2020年5月28日木曜日

1_177 大陸地殻の新知見 2:クラトン下のマントル

 マントルは地殻より下にあります。マントルを直接調べるのは、限られた方法しかありません。キンバーライトという特異な火山岩から、今まで知れられていなかったクラトン下のマントルが見つかりました。

 3つの大陸地殻の新たな知見を発表順に見ていきます。
 まずは、The metasomatized mantle beneath the North Atlantic Craton: Insights from peridotite xenoliths of the Chidliak kimberlite province (NE Canada)(北東カナダ、北大西洋クラトン下の汚染されたマントル:チャドリカ・キンバーライト地区のカンラン岩捕獲岩からの観点)というタイトルの論文から紹介していきましょう。
 この論文では、キンバーライトと呼ばれる岩石の捕獲岩からわかったことが報告されています。キンバーライトは、特異な火山岩です。非常に深部(150km以深)で特徴的なマグマと形成されます。その特徴は揮発成分に富むこと、そしてなんといってもダイアモンドを伴うため、古くから知らています。ダイアモンドの存在から、超高速(30~60km/時)で上昇してきたことがわかります。なぜなら、ダイアモンドは超高圧下でしか形成されず、地表では不安定な鉱物です。そのため、ダイナモンドが別の鉱物に変わる前に一気に圧力低下して準安定のまま地表に上昇したことになります。そしてキンバーライトは、古い大陸地殻にのみ見つかっています。
 キンバーライトには、経路にあった岩石も捕獲して上昇してきます。キンバーライトはダイアモンドだけでなく、地下深部の情報も一緒に持ってきます。そのような岩石を捕獲岩といいます。この報告では、チャドリカのキンバーライトの捕獲岩のうち、120個のカンラン岩と輝石岩から、この地域のクラトン下のマントルの様子を探っています。いずれも大陸下のマントルを構成していた岩石だと考えられています。
 チャドリカのマントルは、カンラン石(フォルスレライト成分に富むもの)が多いことが特徴です。他の地域でのクラトン下のマントルは、単斜輝石岩(単斜輝石に富むカンラン岩)のマントルからできています。チャドリカのマントルは、一般のものとは異なっています。似たものは、北大西洋クラトンと呼ばれるマントルに似ています。北大西洋クラトンは、現在のように大陸が分裂する以前に存在したクラトンです。北大西洋クラトンは分裂し、現在ではスコットランドやグリーンランド、カナダ東部のラブラドール地方などで見つかっています。今回の研究で、バフィン島下での存在が初めて明らかになりました。
 チャドリカのマントルは、典型的なクラトンのものより、かなりの程度溶融してマグマを出した(メルト成分が枯渇している)マントルになっていました。マグマを出したマントルは、カンラン石の比率が多くなり、このようなものを枯渇したマントルと呼んでいます。
 その後、珪酸ー炭酸塩の交代作用(metasomatism)が起こっています。この交代作用は、大陸が分裂する前の現象だとしています。交代作用は、ラブラドール海を挟んだ北大西洋クラトンが、ジュラ紀の240kmから古第三紀の65kmに接近してきた時、地殻の薄化が起こったことが重要な役割を果たしたと考えられています。
 論文の内容は、このように淡々とした記述になります。また、この論文は、もともと過去のクラトンについて調べようとしたものではなく、キンバーライトの捕獲岩を調べていたところわかったことです。まあ、予想外の成果となります。

・緊急事態宣言解除・
全国的に緊急事態宣言が解除されました。
感染者数は一時の数と比べると
だいぶ少なくなってきました。
しかしまだ、小さなピークが繰り返し起こりそうな様相です。
北海道で繰り返しピークがあります。
一気に日常に戻るのは危ないはずです。
少しずつ様子を見ながらでしょう。
しかし、感染していない人が多いのであれば、
いつでも大量感染が起こる危険性があります。
全員の抗体検査で感染状況を調べることと
ワクチンか治療薬の開発が
決定的な解決になると思います。

