ変わってきたのでしょうか。
 宇宙の創生時にできた物質が手に入れば、年代測定が可能でしょう。ところが、私たちは太陽系という46億年前にできたところに住んでいます。太陽系も宇宙にある材料でできたものですが、その材料はもっと新しい時代に完全にブレンドされ、年代も書き換えられたものでした。したがって、宇宙創世の材料は、地球や太陽系にいる限り手には入りません。通常の年代測定とは違った方法、考え方で、宇宙の年齢を決めなければならないようです。
 宇宙の年齢を推定するのには、いくつかのアプローチがあります。理論的に決める方法、観測によって決める方法があります。最近では、両者の方法を連携させながら、年齢が決められています。
 観測の一番単純な方法として、宇宙の天体で一番古いものを探すことです。一番古い天体より、宇宙の形成は古くなければならないという単純な理屈に基づくものです。つまり、古い天体を観測することによって、宇宙の年齢の下限を決めるというものでした。
 この方法も、以前は数値に矛盾がありました。一番古い天体の年代より、他の方法で推定された宇宙の年齢の方が若いという、逆転現象があったのです。その後この矛盾は、観測の誤差や見積もった定数がずれていたりということが原因であることがわかり、修正されています。
 望遠鏡の性能向上や観測する電磁波(波長)の広がり、観測手法の革新などにより、遠くの古い天体が観測されるようになってきました。その結果、天体の年齢が精密に測定されながら、下限が下がっていったのです。
 理論的アプローチとしては、ビックバンのモデルに基づくことになります。宇宙がビックバンによって始まり、それ以降膨張しているというモデルです。宇宙の膨張は、ハッブルが観測して以来、いくつかの根拠もあり、多くの人に受け入れられています。
 宇宙の膨張率は、ハッブル定数で定められます。ハッブル定数を用いると膨張がゼロ、あるいは時間がゼロが宇宙の始まりとなり、ハッブル定数から、宇宙の年齢が求められます。今ではハッブル定数は、かなり正確にわかっています。膨張の様子をより正確に遡る方法もわかり、ハッブル定数と宇宙のエネルギー密度、物質とエネルギーの組成から、宇宙の年齢をより正確に推定することができるようになってきました。これは観測と理論の融合となります。
 もうひとつ、宇宙の背景放射と呼ばれるものの観測から、宇宙の年代を求める方法があります。これは、宇宙の膨張の様子と組成を解き明かすことにもなるものですが、次回としましょう。

・4年生の夏休み・
北海道も夏らしい日々が続いています。
日が昇るとセミが激しく鳴き出し、
暑さを演出しています。
午後は暑さが増し、
西向きの研究室は耐えられないほどの気温になります。
卒業研究の目次作りに4年生との面談を
毎日何人とおこなっています。
少しずつ進行しています。
OKとなった人は、なにをすべきか理解して、
それを目次として構成できたことになります。
4年生の夏休みはそれができてからです。

・暑さによる迷い・
年々、夏休みが短く感じます。
以前は、8月下旬から
夏休みをとれた気がしたのですが、
最近は野外調査にでるにも
校務の隙間をぬっていくような気がします。
研究条件も過酷になってきました。
研究は、自分のアイデンティティにかかわるものなので
なにがあっても継続しなければなりません。
そのためには気力が必要なのですが、
それも校務で削がれていきます。
そんなとき、何のために私はここにいるのか
という気分が湧いてきます。
まあ、これも暑さによる心の迷いだと思いますが。

2014年7月24日木曜日

4_115 室戸岬2014 3:枕状溶岩

 室戸岬周辺には、タイプの違うマグマ活動があります。その一つが枕状の形状をした、日沖の火山岩です。周辺のマグマの活動が、解明されているわけではありませんが、少しずつ関係が解き明かされています。

