2013年6月13日木曜日

1_116 三畳紀初期の温暖化 2:致死的

 P-T境界を挟んで、いろいろな異常現象が起こりました。最近、三畳紀初期に起こった異常現象が発見され、「致死的な高温」と呼ばれています。この温暖化が、ペルム紀末のさまざまな異変に続いて起こります。

 古生代と中生代の時代境界(P-T境界)では、生物史上最悪の大絶滅が起こりました。古生代と中生代の生物種が一変するほどの変化でした。そのP-T境界で起こった大絶滅事件には、いろいろな異常現象が伴っていました。超大陸パンゲアの形成から分裂へ、スーパープルームの上昇、世界規模での海退、激しい火山活動、特にシベリアの火山活動(シベリア・トラップと呼ばれています)は広範囲に及ぶものでした。さらに他の大絶滅に比べて期間が長い点も特徴です。通常の絶滅が数10万年の期間で起こるのに対して、P-T境界の絶滅は、2億5200万~2億4700万年前の500万年もかかっています。この絶滅はP-T境界をまたいで起こっています。
 これらの現象は、どれもが地球生命には大きな変化を起こしうるものです。どれかひとつの現象が、他のすべてを起こした原因だったのか。あるいは、いくつもの原因が、複合的に他の現象を起こしたのか。いくつもの現象が、どのような因果関係にあったのかを知りたいのですが、その解明はなかなか困難なようです。
 昨年、P-T境界付近の時代に、新たな異常現象が見つかりました。サイエンス誌(Science)の2012年10月19日付けのオンライン版に発表されました。イギリスのリーズ大学のスンさんらの研究グループが、中国南部の浅い海の堆積物を研究したものです。その地層は、三畳紀の最初期に形成されました。P-T境界の絶滅事件の直後にたまったものです。
 さて、酸素の同位体組成が温度と相関をもっており、同位体組成を分析すれば、海水がなくても、海水温を見積もることができます。知りたい時代、今回はP-T境界付近、あるいは中国の地層では三畳紀最初期の海水の酸素を見つければ、当時の海水の温度を見積もることが可能になります。
 スンさんたちは、地層が赤道付近で溜まったものであるのことを明らかにしています。そして地層には化石が含まれていることがわかっていました。化石(当時生物の殻)をつくっている物質は、当時の海水に溶け込んでいた成分からできたはずです。化石を形づくる物質(多くは炭酸カルシウムCaCO3)の酸素を利用すれば、海水の温度を見積もることができます。この方法は、多くのところで、すでに利用され、実績を挙げているものです。もちろんこの炭酸カルシウムが形成後変化していないという前提が必要ですが。
 化石の酸素同位体の分析の結果、当時の海水温が40℃に達していたことを示していました。浅い海の化石なので、海水表面付近の温度とみなすことができます。現在の赤道の海表面の温度は、平均で25~30℃ですので、それと比べても明らかに高い温度を示しています。
 スンたちは、この高温を「致死的な高温(lethally hot temperatures)」と呼びました。その様子と意義を次回考えていきましょう。

・おわび・
当初、「ペルム紀の温暖化」というシリーズ名をつけたのですが、
論文を読んでいくと、
「三畳紀初期」ということがわかりましたので修正します。
ホームページとブロクは修正しましたが、
発行してしまたメールマガジンは変更できません。
それでお詫びの文章をここに掲載しておきます。
申し訳ありませんでした。

・初夏・
北海道は夏めいてきました。
初夏の心地いい天気が続いています。
YOSAKOIも好天に恵まれ成功裏に終わりました。
私は、テレビ観覧でしたが。
遅ればせながら、エゾハルゼミ鳴き始めました。
先日のニュースでは、今年の6月に入ってからの晴天率が
非常にいいということです。
5月までの天候不順を取り戻すかのように
いい天気が続いています。
農家もこれで一息つけるでしょうか。

・出張・
毎週、教育実習の指導のために出張しています。
その疲れもあるのでしょうが、
あれやこれやと校務が結構あり、
精神的にも疲れています。
それに加えて論文の進行があまりよくありません。
7月には講演会もあるので、
その準備もそろそろしなければなりません。
気ばかり焦って、なかなかことが進みません。
ただ、ひたすら少しでもいいからやり続けることが
最終的には近道なのです。
わかっているけどできないのが人の常なのですが。

