宇宙からの地球の探査技術を、軍事目的の衛星まで含めてみていきます。どれほどの技術を、私たち人類が持っているのか紹介します。
これまで紹介した宇宙からの探査方法は、一般的なもので、民間人がだれでも使えるものでしたす。実際の技術はもっと進んでいます。前回紹介したイコノスは、地上の解像度は1mでした。それ以上のものが現実は実用化されています。
2001年10月18日に、アメリカのバンデンバーグ空軍基地から打ち上げられたクイックバード2(QuickBird)は、商用の地球観測衛星です。クイックバードの地上での分解能は61cmです。地上に人がいるかどうかが見分けられます。例えば、サッカーの試合を宇宙から見れば、選手がどこにいるかがわかるのです。その精細な画像は、時々ニュースに使われています。
これは民間の技術ですが、軍事技術はもっと進んでいます。軍事衛星として利用されているものには、偵察衛星とか探索衛星(スパイ衛星)と呼ばれるものがあります。
日本も情報収集衛星(IGS)を、2003年3月に打ち上げをしています。この衛星は、解像度1mの光学衛星とレーダー衛星の2機1組が同時に打ち上げられています。2003年11月29日にも2号機打ち上げようとしましたが、HIIAロケット6号機の失敗によりだめになりました。しかし2006年9月11日には、光学衛星の2号機が打ち上げられています。情報収集衛星は、4号機までの打ち上げが予定されています。
光学衛星の地上の解像度は1mとされています。しかし、その解像度を満たしていないとの報道もあり、問題になりました。情報収集衛星は、法律の上では「我が国の安全の確保、大規模災害への対応その他の内閣の重要政策に関する画像情報の収集を目的とする人工衛星」(内閣官房組織令第4条の2第2項)と定義されているので、災害対策や防災のために国民に公開されていいはずなのですが、そうはなっていません。明らかに軍事(日本では防衛でしょうか)として利用することが主な目的のようです。
他国の軍事や防衛目的の衛星も、その性能は公開されていません。詳細は不明なのですが、推定によると探索衛星では約15~20cmの解像度が今や標準の解像度となっているようです。最高性能では、地上にある10cmほどのものも見分けることができるレベルに達しているようです。ここまで性能が上がれば、装甲車なのか普通車なのかや民間人か軍人かはもちろん、男か女かの見分けすらできかもしれません。
北朝鮮の核実験の時も、アメリカの軍部や日本の首脳部は、探査衛星からの情報を得ているはずです。その内容は非公開です。相手のことをどこまで知っているかは、戦略上重要な秘密となりますから、明かすことはできないのは理解できます。でも、早くこのような衛星のデータを、民間で自由に使えるようになればと思います。
膨大な国家予算が投入されて、軍事技術の開発が進められます。民間が費用の関係で開発できないものでも、国家規模では開発することができます。もちろん、時間がたてば、民間でも技術的に追いつくかもしれませんが、やはり無駄が多いと思います。
アメリカでは、軍事技術の転用が可能となったため民間でイコノスが打ち上げれ運用されています。自由に利用できるようなればいいのですが、なかなか難しいものです。平和なら軍事費は必要なくなり、軍事目的の技術開発はなされません。とはいっても本当に必要なら人類の智恵で開発されるはずです。そしてそこで得られたものは、人類共通の知的資産というべきものですから、平和に利用するのが一番でしょうね。
・人類共通の資産・
宇宙から調べるシリーズの4回目の今回は、
軍事衛星の話になりました。
少々きな臭い話題ですが、これも現実に存在するものです。
そこで開発された技術やいらなくなった情報は
自由に使えるようにならないでしょうか。
いつものそれを思います。
戦略的に重要なのはわかりますが、
もし敵国があり、本当に探り合っているのであれば、
こちらの技術や能力は、ほとんど分かっているのではないでしょうか。
分かって上で、人材や能力、資金力に応じた戦略がとられるはずです。
資金力のない国は、ゲリラ戦や
北朝鮮のような非常に巧妙な挑発(?)戦略など
別の戦い方をするはずです。
ですから、軍事技術はどこまで本当に必要なのか、
投資対効果は本当にあるのか、そんなことを考えてしまいます。
すべて、人類が知力を絞って得たものです。
それを人類共通の資産とできないのは悲しいものです。
・健康第一・
北海道はここ数日ぐっと冷え込んできました。
ストーブも、朝夕はほぼ毎日炊くようになりました。
先日の晴れた朝には、霜が降りました。
これから一気に冬に向かっていきます。
短い秋を味わいたいのですが、
家族がまたまた体調をくずしています。
ですから、いつ秋を眺めにいけるかがわかりません。
もしかすると、今年は秋を味わうことなく
雪の季節になるかもしれません。
それも寂しいのですが、
健康第一ですからしかたがありませんね。
2006年10月19日木曜日
2006年10月12日木曜日
5_54 宇宙から調べる3:Return to Earth
宇宙から地球を調べる技術は、市民に公開されるようになって来ました。そんな地球観測衛星の進歩を見ていきましょう。
宇宙から調べる技術は進歩しています。前回紹介したランドサットの地上を見分ける能力も、1973年に打ち上げられたときは80mの分解能でしたが、30mへ、そして1999年の7号では15mまで上がりました。高分解能へと進歩しています。
私が関係したものとして、アスター(ASTER)というものがあります。アスターは、EOS計画の一環のテラ(Terra)という衛星に搭載されています。テラは、1999年に米国カリフォルニア州のバンデンベルグ空軍基地から打ち上げられました。日本とアメリカが共同運用をしています。
アスターの分解能は15mで、ランドサットと変わりません。しかし、真下を撮影する望遠鏡と後を撮影する望遠鏡を備えています。同じ地域を違う角度で撮影することができます。この両画像で、立体視ができます。そこから標高データを作成することができます。標高データも15mの分解能を持ち、地上分解能ではなく、空間分解能という性能となりました。
最近では、日本が開発した陸域観測技術衛星の「だいち」があります。2006年1月24日10時33分に、種子島宇宙センターから打ち上げられたH-IIAロケット8号機(H-IIA・F8)に「だいち」(ALOS)は搭載されていました。その特徴は、パンクロマティック立体視センサー(PRISM)とよばれるもので、前方、直下、後方の3方向を同時に撮影します。その分解能は2.5mというものです。
また、一般市民が使用できるものとして、イコノス(IKONOS)という衛星があります。アメリカの規制緩和により、偵察衛星技術を民生用に転用されたものです。商用観測衛星として、1999年9月25日にイコノス衛星が打ち上げられました。2000年1月よりデータの提供がされており、1mの分解能をもっています。1mの解像度とは航空写真に匹敵します。その精度を高度680kmから達成しているのです。その精度は、東京から、函館や広島にいる人が見えるというものです。驚異的です。
地球外の宇宙は、人類にとって新たな新天地でした。月を筆頭に、火星や金星などへ、人々は思いを馳せてきました。
月へ向かったアポロから撮影された地球、月面から見た地球は、青く美しく、そしてかけがえのないものであることが多くの人に思い起こさせました。そして、今では、宇宙から地球を観測するということが、より一層進められています。これは、既存の宇宙へ行く技術と、望遠鏡の技術、そしてデジタル技術が協力して進歩してきたものです。
宇宙からの観測が、何を明らかにしてきたのか、何を明らかにしようとしているのか、それは次回としましょう。
・地球へ・
人は、宇宙にあこがれてきました。
20世紀になって、智恵と技術が、宇宙への夢をかなえました。
宇宙にいって初めてしたのは、
宇宙から地球を眺めるということでした。