 室戸岬には、付加体でありながら、マグマの活動を起こり、斑れい岩という深成岩ができていることを、前回紹介しました。室戸付近では、他のところでも、マグマの活動を見ることができます。
 室戸岬を東へ周り、徳島方向にすこし向かうと、日沖(ひおき)という小さな港があります。その港の位置は、少々わかりにくく、狭い道ですが、室戸ジオパークのサイトの一つになっています。
 日沖は、防波堤のコンクリートに囲まれた小さな港です。海岸でも見ることができますが、そのコンクリートの上を歩いて行くと、不思議な形の岩を見ることができます。波や風がある日は、少々注意が必要ですが、その不思議な形をした岩は、ついついもっと近寄って眺めてみたくなる存在です。
 丸い形をした岩が、いくつも積み重なっています。港の周辺の磯は、この不思議な岩が含まれています。枕状溶岩と呼ばれています。
 マグマが海底で噴出すると、海水に触れた部分は、すぐに固まってしまいます。外が固まっても、内側ではまだマグマのままで、しかもマグマはあとからも流れてきています。すると、固まった岩石の表面が破れて、マグマが海水中に噴出します。それもすぐ固まるのですが、割れ目から流れでた溶岩は、まるで練り歯磨きをチューブから押し出したように、細長い丸い枕のようになって、固まりながらも、次々とでてきます。これが繰り返されると枕状溶岩ができます。
 日沖周辺には、枕状溶岩と似たマグマの活動による火山岩類があります。貫入岩であるドレライトや火山砕屑岩などがあります。それらの関係は、近年明らかにされてきました。
 海洋地殻は、海嶺でのマグマによって形成されたものです。上部は海底の火山活動で、枕状溶岩からできます。日沖の枕状溶岩も同じような見かけの岩石です。ところが、この枕状溶岩は、海洋地殻の火山活動で形成されたものではなく、海溝付近の付加体の中で活動したマグマによってできたとされています。
 日沖の枕状溶岩と室戸岬の斑れい岩との関係は証明されていませんが、室戸岬の斑れい岩が付加体の堆積岩を貫いたのが海溝付近であったのと似ています。いずれも、列島の付加体の中でおこった不思議なマグマの活動となります。
 詳細は別の機会にしますが、フィリピン海プレートを形成した海嶺が、日本列島に潜り込んだ活動に起因しているものではないかと考えられています。これはプレートテクトニクスという大規模な活動なので、広域に起こった可能性があります。南紀の潮岬、足摺岬にも、付加体の中でマグマの活動が起こっているます。ただし、マグマの性質が少々違っているので、話はますます複雑なのですが。

・夏休み・
いよいよ、小・中学校は夏休みになりました。
大学は、まだ講義の最中のところが多いと思います。
我が大学も、来週はじめまで講義があり、
その後、前期の定期試験があります。
さらに、追・再試がその後にあります。
ですから、大学の夏休みは、8月のお盆前からとなります。
お盆明けには、前期の成績の提出が待っています。
教員は、それまでに採点をしなければなりません。
北海道とはいえ、一番暑い時期に試験や採点という
集中力を使わなければなりません。
学生も教員も大変です。

・熟睡・
北海道も夏らし天気が続いています。
乾燥しているので、過ごしやすいので助かっています。
夜は、窓を閉めなければ寒いほどです。
先日の蒸し暑い夏の日に、母が我が家に来ました。
北海道でも暑いだろうといったのですが、
京都から来た母は、そんなに暑くないといいます。
京都はもっと蒸し暑かったと、いっています。
京都の夏の暑さから開放されて、
ぐっすりと眠れているようです。

2014年7月17日木曜日

4_114 室戸岬2014 2:斑れい岩

 室戸岬のジオパークの面白さは、不思議な岩石がいろいろ見られることです。海岸沿いのきれいな露頭で、だれでも手軽に見ることができます。そんなポイントとして、不思議な斑れい岩があります。