2013年6月6日木曜日

1_115 三畳紀初期の温暖化 1:P-T境界

 ペルム紀は古生代最後の時代です。古生代と中生代は、地質年代区分でも大きな境界になります。その境界で、大きな事件があったことがわかっていました。ただそのシナリオは、まだ完成していません。最近、新たな事件の証拠が発見されました。

 古生代の終わりの時代はペルム紀(Permian)と呼ばれ、2億9900万~2億5100万年前の期間です。ペルム紀の次の時代は三畳紀(Triassic)で中生代になります。ペルム紀と三畳紀の時代境界を、英語の頭文字をとって、P-T境界と呼びます。
 ペルム紀は、陸上生物が繁栄していました。動物では、大型化した両生類や爬虫類が出現していました。後の恐竜や現在の爬虫類の祖先になる爬虫類(双弓類)や哺乳類の祖先に当たる哺乳類型爬虫類(単弓類)もいました。また、石炭紀に繁栄して大森林をつくっていたシダ類、ソテツ類、イチョウ類などの裸子植物が繁茂していました。海では三葉虫の他にも、フズリナ、四射サンゴ(棘皮動物)、軟体動物、腕足類などの多様な化石が、浅い海の堆積物から見つかっています。陸地も海も、生物で賑わっていたようです。
 ところが、古生代に繁栄していた生物が、P-T境界でほとんど絶滅してしまいました。古生代と中生代の境界が、ここに置かれているのは、今では重要な意味を持つようになりました。P-T境界の絶滅は、地球生命が経験したもっとも大きなものだと推定されています。古生代に繁栄していた三葉虫が絶滅したことはよく知られていますが、他にも多数の生物種が消えた大絶滅だと考えられています。
 「大絶滅」というと、恐竜が絶滅した中生代と新生代の境界(K-T境界、あるいはK-Pg境界と呼ばれる)を、多くの人が思い浮かべることでしょう。K-Pg境界も大絶滅ではあるのですが、「大絶滅のランキング」でいうと、第5位にあたります。
 絶滅のランキングの第1位は、実はP-T境界のものです。その絶滅の程度はいくつかの推定がありますが、海生生物では最大で96%の種が、全生物種で見ると90%ほどが絶滅したと見積もられています。
 それでも、ほんの一部の生物種が生きのびて、中生代の生物がはじまりました。生き延びた一部の生物が、中生代から後の生物の祖先となり、後の系統を形成したので、古生代の生物と中生代の生物は、だいぶタイプが変わっています。その生物種の差が大きさからも、時代の境界がP-T境界にあることは、意味があったのです。
 ところが、P-T境界の大絶滅が、なぜ起こったのか、今でも謎でなのです。いくつかの特異的な現象が知られています。これを説明するために、いくつかの仮説が提唱されています。いずれの仮説も多様な現象を説明するために、複雑なシナリオが必要です。まだ決定的な仮説がありません。研究途上なのです。
 昨年、P-T境界付近で、新たな異常現象が見つかりました。それは、強烈な温暖化でした。その紹介は次回としましょう。

・二畳紀・
ペルム紀は二畳紀とも呼ばれることもあります。
かつては二畳紀のほうがよく使われていましたが、
今では、あまり使わなくなりました。
ペルム紀は、ロシアのウラル山脈の西部の
ペルム地方からとって付けられた名称です。
二畳紀は、この時代の地層がでているドイツでは
赤底統と苦灰統の2つの地層になっていることから
ダイアス(Dyas)と呼ばれていました。
その訳語が二畳紀とされました。
残念がらあまり使われませんが。

・YOSAKOIソーラン・
6月になり、北海道もやっと初夏の気候になってきました。
長い冬と、寒い春がやっと終わりました。
我が家のストーブもやっと休みになりそうです。
天気がいいと、暑さを感じるようになってきました。
暑い日などは、帰宅すると一汗かいているので
風呂よりシャワーで済ましてしまう日もあります。
今週から、YOSAKOIソーラン祭りが始まります。
今年の北海道の夏は、
YOSAKOIとともにはじまります。

