2014年1月23日木曜日

2_123 最古の生命 2:決め手

 生命が存在したとされる岩石は、変成岩にみつかった鉱物でした。その鉱物から、生物であるという証拠が、2つ提示されました。さて、その証拠はどのようなものでしょうか。本当に生物はいたのでしょうか。

 最古の生命は、残念ながら見に見える形をもった化石ではありませんでした。生命の痕跡は、変成を受けた堆積岩のグラファイトから見つかりました。変成を受けると、もともとの情報はかなり失われることになります。もちろん生命の痕跡となるべき証拠も消えていくはずです。また、グラファイトも、変成を受けた鉱物なので、生物の情報が残っているのでしょうか。
 グラファイトは、炭素だけからできた鉱物です。グラファイトができるからには、変化を受ける前の物質も炭素の多いものだったはずです。炭素を濃集するメカニズムとして、一番に思いつくのは生物です。生物の体の主要成分は炭素です。石炭、石油も炭素の多いもので、起源は生物です。古い時代の炭素が濃集している地層は、かつては生物の遺骸が多数たまっていた層の可能性があります。ですから、最古の堆積岩で調べるべき地層は、炭素の多い層となります。グラファイトの多いところもその候補となります。
 では、グラファイトの炭素から何を読み取れるのでしょうか。まずは、詳しくみることです。するとナノメートルという非常に小さいサイズですが、現在の生物を構成する炭素が特徴的にもっている組織や外形が見つかりました。私には、写真をみてもよくわかりませんが、これは有力な証拠となるようです。
 そして、もうひとつは、炭素の同位体組成です。炭素の同位体には、炭素12(12Cと表記)、炭素13(13C)、炭素14(14C)の3つがあります。このうち14Cは放射性元素に由来し、量も少ないものです。12Cと13Cは安定しているため、この比は確かな手がかりとなります。生物の体をつくっている12C/13Cの値は、重い13Cが取り込まれにくいため、周囲の大気や海水の値とは違ったものとなります。その僅かな違いを利用して、生物起源の炭素かどうかを判断するという手法があります。大友さんたちは、生物起源と考えられる炭素の同位体比を検出しました。
 以上の2つの証拠から、38億年前の海(地層は海でたまったものだから)にいた生物であったと結論づけられました。
 非常に微細な構造をもった物質と、生物しかもたない化学成分、この2つが決め手です。ただし、そのような構造や成分が、本当に生物以外で生み出されないのか。今後、専門家間での議論によって判定されていくでしょう。

・後期終了・
大学はいよいよ後期の講義が終わります。
来週からは定期テストです。
1月も慌ただしく終わっていきそうです。
そして大学入試の2月になっていきます。
寒さや雪も今年は一段と厳しいようです。

・卒業研究・
先日、学科の卒業研究の発表会がありました。
発表内容は、学生それぞれのレベルとなっています。
努力した人、かろうじて整えた人、
膨大な努力や研究が背景にあることを伺わせる人、
教員や社会に出た時に役に立ちそうな研究、
多様な卒業研究がありました。
私としては、結果より過程を重視したいといつも思っています。
努力は結果と直結しないこともあります。
しかし、努力をした経験はきっと将来活きてくると思います。
人間として、経験の大きさはきっと
将来の人生に、違いを生んでくるでしょう。
いや、もう生まれているのかもしれません。
だから、私のゼミでは最後まで努力を求めます。