2013年3月7日木曜日

3_114 極限環境微生物 2:ボストーク湖

 南極の深い氷の下にあるボストーク湖まで掘削がおこなわれました。ボストーク湖までに至る氷は、15年前に掘られたもので、地球の約40万年間の気候変動を記録していました。そして昨年、湖まで環境の汚染や検疫に配慮された掘削がされました。

 前回は、極限環境微生物の概要を紹介しました。最近、南極で極限環境微生物に関わるいくつかのニュースがありました。そのニュースを2つ紹介します。
 まず、2012年2月に、ロシアの研究チームが、ボストーク湖に到達したというニュースが流れました。しかし、この氷河の底の湖(氷底湖とよばれます)に達するまで、長い時間があり、配慮もなされました。なぜでしょうか。
 ボストーク湖は、南極のロシアのボストーク基地に近いところにあります。湖は、幅40km、長さ250kmもあり、琵琶湖の22倍ほどにもなる巨大なものです。氷床下、約4000mという深さにあります。そんな深いところに湖があるのが、どうしてわかったのでしょうか。それは、上空からの氷を透過できるレーダーによる探査でわかりました。その後人工地震による探査でも、湖の存在は、確認されています。
 この氷床では、1998年にロシア、フランス、アメリカの共同チームで、3628mまで氷が掘られました。氷には、42万年分の大気を閉じ込められていることがわかりました。その氷は、地球の過去の気候を復元するのに、大きな役割を果たしました。
 湖は42万年前の氷より120mも下にあるので、50万から100万年前に閉じ込められた可能性あり、また非常に古い時代の環境を保存している可能性もあります。コアの掘削による汚染を防ぐために、掘削は一旦ストップされました。
 氷底湖、それも非常に古く深い湖は、地表の環境とは明らかに違っています。温度も低く、水圧も高く、もちろん光が全くない世界です。まさに、極限環境です。そこに突然、地表に通じる穴があいたら、湖の環境は、大きな影響を受けます。もしかすると、湖が汚染されるかもしれません。その汚染によって、弱い微生物なら絶滅するかもしれません。逆にその微生物が、地表に出てくることがあったら、猛威を振るってしまう病原菌になるかもしれません。ですから、汚染と検疫の両方の意味から、実体がわかるまで、両環境の接触は可能な限り控えるべきです。
 通常はケロシンという不凍液をつかって掘削がされていくのですが、この度、汚染に配慮した掘削がされました。湖面の数mに近づいたときから、熱ドリルというものが使われました。ドリルの先端を電気で熱を発生して、掘り進むものです。湖に達したとたん、水がボーリングの穴を上昇してきたということです。この結果、少なくとも湖の中に、人工的なものは入らなかったと考えられています。
 上がってきた水は、穴の中ですぐに凍ってしまいます。氷の上には、地表からの物質が満たされています。これで汚染を防止し、隔離も同時にできました。次に、凍った氷を再度掘って回収すれば、凍っていますが「湖の水」が手に入ります。それを注意深く扱って調べれば、微生物の有無(生死は不明ですが)や、その種類や生態もわかるかもしれません。もし見つかれば、それは極限環境微生物となるはずです。その湖に生物が発見されたかどうかのニュースは、寡聞にてまだ知りません。
 ボストーク湖はとっても深く大きいものですが、南極の氷底湖は、145個以上も発見されています。その多数の氷底湖のひとつから、新たな報告がありました。そこには明らかに微生物が見つかっています。それは次回としましょう。

・破壊・
地球上の微生物は、弱く見えてもタフな面もあります。
タフだとかといって、乱暴に扱っていい
というわけではありませんが・・・
人は、かつては、新しい環境を新天地として、
自分たちの益にすることばかりを考えてきました。
つまり、新天地とは、搾取の対象でした。
しかし、近年では、環境やそこに住んでいるかもしれない
微生物への配慮ができるようになりました。
それは、人自身への検疫ともなります。
たとえ微生物がいかなったとしても、
それは無駄ではないはずです。
今まで人は、取り返しのつかない破壊を
一杯してきましたから。

・猛吹雪・
北海道は、先日の猛吹雪で、数名の犠牲者がでました。
特に車で雪に埋もれた人たちのニュースには驚きました。
我が家も激しい吹雪の中を夕食にでたのですが、
無事だったのは運が良かったのかもしれません。
異常事態に感じ、避ける感覚も大切なのでしょうね。
数年前にも、近くの道で何台もの車が
雪に埋もれるということがありました。
その道は時々通る道なので、
まさかあそこでという思いもありました。
今回の犠牲もそんな場所でしょう。
自然の猛威を思い起こさせられました。