2013年5月30日木曜日

5_111 地球型惑星 4:地球型惑星

 ハビタブルゾーンでみつかった3つの惑星についての紹介します。そのうち2つの惑星は、同じ恒星系から見つかったものです太陽系外惑星の発見から、どんな可能性が描けるのでしょうか。

 前回は、突然入ってきた宇宙望遠鏡ケプラーの故障のニュースを、急遽紹介しました。今回は、いよいよ宇宙望遠鏡ケプラーが発見したハビタブルゾーンにある地球型惑星の説明をしていきます。
 ふたつは「こと座」の方向に1200光年離れたケプラー62で、残りのひとつは「はくちょう座」の方向に2700光年離れたケプラー69と命名されている恒星系で発見されました。ハビタブルゾーンにある地球型惑星は、ケプラー62から62eと62fの二つ、ケプラー69から69cの一つでした。
 ところで、恒星の名前は、探査のミッションや望遠鏡の名と、発見された順番を組み合わせてつけられることが多いようです。ですから、「ケプラー62」とは宇宙望遠鏡ケプラーが、62番目に発見したものであることを意味します。
 恒星の番号の次のアルファベットが惑星を意味します。太陽系外惑星の命名に関しては、正式な定めはありませんが、小文字のbからはじまるアルファベットをつけられます。bからはじまるのは、主星(恒星)をAをつけて表すためです。主星が二つ以上の恒星からなる(連星、伴星)であれば、A、B、C・・・としていきます。主星Aの惑星には、発見順に、Ab、Ac、Ad・・・とつけていきますが、主星が一個(A)だけの場合、Aは省略されて表します。ケプラーの発見したものにも、この方法が適用されています。62eとは、ケプラーが62番目に発見した恒星で、4番目に発見された惑星だということです。
 さて、惑星についてです。
 62eは、岩石からできた惑星で、地球の約1.6倍の大きさがあり、122日で恒星(ケプラー62)を回っています。62fは、62eより外の軌道を267日で回っており、地球の大きさの1.4倍の大きさです。69cは、地球の1.7倍の大きさで242日で回っています。
 69cは、どのような物質でできているかは不明ですが、太陽系の金星の公転周期が似ています。他の2つの惑星は、岩石からできていることがわかっています。
 地球では、ハビタブルゾーンの3つの惑星のうち1つに液体の水があり(地球)、水の痕跡を見つかっています(火星)。ですから、ハビタブルゾーンで、地球に似たサイズで表面が岩石の天体(地球型惑星)があれば、期待がわいてきます。もちろん、海の存在、そして生命の存在への期待です。
 今回発見された惑星は、1200光年や2700光年も離れているので、生命がいたとして探査ができるでしょうか。なかなか難しいかもしれませんが、海の有無なら今後、観測可能かもしれません。もし、知的生命がいて通信技術をもっていれば、信号を発信、あるいは無意識な電波の放出をおこなっているかもしれません。その探知ができるかもしれません。そんな期待です。
 ただし、その知的生命の痕跡は、1200年前の信号だということに注意が必要です。1200年前といえば、地球では東ローマ帝国や唐があった時代で、日本では平安時代です。それほどの時間差がある情報が今届くことになります。今の地球からの電波の情報を、今から1200年後の地球人類はどうみるでしょうか。過去から届いた情報を、現在と同一のレベルで考えるのは注意が必要です。それほどの隔たりではないでしょう。第二の生命の星の可能性は、そんな過去をも探ることでもあります。

・快晴・
天気の良い日がまだまだ少ないですが
すこしずつ晴天の日が表れるように成りました。
たまの快晴は非常に心地よいものです。
やはり北国の春の青空は
なかなか清々しいものです。
今年は天候が不順でなかなか晴れが少ないのですが、
快晴は希少価値、ありがたみがあります。

・校務・
今週は校務がいろいろあり忙しいので、
このエッセイも早めに書いて
予約送信しています。
発行の前日も日高、三石に日帰りしています。
多分、疲れていると思います。
この日の私の担当の講義は、休講になりました。
しかし、日々の講義も校務も待ったなしで続きます。

