2025年10月30日木曜日

5_213 隕石の由来 2:コンドライト

 隕石が由来した母天体がわかっているのは、これまでほんのわずかです。それも、限られた天体から由来した特別な隕石だけです。今回、もっとも普通に見つかる隕石の由来が明らかにされました。


 前回、隕石の母天体を探るのが困難な理由をいくつか紹介しました。それでも、由来が判明した母天体がいくつかります。ただし3種だけで、隕石全体に占める比率は6.0%にすぎません。
 3種とは、月に由来する月隕石、火星に由来する火星隕石、そして小惑星ベスタ(Vesta 4番目に見つかった小惑星)に由来します。
 ベスタ由来の隕石は、ホワルダイト(Howardite)、ユークライト(Eucrite)、ダイオジェナイト(Diogenite)3つに細分され、その頭文字HED隕石と呼ばれています。ホワルダイトは、天体の表層に分布していた衝突で壊された破片(レゴリス)からなる堆積岩、ユークライトは、地殻を構成していた玄武岩質溶岩が固まった岩石、ダイオジェナイトは、粗粒の鉱物(かんらん石や輝石)からなるカンラン岩で、下部地殻か上部マントルを構成していたと考えられます。HED隕石は、ベスタの天体の多様なところを構成していた岩石であることを意味しています。
 由来のわかっている隕石は、いずれもエイコンドライトに大別されているものです。惑星が形成された後に、化学的に大きく分化(核、マントル、地殻など)したり、火成作用が起こったり、変成作用を受けたりしてできた岩石です。
 今回、大量の隕石の由来した母天体がわかったという報告が出されました。ブロズ(Brož、チェコ共和国カレル大学)、マーセット(Marsset、ESO ヨーロッパ南天天文台)、ヴェルナッツァ(Vernazza、CNRS フランス国立科学研究センター)らを中心とした国際共同研究のチームから、一連の論文が、2024年に報告されました。
 Nature誌に
Young asteroid families as the primary source of meteorites
(隕石の始源的起源としての若い小惑星)

The Massalia asteroid family as the origin of ordinary L chondrites
(Lコンドライトの起源としてのマッサリア小惑星)
の2編が、またAstronomy & Astrophysics誌に
Source regions of carbonaceous meteorites and near-Earth objects
(炭素質隕石の起源領域と地球近傍天体)
という論文が報告されました。
 これらの論文のタイトルには、炭素質コンドライトとLコンドライトとの2種の隕石が示されています。いずれもエイコンドライトとは異なったコンドライトに分類されるものです。
 コンドライトとは、コンドリュールという組織をもったタイプです。コンドリュールは顆粒とも呼ばれ、球状の粒のことで、それが集まったものがコンドライトです。コンドライト中では、組成や構成鉱物が異なった多様なコンドリュールが見られる、不思議な組織です。丸いコンドリュールは、無重力状態では液体は球状になります。地球のような重力が存在する場では決してできないつくりです。無重力の宇宙空間で液体のマグマが冷えて固化したものがコンドリュールとなり、それが集まったものがコンドライトとなります。
 今回の報告では、2種のコンドライトの由来ですが、いずれも重要な意味をもったものです。その意味は、次回としましょう。

・帰省・
先週、帰省しました。
京都に2泊、神戸に1泊しました。
出かける前までは
関西は暑い日が続くというニュースがありました。
暑いので心配していました。
ところがでかける少し前から、
涼しくなって来たというニュースが流れました。
実際にも暑くはなく、
暑さでバテないですみました。
今回、神戸に一泊して、
はじめて神戸を散策しました。
山側の観光地は歩くのが大変で
かなりくたびれましたが楽しめました。

・初冬のよう・
北海道では、毎日ストーブをたくほど
寒い日が続いています。
旅行で、4日間、留守にしていましたが、
家全体が冷え切っていました。
強くストーブをたいても
なかなか温まらず、
寝るまで寒い思いをしました。
この寒さは、まるで初冬のようです。
里から見える山並みにも
何度か冠雪がありました。
紅葉も一気に深まりました。
今年の秋は短かそうです。

2025年10月23日木曜日

5_212 隕石の由来 1:母天体

 これまで、地球に落下した隕石がどの天体から由来かが、ほとんどわかってきませんでした。それが、一連の研究で、一気に多数の隕石の由来が明らかになってきたという報告がありました。