・学生支援・
大学は、前期は原則はWEB講義になっています。
ただし、大学から全学生に対し支援金が支給されます。
また、文部科学省からの学生支援緊急給付金もあります。
国の給付金は、一部の学生にしか支給されません。
条件がいろいろあり該当しない学生も多くなります。
支給されない学生には、
仕送りの低額化、アルバイトの中止(休業補償がない)で、
かなり厳しい生活を強いられています。
そのような学生の中には、
大学を継続できるかどうかの瀬戸際の学生もいます。
ケチらず、全学生を支援してもらいたいものです。

2020年5月21日木曜日

1_176 大陸地殻の新知見 1:3つの論文

 2020年になって、大陸地殻に関する論文が相次いで報告されました。いずれも大陸の形成や特徴に関するものです。今回のシリーズでは、それらをまとめて紹介していくことにします。

 まずは、発表順に論文タイトルを紹介していきましょう。2020年1月7日、イギリスの専門雑誌「Journal of Petrology」(岩石学の雑誌)に報告されたものは、
The metasomatized mantle beneath the North Atlantic Craton: Insights from peridotite xenoliths of the Chidliak kimberlite province (NE Canada)
(北大西洋クラトン下の汚染されたマントル:チャドリカ・キンバーライト地区のカンラン岩捕獲岩からの観点)
でした。
 3月2日、イギリスの科学雑誌「Nature Geoscience」に報告されたのは、
Limited Archaean continental emergence reflected in an early Archaean 18O-enriched ocean
(初期太古代の18Oに富んだ海洋を反映した限定された太古代の大陸出現)
でした。(注)18Oとは酸素の同位体で質量数18のものの比率をいいます。
 3月17日、イギリスの専門雑誌「Journal of Petrology」に報告された、
Eclogite and garnet pyroxenite xenoliths from kimberlites emplaced along the southern margin of the Kaapvaal craton, southern Africa: mantle or lower crustal fragments?
(南アフリカ、カープヴァール・クラトンの南縁に沿って定置したキンバーライトからのエクロジャイトとざくろ石輝石岩の捕獲岩:マントルもしくは下部地殻の断片か?)
でした。
 いずれも専門書の論文のタイトルなので、日本語訳を読んでもよくわらかないと思います。その内容は、次回以降、順次紹介していきます。
 最初の論文の調査地は、カナダ北東部のバフィン島の北大西洋クラトンで、2つ目の論文は、オーストラリア北西部のピルバラ・クラトン、3つ目は南アフリカのカープヴァール・クラトンです。いずれもクラトンという名称がついています。論文の紹介の前に、クラトンの説明からはじめていきましょう。
 クラトン(craton)とは、大陸地殻の中でも、非常に古いもの(先カンブリア紀)を意味しており、「安定地塊」、「楯状地」などとも呼ばれています。安定地塊とは、古くから存在している大陸地殻なので、それは安定していることを意味しているために呼ばれています。また、楯状地とは、古い時代に形成され侵食され、地形も平らでなだらかになって盾状になっているという意味です。
 地球にはクラトンと呼ばれてるものがいくつかあります。論文で出てきた以外にも、カナダ楯状地、バルト楯状地、シベリア卓状地、ブラジル楯状地、アラビア楯状地、シナ地塊(アジア大陸東部)など、大きさはそれほどではないですが、古い時代の大陸の様子や大陸形成についての研究では重要な地域となります。
 次回から、それぞれの論文を紹介してきましょう。

・緊急事態宣言・
全国の新型コロナウイルスの感染者数は
自粛を進めたため、だんだんと減ってきました。
ただし、いくつかの地域では、
緊急事態宣言はまだ継続中となっています。
北海道も緊急事態宣言は、まだ継続中です。
北海道でも、いくつかの地域で発生しています。
わが町では感染者は6人ですが、
市内での確認は8人となります。
少ないといえば少ないのですが、
札幌の隣の石狩管内なので、
札幌の同列に扱われています。
致し方がないのですが、少々長い自粛が続いています。