2013年5月23日木曜日

5_110 地球型惑星 3:故障

 今回は、予定を変更して、ケプラーの最新ニュースをお知らせます。宇宙望遠鏡であるケプラーは、制御用の部品が壊れたため、観測ができなくなったというニュースが入ってきました。その内容を急遽紹介します。

 今回のエッセイでは、ケプラーが発見したハビタブルゾーンにある地球型惑星の説明をしようと考えていました。ところが、ケプラーに関する重大なニュースがはいってきました。それは、宇宙望遠鏡のケプラーが、壊れたというニュースでした。
 NASAは5月15日、ケプラーの姿勢を制御する仕組みが壊れたという報告をしました。ケプラーは「リアクション・ホイール」という装置で姿勢制御をしているのですが、その1基が壊れました。リアクション・ホイールというのは、簡単にいえばモーターで回転する円盤です。無重力の宇宙空間では、その回転と反対の方向に機体が回る力が発生します。ロケットやジェットを噴射せずに宇宙機の方向を少し変化させるのに利用されています。円盤の回転なので、精密な姿勢制御が可能な装置です。空間の3次元に対応して、基本的には3軸の回転軸をもった3基のホイールで構成されることになります。
 ケプラーはリアクション・ホイールを4基もっていたのですが、1基が2012年7月に壊れ、2012年1月にはもう1基が不調になり一時観測を止まっていました。そして今回、この不調の1基が完全に壊れたようです。
 ケプラーは、はくちょう座とこと座の間の一角で、他の天体の明るさの変化(トランジット法とよばれています)を精密に観測して、惑星の特徴を調べていました。明るさの変化は、いつ起こるかわからない、小さな現象なので、常に同じ方向を向いて観測し続けている必要があるので、正確な姿勢制御が不可欠となります。
 ケプラーの姿勢制御は、他にもスラスターという微修正ができる装置がありますが、精密な制御は困難です。しかし、なんとか残ったホイールとスラスターで姿勢制御をしながら運用する努力をされているようです。
 ケプラーは、地球から離れた軌道にあります。地球と同じように太陽を回る軌道で、地球の後を追いかけるように移動しています。このような軌道をとっているのは、地球の影響(明かりや地球の影になるなど)をなくすためと、太陽系にある多数の小天体の影響がなくすためです。観察方向も太陽系の黄道面から離れていて銀河の星の多い方向(はくちょう座とこと座の方向)を観察するように配慮されています。ですから、ハッブル望遠鏡のときのように人がいって修理することも不可能です。
 ケブラー自身が公転しながら、一定の方向に望遠鏡を常に向けるために、姿勢制御は観察には不可欠となります。21日の段階でも回復の努力は続けられていますが、ホイールの故障は回復していないようです。
 ケプラーのデータのうち、まだ解析されていないものもたくさんあるようなので、その解析によって、これからも新しい発見が期待されそうです。当初計画より長く運用もされてきました。このエッセイで紹介するような、大きな成果を上げたばかりなので、やはり残念です。次回こそ、ケプラーの成果を紹介します。

・タイミング・
今回のニュースは少々驚きました。
まさにエッセイを書いている時だったので、
タイミングとして取り上げることができてよかったのですが、
悪いニュースを喜ぶことはできません。
ケプラーのエッセイは
前回話題にした3.11のときといい、今回といい、
どうもあまり相性が良くないのでしょうか。
まあ、これは起こりうる偶然なのでしょうが、
少々気になるところです。

・風邪の流行・
北海道はまだ天候不順です。
数日の暖かい日に桜はやっと満開になりました。
まだ、残雪も一部残っています。
天気がよければ暑いくらいなのですが
曇りで風のある日には
コートが必要なほどの寒さになります。
風邪を引いている学生も多数います。
我が家でも、次男と家内が風邪をひき、
高体連中の長男も少々風邪気味のようです。
今のところ私はだいじょうぶなのですが、
いろいろな風邪のウイルスを
タップリと吸い込んでいるはずです。
体力だけで持ちこたえるようです。
いろいろと校務が忙しくなってきたので、
寝こむと支障をきたすことになるので、
なんとか体が持って欲しいものです。