 隕石は、地球外の天体から由来していることは、よく知られています。隕石が由来した天体を「母天体」と呼びます。隕石が、どの母天体から由来したかは不明でした。わからない理由は、いくつかあります。
 まず、隕石が地球に落下するには、地球軌道と隕石の軌道が交差しなければなりません。母天体の軌道からはずれて、落下する軌道に移動しなければなりません。その変化は、最近起こった現象です。なぜなら地球は45億年前に誕生したので、古くに存在していた隕石は、その間に衝突しているはずです。落下する隕石は、最近(とはいっても地質学的で、人類が科学的観測をするよりずっと前のこと)、地球と交差する軌道に移動したことになります。
 隕石のような軌道変更の現象は、天体同士の衝突によります。衝突で飛び散った破片のうち、地球軌道と交差するものが隕石になったと考えられます。
 激しい衝突なら、両天体は破壊されたかもしれません。天体の深部で形成されたような隕石(鉄隕石、石鉄隕石など)も見つかっているので、天体が壊れてしまうような激しい衝突もあったこともわかっています。
 小規模な衝突として、もとの天体同士の接触程度なら、ほんの一部が破片として飛び散るはずです。あるいは、大きな天体と小さい天体なら、小さい天体が破壊されて破片となって、飛び散ることになります。もとの天体の一部分や、破壊された天体から由来した母天体を、確定するのは困難でしょう。
 2つ目の理由は、現在見つかっている隕石の種類が非常に多様で、数も多くなっています。現在、隕石は6万個ほど見つかっています。種類は大別すると石質隕石(ケイ酸塩鉱物からできている)、鉄隕石(鉄とニッケルの合金の金属からできている)、そして石鉄隕石(石質と鉄隕石の混じったものと)の3種ですが、詳しく調べていく50種から60種ほどに細分されています。
 これだけの種類の母天体があったわけではなく、ひとつの天体でも、多様な種類の岩石があるので、母天体が種類の数だけあったことを意味するわけではありません。しかし、研究から、明らかの異なった母天体でないとできない隕石の種類も見つかっています。
 一方、同じ種類の隕石であっても、由来した母天体が異なっていることもあるはずです。似た成長過程をへた天体や、似た岩石が溶けて似た火成作用があれば、似た岩石が形成されます。
 以上のことから、そのため隕石と母天体の関係が非常に複雑になり、由来関係を求めるのは難しくなります。隕石の種類、落下時期、落下場所などを考える、母天体は多種多数あったと想定されます。ですから、ある隕石が由来した母天体の関係を見つけるのは、非常に困難になります。
 しかし、そんな関係を一気に明らかにできたという報告がでました。次回以降にしましょう。

・冷え込み・
10月になっても、まだ暖かい日が
続くなと思っていたら
先週後半から、一気に冷え込みました。
週末には、今シーズンで
はじめてストーブをたきました。
例年、シーズン初めのストーブは
つけてもすぐに室内が暖まり
つけたり消したりをしていることが多かったです。
しかし、今回は、夕食前につけて
夜寝るまでつけていました。
一気に秋が深まってきました。
そういえば、先日早朝、
北から渡り鳥の群れが飛んているのを見かけました。
白鳥の親子も畑で休んでいるの見ました。
渡りの季節ともなりました。

・里帰り・
このメールマガジンは予約配信しています。
前日まで、里帰りしているためです。
この時期に里帰りすることにしました。
墓参りを兼ねた墓掃除です。
3泊するのですが、
行きが千歳から関西空港で、
京都に2泊します。
帰りが神戸空港からなので
神戸に一泊することにしました。
神戸は、はじめての滞在なので、
本来なら、あちこち見て回りたいのですが、
夫婦共々高齢になってきているので
無理をしないように行動しようと考えています。

2025年10月16日木曜日

4_199 十勝の休暇 2:ガーデン巡り

 北海道は、冬には雪に覆われ、植物は楽しめません。その代わり、夏には緑や花を大いに楽しみます。近所でも、庭の手入れをしている家も、多数あります。それが昂じて、カーデンとして一般公開していることもあります。