・どさくさ紛れ・
大学はWEB講義も3週目となりました。
なんとなくリズムがでてきたのですが、
大変さはが経るわけではありません。
新たに準備すべきことが、例年以上に多くなります。
そのため、未だにとまどっている人もいます。
また、大学の会議も遠隔になりました。
発言が少なくなるようで、
時間短縮になり、これはこれで効用もありそうです。
しかし、大事な議題も流されると困ります。
国会でも無法な法案を通そうしましたが、
検察庁法改正法案はだけは
国民の声で阻止できました。
今の政府は、こんなどさくさ紛れの所業が
いろいろと目に付きます。
困ったものです。

2020年5月4日月曜日

6_175 月の地質図 2:レゴリス

 月の表面は、レゴリスと呼ばれる堆積物に覆われています。レゴリスの形成過程から、いろいろ読みとれることがあります。月の歴史、そして地球や他の天体の歴史も、読み取ることも可能となります。

 月の表面は、砂のようなレゴリス(regolith)に覆われています。レゴリスは、聞き慣れない言葉です。アメリカの地質学のメリル(Merrill)が1897年に「風化や植生などでその場できた物質による被覆層」や「風、水、氷などで運ばれ分解された破片」に対してはじめて使いました。その後、惑星や月の探査で、天体表層を被覆する堆積物がたくさんあることから、レゴリスという用語がよく使われるようになりました。
 月には大気も水ないはずなのですが、岩石が砕かれて破片になっていることは、どういう意味があるのでしょうか。月では、破片をつくるような作用には、隕石の衝突しかありません。隕石の衝突は非常に稀な現象に思えますが、大気も水もないので、一度できたクレータは侵食を受けることがなく残り、レゴリスも次のものが飛び散って覆うまで残っています。
 クレータは、付近に別の隕石が落ちれば形が壊され、レゴリスに覆われていきます。稀な現象でありますが、確率的には、古いクレータほど、後の時代のクレータによって破壊されることになります。近接するクレータ同士では、破壊された形状やレゴリスの覆い方から、新旧の判別が可能になります。
 前回紹介した、黒っぽい岩石からできている地域はクレータが少なく、白っぽい地域はたくさんのクレータができます。これは、黒っぽい地域が新しい岩石(35億前から30億前)で、白っぽい地域が古い岩石(45億前から40億前まで)であるという、アポロの年代と一致します。このようなクレータを密度から、年代を見積もる「クレータ年代学」も考案されています。年代測定の試料の手に入らない天体であっても、クレータの数から密度が見積もれれば、その地域の年代を推定することが可能になります。
 クレータの形成率を時代ごとにみていくと、古い時代ほどクレータの形成率が高く、新しくなるにつれて減っていくという現象も見つかりました。これは、太陽系の形成の初期に、大量の隕石が落下したこと、つまり隕石が初期に一気に集積したことを意味しています。惑星の公転軌道にあった隕石が、惑星(例えば、地球)や衛星(例えば、月)となる大きな天体に、集っていったことになります。このような天体の形成は「暴走成長」モデルと呼ばれています。
 月の大きなクレータには、すべて名前がつけられています。クレータの中でも大きなものは、飛び散らさせた破片やレゴリスなども多くまります。そのような大きなクレータの衝突時期を、時代の区切りに利用し、クレータの名称が時代名にされています。
 月では、岩石の種類と時代が、ほぼ推定できるようになりました。そこから、全月の地質図が作成されました。

