2015年1月22日木曜日

5_124 ロゼッタ 4:探査

 フィラエは彗星の表面に着陸はしたのですが、2度のバウンドをしてしまいました。幸い、装置は無事でしたが、機体が固定はされていません。また、着陸した地点は、崖の脇の日陰のところでした。困難な状況に陥ったミッションでしたが、まだ希望を持ち続けて、見守りたいものです。

 ロゼッタの着陸探査機のフィラエが、彗星チュリュモフ・ゲラシメンコの表面で2回もバウンドしたことは、前回紹介しました。予想外のバウンドがあったのですが、幸いなことに、フィラエの機能は無事だったようです。
 その後、フィラエ自身が撮影した写真によって、着陸地点の様子がわかりました。なんと、崖の陰なっているところ着陸していたのです。さらに、フィラエは横倒しになっていることもわかりました。
 フィラエの動力源は、ソーラーパネルによる太陽光発電でした。日陰では発電量が十分確保でません。彗星は12時間で一回の自転しているので、太陽の日差しが、かろうじて当たる時間帯があります。ただし、その時間は、自転周期の12時間のうち1時間半、地球の一日に換算すると、3時間ほどの日差しでしか充電できません。太陽光に期待できません。
 探査できるのは、フィラエの事前に充電していたバッテリーが動く間だけです。バッテリーが尽きれば、フィラエのミッションも、ほとんど遂行できないくなります。バッテリーが使えるのは、64時間程度と予測されていました。その間に、可能な限りの観測をすることになります。
 体勢が悪く、機体を固定されていないため、ドリルを使う岩石や氷の調査は断念されました。重力が小さいため、下に力を加えると、反作用で飛び出してしまう危険性があるからです。実は、フィラエの重要な任務としてあったのが、彗星の起源の解明でした。ドリルで地下23cmまで掘って、岩石あるいは氷の試料を機体内に採取して、加熱して気化させ、試料の水素同位体分析をする予定でした。このデータから、彗星の起源を探ろうという目的でした。この重要な任務を断念しざるえませんでした。
 その詳細は学会発表にてなされるはずなので、どういう情報がでてくるかは、今後に期待しましょう。
 ただし、現時点でもいくつかの情報はあります。12月10日の段階で、母船のロゼッタからの観測された彗星の水素中の重水素の比率が、地球も水の値の3倍もあることがわかりました。これは、地球の水とこの彗星の水は、起源は違っていることを示しています。
 彗星は太陽の周りを周回しているので、2015年8月13日に太陽に最も接近します。今後、太陽に接近すれば光が強くなります。そうすれば、フィラエのバッテリが充電できるかもしません。それが起こるとしても、まだまだ先の話でしょうが。
 その後も継続してロゼッタのミッションは継続され、計画では2015年12月31日まで続く予定です。はやぶさのミッションのように、最後まで諦めずに、期待を持って見守りたいものです。

・センター試験・
センター試験が先週末にありました。
我が大学も会場になり、
教職員が総出で対応しました。
雪による公共交通機関のトラブルがあったのですが
受験生の遅刻もなく、
予定通りに試験はスタートできました。
2日間の長丁場の緊張を強いられる受験生ですが、
成功をお祈りしました。
開催側の人間としては、
無事に試験が終わることを祈るしかありませんが。

・今年の冬・
北海道は今年の冬は雪が、結構降っています。
積雪量は思ったほど多くはないですが、
これからどうなるでしょうか。
根雪が早かったり、猛吹雪が何度かありました。
年末に雨が降ったこともあります。
今年の冬は、いろいろ変化に富んでいるようです。

2015年1月15日木曜日

5_123 ロゼッタ 3:着陸

 彗星への着陸は、いろいろな困難があります。小さい天体なので、天体の重力はほとんど利用できません。着陸にスピードがあると、作用・反作用で跳ね返ってしまいます。慎重に着陸しなければなりません。フィラエの着陸の様子を紹介しましょう。