 十勝周辺には、多数のガーデンと名付けられている観光庭園があります。広大な敷地なので、ゆっくりと見て回ると、午前中いっぱいかけても見きれないほどです。私たち夫婦は、高齢なので、無理をしないようにしていました。
 十勝では、紫竹(しちく)ガーデン、真鍋庭園、十勝ヒルズ、十勝千年の森、六花の森、中札内美術村庭園の6つが大きくな施設となり、手入れもいき届いています。幸いないことに、3つの施設が格安に入園できる「とかち花めぐり共通券」があったので、それを利用して巡りました。このチケットで、六花の森、中札内美術村庭園、十勝ヒルズを巡りました。さらに、紫竹ガーデンも訪れました。
 六花の森と中札内美術村庭園は、以前にも訪れたことがあったのですが、素晴らしいので、今回も再度訪れました。そして、六花の森と中札内美術村庭園は、食事も兼ねて、2度訪れました。
 紫竹ガーデンは、当初63歳の紫竹昭葉さんが、15000坪の土地を見つけて、一人でこつこつの作り上げられたそうです。今では、観光庭園として多くの人が訪れています。今でも手作り感のあり、手入れが続けられているガーデンとなっています。十勝ヒルズは、7万坪の広大な敷地で、企業が観光庭園として開発したものです。企業なので、各所に見どころをつくって、楽しめるガーデンとなっていました。
 それぞれのガーデンには個性があり、見どころも違っているので、のんびりと長時間見ても飽きることはありませんでした。以前のような急ぐ旅では、こんなガーデン巡りはできなかったでしょう。長期滞在して、のんびりとしているからできたことだと思います。
 六花の森には、何度もできれば毎日訪れたいと思いました。シーズン券も販売されていたので、それにしようか迷ったのですが、安さにつられてついつい共通券にしたのが悔やまれました。
 これらのガーデンには、初夏から夏にかけてが、花も多く美しく、多くの人が訪れます。9月下旬だと、花も少なく、紅葉にも早かったので、観光客も少なめだったようです。そのおかげで、のんびりと見ることができました。特に、六花の森と中札内美術村には、庭園内に美術館や彫刻が各所にあり、思わぬところに彫刻があったりで楽しめます。また、好きな作家の美術館もあったので、じっくりと見ることができました。六花亭と中札内美術村庭園には、レストランもあり、昼食も楽しみました。

・インデアンカレー・
帯広には、インデアンカレーという
チェーン店があります。
帯広出身の学生から、帯広の人にとっては、
ソールフードであると聞いていました。
普通のカレー屋さんに見えますが、
ここでは、カレーのルーだけでも販売しています。
カレーのルーを入れるための鍋をもっていくと
その分割引もがあり、良心的です。
二度、別々の店を訪れ、
違ったカレーを食べました。
毎回、多数の人で混んでいました。
もちろん、美味しかったです。

・六花亭・
六花亭は製菓メーカーで
洋菓子も和菓子もつくっています。
個別包装のものを、2個ずつ
いろいろな種類を買い込みました。
でもやはり、六花亭といえば、
マルセイバターサンドでしょうか。
もちろん、土産としても買って帰りました。
それぞれの店でオリジナル商品があります。
六花の森では、マルセイバターサンドの
夏限定のアイス版とブルーベリーがありました。
食事のあとに、夫婦で一つずつ買い
シェアーして味わいました。