宇宙から眺めた地球は、
暗い宇宙空間の中にある青い天体とみえました。
最初に宇宙を眺めた旧ソビエトのガガーリンも
「地球は青かった」という名言を残しています。
宇宙空間に浮かぶ儚げな地球を見れば、
誰もが、そこは私たちの母星であり、
愛おしさを感じるはずです。
科学者たちは、そんな地球をもっと知りたいと考えました。
そんな宇宙からの探査技術が、科学者の夢も同時に叶えました。
現在は多くの人工衛星が地球の周りを巡って、地球を見ています。
・宇宙と人のはざまにて・
私は、アスターの画像を利用して、
1年間メールマガジンとホームページで
科学教育の実験的研究をしていました。
私が持っている地表の画像と、
私が見聞きしたその地の感想、
そしてアスターの衛星画像をまとめて紹介するというものです。
アスターの日本側の運営管理母体である
ERSDACという組織との共同研究という形でした。
毎月1回メールマガジンを発行してました。
選択した地域は、日本を6ヶ所、海外を6ヶ所ということになりました。
もし興味のある方は、
「地球:宇宙と人のはざまにて」
http://www.ersdac.or.jp/Others/geoessay_htm/index_geoessay_j.htm
を覗いてみてください。
宇宙から調べる技術は進歩しています。前回紹介したランドサットの地上を見分ける能力も、1973年に打ち上げられたときは80mの分解能でしたが、30mへ、そして1999年の7号では15mまで上がりました。高分解能へと進歩しています。
私が関係したものとして、アスター(ASTER)というものがあります。アスターは、EOS計画の一環のテラ(Terra)という衛星に搭載されています。テラは、1999年に米国カリフォルニア州のバンデンベルグ空軍基地から打ち上げられました。日本とアメリカが共同運用をしています。
アスターの分解能は15mで、ランドサットと変わりません。しかし、真下を撮影する望遠鏡と後を撮影する望遠鏡を備えています。同じ地域を違う角度で撮影することができます。この両画像で、立体視ができます。そこから標高データを作成することができます。標高データも15mの分解能を持ち、地上分解能ではなく、空間分解能という性能となりました。
最近では、日本が開発した陸域観測技術衛星の「だいち」があります。2006年1月24日10時33分に、種子島宇宙センターから打ち上げられたH-IIAロケット8号機(H-IIA・F8)に「だいち」(ALOS)は搭載されていました。その特徴は、パンクロマティック立体視センサー(PRISM)とよばれるもので、前方、直下、後方の3方向を同時に撮影します。その分解能は2.5mというものです。
また、一般市民が使用できるものとして、イコノス(IKONOS)という衛星があります。アメリカの規制緩和により、偵察衛星技術を民生用に転用されたものです。商用観測衛星として、1999年9月25日にイコノス衛星が打ち上げられました。2000年1月よりデータの提供がされており、1mの分解能をもっています。1mの解像度とは航空写真に匹敵します。その精度を高度680kmから達成しているのです。その精度は、東京から、函館や広島にいる人が見えるというものです。驚異的です。
地球外の宇宙は、人類にとって新たな新天地でした。月を筆頭に、火星や金星などへ、人々は思いを馳せてきました。
月へ向かったアポロから撮影された地球、月面から見た地球は、青く美しく、そしてかけがえのないものであることが多くの人に思い起こさせました。そして、今では、宇宙から地球を観測するということが、より一層進められています。これは、既存の宇宙へ行く技術と、望遠鏡の技術、そしてデジタル技術が協力して進歩してきたものです。
宇宙からの観測が、何を明らかにしてきたのか、何を明らかにしようとしているのか、それは次回としましょう。
・地球へ・
人は、宇宙にあこがれてきました。
20世紀になって、智恵と技術が、宇宙への夢をかなえました。
宇宙にいって初めてしたのは、
宇宙から地球を眺めるということでした。
宇宙から眺めた地球は、
暗い宇宙空間の中にある青い天体とみえました。
最初に宇宙を眺めた旧ソビエトのガガーリンも
「地球は青かった」という名言を残しています。
宇宙空間に浮かぶ儚げな地球を見れば、
誰もが、そこは私たちの母星であり、
愛おしさを感じるはずです。
科学者たちは、そんな地球をもっと知りたいと考えました。
そんな宇宙からの探査技術が、科学者の夢も同時に叶えました。
現在は多くの人工衛星が地球の周りを巡って、地球を見ています。
・宇宙と人のはざまにて・
私は、アスターの画像を利用して、
1年間メールマガジンとホームページで
科学教育の実験的研究をしていました。
私が持っている地表の画像と、
私が見聞きしたその地の感想、
そしてアスターの衛星画像をまとめて紹介するというものです。
アスターの日本側の運営管理母体である
ERSDACという組織との共同研究という形でした。
毎月1回メールマガジンを発行してました。
選択した地域は、日本を6ヶ所、海外を6ヶ所ということになりました。
もし興味のある方は、
「地球:宇宙と人のはざまにて」
http://www.ersdac.or.jp/Others/geoessay_htm/index_geoessay_j.htm
を覗いてみてください。
2006年10月5日木曜日
5_53 宇宙から調べる2:ランドサット
科学技術の進歩は、今まで人が思いもしなかったものを見せてくれます。そんな進歩の成果をみて、人は新たな世界観を持っていくようになります。
離れれば、より広く眺めることができます。地形でも、人の手の届くところから眺めるより、後に下がって眺めれば、より広く見えます。しかし、人が離れるにも限度があります。ですから、上空からみるという手段がとられています。
かつては、上空からみるとは、地図を見るということでした。より広範囲をみるということは、より上空から、つまりより大縮尺の地図を見るということです。
ところが、離れるにしたがって、細かいところが見えにくくなります。離れれば見えにくくなるということは、日常生活でも感じることで、しかたがないことです。視力には限界があります。地図でも同じで、同じ大きさにより広い範囲を書き込もうとすると、細かい情報は省かなければなりません。
遠目でより広域を眺めるということは、細かい部分の情報を捨ててしまうことです。
しかし、この一見当たり前にみえる情報を間引き現象を、現在の科学技術は、覆そうとしています。遠く離れていても、詳しく見ようということです。情報を間引くことなく、必要な情報をもっと細かく保持して必要に応じて提示するということです。
遠く離れても、望遠鏡を使えば、近くにいるときに見た情報と同じようなレベルの情報を得ることができます。それを現在の地球観測衛星はおこなっています。望遠鏡の精度は、技術の進歩によって向上していきます。つまり、同じほど離れていても、より詳細な情報を得られるということです。
地球観測衛星の中でもアメリカのNASAが打ち上げたランドサットは、非常に有名です。多くの人は、ランドサットとは知らないで、その画像を目にしているはずです。
ランドサット1号は、1973年7月23日に打ち上げられ、その後6台の後継機が打ち上げれました。ランドサット6号は、1993年10月5日打ち上げられましたが、軌道投入に失敗しています。1999年4月15日打ち上げランドサット7号が、現在も運用中です。さらに、1984年打ち上げられたランドサット5号は、現在も運用中で、20年以上にわたって利用されています。6台のランドサットから得られた大量の画像で、地球を覆う画像が作成されています。それは全地球を覆う画像が、解像と時期の違いで、2種類が、無料で公開されています。