2013年5月16日木曜日

5_109 地球型惑星 2:ケプラー

 人類の好奇心として、地球外生命の存在の有無は、もっとも刺激されるものでしょう。そんな好奇心をくすぐるようなニュースが相次いでいます。今回は、そのニュースの一つを紹介します。

 遠くの天体、それも光を発することのない惑星を、探査するのは非常に難しい観測となります。遠くの惑星を探す方法は、このエッセイでも、昔からの方法から最新の方法まで、いくつか紹介したことがありました。その中で太陽系外の惑星探査を目的とした宇宙望遠鏡ケプラーについても触れました。ケプラーは、NASAが2009年3月6日に、地球型の惑星を太陽系外から探すことを目的として打ち上げたものです。
 計画では、3年半にわたって、10万個の恒星の明るさの変化を測定し、惑星を見つけようとうするもの(トランジット法)でした。10万個の恒星を測定すれば、確率的には480個の地球型惑星を発見できると見込まれていました。当初の計画の3年半を過ぎていますが、現在も観測は続けられていて、今も重要な成果を挙げています。
 ケプラーはこれまで、15万個以上の恒星について観測をおこない、2740個の太陽系外惑星を見つけています。そのうち122個が、惑星であると確定できる観測をしてきました。
 ケプラーによる探査の成果は、これまでも何度か話題になりました。
 2013年2月21日には、水星より小さく月より少し大きい惑星が見つかっています。はくちょう座付近のケプラー37と名付けられた恒星の惑星の一つで、地球と比べると約3分の1の大きさしかりません。ケプラー37では3つの惑星が見つかっていますが、そのもっと内側をめぐる惑星(ケプラー37b)で、水星のように大気がなく、太陽の近くなので灼熱の惑星ではないかとみられています。ケプラー37bは、岩石からできていて、固い地面をもっている地球型惑星と考えられています。ケプラーで、小さき惑星を発見できる技術が確立されたこと示すニュースでもありました。
 最近、ハビタブルゾーンから、惑星がみつかったというニュースが流れました。
 恒星の明るさにもよりますが、ハビタブルゾーンは恒星の近くの限られた範囲に形成されます。もちろん、その範囲に惑星がなければなりません。ただし、惑星の大きさにも制限があります。大きな惑星であれば、太陽系の木星や土星のようなガス惑星になり、固い地表や海の存在が望めません。ある限られたゾーンのある大きさの惑星あることが、必要条件となります。これは見つけるのが難しい条件となります。
 2013年4月18日、NASAから、ハビタブルゾーンで地球型惑星が発見されたというニュースがでました。それも、3つも見つかったという報告でした。着実に観測は進んできています。その詳細は、次回としましょう。

・3.11の思い・
太陽系外の惑星を探査する宇宙望遠鏡
ケプラーを話題にしたのは、
「6_88 ケプラー3:異形の惑星系」
というものでした。
このエッセイには苦い思い出があります。
発行日は、2011年3月17日で、
3.11の東日本大震災の直後のことでした。
そのため、この時期はエッセイの発行を休止するか、
その時にふさわしい話題にするか、
などいろいろ迷いました。
しかし、但し書きつきで、このエッセイを発行しました。
ですから、ケプラーは、私にとっては、
そんな思いがよみがえるものとなっています。

・好奇心・
ハビタブルゾーンの地球型惑星の次に期待されるものは、
生命の存在可能性についてでしょう。
探査のための、いくつかのアイディアは生まれるでしょう。
もっと精度の高い望遠鏡で観測するとか、
そのような惑星をターゲットにSETIを行なう、
あるいは、何らかの信号を送ってみる、・・・。
まあ、遠い星のことなので
どの方法がいいかは、いろいろ考えるべきでしょう。
でも、そこまでわかってきたら、
もっと知りたいという好奇心がかき立てられます。

2013年5月9日木曜日

5_108 地球型惑星 1:ハビタブルゾーン

 地球は、人類にとって唯一無二の存在で、どんなに文明が進んでも、人類は地球に住み続けると思います。興味として、地球以外の天体や、太陽系以外の惑星に生命はいないのか、というもの常にあります。科学も両面の探査を続けています。最近、太陽系以外の惑星に大きな進展がありました。