2025年10月9日木曜日

4_198 十勝の休暇 1:のんびりと

 十勝平野の小さな村に、1週間滞在しました。今後も、できれば、このようなゆっくりと滞在するような旅をしたいと考えています。のんびりとした気分でお読みください。


 9月中旬、1週間の休暇を取り、夫婦で十勝平野の片隅で滞在しました。十勝平野には、これまで地質調査で各地に何度も訪れていました。宿泊も各地でしていたのですが、野外調査の目的地があったので、通りすがりに、時間があれば観光地を見ていたのですが、落ち着いてみることはありませんでした。
 今年春に退職してからは、野外調査を主たる目的としないこと旅行をすることにしました。初夏には沖縄に、夏には知床にでかけました。これらの旅でも、何度も訪れているところだったのですが、夫婦二人の体力や体調に合わせて、のんびりと見て回ることができました。
 今回の十勝は、小さな村に滞在して、あまりあちこちへ動き回ることなく、のんびりすることにしました。在中は、幸い天気に恵まれていました。晴れの日が多く、夜半や午後に雨が降ることはあったのですが、早朝から午前にかけては、降られずにすみました。
 いつもの生活習慣で、早朝に起きていました。起きても、妻はまだ寝ています。習慣である早朝の散歩をしました。小さな村の中を、1時間弱ほど毎日、ルートを変えながら歩きました。知らない場所での散歩は、物珍しところばかりで、楽しかったです。十勝の広大な畑、その中に残された鉄道林、防風林や並木など、これぞ北海道と思える景色が各地に広がっていて、心地よい気分に浸りました。早朝の散歩していると、何人もの人に会いました。
 どこか一箇所を見てまわり、美味しそうな店を探して昼食をとることしました。地元の名産や小さいの名店で、いろいろなものを食べることができました。午後は早めに近所の店で買い物をして帰ってきました。夕方前には、もどってのんびりとしていました。朝夕は、自炊をしていました。
 午前中には、近隣の主に美術館、博物館、庭園などを見学することにしました。落ち着いてみていくと、これまで通りすがり気づかずにいた見どころも、多数あることに気づきました。あるいは、その存在は知っていても、中まで見ることなく、素通りしていたものもあったのですが、落ち着いてのんびりと見ると、それぞれのいいところを味わっていくことができました。
 少し滞在していると、その地をより詳しく見ることができ、通りすがりの旅人ではない見方できるような気がします。次回は、巡った博物館や美術館をいくつか紹介しましょう。

・紅葉も違って見える・
10月になり、紅葉がはじまりました。
これまでなら、講義で、
落ち葉を使っていたので、
その年の紅葉や落ち葉のぐわいが
すごく気になっていました。
今年からは、講義はないので、
ただ、季節の移ろいとして
紅葉を楽しむことができます。
同じ紅葉でも、見る側の心持ちが変わると、
違ってみてきます。

・開拓民・
十勝平野は、明治以降から開拓され
長く開拓は継続していきました。
現在では、機械化された
一大農耕地帯となりました。
開拓民の苦労のあとも、残されています。
開拓民の中には、芸術家や文筆家もいて、
苦労が芸術として残されていました。
そんな様子も美術館や博物館で
見ることができました。

2025年10月2日木曜日

5_211 惑星形成 4:最後のなぜ

 このシリーズでは、eDiskと呼ばれる、アルマ望遠鏡を用いた大きな研究プロジェクトを紹介してきました。論文の概要から浮かんできたいくつかの疑問があり、そこから概要をみてきました。研究は現在も継続中です。


 このシリーズでは、なぜ多数の星(19個)の星を、なぜ高精度で、なぜ太陽系近傍(650光年以内)の星を調べているのか、についてはすでに説明してきました。今回は、最後に残った、「なぜ、星形成開始から1~10万年程度の初期段階の星を調べるのか」、について紹介していきましょう。
 これまで、アルマ望遠鏡を用いても、原始星や原始惑星系円盤は、個別に調べられてきました。詳細な観測の結果、形成100万から1000万年ほど経過した原始惑星系円盤では、同心円状のリングがあり、その間に隙間がある構造が見えてきました。この隙間は、円盤の軌道に存在した物質を、惑星が成長しながら集めていき、すべて取り込んだため、できたと考えられました。つまり、恒星の形成から、100万年ほどで惑星系ができると考えられます。
 これまでの観測では、できたての原始星(恒星)の周囲では、惑星形成がほとんど見られず、恒星形成の10万年ころから一気に進んでいき、100万年くらいで終了すると考えられます。10万年以降が、惑星の形成から成長の時期となります。
 eDiskでは、「初期惑星形成」を目的としているため、惑星系のできはじめの観測が重要になります。そのため、星形成開始から10万年より前、1~10万年の時期の天体を観測することになりました。19の天体が観測されました。
 観測した結果、原始星の周囲には円盤が存在しているのですが、惑星系形成の兆候となるリングや隙間の形成は、進化の進んだいくつかの原始星だけでのみ見られました。しかも、非常に淡いものでした。そして、チリはまだ円盤面に集まっておらず、広がっていました。
 ここでいうチリとは、惑星空間に漂っている固体物質で、集まることで惑星の材料になります。惑星形成が進むには、軌道面にチリが集まりながら惑星が成長するか、チリが集まってから成長がはじまるかどちからになります。
 以上の観測から、原始惑星系では、まず円盤面にチリが落ちて集まってから、円盤面で軌道周辺の物質が集まることになりそうです。円盤でのリングや隙間の形成より、塵の沈殿が先行することになります。
 一見小さな差に見えますが、観測でわかったことは重要です。シミュレーションに対して重要な束縛条件を与えたことになるためです。この条件を満たさないシミュレーションの結果は、受け入れられないことになります。
 このシリーズでは、大きな研究プロジェクトのeDiskの最初の論文を紹介しました。概要から考えられるいくつかの疑問から、この研究プロジェクトの意義を紹介してきました。この論文以降も多数の論文がすでに公開されています。そして、今後も重要な成果が報告されていくことでしょう。

