2021年9月2日木曜日

1_195 地球内の月 1:惑星形成のシナリオ

 月はジャイアント・インパクト(巨大衝突)で形成されたことは、今では多くの人が知るようになってきました。衝突の事件は、太陽系の惑星形成の初期に起こったものです。そのシナリオを見ておきましょう。


 月の起源に関して、かつてはいろいろなモデルがありました。その多くは、科学的根拠の乏しいものでした。20世紀後半になり、アポロ計画による月の探査と、そこから持ち帰られた試料での多様な成分での、精度のよい化学分析が大量になされました。一方、地球の科学的探査、隕石の化学分析なども進んで、月と地球、隕石などの詳細な化学的データの対比などから、その類似と相違が見極められてきました。またコンピュータの発展にともなって計算機シミュレーションも進み、ジャイアント・インパクト説が有力となってきました。

 ジャイアント・インパクトの事件は、太陽系が形成された頃のできごとです。この事件は、太陽系形成の頃のシナリオに基づいています。太陽系形成のシナリオをみておきましょう。

 太陽系ができて間もない頃は、熱いガスの状態だったのですが、温度が冷めるにしたがって、ガスから固体が凝縮してきました。固体は集まりながら粒となり、小さな石となり、石同士が衝突し合体して、やがて大きな天体(微惑星と呼ばれました)へと成長していきました。微惑星同士も衝突合体して、太陽系には火星サイズの惑星(原始惑星)だけになっていきます。最終的には、太陽系の公転軌道に、現在の数ほどの惑星だけになっていきます。

 太陽からの距離によって、惑星になるための材料(固体)は、近ければ金属鉄と岩石で、遠くになるとそこに氷(H2Oの固体)が加わります。氷ができる境界は、火星と木星の間です。火星から地球の間では、H2Oは液体(水)としても存在できる領域でした。

 太陽から遠くでは氷の成分が多かったので、惑星の質量も増え、周囲も大量にあったガスを集めた巨大ガス惑星(木星、土星)ができました。離れるにつれて、惑星の成長速度が遅くなり、遠くでは惑星が成長する頃には、ガスも少なっていて、氷だけがたくさん集まった氷惑星(天王星、海王星)ができました。

 これが太陽系の惑星形成のシナリオで、惑星のおおまかな特徴が説明できます。

 さて、微惑星が集まり、原始惑星になる段階で、大きな衝突が起こります。原始地球になったあと、最後の原始惑星の衝突で、月ができたと考えられます。これが、ジャイアント・インパクト説となります。詳細は、次回としましょう。


・調査予定が組めない・

緊急事態宣言の発令で、

9月予定していた道内の野外調査も

どうなるかは不明なになりました。

12日まで緊急事態宣言の期間の予定ですが、

その直後からなら、調査ができる予定を組めるのですが、

次の週からは、授業がはじまるため、

長めの調査出張はできません。

ぎりぎりのところで調整が進みそうです。


・八方塞がり・

北海道は、3度目の緊急事態となりました。

前回までの違う点は、感染者が都市部に集中するのではなく、

都市周辺地域から地方まで広がっている点です。

そのため、以前は都市部での警戒でよかったのですが、

今回は道内の各地での自粛しなければなりません。

しかし、地方でも感染が広がっているのは、

もう、自粛や警戒が効かなくなってきているためでしょう。

長い期間におよぶ自粛と開放の繰り返しは、

多くの人から緊張感、警戒感を奪っています。

また一部の人はワクチン接種をしているので

それも警戒感の緩みを招いているのでしょう。

八方塞がりの状態ですね。

2021年8月26日木曜日

2_199 LUCA 8:生命誕生のシナリオ

 ここまで述べてきた根拠をもとに、大胆な生命誕生のシナリオが導かれます。LUCA、天然の原子炉、CPR、OD1、白馬OD1のそれぞれの特徴が、時間を遡ることで収斂されていきます。


 白馬OD1から、生命の起源、LUCAへどう迫るでしょうか。

 CPRがその候補になっていました。CPRは、初期生命であっていいほど単純(小さい遺伝子数)だからです。CPRの中でもOD1がもっとも原始的で、超還元的な環境で水素をエネルギー源とする生きることなどから、もっとも原始的な生物ではないかと考えられています。

 このようなことから、OD1はLUCAの最も近いと生物ではないかと考えられています。では、OD1がどのようなシナリオで原始の地球で誕生したのでしょうか。

 初期の大陸は、地下の温度(地温勾配といいます)も高く、カンラン岩の組成のマグマ(コマチアイト質マグマと呼ばれています)が各地で噴火していたと考えられています。そのため、地表はカンラン岩質の火山岩が広く覆われていたと推定されます。

 一方、前に紹介したように、時代を遡ると、放射性ウラン(235U)の濃度が大きくなり、天然の原子炉となるような場も、多数あったと推定されます。放射壊変にエネルギーで温められた地下水は、まわりのカンラン岩を蛇紋岩化作用を進めていくことになります。その結果、地下水は水素を多く含んだ熱水となり、超還元的熱水が供給される場が多数できます。

 冥王代の地下では超還元的条件の熱水が多数でき、そこではOD1がもっとも生息しやすい環境なので、OD1がLUCAになるのではという仮説です。その後も時代変化を考えたシナリオは続きますが、このエッセイではここでにします。