 ハビタブルゾーン(habitable zone)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。Habitableとは「住むのに適した」という意味で、ハビタブルゾーンとは「住むのに適した領域」という意味になります。天文学で使われている用語で、生命が誕生するのに適した領域のことを意味します。時には、生命誕生だけでなく、生命が誕生した後進化できる条件をも加味されることもあります。
 生命が誕生するのに適した領域を本当に決定するには、実際の生命が誕生するか、誕生したかで検証しなければなりません。しかし、生命が存在しているのは、今のところ太陽系の地球の例しかなく、すべての天体に適用できるかどうかは不明です。生命の存在が確認できない場合は、生命誕生に不可欠な条件を見つけ、その条件が達成できるかどうかでハビタブルゾーンを設定ます。可能性での議論となります。
 恒星は核融合が起こっている高温の条件で、生命誕生の場にはなりませんが、生命にとって必要なエネルギーの供給源となります。恒星のエネルギーを効率的に利用できる環境として、惑星表面、あるいは表層付近(地下、海底、氷の下など)が想定できます。惑星表層で生命の誕生に不可欠な条件とは、液体のH2O、水が存在できるかどうかが重要です。H2Oは、宇宙ではたくさん存在する分子ですので、素材としては充分あります。
 H2Oは、温度が高ければ気体、低ければ氷、ある限られた条件(地球表層では0~100℃の範囲)では水になります。恒星の周りに惑星系があるので、温度は恒星からの距離と惑星表層の条件に依存します。惑星の表層は多様なので、決定しづらいところですが、必要条件として、H2Oが水として存在できる範囲を、天文学的ハビタブルゾーンと設定します。
 ただし、ハビタブルゾーンには、きつく考える立場とゆるく考える立場があります。
 きつく考える立場では、単純に恒星の明るさと距離だけの条件で水が存在できる範囲を考えるものです。惑星の表層の条件はとりあえずは、考えないものとします。太陽系では、金星から火星のあたりの範囲になります。
 ゆるく考える立場は、惑星の表層条件をいろいろ設定すれば、水が存在できそうな範囲を広く考えようというものです。太陽系では金星から小惑星帯の範囲が入ります。さらに、木星や土星などの大きな衛星では、太陽のエネルギーより母惑星との潮汐などをエネルギー源として、氷の下などの特殊な環境で、液体の水が存在する可能性も指摘されています。多様な天体を考えると、ハビタブルゾーンは、かなり広く存在する可能性があります。
 ただし、ゆるい立場に立つと、個々の天体の特殊性や個性がわからないと、先に進めなくなります。ですから、通常はハビタブルゾーンは、太陽系をモデルにして、恒星の明るさと惑星まで距離から単純に計算して、ハビタブルゾーンを見積もっていきます。この方法は、恒星の明るさがわかれば、ハビタブルゾーンが一義的計算できるという利点があります。
 太陽系以外の恒星系でハビタブルゾーンが設定できれば、次の問題は、そこに惑星が存在するかどうかが重要になります。最近、そのような惑星が見つかったというニュースが流れました。詳しくは次回にしましょう。

・事実の先行・
ここのエッセイで想定している生命は、
私たち地球生命を典型としているものです。
それ以外の生物は、想像できないものは
想定していません。
宇宙は多数の天体があり、
多様なので、想像できない生物がいてもいいのかもしれません。
しかし、想像できないものは、
科学にもってくるのはなかなか困難です。
あるいはいろいろ想定できるものにしても、
根拠や論拠がないと、真剣に議論するのは難しいものです。
人間は浅はかで、人間の想定など、
自然は簡単に越えていきます。
事実を先行させたほうがいいのかもしれませんね。

・春まだ浅く・
北海道は、まだまだ寒いです。
ストーブをいまだにつけています。
冬物の上着をなかなか脱げません。
先日も、朝、歩いていると、
水たまりに、氷が張っていました。
驚きましたが、歩いていも寒い気温なので納得しました。
近くの山なみにも、何度も雪が降っていて、
なかなか雪が消えません。
例年ならもう始まっている畑作業も
まだはじまっていません。
今年の春は、まだまだ浅いようです。