ランドサットは、高度700kmのあたりを、地球を北極から南極を通る縦の軌道を、約100分で1周回っています。幅185km、縦170kmの範囲を1回の撮影でカバーできます。関東平野なら1~2枚、日本列島も32枚の画像で覆うことができます。これほど広範囲を一度に撮影できるので、1枚のランドサット画像があれは、いろいろな地質、地形の情報が読み取れるはずです。
ランドサットに搭載されているセンサーは、地表から反射する電磁波を、波長ごとに記録していきます。現在のランドサットでは、7つの波長帯(バンド)が利用されています。8番目のバンドだけは、7つの波長帯と重複する広範囲の波長帯で高分解能のセンサーとなっています。
デジタルですので、画像の1ドット分が、地表ではどれほどの大きさになるかでそのカメラの性能を比べることができます。これを分解能と呼んでいます。かつてのランドサットは、80mの分解能がありました。地上で80m以上のものがあれば、見分けられるということです。ランドサット4号では、分解能が30mとなり、現在のランドサット7号のETM+というセンサーのバンド8では、15mの分解能を持っています。
700kmのかなたから15mもののを見分けられるのです。15mといえば、住宅が見分けられるというレベルです。ランドサット画像から自分の家を探すことが可能となります。我が家も見つけることができました。
700kmのかなたから15mもののを見分けられるすごさが、実感できないかもしれません。その威力は次のようなたとえをすれば分かってもらいやすいでしょうか。
東京駅から館山辺りにいる人が見える、あるいは富士山の山頂から江ノ島にいる人が見える、というレベルの分解能を持っています。その分解能で全地球を撮影しているということです。この情報が、だれでも自由にみることができるのです。
素晴らしいと思いませんか。しかし、現在の観測衛星はもっと高分解能となっています。その話は、次回としましょう。
・数値地図・
必要があって、ランドサット画像を日本のものを利用しました。
そのときに感じたのは、15mの解像度がすばらしいということです。
現在利用できる国土地理院の地図データでは、
2万5000分の1で日本全国が網羅されています。
国土地理院の標高データは50m四方の平均値を
出したもの(50mメッシュと呼ばれます)です。
国土地理院ではさらに5mメッシュも出していますが、
これは一部の都市部だけです。
あと有料ですが、北海道地図株式会社の10mメッシュあります。
15mのランドサット画像の分解能を活かすには、
10mメッシュか5mメッシュが必要です。
私は必要があって、北海道や関係している地域の
10mメッシュデータは入手していますので、
そのデータでランドサットの高解像度の画像を利用しています。
やはり感動します。
まるで近く景色を望遠鏡を使ったように
宇宙からでも見ることができるのです。
もし興味のある方は、
http://terra.sgu.ac.jp/geo_essay/index.html
を覗いてみててください。
・技術の進歩・
技術は進歩します。
観測衛星には、何種類かのセンサーが搭載されています。
年々そのセンサーは、観測する電磁波の周波数の分解能が上がったり、
地表の分解能を上げられたりしていきます。
その進歩は、ランドサットのセンサーの分解能の
変化をみていてもわかります。
80mから30m、そして15mへとなってきました。
同じ地域を、違った分解能で眺めると差は歴然としています。
一度高分解能で見てしまうと、低分解能の画像は、
特別な目的がない限り見る気になりません。
それほど分解能の差が、誰の目でも分かるということです。
そんな技術の進歩を目の当たりすると、
人類の智恵、技術の偉大さを感じます。
離れれば、より広く眺めることができます。地形でも、人の手の届くところから眺めるより、後に下がって眺めれば、より広く見えます。しかし、人が離れるにも限度があります。ですから、上空からみるという手段がとられています。
かつては、上空からみるとは、地図を見るということでした。より広範囲をみるということは、より上空から、つまりより大縮尺の地図を見るということです。
ところが、離れるにしたがって、細かいところが見えにくくなります。離れれば見えにくくなるということは、日常生活でも感じることで、しかたがないことです。視力には限界があります。地図でも同じで、同じ大きさにより広い範囲を書き込もうとすると、細かい情報は省かなければなりません。
遠目でより広域を眺めるということは、細かい部分の情報を捨ててしまうことです。
しかし、この一見当たり前にみえる情報を間引き現象を、現在の科学技術は、覆そうとしています。遠く離れていても、詳しく見ようということです。情報を間引くことなく、必要な情報をもっと細かく保持して必要に応じて提示するということです。
遠く離れても、望遠鏡を使えば、近くにいるときに見た情報と同じようなレベルの情報を得ることができます。それを現在の地球観測衛星はおこなっています。望遠鏡の精度は、技術の進歩によって向上していきます。つまり、同じほど離れていても、より詳細な情報を得られるということです。
地球観測衛星の中でもアメリカのNASAが打ち上げたランドサットは、非常に有名です。多くの人は、ランドサットとは知らないで、その画像を目にしているはずです。
ランドサット1号は、1973年7月23日に打ち上げられ、その後6台の後継機が打ち上げれました。ランドサット6号は、1993年10月5日打ち上げられましたが、軌道投入に失敗しています。1999年4月15日打ち上げランドサット7号が、現在も運用中です。さらに、1984年打ち上げられたランドサット5号は、現在も運用中で、20年以上にわたって利用されています。6台のランドサットから得られた大量の画像で、地球を覆う画像が作成されています。それは全地球を覆う画像が、解像と時期の違いで、2種類が、無料で公開されています。
ランドサットは、高度700kmのあたりを、地球を北極から南極を通る縦の軌道を、約100分で1周回っています。幅185km、縦170kmの範囲を1回の撮影でカバーできます。関東平野なら1~2枚、日本列島も32枚の画像で覆うことができます。これほど広範囲を一度に撮影できるので、1枚のランドサット画像があれは、いろいろな地質、地形の情報が読み取れるはずです。
ランドサットに搭載されているセンサーは、地表から反射する電磁波を、波長ごとに記録していきます。現在のランドサットでは、7つの波長帯(バンド)が利用されています。8番目のバンドだけは、7つの波長帯と重複する広範囲の波長帯で高分解能のセンサーとなっています。
デジタルですので、画像の1ドット分が、地表ではどれほどの大きさになるかでそのカメラの性能を比べることができます。これを分解能と呼んでいます。かつてのランドサットは、80mの分解能がありました。地上で80m以上のものがあれば、見分けられるということです。ランドサット4号では、分解能が30mとなり、現在のランドサット7号のETM+というセンサーのバンド8では、15mの分解能を持っています。
700kmのかなたから15mもののを見分けられるのです。15mといえば、住宅が見分けられるというレベルです。ランドサット画像から自分の家を探すことが可能となります。我が家も見つけることができました。
700kmのかなたから15mもののを見分けられるすごさが、実感できないかもしれません。その威力は次のようなたとえをすれば分かってもらいやすいでしょうか。
東京駅から館山辺りにいる人が見える、あるいは富士山の山頂から江ノ島にいる人が見える、というレベルの分解能を持っています。その分解能で全地球を撮影しているということです。この情報が、だれでも自由にみることができるのです。
素晴らしいと思いませんか。しかし、現在の観測衛星はもっと高分解能となっています。その話は、次回としましょう。
・数値地図・
必要があって、ランドサット画像を日本のものを利用しました。
そのときに感じたのは、15mの解像度がすばらしいということです。
現在利用できる国土地理院の地図データでは、