・課題とコメント・
いろいろWEB講義が今週からはじまりました。
ゼミナールのメンバーに対しては、
すでにテレビ会議システムで
個別面談やゼミをスタートしています。
問題は、大人数の講義です。
いちおうWEB講義は作成していますが、
動画を使わないように、
資料と課題提出で講義を進めることになりそうです。
100名を超える授業が2つあるので、
課題に対して、すべてコメントをすることは不可能です。
どうしたものか考えあぐねています。

・高くつく教訓・
新型コロナウイルスは疫病ですから
だれのせいでもありません。
したがって、その渦中の国や地域は
その対処をしていくしかありません。
淡々と自粛を継続していくしかありません。
本来なら、完全が外出自粛を徹底すれば、
もっと早くおさまったかもしれません。
日本では、100年前のスペイン風邪以来の疫病なので、
準備不足と指導者の無能を露呈してしまいました。
自粛をもっと継続することになります。
高くついた教訓となりそうです。

2020年4月30日木曜日

6_174 月の地質図 1:白と黒の違い

 月の地質図が新たに作成され、公開されました。月は地球とは全く異なった進化をしています。地質図もかなり異なったものになるはずです。月の地質図を紹介してきましょう。

 2020年4月20日に米国地質調査所(United States Geological Survey)は、月の地質図を作成して公表しました。その地図は以下からダウンロードできます。
 この地質図は500万分1の縮尺ですが、大きなサイズの画像もあり、詳細に地質が描かれています。この地質図は、北半球と南半球に分けたもの(丸いかたち)と、メルカトール図法の平面図(横長の四角)で表示がされています。また、地質時代も細かく分けられています。
 ご存知だと思いますが、月は常に地球に同じ面を見せています。これは、月の公転が地球に共鳴しているため、やや重い側を地球に向けるようになっています。地球に向けている側を慣例として表側と呼びましょう。月の裏側の様子は、地球から見ることはできません。ですから、月にいって、裏側に回り込まないと、裏面を見ることができません。
 月の探査機は、米ソの冷戦時代をきっかけ活発になされ、Apollo計画で有人探査がなさました。有人探査も表側での調査でした。しかし、裏側も見ることができました。その後も月の探査は、とぎれとぎれですが、継続しています。
 月の裏側は、表側とは全く異なったものになっていることがわかってきました。表側は、黒っぽいものと白っぽいもので模様ができています。白っぽいところにはクレータが多く、黒っぽいところは少なくなっていました。裏側は白っぽく、多数のクレータがありました。
 Apollo計画で試料が持ち帰られたので、岩石の特徴や形成年代もわかりました。月の表明はすべて火成岩からできており、白っぽいところは形成年代が古く、花崗岩の仲間(長石の多い岩石、アノーソサイトと呼ばれています)でています。また、黒っぽいところは、新しい時代の玄武岩からできていました。新しいとはいっても、35億から30億年ほど前で、白っぽいところは45億年前から数億年ほどでできています。その後は、月のマグマの活動はありません。
 月の表面には砂のようなもの(レゴリスと呼ばれています)で覆われています。これらは地球では堆積物に相当するのですが、月では地球のようなでき方とは異なっています。月には大気も海洋もないので、地球のような風や水による堆積物はできません。
 では、月でどのようにしてレゴリスはできたのでしょうか。次回としましょう。

・WEB講義・
大学でのWEB講義が来週からはじまりますが、
ゼミナールのような講義は、事前にスタートしています。
私は、今週からWEBでテレビ会議システムを使って、
いくつかのゼミナールをはじめることにしています。
このメールマガジンは、テレビ会議システムを
はじめる前に送信しています。
テレビ会議システムでは有名なZoomも試して、
それなり使いやすかったのですが、
大学では別のシステムを、
使うことになっていますので、
私はそれを使うことにしました。
うまくいのでしょうか、少々不安です。
まずは、やってみることでしょう。

・指導者・
新型コロナウイルスの緊急事態宣言は
連休明けに終わるのでしょうか。
感染者の増加率を見ていると、難しそうです。
多分今までの対策のことごとくが、
中途半端だったようです。
やるときは対処に一気に徹底的に進めるべきでしょう。
孫氏の兵法にもそうあります。
緊急事態、非常時に弱い指導者は
問題をより大きくしてしまいますね。

