2012年8月23日木曜日

1_107 LHB 3:衝突スフェルール床

 LHB(後期重爆撃)の反論への議論がでてきました。LHBがあったとする考えに基づいて、古い地層から見つかった新たなデータ、衝突スフェルール床からの展開でした。

 前回、LHB(後期重爆撃)に対する反論があることを紹介して、主な反論として、2つを紹介しました。反論は、「データに偏りがあるのではないか」と「継続していた爆撃の最後の衝突ではないか」というものでした。これらの反論に対するさらなる反論(このようなものを議論と呼びます)は、なかなか困難であるということも紹介しました。
 ところが、2012年5月3日のイギリスの「ネイチャー」誌に、2編の論文が掲載されました。
 Impact spherules as a record of an ancient heavy bombardment of
Earth.
(地球の古い重爆撃の記録としての衝突スフェルール)
 An Archaean heavy bombardment from a destabilized extension of
the asteroid belt.
(小惑星帯の不安定外縁部からの太古代の重爆撃)
というものです。これらの論文は、LHBの現象に、新たな知見を加えるものでした。つまり、LHBがあったという立場で書かれた論文です。
 2つのいずれの論文も、古い時代の地層から見つかっているスフェルールの濃集した「衝突スフェルール床」を用いて調べられたものです。
 スフェルールとは、激しい衝突が起こると、落ちた隕石や衝突された地球の岩石が、溶けたり蒸発して飛び散ります。やがて冷えて小さな液滴となり、球状に固まります。球状に固まったものを、流星塵、宇宙塵などの分類に基いてスフェルールと呼んでいます。この論文では、「衝突スフェルール」とよんで、宇宙塵のものと区別しています。
 大きな衝突が起こると、スフェルールは、広い範囲に飛び散ります。白亜紀末の恐竜の絶滅を起こした隕石が、直径10kmでした。このサイズの衝突があると、全地球にその放出物が飛び散ることが確認されています。
 ですから、大きな天体(直径10km以上)の衝突があり、土砂がたまりやすい場に降ったスフェルールは、地層の中に薄い層として保存されていることが起こります。そのような濃集層を、「衝突スフェルール床」と呼び、何枚かみつかっています。
 今までに、34億7000万から32億3000万年前の間に7床、26億3000万から24億9000万年前の間に4床、21億から17億年前の間に1床が発見されています。今後も、衝突スフェルール床は、注意深い調査がなされれば、見つかる可能性があります。
 これらのスフェルール床を基礎データとして、論文は展開されています。その詳細は、次回としましょう。

・テクタイト・
小さな隕石で宇宙塵、流星塵と呼ばれるものが、
定常的にたくさん降ってきています。
その塵には、そのまま落ちてきたものと
地球落下時に溶けて球状になっているものがあります。
溶けて球状になっているものを
スフェルールと呼んでいます。
他にも、スフェルールに似たものとして、
テクタイト(tektite)があります。
テクタイトも、隕石の衝突によってできたもので、
溶けて液として飛び散ったものが
飛んでいるときに固まったガラス状のものです。
飛びながら固まったガラスは、
流線型や滴状、ボタン状などの
飛行していたような形態をしています。
スフェルールと起源は同じですが、
サイズが大きくものをテクタイト、
小さいものをスフェルールと呼んでいるようです。

・集中講義・
今週は集中があるので、
多分このメールマガジンを書いている余裕がありません。
ですから、一週前に予約送信しておきます。
一日4時間の授業を3日間することになります。
初めての経験です。
講義の準備はできているのですが、
体力と声が心配です。
50名あまりの学生受講しています。
本当はもっと少ない受講生を予定していたのですが、
広い教室で授業をすることになります。
まあ、頑張るしかありませんね。