2013年3月21日木曜日

3_116 極限環境微生物 4:氷の天体

 氷の下の極限環境微生物を調べることによって、どんな科学的な展開が期待されるのでしょうか。そのような展望は、科学者の希望でもあります。ただそんな希望も、たったひとつの反例の発見で吹っ飛んでしまうのですが。

 南極の氷床の下に、氷底湖があることが、氷上の調査からわかっていました。古い時代にできた湖がそのまま保存されている可能性もあるし、非常に極限的な環境なので、今まで知られていない微生物がいる可能性もあります。そんな未知の氷底湖は、研究者の好奇心をくすぐるテーマとなります。
 昨年から、ロシア、アメリカ、イギリスの研究チームが、南極でそれぞれ別々の氷底湖への調査を競争をしていました。機先を制したのはアメリカのチームでした。真っ先にウィランズ湖に達し、生物を発見しています。その詳細が気になるところです。
 他の湖の調査も気になります。長らく違った環境に置かれると、生物は進化していくでしょう。それぞれの環境に応じた微生物の組み合わせ(群集といいます)になってくる可能性もあります。さらに、ロシアの狙っているボストーク湖は、非常に古い時代にできたようなので、生物種や生態が変わっているかもしれないので、興味深いものです。
 最後に、氷底湖でおこなう極限環境微生物の研究では、どのような展望が開けるか考えましょう。
 氷の下の冷たい水の中で暮らすということには、生物にとっては、大きなハンディになります。代謝が非常にゆっくりとしかおこなえない、栄養が極端に少ない、どうのように発生し、進化してきたのかなどの問題があります。
 代謝は化学反応ですから、低温では一般に反応は遅くなり、代謝も低下します。でも、深海や氷上、氷中の微生物が実際に見つかっているので、冷たいだけでは、特殊ではありますが、代謝が不可能ではなりことはわかっています。極限環境微生物は、栄養が少ないところでも、代謝がゆっくりと進むなら、なんとか耐えることができます。
 もっと重要な問題が指摘されています。氷底湖では、炭素の供給が非常に少ないという点です。生物は炭素を素材、栄養としています。氷底湖では物質循環がほとんど期待できないため、地下の岩石や底質などを利用していると考えられます。いずれにしても、非常に過酷な、極限環境になります。
 地球では、38億年前くらいには確実に存在していたという化石の証拠があります。生物発生については、まだ仮説ではありますが、化石という重要な事実があります。
 地球では、その後安定した環境(海と大気は存在し続けた)があったので、誕生した生物は、たっぷりと時間をかけて、多様な進化をとげました。そして、氷底湖の微生物へと特殊な進化も遂げました。
 地球では極限環境微生物が存在するという事実が、厳然としてあります。たとえいろいろな課題があったとしても、それは人智の及ばぬだけで、科学を進展させて解決していくしかありません。
 地球においては、氷底湖の微生物は、まさに極限環境微生物です。そんな極限環境は、南極や極地のほんの少ししかなく、地球生物の代表格にはなりません。ところが、地球外の天体では、普通の環境となるところもあります。例えば、木星や土星の衛星には、表面が氷で覆われた天体がいくつも見つかっています。氷の下に水がありそうな天体として、木星の衛星エウロパやカリスト、土星の衛星のエンケラドゥスやタイタンなどには、地下に水があるのではないかと考えられています。
 このような環境に、もし生物がいたとしたら、由来はともかく、氷底湖の生物の似た生活を強いられて、似た仕組みを持たなければ生きていけません。そんな生物の仕組みや生態を、氷底湖の生物の研究から推定できるかもしれないのです。
 他の衛星では、誕生の頃、天体自身がもっていた熱(重力エネルギーとよばれます)がありました。初期であれば、生物誕生や進化に必要なエネルギーの供給はなされたと思います。その後ある程度の時間、エネルギーが持続すれば、生物は多様に進化でき、氷の惑星になっても生きていける「タフさ」を持つに至ったでしょう。しかし、天体誕生後、短い時間で氷の惑星になってしまうと、生物が誕生できたとしても、進化が間に合わないかもしれません。「タフ」になるためには、時間をかけて進化し、多様性を持たなければなりません。「ひ弱い」状態の生物群であれば、極限環境を生き延びるのは困難かもしれません。
 まあ、これも常識的な考え、もしかしたら科学者の希望にすぎないのかもしれません。ひとつの事実が発見されれば、そんな考えはすずに覆されることになりす。

・春まだ浅く・
北海道は気温はだんだん暖かくなってきています。
確実に春に向かっています。
ぐしょぐしょの雪解け道を歩かなければなりません。
これがなかなかつらいものがあります。
しかし、まだ寒い日があったり、
雪が降る日もあります。
今週末にも、また雪が結構降りました。
今年の春は、まだまだ浅いようです。

・卒業式・
我が大学は、入試は終わりました。
そして今週は卒業シーズンです。
19日には大学の卒業式がありました。
なんと、長男と次男の卒業式も重なっています。
年度末と新年度にかけて今週以降、
慌ただしい日々が始まりそうです。