2020年4月23日木曜日

2_182 真核生物の誕生 7:進化モデル

 古細菌から真核生物への進化の鍵を、ロキアーキオータが握っているようです。ロキアーキオータの培養が成功した結果、実態が明らかになってきました。古細菌から真核生物への進化の道筋が見えてきました。

 井町さんたちが培養に成功したロキアーキオータは、MK-D1株と呼ばれていました。では、MK-D1株とは、どんな生物なのでしょうか。培養に成功したために、DNAや形態の特徴などが詳しくわかってきました。
 MK-D1株は、酸素のない環境でしか培養できませんでした。ですから、嫌気性の生物となります。細胞を電子顕微鏡で観察をすると、直径550nmという非常に小さい球形でした。他の古細菌と同様に、単純な細胞であることもわかってきました。ただ、細胞の外に向かって、特異な触手のような長い突起を伸ばしたり、多くの小胞を放出することがあるのもわかりました。
 DNAの解析も進められました。MK-D1株には、真核生物に特有のゲノム(アクチンやユビキチンなどを作るための遺伝子)をいくつも持っていることがわかりました。分子系統樹からみると、原核生物としては、真核生物にもっとも近縁であることもわかってきました。
 MK-D1株と呼ばれるロキアーキオータは、無酸素の環境でしか生きられず、古細菌として単純な細胞内の構造しかもたない生物でありながら、真核生物に似た特徴もいくつも持っています。形態的にも不思議な特徴をもっていました。
 不思議な形態は、増殖が終わったときに現れます。長い触手のような突起を外に伸ばし、小胞を外に出すという、活動をします。これは、他の古細菌やバクテリアではみられない特徴です。では、なんのために、このような不思議な活動をするのでしょうか。
 MK-D1株は、形態の特徴や、古細菌でありながら真核生物のDNAに似ていることなどから、古細菌から真核生物への進化の道筋が推定されています。その進化の仮説は、前に紹介したE3モデル(Entangle-Engulf-Endogenize model)と呼ばれるものでした。その仮説をアニメーションにしたものが公開されています。この動画には、発見から培養の様子もまとめられています。興味ある方は、御覧ください。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=18&v=p1Zr4t6Vmtg&feature=emb_logo
 このアニメーションでは、ロキアーキオータの祖先(MK-D1祖先と呼びましょう)は、次のような進化シナリオを紹介します。
 酸素のない時代から、酸素の多い時代になってくると、MK-D1祖先は酸素を利用できるミトコンドリアに触手を伸ばしていきます。MK-D1祖先は栄養をミトコンドリアに供給します。ミトコンドリアは酸素を利用して水素を排出します。硫黄還元菌はその水素を利用してアミノ酸を合成します。そのアミノ酸をMK-D1祖先が利用していきます。ばらばらであると効率が悪いので、MK-D1祖先が放出した小胞がミトコンドリアに付着して、からめてくっつきます(Entangle)。MK-D1祖先から細胞膜が広がり、飲み込み(Engulf)、やがて細胞内に融合していきます(Endogenize)。
 井町さんたちは、「単純な細胞構造を持つ無酸素環境下で生育するアーキア」から「複雑な細胞構造を持ち酸素で呼吸する我々真核生物」へとなっていくという新しい進化のE3モデルを提案しました。
 今後、MK-D1株のより詳しい研究が期待されます。

・緊急事態措置・
日本全土で緊急事態宣言がでました。
北海道も緊急事態措置の対象となりました。
大学でも、健康診断などの一部の行われる予定の行事も
すべて中止になりました。
職員もかなりの割合が在宅勤務となりました。
教員も可能な限り自宅待機となっています。
ただし、私は大学の研究室にこもっています。
会議は仕方がありませんが、
あとは極力、電話やメールですませています。