2万5000分の1で日本全国が網羅されています。
国土地理院の標高データは50m四方の平均値を
出したもの(50mメッシュと呼ばれます)です。
国土地理院ではさらに5mメッシュも出していますが、
これは一部の都市部だけです。
あと有料ですが、北海道地図株式会社の10mメッシュあります。
15mのランドサット画像の分解能を活かすには、
10mメッシュか5mメッシュが必要です。
私は必要があって、北海道や関係している地域の
10mメッシュデータは入手していますので、
そのデータでランドサットの高解像度の画像を利用しています。
やはり感動します。
まるで近く景色を望遠鏡を使ったように
宇宙からでも見ることができるのです。
もし興味のある方は、
http://terra.sgu.ac.jp/geo_essay/index.html
を覗いてみててください。
・技術の進歩・
技術は進歩します。
観測衛星には、何種類かのセンサーが搭載されています。
年々そのセンサーは、観測する電磁波の周波数の分解能が上がったり、
地表の分解能を上げられたりしていきます。
その進歩は、ランドサットのセンサーの分解能の
変化をみていてもわかります。
80mから30m、そして15mへとなってきました。
同じ地域を、違った分解能で眺めると差は歴然としています。
一度高分解能で見てしまうと、低分解能の画像は、
特別な目的がない限り見る気になりません。
それほど分解能の差が、誰の目でも分かるということです。
そんな技術の進歩を目の当たりすると、
人類の智恵、技術の偉大さを感じます。
2006年9月26日火曜日
5_52 宇宙から調べる1:視点の変化
宇宙から調べるシリーズをはじめます。このシリーズでは、人工衛星を用いて、どのようなことが見えてくるか考えていきます。
同じことを繰り返していても、なかなか大発見や革命的な考え方などは生まれそうにもありません。でも、繰り返しでもとことん突き詰めていくと、新たな発見が生まれることがあります。
最近私は、人工衛星の画像を扱っています。ASTERという衛星画像を扱っていたことがありますが、現在主には無料で公開されているランドサット衛星の画像を扱っています。その画像を使うていると、同じ繰り返しであっても突き詰めていくと、発想の転換、あるいは違ったものの見かたを生むことを経験しました。その経験を中心に、このシリーズでは紹介していきます。
私たち地質学者は、地上を歩きながら、丹念に岩石や地層の様子を調べ、試料を採取して、それを実験室へ持ち帰り、より詳しく調べていきます。この過程では、より小さいものへと視点を進めていきます。
地質調査をするときは、20万分の1や5万分の1などの地形図を使い、テーマに合った地域を定め、その調査期間に調べる範囲を決めます。そして実際の調査では、今日はどの地域を歩くかを2万5000分の1の地図で決めて、1万分の1や5000分の1の地図をもって調査結果を記入しながら歩きます。
実験室では、崖や川底などからとってきた岩石試料を詳細に観察します。顕微鏡で観察するために、岩石をガラス板(プレパラートといいます)にはり、20μmくらいの薄さにして、光を通るようにしていきます。このようなものを薄片といいます。時には、その薄片を、それぞれの鉱物の中をひとつひとつ丹念に分析装置で化学組成を調べていきます。ある装置の調べられる範囲は数μmのサイズです。
そのようなデータを集めて、調べた岩石がどのような性質なのか、どのようにしてできたのかを考察していきます。その考察では、調査範囲の岩石や地層がどのようにしてできていったのを考えていきます。時には、もっと広域で考えていくこともあります。あるいは時間変遷を考えることもあります。
調査は人間のサイズの視点からはじまり、研究室では顕微鏡スケールへ進み、考察で広域へと進みます。サイズでいいますと、m→μm→kmという循環をします。
kmのスケールとはいっても、高い山からみれば、自分の調査範囲は一望できます。あるいは、ヘリコプターから見れば、自分の調査範囲や考察の範囲は一望することができます。ですから、地質調査に航空写真を用いることがあります。野外調査では見えない、地質の境界や断層、褶曲などがみえることがあるからです。私もそのような調査してきたことがありました。
ある時、非常に広域を調査することをテーマにしたことがあります。広島、岡山、兵庫、京都まで広く分布する地質帯を、3年ほどかけて調査したことがあります。それをまとめるにあたって、航空写真では枚数が多すぎて入手不可能です。ですから、20万分の1や100万分の1の地図を使って考えていくことになります。そのようなスケールの範囲を、一望ものとに見ることができません。唯一ジェット旅客機の高度(10kmほどの上空)に乗ってみたときみえる景観の範囲に近いものとなります。しかし、そのような画像は手に入りませんでしたので、自作の地図で考えを巡らすことになりました。
現在では、人工衛星から見た画角がちょうどそのような視点になります。もちろん地質でもそのような離れた視点から見えるもの、あるいは逆に見えなくなるものもあります。でも、自分が地をはうようにして長年調査した地域が一望できるのです。このような視点は非常に重要なものを提供すると考えられます。
この続きは次回としましょう。
・新しい講義・
9月ももう終わりとなります。
北海道はめっきり秋らしくなってきました。
気の早い家では、もうストーブを炊いています。
我が家は、まだ炊いていません。
しかし、もう朝夕はすっかり冷え込んでいます。
最近北海道の秋らしく抜けるような青空の日がよくあります。
それが北海道の秋のよさであります。
さて、我が大学は、10月から後期の講義がはじまります。
そろそろ授業の準備をはじめます。
新しい講義が始まるので、また大変な半年となりそうです。
実際に毎回の講義を作っているときは、時間が足りなくて
はしょってしまったところや飛ばしたところなど
悔いを残しながらつくりこみます。
苦しく必死の思いでやっています。
でも、講義をつくるのは大変なのですが、
終わるとそれなりの満足感があります。
・いくつもの視点・
TERRAという人工衛星に搭載されている
ASTERというセンサーは地球の資源探査を目的とするものです。
日本とアメリカの共同で打ち上げて運営しているものです。
日本側の窓口がERSDACという半官半民の会社です。
私は、その衛星画像を科学教育に利用していくという試みを
ERSDACと共同で1年間に渡っておこないました。
私が調査で訪れた地を、
人としての視点、地質学的な視点、宇宙からの視点
という、それぞれ3つ違った視点で見たものを融合していきました。
その融合からどのような新たなことが
見えてくることのかを考えていく試みでした。
そのとき、画像処理はERSDACの専門家にお願いしました。
私でもソフトを使えば、加工できるはずなのですが、
なにせ初めてだったので、大容量の画像処理で大変だったので、
地域と画角を指定して、衛星画像の処理は任せていました。
私は文章を書くこと、手持ちの地表の写真と、
衛星画像の意味することを解説することに専念しました。
毎月1つの地域を選んで、
日本と海外を交互を繰り返しておこないました。
それは私にとって、いい経験となりました。
そしてそれは新たな挑戦へと続きます。
その話は、次回にしましょう。
同じことを繰り返していても、なかなか大発見や革命的な考え方などは生まれそうにもありません。でも、繰り返しでもとことん突き詰めていくと、新たな発見が生まれることがあります。
最近私は、人工衛星の画像を扱っています。ASTERという衛星画像を扱っていたことがありますが、現在主には無料で公開されているランドサット衛星の画像を扱っています。その画像を使うていると、同じ繰り返しであっても突き詰めていくと、発想の転換、あるいは違ったものの見かたを生むことを経験しました。その経験を中心に、このシリーズでは紹介していきます。