 室戸岬では、付加体の典型的なタービダイトによる地層やその褶曲が見事さでもあるのですが、一番のメリットは、それが簡単に見られることです。タービダイト以外にも、まだまだ見どころがあります。その一つに、不思議なマグマの活動があります。
 海洋地殻が海嶺で形成されるとき、海底での火山活動、さらに下部にはマグマ溜まりがあり、深成岩や沈積岩などの多様な火成岩が形成されます。付加体には、そのうち海洋地殻上部にあたる火山岩の部分が、巻き込まれることがよくあります。
 火山岩より深部の火成岩が、付加体の中に持ち上げられることもあるのですが、そのようなものはオフィオライトと呼ばれます。付加体のオフィオライトは、沈み込む時に地質学的に激しい運動をして、断層として周りの岩石と接することになります。
 通常のマグマの活動では、地下のマグマが上昇した時、上のあった地層などとマグマが接することになります。そんなとき、マグマは冷たい岩石に接して、急冷して火山岩のように固まります。ただし、いったん急冷した岩石ができる、岩石は断熱性がいいので、内側のマグマはゆっくりと冷えていきます。このようにマグマが外の岩石に接したところだけが急に冷えた組織を「急冷縁」とよびます。マグマが、地層に貫入すると、境界部に急冷縁ができるのです。
 付加体のタービダイトによる地層は、沈み込み帯の陸側にたまります。一方、海嶺のマグマの活動場は、海洋プレートが形成されるところですから、ずっと遠くの海底ということになります。付加体では、陸のものと海のものが、激しい大地の営みが起こり、断層活動も盛んになります。ですから、生成場は全く違う火成岩とタービダイトの地層が断層で接していても、不思議なことではありません。
 ところが、室戸岬では、斑れい岩(深成岩)がタービダイトの地層の中に貫入しているのようすが、観察できます。斑れい岩が急冷縁をもっているのです。また、貫入されたタービダイトの地層は、マグマの熱に焼かれて変成岩(フォルンフェルスと呼ばれます)になっています。これは、なにを意味するのでしょうか。
 考えられることは、この斑れい岩のマグマは、タービダイトが形成されている場で活動して、貫入したということです。そこは、沈み込み帯の陸側になります。この活動は、海洋地殻やタービダイトの形成より、ずっと新しい時代のものであるはずです。
 斑れい岩から派生した火成岩(グラノファイヤーと呼ばれる岩石)の形成年代は、1440万年前(中期中新世)で、斑レイ岩もほぼ同じ年代にできたと考えられます。この年代は、まわりの地層の年代(前期中新世)より新しいものです。
 この室戸岬の斑れい岩は、非常に不思議な火成活動です。今までのプレートテクトニクスでは理解されにくいものです。でも事実ですから、認めるしかありません。室戸岬の斑れい岩は、海溝付近のマグマ活動でできたものです。
 問題は、今までのプレートテクトニクスの枠組みで、どのように考えるかということです。特別な仕組みですが、しばしばある活動でもあるようです。それは、別の機会にしましょう。

・台風一過・
北海道は台風の影響で少し雨が振り、
風も強まりましたが、
大きな被害はありませんでした。
その後は、風が少し残りましたが、
通常の夏空が広がりました。
いよいよ夏も盛りとなります。
皆さんも暑さには注意して下さい。
今週は1週間ほど母が来ています。
子どもの学園祭を見にいきます。
チャンスは今年と来年くらいしかなので、
なんとか見てほしいものです。
北海道が暑くなければいいのですが。

・緊急地震速報・
先日はじめて緊急地震速報を受信しました。
私のスマホと家内の携帯が次々との騒がしアラームがなり
緊急地震速報を伝えました。
家内は煮炊きの火をとめて、
私は、テーブルの下に入り、
テレビをニュースにしました。
緊急ニュースはながれ、苫小牧沖での地震だったようですが、
我が家はほほとんど揺れませんでした。
はじめての緊急地震速報でしたが
防災や避難のいい経験となりました。

