2015年1月15日木曜日

5_123 ロゼッタ 3:着陸

 彗星への着陸は、いろいろな困難があります。小さい天体なので、天体の重力はほとんど利用できません。着陸にスピードがあると、作用・反作用で跳ね返ってしまいます。慎重に着陸しなければなりません。フィラエの着陸の様子を紹介しましょう。

 一般に彗星は、岩石と氷でできていますが、太陽に近づくと氷が溶けて、大量の水蒸気と少し粒子が火山のように吹き出します。水蒸気や粒子(イオンになっていることもあります)が、彗星の尾になっていきます。彗星は、太陽に近づくたびに大量の水蒸気を放出するので、形を変えていきます。チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、太陽に近づきつつあり、これから激しい水蒸気の噴出がはじまるはずです。ロゼッタは、その様子を間近に観測しようと計画されています。
 チュリュモフ・ゲラシメンコは小さい彗星ですから、その形態や状態は、近づかないとわかりません。ロゼッタは、フィラエという着陸機を下ろして、表層の探査をしていく予定でした。彗星の形態や表層の様子を調べて、どこに下ろすかを決める必要があります。
 ロゼッタは、彗星の周回軌道を巡りながら、多数の写真を撮影しました。彗星の観測から3Dモデルが作成され、そこに写真が合成され、全体を眺めることができるようになりました。
 観測の結果、彗星はいびつであることがわかりました。大きさの違う2つの玉が棒状のものでつながった形になっています。天体の大きさは、小さな玉が2.5×2.5×2.0km、大きなほうが4.1×3.2×1.3kmで、全体の質量は10^13kgで、密度は0.4g/cm^3になっています。12.4時間の周期で自転していました。この彗星は、私には鉄アレイのような形にみえましたが、ESAの研究者たちは「アヒルに似た形」と表現しています。
 さて、着陸地点の選定です。いくつも候補地があがり、それぞれに一長一短があり、研究者間で議論になりました。最終的にひとつの地点が選ばれ、そこに下ろすことになりました。
 彗星は小さい天体なので、ほとんど重力がありません。近づくのにスピードがあると、作用・反作用の効果が強くて、跳ね返ってしまいます。そのためスピードを極力落として、非常にゆっくりと近づきます。7時間かけて降りることになります。フリーフォールと呼んでいます。
 それほどゆっくり降りても、着地した瞬間に反作用で跳ね返ってしまいます。跳ね返りを防ぐために、スラスターという装置を利用します。スラスターは、フィラエの自重を用いて、足をぐっと下に押し付ける装置が用意されていました。スラスターは故障していることが事前にわかっていました。そこで、ハープーンと呼ばれるヤリを発射して、彗星表面に打ち込み、フィラエを固定することにしていました。
 ところが、ハープーンの発射は失敗に終わりました。フィラエは彗星の表面で跳ねてしまいました。2度もバウンドしましたが、無事着地していたことがわかりました。ただし、その体勢は、非常に危うい状態でした。
 その後にも手に汗握るドキュメントがありました。それは、次回としましょう。

・ブログ・
ロゼッタのスタッフが書いているブロク(英語)があります。
http://blogs.esa.int/rosetta/
スタッフに喜怒哀楽が綴られています。
そこに、最新情報といろいろなコメントが寄られています。
「スタートレック」のカーク船長役の
ウィリアム・シャトナー(William Shatner)からの
コメントも寄せられています。
カナダからESAへのメッセージでもあります。

・卒研発表会・
私の学科では、今週と来週に講義期間中に
卒業研究の発表会があります。
講義期間といっても、午後の講義時間のすべてを使って
学生も教員全員が集まり発表会をします。
卒業研究は3年生のゼミと継続しているため
実質2年かけて作り上げることになります。
3、4年生の必修科目にもなっています。
ゼミごとに熱のいれからはさまざまですが
私のゼミでは、かなり力を入れて取り組みます。
私のゼミの学生は大変な思いをしながら研究に取り組みます。
発表会はその集大成なので、
正装で臨むように希望を出しています。
決して強制はせず、私の希望といっています。
他のゼミの学生は普段着ですが、
私のゼミの学生だけは正装で発表します。
学生たちは一生懸命取り組んだ気概もあるので
素直に正装で発表しています。
達成度は人それぞれですが、達成感は味わっているようです。