私たち地質学者は、地上を歩きながら、丹念に岩石や地層の様子を調べ、試料を採取して、それを実験室へ持ち帰り、より詳しく調べていきます。この過程では、より小さいものへと視点を進めていきます。
地質調査をするときは、20万分の1や5万分の1などの地形図を使い、テーマに合った地域を定め、その調査期間に調べる範囲を決めます。そして実際の調査では、今日はどの地域を歩くかを2万5000分の1の地図で決めて、1万分の1や5000分の1の地図をもって調査結果を記入しながら歩きます。
実験室では、崖や川底などからとってきた岩石試料を詳細に観察します。顕微鏡で観察するために、岩石をガラス板(プレパラートといいます)にはり、20μmくらいの薄さにして、光を通るようにしていきます。このようなものを薄片といいます。時には、その薄片を、それぞれの鉱物の中をひとつひとつ丹念に分析装置で化学組成を調べていきます。ある装置の調べられる範囲は数μmのサイズです。
そのようなデータを集めて、調べた岩石がどのような性質なのか、どのようにしてできたのかを考察していきます。その考察では、調査範囲の岩石や地層がどのようにしてできていったのを考えていきます。時には、もっと広域で考えていくこともあります。あるいは時間変遷を考えることもあります。
調査は人間のサイズの視点からはじまり、研究室では顕微鏡スケールへ進み、考察で広域へと進みます。サイズでいいますと、m→μm→kmという循環をします。
kmのスケールとはいっても、高い山からみれば、自分の調査範囲は一望できます。あるいは、ヘリコプターから見れば、自分の調査範囲や考察の範囲は一望することができます。ですから、地質調査に航空写真を用いることがあります。野外調査では見えない、地質の境界や断層、褶曲などがみえることがあるからです。私もそのような調査してきたことがありました。
ある時、非常に広域を調査することをテーマにしたことがあります。広島、岡山、兵庫、京都まで広く分布する地質帯を、3年ほどかけて調査したことがあります。それをまとめるにあたって、航空写真では枚数が多すぎて入手不可能です。ですから、20万分の1や100万分の1の地図を使って考えていくことになります。そのようなスケールの範囲を、一望ものとに見ることができません。唯一ジェット旅客機の高度(10kmほどの上空)に乗ってみたときみえる景観の範囲に近いものとなります。しかし、そのような画像は手に入りませんでしたので、自作の地図で考えを巡らすことになりました。
現在では、人工衛星から見た画角がちょうどそのような視点になります。もちろん地質でもそのような離れた視点から見えるもの、あるいは逆に見えなくなるものもあります。でも、自分が地をはうようにして長年調査した地域が一望できるのです。このような視点は非常に重要なものを提供すると考えられます。
この続きは次回としましょう。
・新しい講義・
9月ももう終わりとなります。
北海道はめっきり秋らしくなってきました。
気の早い家では、もうストーブを炊いています。
我が家は、まだ炊いていません。
しかし、もう朝夕はすっかり冷え込んでいます。
最近北海道の秋らしく抜けるような青空の日がよくあります。
それが北海道の秋のよさであります。
さて、我が大学は、10月から後期の講義がはじまります。
そろそろ授業の準備をはじめます。
新しい講義が始まるので、また大変な半年となりそうです。
実際に毎回の講義を作っているときは、時間が足りなくて
はしょってしまったところや飛ばしたところなど
悔いを残しながらつくりこみます。
苦しく必死の思いでやっています。
でも、講義をつくるのは大変なのですが、
終わるとそれなりの満足感があります。
・いくつもの視点・
TERRAという人工衛星に搭載されている
ASTERというセンサーは地球の資源探査を目的とするものです。
日本とアメリカの共同で打ち上げて運営しているものです。
日本側の窓口がERSDACという半官半民の会社です。
私は、その衛星画像を科学教育に利用していくという試みを
ERSDACと共同で1年間に渡っておこないました。
私が調査で訪れた地を、
人としての視点、地質学的な視点、宇宙からの視点
という、それぞれ3つ違った視点で見たものを融合していきました。
その融合からどのような新たなことが
見えてくることのかを考えていく試みでした。
そのとき、画像処理はERSDACの専門家にお願いしました。
私でもソフトを使えば、加工できるはずなのですが、
なにせ初めてだったので、大容量の画像処理で大変だったので、
地域と画角を指定して、衛星画像の処理は任せていました。
私は文章を書くこと、手持ちの地表の写真と、
衛星画像の意味することを解説することに専念しました。
毎月1つの地域を選んで、
日本と海外を交互を繰り返しておこないました。
それは私にとって、いい経験となりました。
そしてそれは新たな挑戦へと続きます。
その話は、次回にしましょう。
2006年9月21日木曜日
3_49 マントルの水5:水の由来
マントルの水シリーズの最終回です。前回まで、マントルの遷移層に水が留まることができ、そして実際に存在する可能性も指摘しました。今回は、その水がどこから来たのか考えていきます。
マントルには、ある程度水があります。それは火山ガスや地球深部に由来する岩石を調べることでわかります。
火山噴火に伴うガスの成分には、水蒸気、つまりH2Oが多く含まれています。そのH2Oの由来は、水素の同位体(質量数の違う核種)から、知ることができます。マグマの水の多くは、地表付近の水に由来するものですが、一部にはマントルから由来する成分があることが確かめられています。
また、マグマが上昇してくるときに、マグマの通り道にあった岩石の破片を取り込んでくることがあります。そのような岩石は、捕獲岩と呼ばれています。捕獲岩にも水を含む鉱物がたくさん見つかっています。これも、地球深部に水がある証拠となります。
マントルでマグマが形成される範囲は、せいぜい100km程度の深さです。捕獲岩もマグマの形成場所より浅いところになります。ですから、マントル遷移層の400kmのような深さから、直接マグマが由来することはありません。ですから、直接の証拠は今のところはありません。
しかし、このシリーズで今まで見てきましたように、遷移層には水がありそうだと分かってきました。では、そんな深いところに、どのようにして水がもたらされたのでしょうか。
2つの可能性があります。一つはもともとあったというもの、もう一つは海の水がマントルに入り込んだというものです。
もともと地球をつくった物質に、水の成分が含まれていました。それはあ惑星の材料物質の残りといえるある種の隕石には、水の成分が含まれています。水のような岩石と比べれば気化しやすい成分は、地球の形成期に地球の外側ずぐに移動していったと考えられます。海の水もそこから由来しました。また、地球の内部は高温高圧ですので、残っていた水も、マグマと一緒に地表にもたらされたと考えられています。ですから、地球深部の水は、ずべて地表に出てしまったと考えられます。
しかし、ストロンチウムやネオジウムなどの同位体組成から、そのような水を含んだ材料物質が、地球の遷移層より下の下部マントルには、まだ残っている可能性が考えらています。その水が遷移層に溜まっていると考えられます。
もう一つの可能性として、海水のマントルへの逆流です。海水といってもH2OやOHなどのことです。海洋プレートが海溝で沈み込むとき、海底で海洋地殻の中に溜まった水分は、搾り出されていくと考えられていました。しかし、マントルの物理条件が変化することによって、水を含む鉱物が、深部でも安定に存在できることが実験からわかりました。そのことから、沈み込むプレートと共に、地球深部に水が入り込む可能性がわかってきました。