・学ぶチャンスに・
緊急事態で大学の講義が中止、延期
校務が最小限になっているため、
研究に専念しています。
いいことか悪いことかはわかりませんが、
研究が進みます。
この時期をチャンスに研究や教養、趣味など
今まで時間がなくて、できなかったことに
集中するのがいいのではないでしょうか。
私は研究に専念しながら数学の学び直しをしています。

2020年4月16日木曜日

2_181 真核生物の誕生 6:ロキアーキオータ

 古細菌の中でも深海底の広く分布していて、真核生物に近い種類があることがわかってきました。これまで困難だったその古細菌の培養を、やっと成功しました。その間、12年もかかって実験が試行錯誤されていました。

 ロキアーキオータが、世界中の海底堆積物にかなり広く存在していることは、以前から知られていました。ところが、その実態は不明でした。その理由は、ロキアーキオータだけを取り出して調べることできなかったからです。井町さんは、それにチャレンジしていました。その方法と実態解明には長い年月がかかっています。
 2006年5月、「しんかい6500」で南海トラフのメタン湧出帯(水深2533 m)から採取した深海底堆積物を、実験室で同じ条件で、約2000日間、培養をおこないました。当たり前のことですが、堆積物中には、多様な微生物が混在していることが、確認されました。
 次に、微生物群からバクテリアを除いていって、残った生物群を培養していきました。1年後に、少数の古細菌のロキアーキオータとその他数種類の微生物だけの状態にできました。次に、培養の物質や条件を整えながら、ロキアーキオータのみを抽出するという実験を続けました。最終的に、ロキアーキオータと、もうひとつの古細菌の2種が共生している(共培養系と呼ばれています)状態にまで、分離することに成功しました。それは、2018年のことでした。深海生物採取から12年もかけて、やっと成功したのです。この古細菌は、Prometheoarchaeum syntrophicum MK-D1株と名付けれました。
 ロキアーキオータ培養が難しかったのは、増殖の速度が非常に遅いことと、細胞のがあまり密集していては増殖できないためでした。増殖の速度とは、細胞が倍になる時間で比べられるのですが、実験によく用いれる大腸菌と比べると1000分の1の速度(ロキアーキオータの倍加時間は14日から25日)しかありませんでした。また、細胞ができるだけ密集させて培養する方が効率がいいのですが、あまり密集すると増殖速度が遅くなることもあります。増殖するもっとも多い密度を「最大細胞密度」といいます。ロキアーキオータの最大細胞密度も、大腸菌と比べて1000分の1程度(~10万 個/ml)の遅いものでした。
 さらに、ロキアーキオータは、単独では生きられず、別の生物との共生によってしが生きることができない生物でした。共生していた生物は、メタン生成古細菌(Methanogenium属と呼ばれる仲間)でした。
 ロキアーキオータは、ゆっくりと、少しずつしか増えず、密集もしない、ある種とのみ共生しないと繁殖できないという、非常に特殊な生き方をしている生物でした。そのため、非常に培養が難しかったのです。この困難を克服して井町さん、ロキアーキオータの培養に成功したのです。
 では、ロキアーキオータとは、どんな生物だったのでしょうか。次回としましょう。

・札幌休校・
北海道と札幌市では
先週に新型コロナウイルスの感染者の急増で
再度、札幌市内の小・中・高校の休校が決まりました。
再度一月ほどの休校になります。
授業の遅れもさることながら、
児童たちの心のケアは大丈夫でしょうか。
特に、新入生や今年度卒業予定で受験がある
児童生徒は非常に不安だと思います。
大学も同様です。
新入生へのケアが十分できないので心配です。