 一般に彗星は、岩石と氷でできていますが、太陽に近づくと氷が溶けて、大量の水蒸気と少し粒子が火山のように吹き出します。水蒸気や粒子(イオンになっていることもあります)が、彗星の尾になっていきます。彗星は、太陽に近づくたびに大量の水蒸気を放出するので、形を変えていきます。チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、太陽に近づきつつあり、これから激しい水蒸気の噴出がはじまるはずです。ロゼッタは、その様子を間近に観測しようと計画されています。
 チュリュモフ・ゲラシメンコは小さい彗星ですから、その形態や状態は、近づかないとわかりません。ロゼッタは、フィラエという着陸機を下ろして、表層の探査をしていく予定でした。彗星の形態や表層の様子を調べて、どこに下ろすかを決める必要があります。
 ロゼッタは、彗星の周回軌道を巡りながら、多数の写真を撮影しました。彗星の観測から3Dモデルが作成され、そこに写真が合成され、全体を眺めることができるようになりました。
 観測の結果、彗星はいびつであることがわかりました。大きさの違う2つの玉が棒状のものでつながった形になっています。天体の大きさは、小さな玉が2.5×2.5×2.0km、大きなほうが4.1×3.2×1.3kmで、全体の質量は10^13kgで、密度は0.4g/cm^3になっています。12.4時間の周期で自転していました。この彗星は、私には鉄アレイのような形にみえましたが、ESAの研究者たちは「アヒルに似た形」と表現しています。
 さて、着陸地点の選定です。いくつも候補地があがり、それぞれに一長一短があり、研究者間で議論になりました。最終的にひとつの地点が選ばれ、そこに下ろすことになりました。
 彗星は小さい天体なので、ほとんど重力がありません。近づくのにスピードがあると、作用・反作用の効果が強くて、跳ね返ってしまいます。そのためスピードを極力落として、非常にゆっくりと近づきます。7時間かけて降りることになります。フリーフォールと呼んでいます。
 それほどゆっくり降りても、着地した瞬間に反作用で跳ね返ってしまいます。跳ね返りを防ぐために、スラスターという装置を利用します。スラスターは、フィラエの自重を用いて、足をぐっと下に押し付ける装置が用意されていました。スラスターは故障していることが事前にわかっていました。そこで、ハープーンと呼ばれるヤリを発射して、彗星表面に打ち込み、フィラエを固定することにしていました。
 ところが、ハープーンの発射は失敗に終わりました。フィラエは彗星の表面で跳ねてしまいました。2度もバウンドしましたが、無事着地していたことがわかりました。ただし、その体勢は、非常に危うい状態でした。
 その後にも手に汗握るドキュメントがありました。それは、次回としましょう。

・ブログ・
ロゼッタのスタッフが書いているブロク(英語)があります。
http://blogs.esa.int/rosetta/
スタッフに喜怒哀楽が綴られています。
そこに、最新情報といろいろなコメントが寄られています。
「スタートレック」のカーク船長役の
ウィリアム・シャトナー(William Shatner)からの
コメントも寄せられています。
カナダからESAへのメッセージでもあります。

・卒研発表会・
私の学科では、今週と来週に講義期間中に
卒業研究の発表会があります。
講義期間といっても、午後の講義時間のすべてを使って
学生も教員全員が集まり発表会をします。
卒業研究は3年生のゼミと継続しているため
実質2年かけて作り上げることになります。
3、4年生の必修科目にもなっています。
ゼミごとに熱のいれからはさまざまですが
私のゼミでは、かなり力を入れて取り組みます。
私のゼミの学生は大変な思いをしながら研究に取り組みます。
発表会はその集大成なので、
正装で臨むように希望を出しています。
決して強制はせず、私の希望といっています。
他のゼミの学生は普段着ですが、
私のゼミの学生だけは正装で発表します。
学生たちは一生懸命取り組んだ気概もあるので
素直に正装で発表しています。
達成度は人それぞれですが、達成感は味わっているようです。