それのような変化は、地球が冷めていくことで起こると考えられます。7億5000万年前から5億5000万年前にかけて起こった事件だと考えられます。すると、大量の水がマントルに時期にもたらされることになります。しかし、その水の行き場所が今まで不明でした。それが、今回の報告で遷移層に蓄えられるという可能性がでてきたのです。
どちらか可能性が正しのかまだ、判断できません。どちらもそれなりの根拠があります。しかし、今回の大谷さんたちの報告は、マントル深部に水が存在でき、地球史上の重要な事件の謎を解く可能性をも示したのです。
・謎を解く鍵・
大谷さんたちの報告の持つ意味を紹介しました。
今回でマントルの水シリーズも終わりです。
間も開いて、長い連載となりましたが、いかがだったでしょうか。
日ごろ当たり前に目にする水も、その由来をたどると、
なかなか複雑な経歴ありそうなことがわかっていただけたでしょうか。
そして大谷さんたちが、その複雑な問題を解く鍵を一つ見つけたのです。
・近況・
北海道はめっきり秋らしくなりました。
高山では紅葉の便りも聞きます。
いよいよ我が大学の長い夏休みも終わろうとしています。
北海道の9月はもう夏休みというには涼しすぎます。
我が家の子供たちは、急に涼しくなったので、
風邪を引いてしまいました。
夏休み前は夏風邪、夏は夏バテ、秋は風邪。
どうも今年の夏は、我が家では体調不良に見舞われています。
私はいつものように仕事に追われています。
どれも興味をもってやっていることなのですが、
やはり追われて仕事をするのはつらいものです。
でも、好きでやっていることですから、
愚痴は言わずやりましょう。
マントルには、ある程度水があります。それは火山ガスや地球深部に由来する岩石を調べることでわかります。
火山噴火に伴うガスの成分には、水蒸気、つまりH2Oが多く含まれています。そのH2Oの由来は、水素の同位体(質量数の違う核種)から、知ることができます。マグマの水の多くは、地表付近の水に由来するものですが、一部にはマントルから由来する成分があることが確かめられています。
また、マグマが上昇してくるときに、マグマの通り道にあった岩石の破片を取り込んでくることがあります。そのような岩石は、捕獲岩と呼ばれています。捕獲岩にも水を含む鉱物がたくさん見つかっています。これも、地球深部に水がある証拠となります。
マントルでマグマが形成される範囲は、せいぜい100km程度の深さです。捕獲岩もマグマの形成場所より浅いところになります。ですから、マントル遷移層の400kmのような深さから、直接マグマが由来することはありません。ですから、直接の証拠は今のところはありません。
しかし、このシリーズで今まで見てきましたように、遷移層には水がありそうだと分かってきました。では、そんな深いところに、どのようにして水がもたらされたのでしょうか。
2つの可能性があります。一つはもともとあったというもの、もう一つは海の水がマントルに入り込んだというものです。
もともと地球をつくった物質に、水の成分が含まれていました。それはあ惑星の材料物質の残りといえるある種の隕石には、水の成分が含まれています。水のような岩石と比べれば気化しやすい成分は、地球の形成期に地球の外側ずぐに移動していったと考えられます。海の水もそこから由来しました。また、地球の内部は高温高圧ですので、残っていた水も、マグマと一緒に地表にもたらされたと考えられています。ですから、地球深部の水は、ずべて地表に出てしまったと考えられます。
しかし、ストロンチウムやネオジウムなどの同位体組成から、そのような水を含んだ材料物質が、地球の遷移層より下の下部マントルには、まだ残っている可能性が考えらています。その水が遷移層に溜まっていると考えられます。
もう一つの可能性として、海水のマントルへの逆流です。海水といってもH2OやOHなどのことです。海洋プレートが海溝で沈み込むとき、海底で海洋地殻の中に溜まった水分は、搾り出されていくと考えられていました。しかし、マントルの物理条件が変化することによって、水を含む鉱物が、深部でも安定に存在できることが実験からわかりました。そのことから、沈み込むプレートと共に、地球深部に水が入り込む可能性がわかってきました。
それのような変化は、地球が冷めていくことで起こると考えられます。7億5000万年前から5億5000万年前にかけて起こった事件だと考えられます。すると、大量の水がマントルに時期にもたらされることになります。しかし、その水の行き場所が今まで不明でした。それが、今回の報告で遷移層に蓄えられるという可能性がでてきたのです。
どちらか可能性が正しのかまだ、判断できません。どちらもそれなりの根拠があります。しかし、今回の大谷さんたちの報告は、マントル深部に水が存在でき、地球史上の重要な事件の謎を解く可能性をも示したのです。
・謎を解く鍵・
大谷さんたちの報告の持つ意味を紹介しました。
今回でマントルの水シリーズも終わりです。
間も開いて、長い連載となりましたが、いかがだったでしょうか。
日ごろ当たり前に目にする水も、その由来をたどると、
なかなか複雑な経歴ありそうなことがわかっていただけたでしょうか。
そして大谷さんたちが、その複雑な問題を解く鍵を一つ見つけたのです。
・近況・
北海道はめっきり秋らしくなりました。
高山では紅葉の便りも聞きます。
いよいよ我が大学の長い夏休みも終わろうとしています。
北海道の9月はもう夏休みというには涼しすぎます。
我が家の子供たちは、急に涼しくなったので、
風邪を引いてしまいました。
夏休み前は夏風邪、夏は夏バテ、秋は風邪。
どうも今年の夏は、我が家では体調不良に見舞われています。
私はいつものように仕事に追われています。
どれも興味をもってやっていることなのですが、
やはり追われて仕事をするのはつらいものです。
でも、好きでやっていることですから、
愚痴は言わずやりましょう。
2006年9月14日木曜日
4_72 城川へ:そこには、きっと固有の大地がある
私は毎年城川町にきています。もう14年近くなるでしょうか。今年も9月2日から6日まで滞在しました。そのとき感じたことがあります。
今年も城川に来ました。城川とは、四国愛媛県西予市の中にあります。山奥の小さな町です。その城川町でもさらに奥の窪野というところにある公園施設の一つとして地質館があります。地質館の近くにもとは窪野小学校の跡地に、城川自然ロッジがあります。
今年は、4泊しましたが、正味3日間の仕事時間となりました。その間は、地質館とロッジだけの往復だけでした。今回の仕事は、地質館のデータベースの作成でした。城川町の地質データベースは、すでに完成していました。しかし、3年前に市町村合併で西予市になったことで、西予市の地質館としてカバーすべき地域が広くなりました。
城川町では、野外での地質観察ポイントをもうけて、その地点の様子や岩石の写真などを紹介していました。そのような観察ポイントを、合併した他の4つの町でもみつけて、作成していくことにしました。そのため、2年間、野外調査をして、データを集めてきました。
城川町は、地質学的に非常に面白く、見学すべきところもたくさんありました。そのため地質館ができたのです。城川町と比べると、合併した他の市町村は、地質学的には見劣りがしました。ですから、調査をはじめるまでは、本当に見るべき観察ポイントがあるだろうか心配していました。
しかし、そんな心配は杞憂にすぎませんでした。
詳しく地域の地質を見ていくと、そこには必ずその地を構成している岩石や地層があります。それは地域によって固有であり、その地域の地質が地域の自然をつくり、風土を生んでいます。ですから、なんとか岩石のでている露頭さえみつければ、それなりの観察ポイントにすることができました。
その中には、第一級の構造線(仏像構造線)の露頭を見つけることができました。また町内には、四国カルストの石灰岩地帯や、古生代の海底に噴出した溶岩、深海底に堆積した海のプランクトンの死骸からできている層状チャート、きれいに重なった凝灰岩の地層、などなど、地質学的に面白く多彩なポイントが、海や山で見ることができることが判明しました。