・マスク不足・
マスクが不足しています。
幸い我が家はまだ数枚買い置きがあります。
それを予備に保存することにして、
古いものを洗っては使いまわししています。
不織布で丈夫なので、なんとからなっています。
でも、ガーゼや布マスクは本当に有効なのでしょうか。
配布するなら、その費用と
国を挙げての増産を願いたいものです。
布もいいのですが、効果からいえば、
不織布にしてほしかったですね。

2020年4月9日木曜日

2_180 真核生物の誕生 5:メタゲノム解析

 新型コロナウイルスで利用されているPCR装置は、生物の進化の探求でも活躍しています。PCR検査では、一つの種類にしてDNAを調べるのが理想なのですが、できない時でもメタゲノム解析として利用されています。

 古細菌のロキアーキオータは、2015年にスウェーデンの研究グループが、生物学的な重要性を示しました。研究グループは、深海堆積物に生息する古細菌群の存在をゲノム解析で見つけました。ただし、このゲノム解析は、通常のゲノム(遺伝子)解析ではなく、メタゲノム解析と呼ばれるものでした。
 通常のゲノム解析は、目的の生物だけを集めて、そこからDNAを取り出して分析して解析していきます。生物の数が少ないときは、集められるDNAの量も少ないのですが、一定の手順でDNAを増殖させてから検出します。新型コロナウイルスで話題になったPCR(polymerase chain reaction)装置が利用されています。PCRはポリメラーゼ連鎖反応のことで、DNAの特定の領域を増殖(100万から数10億倍)させていくことです。PCR装置では、自動で増殖して解析していく装置になります。
 ただし、PCR検査をするためには、目的の生物だけに分離してから、DNAを抽出していかなければなりません。つまり、目的の生物だけを一定量集めておかなければなりません。もし目的の生物だけを分離できないときは、DNA解析をしても、雑多な生物のDNAのを読み取ってしまいます。それがメタゲノム解析という方法です。
 メタゲノム解析は、生物が分離できない場合に利用される方法です。解析の結果から、ある生物に特有のDNAをが見つかれば、その生物がいることが特定できます。例えば、特定の代謝機能を担っているDNAを調べることで、そのような代謝をする生物がいるかどうかを、探すことができます。
 深海堆積物からロキアーキオータの仲間を集めて、メタゲノム解析をしました。ただし、このとき単一の生物種かどうかは不明のままでの分析だったので、メタゲノム解析です。ロキアーキオータ群から、真核生物に特有とされてきたゲノム(遺伝子)が多数見つかりました。他のロキアーキオータに類似している古細菌にも、似た性質をもっているものがあることがわかりました。これらの真核生物に似た古細菌類を、ひとつにまとめにして(上門という区分になる)、「アスガルド上門」に区分しました。さらに彼らの研究では、アスガルドの仲間がもっとも真核生物の起源に近い古細菌であることもわかってきました。ところが、細胞の様子、生活の状態、生存の環境・条件などの実態は、まだ全くわかっていませんでした。
 実態の解明には、アスガルド上門に属するいずれかの古細菌を、実験室でひとつに種として培養して、詳細に調べる必要がありました。この培養が、真核生物への進化において、重要な課題になると世界的に大きく期待されていました。
 そこで登場するのが、井町さんの研究成果です。次回としましょう。


・WEB授業・
大学は4月一杯は休校となり
5月もWEBでの授業になります。
教職員は混乱しています。
どのようにして授業をすればいいのか、
それは教員一人のスキルでできることなのか。
全学生が同等に受講できるか
などなど、いろいろな疑問もあります。
今週から講習会がありますので、
それに参加してから、どうするかを
考えていきたいと思っています。

・調査費・
学内の競争的資金が採択されたのですが、
申請内容は調査費がメインでした。
本州が2回、道内が数回という調査予定でした。
ゴールデンウィークと5月に調査予定を入れていました。
それが、今回、出張が禁止となりました。
野外調査を中止せざる得ませんでした。
そのため研究費の執行の内容を
変更しなければなりません。
それを関係者と相談していきたいと考えています。