2015年1月1日木曜日

5_121 ロゼッタ 1:はやぶさ2

 新年最初の、エッセイは、昨年11月に達成された探査機「ロゼッタ」の偉業からはじめましょう。日本では「はやぶさ2」の話題に押されて、あまり話題になりませんでしたが、重要な成果を挙げたロゼッタを紹介してきましょう。

 昨年暮れの日本では、小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げの話題が大きく取り上げられました。「はやぶさ2」は、12月3日13時22分、種子島宇宙センターから、H-IIAロケットの26号機で打ち上げられました。当初、12月1日に予定されていたものが、天候不良で延期になり、より一層の期待感が増しました。
 初代の「はやぶさ」は、数々の故障に見舞われながらも、知恵と工夫の末、2010年6月13日22時に、地球にたどり着きました。オーストラリアの大地へサンプルの送り込み、自身は燃え尽きて、その使命を果たしました。その後、「イトカワ」からの持ち帰った多数のサンプルが、公開され研究に用いられています。
 「はやぶさ」の成功は、ニュースだけでなく、関連の書籍や映画にもされ、多くの日本人に感動と希望を与えました。このエッセイでも何度も取り上げ、紹介してきました。そんな初代「はやぶさ」の思い入れも背景にあったためでしょう、「はやぶさ2」への期待は嫌が上にも大きくなります。話題にもなり、飛び立つ前から書籍も次々と出版されていました。
 「はやぶさ2」は、厳しい予算で継続されてきたのに、民主党政権でのさらに予算の縮小もあり、計画の見直しがされ、なかなかすすみませんでした。しかし、「はやぶさ」の帰還により、民主党政権でも称賛を受け、2011年度で開発予算がつき、JAXAは正式に打ち上げプロジェクトがスタートさせました。そして開発段階に入りました。そのような多難にスタート後の2014年12月の打ち上げだったのです。
 日本では「はやぶさ2」の打ち上げのニュースに押されてしまい、あまり大きな話題にはならなかったのですが、実は欧米では宇宙関連で、大きなニュースがありました。欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げた「ロゼッタ」という探査機のニュースでした。
 ロゼッタは、「はやぶさ」に勝るとも劣らない、困難で重要な任務を遂行していました。なんと、10年にもおよぶ飛行の末、彗星にたどりつき、着陸機「フィエラ」を下ろしました。そのプロセスやミッションについては、次回としましょう。

・謹賀新年・
明けまして、おめでとうございます。
今年の発行日は、元旦になりました。
多くのメールが行き交う可能性があり、
到着が遅くなったかもしれませんが、
のんびりとお読みください。
昨年の末は、STAP細胞の話題を取り上げ、
少々暗い終わりでしたが、
新年は、明るい話題からスタートしたいと考え
探査機ロゼッタを取り上げました。

・ロゼッタストーン・
「ロゼッタ」の名前は、
有名なロゼッタストーンに由来しています。
またロゼッタから飛び出した着陸機「フィラエ」は
ロゼッタストーンの解読の鍵となった
フィエラ・オベリスクにちなんだものです。
フィエラ・オベリスクとは、
1815年に上エジプトのフィラエ島で発見された
大きな岩石でできた記念碑のことです。
ヒエログリフと古代ギリシア語の
2つの言葉で書かれていたました。
このヒエログリフがロゼッタストーンの解読の
重要なヒントになりました。
彗星の起源を解き明かすために、
ロゼッタストーン、あるいはフィエラ・オベリスクへの
故事を再現する期待をこめてつけられたのす。

2014年12月25日木曜日

6_125 2014年を振り返る:STAP細胞はなんだったのか

 年末のエッセイで、毎年ではありませんが、その年を振り返ることがあります。今回も科学で一番の話題となったであろうSTAP細胞について振り返ります。そこに何があったのでしょうか。教訓として学ぶべきことはなかったのでしょうか。