本当はもっと各地を詳しく調査していきたかったのですが、研究費で定められた期限が今年まででした。ですから今年が一応の区切りとなります。
今回、それらの集大成として、調査結果をデータベースとしてホームページ上で公開できるようにすることが、城川に出かけた目的でした。残念ながら、時間不足と画像データの撮影が残ったため、完成できませんでした。あとは、こつこつと、つくりこんでいきたいと思っています。
・日陰者として・
どの地域にも固有の自然があります。
自然は、その地の土壌、気候と地形に大きく左右されます。
そして土壌や地形は地質が大きく関わっています。
地質が、その地の自然に大きなかかわりを持っています。
地域の自然を理解するには、地質の理解は不可欠といえます。
西予市を歩いて感じることですが、
城川町の人は地質で有名なところですから、
地質に関心を持っています。
しかし、他の地域の人は、地質に関して人は非常に無関心です。
ある生物がいなくなると、どこでも騒ぐのですが、
地質学的に第一級の露頭が、
コンクリートに覆われようとしているのですが
だれも関心を持ちません。
地質は日陰者の存在のようです。
縁の下ではなく地下の力持ちとして
ばんばるしかないのですかね。
・城川自然ロッジ・
私がいつも泊まっている城川自然ロッジは、
かつては、第三セクターによる運営でした。
しかし、赤字でいったん閉鎖したのですが、
今年の8月から再度運営形態を変更して再開しました。
非常に雰囲気のいいロッジで、私はここが大好きです。
ただ、集客のためにはハンディがあります。
国道からは離れているし、
奥まっているために観光地への中継地点でもありません。
ですから、どうしても集客力がありません。
それに町内には宝泉坊温泉があり、そこは交通の便もよく、
昨年の11月から大きな保養施設へと改築されました。
ですから、どうしても観光客はそちらに向かいます。
今回泊まったとき、ロッジの人といろいろ話をした。
いい人で、なんとか存続してもらいたいものです。
一人の人間の希望、努力には限界がありますが
微力ながら影で応援したいものです。
今年も城川に来ました。城川とは、四国愛媛県西予市の中にあります。山奥の小さな町です。その城川町でもさらに奥の窪野というところにある公園施設の一つとして地質館があります。地質館の近くにもとは窪野小学校の跡地に、城川自然ロッジがあります。
今年は、4泊しましたが、正味3日間の仕事時間となりました。その間は、地質館とロッジだけの往復だけでした。今回の仕事は、地質館のデータベースの作成でした。城川町の地質データベースは、すでに完成していました。しかし、3年前に市町村合併で西予市になったことで、西予市の地質館としてカバーすべき地域が広くなりました。
城川町では、野外での地質観察ポイントをもうけて、その地点の様子や岩石の写真などを紹介していました。そのような観察ポイントを、合併した他の4つの町でもみつけて、作成していくことにしました。そのため、2年間、野外調査をして、データを集めてきました。
城川町は、地質学的に非常に面白く、見学すべきところもたくさんありました。そのため地質館ができたのです。城川町と比べると、合併した他の市町村は、地質学的には見劣りがしました。ですから、調査をはじめるまでは、本当に見るべき観察ポイントがあるだろうか心配していました。
しかし、そんな心配は杞憂にすぎませんでした。
詳しく地域の地質を見ていくと、そこには必ずその地を構成している岩石や地層があります。それは地域によって固有であり、その地域の地質が地域の自然をつくり、風土を生んでいます。ですから、なんとか岩石のでている露頭さえみつければ、それなりの観察ポイントにすることができました。
その中には、第一級の構造線(仏像構造線)の露頭を見つけることができました。また町内には、四国カルストの石灰岩地帯や、古生代の海底に噴出した溶岩、深海底に堆積した海のプランクトンの死骸からできている層状チャート、きれいに重なった凝灰岩の地層、などなど、地質学的に面白く多彩なポイントが、海や山で見ることができることが判明しました。
本当はもっと各地を詳しく調査していきたかったのですが、研究費で定められた期限が今年まででした。ですから今年が一応の区切りとなります。
今回、それらの集大成として、調査結果をデータベースとしてホームページ上で公開できるようにすることが、城川に出かけた目的でした。残念ながら、時間不足と画像データの撮影が残ったため、完成できませんでした。あとは、こつこつと、つくりこんでいきたいと思っています。
・日陰者として・
どの地域にも固有の自然があります。
自然は、その地の土壌、気候と地形に大きく左右されます。
そして土壌や地形は地質が大きく関わっています。
地質が、その地の自然に大きなかかわりを持っています。
地域の自然を理解するには、地質の理解は不可欠といえます。
西予市を歩いて感じることですが、
城川町の人は地質で有名なところですから、
地質に関心を持っています。
しかし、他の地域の人は、地質に関して人は非常に無関心です。
ある生物がいなくなると、どこでも騒ぐのですが、
地質学的に第一級の露頭が、
コンクリートに覆われようとしているのですが
だれも関心を持ちません。
地質は日陰者の存在のようです。
縁の下ではなく地下の力持ちとして
ばんばるしかないのですかね。
・城川自然ロッジ・
私がいつも泊まっている城川自然ロッジは、
かつては、第三セクターによる運営でした。
しかし、赤字でいったん閉鎖したのですが、
今年の8月から再度運営形態を変更して再開しました。
非常に雰囲気のいいロッジで、私はここが大好きです。
ただ、集客のためにはハンディがあります。
国道からは離れているし、
奥まっているために観光地への中継地点でもありません。
ですから、どうしても集客力がありません。
それに町内には宝泉坊温泉があり、そこは交通の便もよく、
昨年の11月から大きな保養施設へと改築されました。
ですから、どうしても観光客はそちらに向かいます。
今回泊まったとき、ロッジの人といろいろ話をした。
いい人で、なんとか存続してもらいたいものです。
一人の人間の希望、努力には限界がありますが
微力ながら影で応援したいものです。
2006年9月7日木曜日
3_48 マントルの水4:浮沈法
マントルの水のシリーズです。少し、間が開きましたが、遷移層にマグマが留まれるかどうか、みていきましょう。
遷移層にマグマができることは、前回示しました。ところが、マグマが遷移層に留まれるかどうかと、遷移層に水があることを、まだ説明していませんでした。
まず、マグマが遷移層に留まれるのでしょうか。マグマは、まわりの岩石が溶けてできたものです。一般に同じ成分の固体と液体を比べれば、液体の方が密度が小さく、固体が大きくなります。ですから、マグマができると、上昇してきます。これは、マグマの上昇のメカニズムでもあります。
マグマが遷移層に留まるというのは、常識を破る現象なのです。では、この常識破りが正しいかどうか、どうすれば判定できるのでしょうか。前にも紹介しましたが、高温高圧実験で遷移層の条件をつくり出し、そこでマグマをつくってみればいいわけです。そしてそのマグマが周囲の岩石より、密度が大きいか小さいか比べれてみればいいわけです。
実際の遷移層では、水があるためにマグマができるのでした。ですから、実験でも、水を入れてマグマをつくらなけばなりません。実は、水を含んだマグマの密度をはかるのは、非常に難しい実験で、だれもできてせんでした。その実験に大谷さんたちのグループが成功したのです。
その方法は、「浮沈法」と呼ばれるもので、大谷さんたちのグループが、以前に開発したものです。浮沈法とは、マグマの中にダイヤモンドをいれて、そのダイヤモンドが浮くか沈むかで、マグマの密度を決めようというものです。ダイヤモンド自身の密度は、温度圧力の条件が決まれば、状態方程式から決めることができます。
