2024年10月10日木曜日

3_220 最外核の水素富化層 3:工夫された試料

 核とマントルの境界を想定した高温高圧実験が進められました。核もマントルも、想定される組成の試料ではなく、工夫を凝らした成分を用いています。そんな成分を用いたのには、どのような目論見があるのでしょうか。


 キムらは、タイヤモンドアンビルを用いて、E"層を再現する実験をしました。外核のもっとも上部と、マントルの最下部の境界の条件での実験となります。用いた試料は、核を想定した鉄と、マントルを想定したケイ酸塩鉱物を使っています。ただし、いずれの試料にも、純粋な金属鉄やケイ酸塩ではなく、工夫が凝らされています。
 核を想定した試料は鉄だけでなく、鉄とケイ素の合金にしています。これは、核の最上部は、地震学のデータからは、純粋な鉄ではなく、鉄とニッケルの合金(鉄:90%、ニッケル:10%)ですが、それより密度が小さいことがわかっています。つまり、密度の小さい元素が混じっていることがわかっています。その候補として、水素や炭素、酸素、イオウ、ケイ素などが考えられていますが、いずれかはまだ決着を見ていません。しかし、この実験では、ケイ素を用いています。
 マントルはカンラン岩からできています。マントルのカンラン岩も、深くなるほど、より高密度の結晶に変わったケイ酸塩鉱物の組み合わせへとなっていきます。ところが、実験ではケイ酸塩だけでなく、含水鉱物(ケイ酸塩やアルミケイ酸塩などで水酸基を含む鉱物)を用いています。
 含水鉱物にしているのは、スラブを想定しているためです。スラブとは、海洋プレートが海溝で沈み込んだものです。スラブは、海洋地殻とマントル物質が混じったものになります。上部・下部の境界のマントル(遷移帯と呼ばれています)でいったん滞留した後、マントル下部へと落ちていくと考えられています。
 スラブには海洋由来の水の成分が混じっている可能性があります。ただし、水といっても、岩石の隙間などに含まれているもの(間隙水)は、高温高圧でなくなっているので、結晶水として鉱物に組み込まれている必要があります。結晶水、つまり含水鉱物として、地球深部まで持ち込まれることになります。ただし、どのような含水鉱物かは、明らかになっていません。
 核もマントルの物質のいずれも、未知の部分があります。しかし、いずれも仮定の上で実験は進められています。核では、軽元素をケイ酸と考え、鉄とケイ素の合金を用いています。マントルでは、含水鉱物をを含んだケイ酸塩鉱物としています。両物質が、核マントル境界の条件で反応したらどうなるかという実験です。そこから、E"層の実態に迫ろうという目論見です。
 次回で、いよいよ実験の結果を見ていきましょう。

・梱包作業中止・
本の入稿が終わり、初校の戻ってきました。
今週中に修正をして、
来週早々にもどす必要があります。
これが最優先の作業となります。
また、これまで集めた砂の試料が
博物館で引き取ってもらえることになりました。
試料の発送のための荷造りも必要になりました。
大量の重い荷物になるので
家内にも手伝ってもらうことにしていす。
先週をこの荷造り作業を実施する予定でしたが
体調不良で中止しました。
できれば今週にしたいのですが、
どうなるでしょうか。

・体調を考えて・
最近、体調不良や健康診断での再検査など
医者に通うことが多くなっています。
常用薬も3種となってきました。
年相応ということなのでしょうが、
無理ができなくなります。
ところが研究へと意欲と
成果の生産量は衰えていません。
いや年齢とともに増えてきているように思います。
ただし、これも定年をすると一段落になるので、
抜け殻状態になりそうです。
退職後の準備も怠りなく
ソフトランディングをするように
考えていかなければなりませんね。