2013年5月2日木曜日

6_110 新鉱物 3:付加体

 レアアースを多く含む新鉱物の発見は、ただ発見だけにとどまらないかもしれません。そこには、一攫千金ではありませんが、大きな可能性を秘めています。一つの鉱物が、いったいどんな夢をみせてくれるのでしょうか。

 2013年4月に発見されたのは、レアアースの一種のランタン(La)を含む鉱物で、ランタンバナジウム褐簾石(Vanadoallanite-(La))と命名されました。
 褐簾石(かつれんせき)は、緑簾石(りょくれんせき、epidote)のグループに属します。緑簾石グループは、珪酸塩を中心とする鉱物で、結合する陽イオンに2種類の場所(AサイトとMサイトと呼ばれる)があり、そこに入る陽イオンが、Aには2個のイオンが、Mには3個のイオンが入ります。そのイオンは、A(Ca、Sr、Mn2+、Y、La、Ce、Nd、Pb)にも、M(Al、Fe2+、Fe3+、Mn2+、Mn3+、Mg、V3+)にも、いろいろなものが入り、複雑で多様な鉱物種ができます。特にAサイトには、レアアースが入りやすく、農集部があれば資源として有望なものとなります。
 褐簾石(Allanite)は、Aサイトにいろいろな陽イオンが入りますが、通常はセシウム(Ce)が入ります(Allanite-(Ce))。他にも、入っている元素によってランタン褐簾石(Allanite-(La))、ネオジム褐簾石(Allanite-(Nd))、イットリウム褐簾石(Allanite-(Y))などの鉱物に区分されています。
 今回の新鉱物は、褐簾石でランタン(Aサイト)とバナジウム(Mサイト)の位置が特定され、今まで記載のされていない種類であることが判明しました。さらに、セリウムやプラセオジム、ネオジムなどのレアアースも含んでいることもわかっています。
 一つの新鉱物の発見なのですが、実は以前紹介した南鳥島近海の海洋底に農集しているレアアースとの関連がでてきそうです。今回の鉱物は、三重県伊勢市矢持町の山の中で発見されたのですが、地質学的には秩父帯の中に位置しています。秩父帯は昔の付加体で形成されたものです。付加体は、深海の堆積物などが、海洋プレートの沈み込みによる剥ぎ取りで、陸側に付加したものです。そこにはレアアースを多く含んだ堆積物も混じっているはずです。そのレアアースを含んだ堆積物が、今回見つかったような鉱物になったのではないかと考えられています。
 そして、このようなレアアースを含む鉱物の農集部があれば、レアアース資源となりえるかもしれません。付加体は同時代の堆積物が東西に長く伸びています。もしひとつの地点で資源が見つかれば、連続的に広く採掘可能なレアアース鉱山が埋もれているかもしれません。日本列島の地質には、さまざまな時代の付加体が多数あるので、一つの時代の資源が発見されれば、他の地域、他の時代の付加体での発見の期待が膨らみます。
 深海底の資源開発も期待されますが、陸上の鉱山のほうが、手軽で安価です。地球の営みが、深海底も薄く広く分布していたものを、濃く狭く農集しているかもしれないのです。多様な付加体から構成されている日本の大地は、レアアースの資源大国になるかもしれないのです。
 まあ、今のところまだ架空の物語ですが、理屈の上では、ありえることです。たったひとかけらのレアアースを含む鉱物が見つかったことから、夢物語が広がります。

・山師的心情・
科学の新しい発見は、その意味を考えなければ
重要性もその分野だけの閉じたニュースになります。
もし空想たくましく、いろいろな可能性を考え、
その可能性にかけて調査をすれば、
お宝が発見できるかもしれません。
一つのお宝の発見が、
芋づる式に多数のお宝へとなるかもしれません。
まるで山師の夢のようです。
科学者の科学する気持ちも
夢や好奇心が一番のものでしょうから、
その奥底には「山師的」心情があるのかもしれませんね。

・天候不順・
北海道は天候不順で肌寒い天気が続いています。
桜などの春の植物も、今年はかなり出遅れているようです。
連休の行楽も室内施設が中心になっているようです。
私は、一応ゴールデンウィークは休みますが、
3日は学生の対応で大学でます。
まあ、静かな大学もいいものです。
ただ、天気が悪いと外歩きが嫌になるので
それだけが気がかりですが。