・集中力・
講義がはじまりました。
講義の事前準備、レジメの印刷という
作業が日々のルーティンに組み込まれました。
これまで、講義のないときは
校務がなく研究に専念できました。
そのため、一日中、論文執筆ができるのですが
集中力が続かないときが増えました。
それが、講義のというルーティンが加わったので
日常に変化ができるようになりました。
講義のルーティンのない日に
集中力が続くかどうかは
まだ未定ですが。

・人間ドック・
今週は、人間ドックにいきました。
在職中から、毎年いくようにしていました。
結果がもらえるのは、少し先です。
人間ドックは在職中の指定病院があり
隣町の病院で受診していました。
調べると、わが町の市立病院でも
人間ドックを実施していました。
検査内容も費用もほぼ同じでした。
なにより、長年のデータが蓄積されているので
これまでかかってきた病院にいくことにしました。
多分、来年も同じところになるでしょう。

2025年9月25日木曜日

5_210 惑星形成 3:いくつかのなぜ

 今回紹介している論文は、大きなプロジェクトの概要報告となっています。この論文以降、多数の研究成果が報告されています。この論文から、目的や成果を紹介していきましょう。


 今回紹介している論文は、大橋永芳さんら36名の共同研究によるもので、2023年7月に公開されました。論文のタイトルは、
Early Planet Formation in Embedded Disks (eDisk). I. Overview of the Program and First Results
(原始惑星系円盤における初期惑星形成(eDisk)。 I 研究プログラムの概要と最初の成果)
となっています。この論文に続いて、続々と成果が公表されています。その成果を調べていくと、2025年8月12日現在で、22編が公開されたり、投稿中になっています。今後も報告は続いていくのでしょう。
 eDiskは、非常に大規模に、多くの目的をもった研究プログラムになっています。最初の報告として、全貌をまとめたのが、今回の論文となっています。
 このeDiskプログラムでは、形成初期の段階(星形成開始から1~10万年程度)の地球の近傍に位置する19の原始星を、高い解像度で観測しました。しかし、概要には、いくつかのなぜ(疑問)があります。
 なぜ19個という多数の星を、なぜ高精度で、なぜ太陽系近傍の星を、なぜ初期段階のものだけを調べるのか、などがあります。それらについて見ていきましょう。すると今回の研究の概要も把握できそうです。
 なぜ、多数の星(19個)を調べているのでしょうか。
 惑星形成を調べる時、形成途上にある惑星系を観測することになります。ある観測では、ある時期の、ある段階の惑星系の状態を調べることなります。その観測は、ある段階にある様子だけを調べていることになり、形成過程や時系列の変化を見ているわけではありません。形成過程を調べるには、惑星系のさまざまな形成段階にあるものを、調べて、並べて比較していく必要があります。そのため19個の惑星系が調べられることになりました。
 なぜ高精度で、なぜ太陽系近傍(650光年以内)の天体を調べているのでしょうか。
 詳細な観測の必要なのは、原始惑星円盤内で起こっている過程を見ていかなければなりません。円盤内での惑星は小さいので、高精細の観測でないと検知することができません。形成中の惑星を詳細に調べる研究は、すでにいくつかでなされていました。しかし、似た段階にある、多数の惑星系で、原始惑星が検知できるほどの高精細での観測は、これまでなされていませんでした。
 今回の研究の精度は、0.04秒角という解像度です。この解像度は、人間の肉眼は約1分角(60秒角)なので、その1500倍の精度になりますが、想像がつかないですね。650光年以内の天体を対象にしていますので、太陽系における木星軌道スケールの惑星形成の痕跡が見える精度になります。この位置より近い天体ならば、原始惑星系円盤の中にある隙間やリング構造を、直接見分けられる精度になります。
 では、なぜ、1~10万年という初期の段階の星を調べるのか、については次回にしましょう。

