2025年10月2日木曜日

5_211 惑星形成 4:最後のなぜ

 このシリーズでは、eDiskと呼ばれる、アルマ望遠鏡を用いた大きな研究プロジェクトを紹介してきました。論文の概要から浮かんできたいくつかの疑問があり、そこから概要をみてきました。研究は現在も継続中です。


 このシリーズでは、なぜ多数の星(19個)の星を、なぜ高精度で、なぜ太陽系近傍(650光年以内)の星を調べているのか、についてはすでに説明してきました。今回は、最後に残った、「なぜ、星形成開始から1~10万年程度の初期段階の星を調べるのか」、について紹介していきましょう。
 これまで、アルマ望遠鏡を用いても、原始星や原始惑星系円盤は、個別に調べられてきました。詳細な観測の結果、形成100万から1000万年ほど経過した原始惑星系円盤では、同心円状のリングがあり、その間に隙間がある構造が見えてきました。この隙間は、円盤の軌道に存在した物質を、惑星が成長しながら集めていき、すべて取り込んだため、できたと考えられました。つまり、恒星の形成から、100万年ほどで惑星系ができると考えられます。
 これまでの観測では、できたての原始星(恒星)の周囲では、惑星形成がほとんど見られず、恒星形成の10万年ころから一気に進んでいき、100万年くらいで終了すると考えられます。10万年以降が、惑星の形成から成長の時期となります。
 eDiskでは、「初期惑星形成」を目的としているため、惑星系のできはじめの観測が重要になります。そのため、星形成開始から10万年より前、1~10万年の時期の天体を観測することになりました。19の天体が観測されました。
 観測した結果、原始星の周囲には円盤が存在しているのですが、惑星系形成の兆候となるリングや隙間の形成は、進化の進んだいくつかの原始星だけでのみ見られました。しかも、非常に淡いものでした。そして、チリはまだ円盤面に集まっておらず、広がっていました。
 ここでいうチリとは、惑星空間に漂っている固体物質で、集まることで惑星の材料になります。惑星形成が進むには、軌道面にチリが集まりながら惑星が成長するか、チリが集まってから成長がはじまるかどちからになります。
 以上の観測から、原始惑星系では、まず円盤面にチリが落ちて集まってから、円盤面で軌道周辺の物質が集まることになりそうです。円盤でのリングや隙間の形成より、塵の沈殿が先行することになります。
 一見小さな差に見えますが、観測でわかったことは重要です。シミュレーションに対して重要な束縛条件を与えたことになるためです。この条件を満たさないシミュレーションの結果は、受け入れられないことになります。
 このシリーズでは、大きな研究プロジェクトのeDiskの最初の論文を紹介しました。概要から考えられるいくつかの疑問から、この研究プロジェクトの意義を紹介してきました。この論文以降も多数の論文がすでに公開されています。そして、今後も重要な成果が報告されていくことでしょう。

・集中力・
講義がはじまりました。
講義の事前準備、レジメの印刷という
作業が日々のルーティンに組み込まれました。
これまで、講義のないときは
校務がなく研究に専念できました。
そのため、一日中、論文執筆ができるのですが
集中力が続かないときが増えました。
それが、講義のというルーティンが加わったので
日常に変化ができるようになりました。
講義のルーティンのない日に
集中力が続くかどうかは
まだ未定ですが。

・人間ドック・
今週は、人間ドックにいきました。
在職中から、毎年いくようにしていました。
結果がもらえるのは、少し先です。
人間ドックは在職中の指定病院があり
隣町の病院で受診していました。
調べると、わが町の市立病院でも
人間ドックを実施していました。
検査内容も費用もほぼ同じでした。
なにより、長年のデータが蓄積されているので
これまでかかってきた病院にいくことにしました。
多分、来年も同じところになるでしょう。