 1年の振り返りのエッセイは、毎年ではないのですが、思いついた時にまとめています。前回は2011年の年末にまとめました。2011年はなんといっても、3.11の東日本大震災のあった年で、多くの人の記憶に焼き付きました。2011年は、私にとっても思い出深い年でした。2010年4月から2011年3月末まで、研究休暇をとり、四国に滞在していた時期で、その最後に3.11が起こっのでした。思い出深いだけでなく、3.11にどう対処するかを、1年間、いろいろ考え続けてた時期もでありました。
 さて今年はというと、科学において重大な出来事としては、STAP細胞の事件が一番ではないでしょうか。私自身には直接関係がありませんし、分野も全く違ったものですが、いろいろ考えさせられました。
 以前にも科学の世界では、捏造や剽窃などの事件は多数あり、ニュースに大きく取り上げられたこともありました。STAP細胞の成果は発表の当初は、今まで以上に大きなニュースになりました。iPS細胞が華々しく取り上げられる中、もっと有効なSTAP細胞の科学的意義がだれにでも理解できたことが大きかったのでしょう。さらに、業績を上げた研究者が、若い女性研究者であったことで、日本中のメディアが、ワイドショー的、週刊誌的にこぞって取材攻勢をかけました。
その直後に、捏造疑惑だったことがさらに話題性を増しました。メディアの評価の上下動が非常に激しいものでした。告発後も、記者会見や理研を挙げての追試、関係者に自死など、話題が続きました。そして、12月の19日には、本人自身による追試でも再現できないことが、公式に報告されました。
 STAP細胞の事件で考えさせられたのは、科学者の倫理もさることながら、本当に一度もなかった現象なのかという疑問が、今でも残っています。
 最初から悪意をもって科学に取り組む人はいないと思います。科学は、長い修業期間が必要なのと、もともと見返りの少ない職業で、割の合わないことだからです。それでもあえて研究に向かうのは、本人の強い好奇心や満足感が、大きな動機となるはずです。最初から悪意をもって科学に携わる気持ちがあったとは思えないのです。
 善意からスタートしたとすると、小保方さんも、なんらかの漠たる証拠をとらえたのではないでしょうか。誤操作か偶然かはわかりませんが、何か痕跡を得たのだと思います。その後、なかなか再現できず、ついつい捏造に走ったのではないでしょうか。もし、最初の痕跡が本当で、それを捉える試みが、今回の事件でタブーになったら、人類は大きな金脈を見過ごす可能性があります。
 もちろん、その可能性も含めて理研は追試をしたはずです。なぜなら、科学は善意を前提に進められているからです。科学は最終的には、証拠や再現性によって裏付けされます。再現されなかったものは、その存在は否定されたことになります。
 それでも、すべてが虚構だとするには、あまりに大きすぎるネタでもありますが。

・まだまだ終われない・
いよいよ今年最後のエッセイとなりました。
本当に年末までバタバタしています。
大学は22日で定常の講義はおわりますが、
24日は補講日で、午前に一つ補講があり、
午後からは卒業研究の発表の予行演習があります。
そのあとは、4年生と忘年会をします。
その後、25日の夕方に会議があります。
それで校務が終わります。
多分、その後も私はいつものように大学に出る予定です。
やっと自分の研究できる時間がとれるからです。

・スケートリンク・
週末に昼間温かく、夜に冷え込んだので
道路が大変なことになってしまいました。
スケートリンクのようにつるつるでした。
歩くのがおっかないほどで、
坂では、車がスリップスしているのを
あちこち見かけました。
みんなのろのろ運転です。
雪が降れば、少しはましになるのですが。

・別の機会に・
本年度最後のエッセイを、
暗い話題で終わるのはどうかと悩みました。
しかし、あえて私が何度も取り上げる話題でもないし、
今回は、STAP細胞を最後の話題にすることにしました。
今年の嬉しい話題として、
彗星にいったロゼッタも取り上げたかったのですが
単独の話題にしても、長くなりそうなので
今回は見送りました。
ですから今年最後ですが、
一つの話題だけにしました。