・休暇・
先週まで、十勝の方に1週間滞在しました。
できれば毎年、このような休暇を
とりたいと思っていますが、
なかなかできていませんでしたが、
久しぶりにできました。
同じところに、1週間も滞在していると、
その地で見るべきところは
一通り見てまわることができます。
気に入ったところを見つけ、
何度か訪れることになります。
再訪も楽しいものです。
また、美味しいお店も見つられると
もっと楽しいものになります。

・後期のスタート・
今週から講義がはじまります。
後期は、2科目を一日の午前中に連続して
実施することにしました。
体力を使いそうですが、
以前にも実施していたので
なんとかなるかと思っています。
久しぶりの講義再開で、
緊張感ももちながらも
なんとなくワクワクしています。
現役のころは、このようなワクワクする
気持ちにはならなかったですね。
なぜでしょうかね。

2025年9月18日木曜日

5_209 惑星形成 2:アルマ望遠鏡

 今回の研究は、チリの高原の砂漠にあるアルマ望遠鏡を用いています。そんな僻地に最先端のアンテナが設置されています。それにには理由があり、その利点を活かした観測のプロジェクトが実施されました。


 今回のシリーズで紹介している研究は、台湾中央研究院の大橋永芳さんたちの国際グループで実施されました。アルマ望遠鏡を用いてなされた大規模プログラム(eDisk:Early Planet Formation in Embedded Disks 包埋円盤内での初期惑星形成 という名称で呼ばれています)として実施されました。
 そもそもアルマ望遠鏡のアルマとは、ALMA(Atacama Large Millimeter/submillimeter Arrayアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)の頭文字からとっています。
 チリ北部アタカマ砂漠で、標高5000メートルもの高地に、2002年から建設がはじまり、未完ですが2011年から科学観測が開始されました。2014年6月に全てのアンテナが到着し、12メートルのパラボラアンテナ54台と、7メートルのパラボラアンテナ12台の合計66台という構成が完成しました。いくつか、あるいはすべてを1個のアンテナとして機能させることで、1つの巨大な電波望遠鏡として観測ができる電波干渉計です。
 ミリ波・サブミリ波の観測は、大気中に酸素分子(O2)や水蒸気(H2O)に水分があると吸収されていきます。アタカマ砂漠は、標高が高く、水分が少ないので、ミリ波・サブミリ波の観測に適した地域になります。
 干渉計とは、複数の電波望遠鏡(アンテナ)を離れた場所に設置して、同じ天体を同時に観測して信号を合成する装置です。解像度は、個々のアンテナの直径ではなく、組み合わせたアンテナ全体を最大の長さ(最大基線長と呼ばれる)によって決まっていきます。ですから、多数のアンテナを組み合わせることで、ひとつのアンテナではえられない高い解像度を達成できます。
 干渉計方式の電波望遠鏡では、アンテナの間隔を広げれば広げるほど解像度が上がりますが、視野(見える範囲)は狭くなります。広がった天体を観測するためには、アンテナの間隔を小さくする必要があります。目的に応じて、アンテナの組み合わせで、基線長を調整していく必要があります。
 アルマ望遠鏡は、原始惑星系円盤のような温度が低いガスや塵の分布を詳細に観測したり、構成分子を調べるに適した装置になります。そして観測環境も適しています。そんなアルマ望遠鏡を用いて、eDiskプロジェクトが進めれました。その内容は次回以降にしましょう。

・後期の講義・
後期の講義は、来週からはじまります。
担当している講義は2つで、
木曜日の1、2校時に連続して
実施することにしました。
連続しているので、
少々疲れるかもしれません。
若い学生たちと接するのは
大変さもありますが、
楽しみにもしています。

・ホッとして・
このエッセイは、休暇から戻って来た
翌日なので、予約配信としています。
北海道は、秋めいてきました。
朝夕は涼しくなりました。
朝、歩いてくるときは
上着が必要になってきました。
暑いのは、苦手なので
秋めいてくるとホッとします。