合成実験の結果、核物質がマントルの含水鉱物と反応することがわかってきました。反応により核物質は、密度が小さく、地震波速度が遅くできることがわかってきました。これがE"層になると考えました。
マントルの含水鉱物と核の鉄ケイ素の合金が、どうのような反応したのでしょうか。高温高圧実験の結果を紹介していきましょう。
マントルの含水鉱物の中にある水の成分(とはいっても、水酸基OHとなっていますが)が反応します。核のケイ素が酸素と結びつき酸化ケイ素になり、鉄は水素と結びついて鉄水素合金(FeHx)となることがわかってきました。それぞれの成分が、反応により、別の結晶になっていくということです。
マントルと核の境界で、マントルの水(OH)と核の最上部の物質(Fe-Si)と反応が起これば、核の最上部、もしくはマントル-核の境界に、酸化ケイ素と鉄水素合金ができることになります。合成実験は境界部の条件で実施しているので、境界部にそれらの結晶が安定に存在する可能性を示しています。
その部分を、キムらは論文のタイトルあるように「水素富化層(hydrogen-enriched layer)」と呼びました。この層ができると、密度が小さくなってき、地震波速度も遅くなってきます。
前回紹介したように、マントルの最下部にはD"層が広く分布していることが明らかにされてきました。D"層は、境界に沈み込んだスラブだと考えられるので、含水鉱物が境界部の存在していると考えられます。プレートテクトニクスが古くからはじまっていれば、沈み込んだスラブとして含水鉱物が定常的に核-マントル境界に送り込まれることになります。物理化学的条件さえ整っていれば、この実験の反応が起こり、核の最上部にE"層が広くできている可能性があります。もしかすると、地球全体に広がっているかも知れません。これが、シリーズの最初に紹介した、E"層の実態ではないかという報告になります。
もしそうのような状態になっていれば、詳しい地震波の解析ができれば、検知できるかもしれません。今後、E"層の実態のより正確な解明が必要でしょう。また、D"層とE"層との関係、あるいは両層の相互作用の解明が必要になるでしょう。両者がいつできたのかなども、問題になってくるでしょう。
地球深部には、まだわからないことが多々ありますね。
・秋の風物詩・
10月中旬なって北海道では秋が深まってきています。
紅葉も落葉も進んでいます。
自宅では、何度かストーブも炊きました。
冬への準備としてエアコンの雪囲いもしました。
まだ雪虫の大群は見ていません。
毎日のように自宅も研究室でも
冬ごもりするカメムシの大群の襲撃を受けています。
脅かさないように、穏やかに退散を願っています。
・最後の調査・
9月の野外調査を終えて、
研究費が少し余っています。
今月末に1泊の調査に出ることにしました。
遠出も長期もできないので、近場での調査にしました。
紅葉が進んでいるでしょうが、寒さも同時にあるので、
山地での野外調査もそろそろ最後になります。
紅葉を楽しみながら、今シーズン最後の調査を
味わってこようと思っています。