2014年12月18日木曜日

1_139 地球の水の起源 5:水のブレンド

 最新のガス捕獲説ですが、これを受け入れたとしても、脱ガス説もレイトベニア説の選択は残るります。なぜなら、ガス捕獲説は、太陽系の誕生する前の分子雲時代の話だからです。

 ガス捕獲説は、アメリカのウッズホール海洋研究所のサラフィン(A. R. Sarafian)たちが、9月26日のScience誌に発表したもので、コンピュータでH2Oに関するシミュレーションをおこなった結果でした。シミュレーションの前提として、原始太陽系円盤内のみでH2Oが作られるものとしてなされました。すると、太陽系にみられる水に特有の性質(重水素の比率D/Hと表記される)が、シミュレーションでは再現できないことがわかってきました。つまり、前提条件が違うということになります。
 シミュレーションによれば、低温で形成されたH2O(D/Hが大きい)を、かなりの量を取り込んでいなければ、太陽系の値にはならないという結果だったのです。現在の太陽系にみられるH2Oのうち、30%から50%が太陽系が形成される前、分子雲の時(低温)に形成されていなければならない、と推定されました。
 これは、H2Oの起源に関する重要な仮説になります。ただし、今までの他の2つの説に先行した時期なので、このシミュレーショを受け入れたとしても、なおかつ脱ガス説かレイトベニア説かという問題は残ります。なかなか複雑な状況になってきました。
 太陽系、あるいは惑星の形成時に、H2Oがすでにできていたとすると、地球の水には、原始太陽系円盤で合成された分子雲のH2Oと、太陽系ができたときの太陽系オリジナルのH2Oがあることになります。2つのH2Oが混合しているというのです。太陽系のH2Oは、ブレンドされているのです。地球軌道ブレンドのH2Oがあったかもしれません。そうなるとH2Oの成分にも、場所によって、いろいろなブレンドがあったかもしないのです。
 脱ガス説であれば、原始地球として成長した後、材料物質の平均的にブレンドの海ができていたでしょう。レイトベニア説ならは、カイパーベルト由来の彗星が、たった一度の衝突によってできた個性的なブレンドのH2Oがもたらされたかもしれません。それぞれのブレンドには、分子雲起源のH2Oを3から5割ほど含まれていたことになります。
 脱ガス説であれば、地球の水の起源や成分には必然性が生じます。ところが、ガス捕獲説やレイトベニア説を採用すると、地球の水は、その組成も起源も、たまたま、偶然の要素がかなりの比率を占めることになります。さてさて、「神はサイコロ遊び」をするのでしょうか。

・偶然・
「神はサイコロを振らない」という言葉は
アインシュタインが、量子力学を批判したとき用いた言葉です。
素粒子などの振る舞いを、確率でしか記述できない
量子力学を皮肉ったものです。
私もその言を引いてエッセイの結びとしました。
自然現象には、確率や偶然による部分があるのは確かです。
しかし、心情的には、アインシュタインのように
地球の水にも何故あるのかという理由に
必然性があったほうが
スッキリするのですが・・・

・新情報・
実は、このエッセイを書いていたら、
別の報告の情報が入ってきました。
レイトベニア説ですが、水の起源が
これまで述べてきた彗星ではなく、
小惑星起源を示唆するという論文でした。
彗星探査機ロゼッタの観測チームが
12月10日に発表したものでした。
最新ですが、この説の説明をしはじめると
さらに話が複雑になりそうなので、
このシリーズは今回で終わりとします。
新たな展開があれば、紹介することにします。