2014年7月10日木曜日

4_113 室戸岬2014 1:先端の地層

 四国の南東の先端に室戸岬があります。ここは、海と陸が接するところです。そして、その陸は、昔の海のものでした。室戸岬は、海と陸、現在と過去が複雑に交わるところなのかもしれません。

 室戸岬は、四国の南東で太平洋に突き出た岬で、高知県室戸市になります。国道55号線脇にあります。国道55号は、四国のお遍路の道でもあり、室戸岬に背後の山には、24番札所の最御崎寺もあります。お遍路さんも観光客も、一本道国道を、海岸線にそって長々と進むことになります。
 室戸岬には何度かいっていますが、地質学の見どころがいくつもあり、なかなか見飽きないところです。室戸は、2011年には「世界ジオパーク」に加盟が認められています。そのため、地質の見学するためのサインや資料が充実しています。岬の海岸沿いの遊歩道には、いくつもの地質サイトがあるのですが、今回は岬の先端にある「互層」をみれるサイトを紹介しましょう。
 互層とは、砂岩と泥岩が繰り返している地層のことです。砂岩は白っぽく、泥岩は黒っぽい岩石で、それらが繰り返して重なっている、モノトーンの岩石です。砂岩は風化侵食に強いので出っぱり、泥岩は弱いので窪みます。この侵食への強弱が岩石の凹凸を生みます。
 さらに、大地の営みが互層に意匠に満ちた褶曲構造を与えます。
 室戸岬の最先端には曲がりくねった互層が見どころです。乱れた地層は、モダンアートのような天に突き出た形、座布団を重ねたような面白い形、硬い石なのに地層の中で砂岩がちぎれたり、変形したりし、様々な互層の形態を見ることができます。自然の不思議な造形の展示場のようになっています。
 このような地層の乱れは、地層が地下から地上に上がるときにできたものではなく、地下で醸造されたものです。
 もともと互層は、陸から運ばれた土砂が、タービダイトという海底の土石流のような流れで海底でたまってできたものです。タービダイトは、きれいな砂岩と泥岩の互層となります。しかし、そこで形成される互層は整然と平らに堆積した地層となります。それが室戸岬でみられるように乱れるには、それなりの理由があります。地層が列島に押し付けられたためです。
 四国沖には、フィリピン海プレートが沈み込んでいる南海トラフがあります。このトラフはゆるい傾斜の海溝のことで、海洋プレートと列島のプレートが衝突しているところです。海洋プレートはトラフに沈み込み、列島側のプレートは押され引きらずれるような場となります。
 陸からトラフまででたまった互層となっている地層も、もちろん、その影響を受けます。浅いところではそのまま陸に持ち上げられる地層もあるのですが、引きずれ込まれる地層もあります。
 引きずり込まれる度合いにより、地層は少し乱れたものから、グチャグチャになっていものもあります。グチャグチャになったものはメランジュとよばれています。メランジュでは、起源の違うさまざまな石が混在し、もともとの地層や岩石の構造も残っていないほど乱れます。
 室戸の別のところでは、整然と重なった地層が見られるとこもあります。ただし、室戸岬の地層は、少々、乱れた互層です。それが自然の妙を醸し出しているのです。

・暑い夏に・
北海道は夏がきました。
暑い日もありますが、清々しい日もあります。
私は、校務と原稿締め切りが忙しく
ばたばたして落ち着きません。
締め切りがあるのものが優先ですが、
校務もつぎつぎと来るので、
なかなか頭をじっくりと使っている時間がありません。
それでも、すべきことはあります。
やりたいことがあります。
それが、自分の存在証明にもなるのです。

・大変さの数・
いよいよ大学の前期の講義も
終盤になってきました。
この頃になると講義に関しては
だいぶ精神的に負担が軽くなります。
テスト作成、レポートやテスト採点、評価などが
夏休み直前、直後につぎつぎと訪れます。
学生たちも、テストや採用試験の結果なども
気にはなって落ち着かないでしょう。
いずこも大変さを数えあげれば、
キリがない、センがないことなのでしょうね。