高温高圧の実験でマグマをつくり、その中でダイヤモンドが完全に移動を終えてから、その装置の温度を急激に下げます。すると、マグマは一気に冷めて固まります。ダイヤモンドの位置を維持したまま、固まります。それを装置から取り出して、資料を顕微鏡で観察して、どの位置にあったかをみて、密度を決定するものです。
実験の結果から、マントルの遷移層の条件で、マグマが滞留できることがわかりました。これによって遷移層にマグマが存在できる根拠が見つかったわけです。
マントルの岩石にも水は入ることができますが、マグマができれば、水はマグマの方へ移動します。また遷移層でマグマができる条件は水があることです。ですから、マグマがあれば、その中に水がきっとあるはずになります。
実験から、マグマが遷移層に滞留できるには、水が6.7重量%の含有量までなら、大丈夫ということが分かりました。つまり遷移層のマグマには最大、6.7%まで水が入りうるということです。
6.7%というのは、一見少なそうに見えますが、遷移層全体と考える、膨大な水の量になります。
単純な試算をしてみましょう。海水は1.4×10^21kgあります。遷移層の岩石の重さは、体積と密度から3.9×10^23kgと推定できます。その6.7%なら2.3×10^22kgとなり、あとはマグマが遷移層にどの程度あるかによって水の量が決まります。マグマが重さで5%ほどできるとしたら、海水の同じほどの量が遷移層にあることになります。
まだマグマの量ははっきり分かりませんが、少量でもマグマがあれば、その水の総量は、膨大な量となります。遷移層のマグマが、地球の海に匹敵するほどの水の貯蔵庫となりえます。
地震波を詳しく見ると、上部マントルと遷移層の境界に、でこぼこが見つかっています。このでこぼこは、温度のムラという説明がされていますが、大谷さんたちは、遷移層の水の含有量の違いによって、説明したほうが無理がないと考えています。
でも、この水はいったいどこから来たのでしょうか。それは、次の回としましょう。
・シンプルな問いが難しい・
マントルの水シリーズの4回目をお送りしました。
冥王星の騒ぎで、2回、間が開きました。
ここまでの説明で、遷移層の水があってもいい
という論理的な根拠ができました。
遷移層の実体をよく詳しく解明してされて来ました。
そこには、困難とされた実験を解決する方法を以前開発してました。
その方法が、今回の実験にも活かされました。
その結果、マグマがマントルの深部に留まれることが
明らかになってきました。
今後は、次のステップへと進みます。
次のステップとは、
遷移層に水があるのか
あるとするとその水はどこから来たのか
という問題を解決することです。
実は、この一番シンプルな問いが、
答えを得るものが一番難しい問題です。
それは、次回説明しますが、
推定するしか現状ではありません。
でも、簡単な問題ほど、研究者なら誰もが取り組みたい、
そして誰もが知りたい問題となります。
・四国へ・
このエッセイは、四国の城川に出かける前に書き、
発行したものです。
8月の段階で書いています。
ですから、四国の様子をここでは、報告できません。
近いうちに、紹介しますので、お楽しみに。
遷移層にマグマができることは、前回示しました。ところが、マグマが遷移層に留まれるかどうかと、遷移層に水があることを、まだ説明していませんでした。
まず、マグマが遷移層に留まれるのでしょうか。マグマは、まわりの岩石が溶けてできたものです。一般に同じ成分の固体と液体を比べれば、液体の方が密度が小さく、固体が大きくなります。ですから、マグマができると、上昇してきます。これは、マグマの上昇のメカニズムでもあります。
マグマが遷移層に留まるというのは、常識を破る現象なのです。では、この常識破りが正しいかどうか、どうすれば判定できるのでしょうか。前にも紹介しましたが、高温高圧実験で遷移層の条件をつくり出し、そこでマグマをつくってみればいいわけです。そしてそのマグマが周囲の岩石より、密度が大きいか小さいか比べれてみればいいわけです。
実際の遷移層では、水があるためにマグマができるのでした。ですから、実験でも、水を入れてマグマをつくらなけばなりません。実は、水を含んだマグマの密度をはかるのは、非常に難しい実験で、だれもできてせんでした。その実験に大谷さんたちのグループが成功したのです。
その方法は、「浮沈法」と呼ばれるもので、大谷さんたちのグループが、以前に開発したものです。浮沈法とは、マグマの中にダイヤモンドをいれて、そのダイヤモンドが浮くか沈むかで、マグマの密度を決めようというものです。ダイヤモンド自身の密度は、温度圧力の条件が決まれば、状態方程式から決めることができます。
高温高圧の実験でマグマをつくり、その中でダイヤモンドが完全に移動を終えてから、その装置の温度を急激に下げます。すると、マグマは一気に冷めて固まります。ダイヤモンドの位置を維持したまま、固まります。それを装置から取り出して、資料を顕微鏡で観察して、どの位置にあったかをみて、密度を決定するものです。
実験の結果から、マントルの遷移層の条件で、マグマが滞留できることがわかりました。これによって遷移層にマグマが存在できる根拠が見つかったわけです。
マントルの岩石にも水は入ることができますが、マグマができれば、水はマグマの方へ移動します。また遷移層でマグマができる条件は水があることです。ですから、マグマがあれば、その中に水がきっとあるはずになります。
実験から、マグマが遷移層に滞留できるには、水が6.7重量%の含有量までなら、大丈夫ということが分かりました。つまり遷移層のマグマには最大、6.7%まで水が入りうるということです。
6.7%というのは、一見少なそうに見えますが、遷移層全体と考える、膨大な水の量になります。
単純な試算をしてみましょう。海水は1.4×10^21kgあります。遷移層の岩石の重さは、体積と密度から3.9×10^23kgと推定できます。その6.7%なら2.3×10^22kgとなり、あとはマグマが遷移層にどの程度あるかによって水の量が決まります。マグマが重さで5%ほどできるとしたら、海水の同じほどの量が遷移層にあることになります。
まだマグマの量ははっきり分かりませんが、少量でもマグマがあれば、その水の総量は、膨大な量となります。遷移層のマグマが、地球の海に匹敵するほどの水の貯蔵庫となりえます。
地震波を詳しく見ると、上部マントルと遷移層の境界に、でこぼこが見つかっています。このでこぼこは、温度のムラという説明がされていますが、大谷さんたちは、遷移層の水の含有量の違いによって、説明したほうが無理がないと考えています。
でも、この水はいったいどこから来たのでしょうか。それは、次の回としましょう。
・シンプルな問いが難しい・
マントルの水シリーズの4回目をお送りしました。
冥王星の騒ぎで、2回、間が開きました。
ここまでの説明で、遷移層の水があってもいい
という論理的な根拠ができました。
遷移層の実体をよく詳しく解明してされて来ました。
そこには、困難とされた実験を解決する方法を以前開発してました。
その方法が、今回の実験にも活かされました。
その結果、マグマがマントルの深部に留まれることが
明らかになってきました。
今後は、次のステップへと進みます。
次のステップとは、
遷移層に水があるのか
あるとするとその水はどこから来たのか
という問題を解決することです。
実は、この一番シンプルな問いが、
答えを得るものが一番難しい問題です。
それは、次回説明しますが、
推定するしか現状ではありません。
でも、簡単な問題ほど、研究者なら誰もが取り組みたい、
そして誰もが知りたい問題となります。
・四国へ・
このエッセイは、四国の城川に出かける前に書き、
発行したものです。
8月の段階で書いています。
ですから、四国の様子をここでは、報告できません。
近いうちに、紹介しますので、お楽しみに。
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