2014年12月11日木曜日

1_138 地球の水の起源 4:ガス捕獲説

 これまで、地球の水の起源に関する2つの説をみてきました。3つ目の説として、ガス捕獲説を紹介します。この説にも根拠はあるのですが、少々立ち位置が違ったものです。

 地球の水の起源として、3つの説があります。かつては脱ガス説が主流でしたが、近年はレイトベニア説が有力視されています。ここまで、紹介してきました。今回からは、最後となった3つ目のガス捕獲説についてみてきましょう。
 ガス捕獲説とは、どのようなものでしょうか。この説には、最近、新たな証拠による論文が報告されました。まだ、受け入れられるかどうかはよくわかりません。ただし、従来の説に対立するものではなさそうです。
 脱ガス説もレイトベニア説も、いずれも、太陽系が形成されたときにあったガスが水の素材となります。2つの説の違いは、水をどのようにして地球にもたらすかと点でした。そもそも水は、太陽系の材料物質中に存在してたところからスタートしています。
 太陽系のガスの成分は、水素、ヘリウムを主として、続いて酸素、炭素という順になっています。水素と酸素が反応すれば、簡単にH2Oが、それも大量にできることになります。ですから、太陽系内では、H2Oは、存在しているものとして考えられていました。
 しかしそこには、実は別の問題が隠されていました。すべての水が本当に太陽系で合成され、材料物質にもたらされたのかという問題です。上で示した太陽系の元素の存在度は、太陽系固有の特別なものではなく、宇宙空間では同様の元素類がごく普通であることがわかっています。つまり、水素も酸素も、宇宙空間にはたくさんあり、H2Oがたくさんできる可能性は、どこにでもあるのです。
 太陽系ができる前、ガスが宇宙空間に集まっているところ(分子雲)で、すでにH2Oができていてもいいわけです。実際の分子雲の観測でも、H2O分子は見つかっています。これまでどのようにH2Oが地球にもたらされたのかが問題とされていたのですが、いつどこでH2Oができたかが見過ごされてきました。
 もし分子雲内ですでにH2Oができていて、それが原始太陽系円盤に取り込まれたとすると、太陽系の材料の中に、すでにH2Oが存在する環境であったことになります。一方、原始太陽系円盤内の形成であれば、H2Oは他の材料物質と同時期にできたのですが、場所ごと(軌道ごと)に、形成されるH2Oの量は違ってくるという問題も生じます。
 いつH2Oができたのかという問題に対して、アメリカのウッズホール海洋研究所のサラフィン(A. R. Sarafian)たちは、分子雲の時にH2Oができていた可能性を示しました。その説明は、次回としましょう。

・研究は人がするもの・
一つの論文が提出されたとします。
その論文には証拠も論理性があったとしても
受け入れられるかどうかはわかりません。
同業者や近縁領域の研究者が
受け入れるか、時間経過、議論経過とともに
判断されていきます。
その判断は、近縁領域の研究者にとっては、
今までの自分の考えや説に反しなければ
わざわざ否定をするような労力を
はらわないかもしれません。
しかし同業者(同領域の研究者)にとっては
大きな問題となり、議論を呼ぶことになります。
今回のように、多くの説の前段階の論文であれば、
その説を受け入れても
自分の考えには影響がないという場合もあるでしょう。
そうなるとあまり議論が起こらないかもしれません。
ということは、その論文に関する審議や検討が
なおざりになることがあるかもしれません。
本当は議論して欲しいのですが、
研究をするのは、人ですからね。

・除雪・
北海道は先週末あたりから
積雪が毎日のようにありました。
冷え込みも厳しいものでした。
昨朝は自宅の前の道路にも除雪が入りました。
今シーズン初めてのことでした。
例年よりは、かなり早い除雪のような気がします。
このまま、根雪になることがないことを願っています。
なりそうな雰囲気なので少々心配ですが。

2014年12月4日木曜日

1_137 地球の水の起源 3:レイトベニア説

 レイトベニア説は、一度唱えられたたのです。否定する観測値があったため、否定されました。しかし、別の観測結果から復活してきました。この復活によって、新たな謎を生むことになりました。

