2012年8月9日木曜日

1_105 LHB 1:ないことの意義

地球の年代区分は、岩石の記録にもとづいておこなわれます。岩石がなければなりません。記録が「ない」ことに、もし理由があれば、「ない」ことにも意味があるのかもしれません。今回は、後期重爆撃(Late Heavy Bombardment:LHB)があったのか、なかったのか、の話題です。

 地球のはじまりの時代は、「冥王代(めいおうだい)」と呼ばれています。冥王代のはじまりは地球の誕生で、終わりが40億年前くらいです。「くらい」といったのは、年代がはっきり定まっていないたいめです。終わりだけでなく、はじまりも、実ははっきりしていません。なぜなら、冥王代は、自己完結的に年代が定義されるものではなく、他力的、受動的に定義されているからです。
 冥王代のはじまりは、地球の誕生時となります。しかし、地球は多数の微惑星の衝突合体によって成長してきたものです。では、どの微惑星を地球とするのか、どの時点から地球と呼ぶか、などよって冥王代のはじまりは変わってきます。それに、今は亡き微惑星や成長中の原始地球を、時代の定義に利用することは、実証的ではありません。それに、定義によって変わります。
 冥王代の終わりは、次の時代の太古代のはじまりに当たります。太古代以降は、地球の年代区分として厳密に定義されています。そもそも年代区分とは、現存する岩石にもとづいて編成されているもので、その時代の岩石がないことにははじまりません。太古代のはじまりは、最古の岩石になります。太古代以降の年代区分は、岩石記載に基づいて構築可能となります。
 現存する最古の岩石は、40億年(正確には40億3000万年前)のものですから、それ以降が年代区分が成立することになります。太古代はじまり頃の岩石は、バラバラになっていることも多いですが、各種の岩石が分布しています。そして、38億年前ころからは、いろいろなところから見つかってきます。堆積岩もみられます。38億年前以降、大陸の面積あるいは体積が、保存可能などに大きくなり、安定して存在していたのかもしれません。38億年前ころからあちこちに岩石が見つかることに、何か意味があるのでしょうか。
 38億年前より古い時代は、陸が少なく、陸の岩石も少ないために、稀にしか残されなかったのでしょうか。陸形成は、海と密接な関係があるので、海が38億年前から安定的に存在できるようになったのかもしれません。
 あるいは、陸はそれなりあったのが、消してしまうような事件が起こったのかも知れません。特別な事件があったというには、それなりに証拠が必要になります。
 アポロ計画で月の岩石が大量に持ち帰られました。月の岩石や砂粒の年代測定に基づいて月の形成史が編まれました。そこから、40億年前(41億年前とすることもあります)から38億500万年前の間に、激しい隕石の衝突があったことがわかりました。これを根拠に、特別な事件が考えられています。
 隕石は、惑星の公転軌道より外から飛来して、軌道を横ぎるときに衝突するものです。地球の衛星の月に隕石が大量に落ちてきたということは、地球にも同じ程度に落ちてきた可能性があります。このような隕石の爆撃は、地球形成時に起こった激しい隕石の衝突よりもあとの時期なので、後期重爆撃(Late Heavy Bombardment)と呼ばれ、LHBと略されています。
 38億年前より古い岩石があったことは、より古い鉱物(42億年前)の存在からわかっています。陸があったとしても、LHBによって地殻がひどく破壊されてしまったので、38億年前より古い岩石が見つからないのかも知れません。しかし、その考えにはいくつかの反論があります。その反論の内容は次回としましょう。

・真夏の夜の夢・
LHBとしましたが、いくつかの名称があります。
月激変(Lunar Cataclysm)や
後期隕石重爆撃(Late Heavy Meteor Bombardment)などがあります。
ここでは、地球に適用しているのでLHBを用いました。
月はアポロ以来人類はいっていません。
無人探査機(かぐやなど)は、月を訪れていますが、
せっかくの人類のフロンティアとして
開拓された月が遠くなっています。
有人火星探査などもいわれていますが、
費用、技術、危険性などを考慮すると
よっぽどの必要性がないと
実施には踏み切れないはずです。
夢として語るのならいいのですが、
現実性を考えるなら、
有人による月探査の再開のほうでしょう。
そんなことを真夏の夜の夢として考えています。

・集中講義・
いよいよ大学は、定期試験も終わり夏休みに入ります。
ただし、集中講義が8月下旬にあり、
受ける人はお盆明けから大学講義です。
私も、集中講義の担当になっています。
その準備をお盆中にしなければなりません。
なかなかきの休まらない日々が続きます。