 地球の水の起源として、脱ガス説、レイトベニア説、ガス捕獲説の3つがありました。少し前までは、材料物質のコンドライトに含まれていた揮発成分の脱ガスでできたと考えられていました。
 前回も少し紹介したのですが、水蒸気が隕石に取り込まれにくい難点がありました。太陽系創成期から40億年前まで、水があった場所は太陽系ずっと外側の低温域だけで、地球を形成するような位置には水は存在できなかったという指摘がありました。他にも、惑星の形成時期は表面が非常に熱く、表面に液体の水は存在できず、激しい衝突でガスは宇宙空間に飛び散ってしまう可能性があることも難点でした。
 脱ガス説を支持するために、回避する説明も可能でしたが、その説を強く示す証拠はあまりありませんでした。
 その後、レイトベニア説が有力になりました。考え方は隕石の脱ガス説に似ていますが、衝突の時期が問題で、脱ガス説が地球形成期にあるのに対し、レイトベニア説は原始地球の誕生後の出来事です。
 レイトベニア説は、一度の衝突で海水の量程度は供給できるという利点がありました。現在、地球に存在している海水の量は、重さでみると0.027%にすぎません。この程度の量の水は、微惑星に含まれているH2Oをほんの少し(1/40程度)脱ガスすれば供給できるほどでした。
 レイトベニア説は2011年に、水に含まれる重水素(水素の同位体で質量数が1のHより重い2のもの、D)の比率(D/H比と呼ばれます)の値が調べられて、注目を集めました。ESA(欧州宇宙機関)のハーシェル(Herschel)宇宙望遠鏡で、地球を近くを通過した彗星(ハートレー第2彗星、Hartley 2)の氷を観測し、重水素の比率を測定しました。すると、その値は、地球の水と同じことがわかりました。
 1980年代に、レイトベニア説は、脱ガス説の同時期に提唱されていました。当時も、いくつかの彗星のD/H比が測定されましたが、その値は地球上の水とは大きく違っていることがわかりました。そのため、この説は、支持を失いました。
 天体に存在する水は、ある定まったD/H比を持っていて、その比率は変わらないことが知られています。地球の水のD/H比が、彗星と同じ値であったということは、水の起源がある種の彗星であったという重要な根拠が提示されたことになります。
 ハートレー第2彗星は、カイパーベルト(冥王星から遠く離れた黄道面に小天体が多数存在するゾーン)に起源を持つものでした。一方、異なるD/H比をもつ彗星は、オールトの雲(カイパーベルトより外で太陽系を球状に覆うように存在する小天体のゾーン)に起源を持つものでした。
 太陽系誕生当時は今よりも多数の彗星が巡ってきたはずです。衝突の可能性は今よりずっと大きかったはずです。地球に水をもたらした衝突は、地球誕生後、約800万年に起こったという推定もあります。
 新たな観測データを根拠にして、レイトベニア説が復活しました。この説の有利な点は、一度の衝突で水の起源が説明が可能であるこということです。でも、根拠をもった仮説であって、決定的な説ではありません。
 もし、カイパーベルトとオールトの雲に属する彗星で、化学的性質が違っているのか、それともカイパーベルトの彗星自体に化学的多様性があるのか、これは重要な問題提起になります。いずれにしても、太陽系形成にかんする重要な束縛条件を提示したことになります。今後、さらなるデータや研究が必要になりました。

・師走・
いよいよ12月、師走になりました。
私は、10月からバタバタしています。
学生の論文の添削にかかりきりです。
ですから、10月から師走状態です。
これも教育で一貫で、
学生たちが成長するために必要だと思っているので
やり続けています。
学生たちは大変な思いをしているのでしょう。
このような大変な経験は
将来、きっと役に立つからと、励ましています。

・彗星の巣・
彗星の巣のようなものがあるのが、
彗星の軌道の決定からわかってきました。
ひとつは、惑星と同じ軌道面を巡っている
カイパーベルトと呼ばれるものです。
実際のそこを巡る天体がいくつも見つかっています。
もうひとつは、もっと外側にあり
太陽系全体を覆うようして広がっている
オールトの雲と呼ばれるものです。
二つの彗星の巣で、
彗星の性質に違いがあったということになると
なぜという疑問が湧いてきます。
それは太陽系形成の謎とも直結していくはずです。