 重要な点は、OD1がもっとも原始的な生物であること、OD1が蛇紋岩化作用に由来する還元的な場で生きていることです。過去ほど天然の原子炉が多くでき、それを熱源とした熱水とカンラン岩が反応し冥王代に、OD1の好む環境が出現します。少々複雑な条件設定ですが、これがOD1がLUCAとなるというシナリオです。

 日本の白馬の温泉という身近な場ですが、特異な温泉から見つかった微生物群が、天然の原子炉、そして最初の生命、LUCAではないかというシナリオが展開されています。なによりも、白馬OD1を発見し、そこからこのようなシナリオを考えた研究者たちの発想力に驚かされます。身近なところから、新しい学問体系が生まれつつあります。

 ここまで紹介したシナリオは、仮説や推測が多々あるのですが、理詰めで進められています。疑問もあります。最初の生物は一つ生物種に収斂するのでしょうか。もしかすると、いくつもの生物らしきものが寄せ集まって(共生)できたのではないか(ウイルスの進化説)などもあります。今後もこのシナリオは練っていく必要があるでしょうね。


・集中講義・

今週は、4日間、対面での夏期の集中講義があります。

受講者は少ないので、通常の教室を用意していたのですが、

北海道のコロナ感染拡大への対処として

大きな教室を2つ用意し、交互に使うことになりました。

広い教室で感染予防はできるのでしょうが、

少人数だと広すぎる教室は少々違和感がありますね。


・職域接種・

大学の職域接種の日程がやっと決まりました。

北海道の感染拡大の時期だったので、

タイミングとしては、少々遅い感があります。

7月に申請したのですが、何度も延期の連絡があり、

なかなかワクチンの供給が決まりませんでした。

教職員や学生には、他の職域接種や地方自治体で

すでに受けている人もいるようです。

しかし、大学所属の人みんなが受けるチャンスがあれば、

大学としては、コロナ対策がかなり進んだことになります。

しかし10月上旬までかかりそうですが。

2021年8月19日木曜日

2_198 LUCA 7:白馬OD1

 ここまで、CPRのうち、OD1がもっともLUCAに近いことを紹介してきました。今回は、日本で発見されたOD1を紹介します。そればどのような特徴を持っており、どこで見つかり、どのような意義があるのでしょうか。


 生物の多くは、他の生物に依存することなく光合成で栄養をつくて生きる植物が生態系の中心にいます。これは、現在の多くの地球生物が、太陽エネルギーを利用した体系となっています。しかし、太陽光が届かない深海でも、熱水噴出孔周辺で、光合成生物を基本としない独自の生態系が形成されることが知られています。熱水の熱エネルギーと熱水内の栄養分を利用している独自の生態系です。

 実は熱エネルギーも利用できない環境で生きる生物も知られています。地下深くのカンラン岩や蛇紋岩の中を流れる水から発見されたCPRがいることを紹介しました。MK-D1は、冷水から発見されたCPRで、真核生物への進化の鍵を握っていました。カンラン岩や蛇紋岩を通った地下水から見つかったCPRの中に、OD1が発見され、それがLUCAの探求に重要な意味をもっていることがわかってきました。

 通常の堆積岩と比べると、カンラン岩や蛇紋岩は成分としての生物の栄養分も少なく、また熱水は超還元的な環境となります。そのような過酷な環境で見つかったOD1は、生命活動に必要はエネルギーをどのようにとっているのか不思議な生命でした。

 超還元場は、カンラン岩に水が通ると蛇紋岩になる作用が起こり、化学反応で水素を発生するためです。水素が定常的に存在する超還元的な環境でOD1が多数発見されているのは、この環境に適応していることを意味します。そこから、超還元的な環境で水素を生命活動のエネルギー源にしているのではないかと考えられています。

 さて、このような特徴が明らかになってきたのは、日本で発見されたOD1の研究からでした。白馬地域の温泉水からです。この温泉を調べたところ、CPRが多数見つかりました。その中にOD1の一群も見つかりました。それは「白馬OD1」と呼ばれました。

 白馬地域には、主な温泉として白馬八方、蓮華、若栗、栂池、鞍下の5つがあります。このうち、白馬八方は、50°Cほどの温泉がしています。pHが10を超え、日本でもっとも高アルカリ性の温泉となります。地下には蛇紋岩体があり、水素ガスを多く含むこともわかっています。

 このようなOD1の特異な特徴から、Ebisuzaki and Maruyama(2017)や佐藤ほか(2019)では、LUCAの誕生とその進化過程を推定しています。詳細は次回としましょう。


・第5波・

多くの国民の反対する中、開催された

酷暑の札幌でのオリンピック。

それ以降、札幌やその周辺での感染拡大が続いています。

わが町もまん延防止等重点措置がとられました。

またまた、自粛生活にもどりました。

今回の第5波は以前より大きな波になりそうです。

そしてデルタ株に置き換わっているので

感染力もさることながら、若い人を重症化させたり、

ワクチン接種者にも感染するようになってきました。

政府の対処の問題が次々とでてきます。


・豪雨と洪水・

先週から週末にかけて線状降水帯が西日本で発達して

大きな被害を各地にもたらしました。

昨年や少し前にの被害があった地域と

重なっていることも多かったようです。

被災されたかた、お見舞い申し上げます。

北海道は、今回の大雨より少し前に

一部地域で洪水の被害がありました、

広域にはありませんでした。

2021年8月12日木曜日

2_197 LUCA 6:OD1

  LUCAの候補として、最近発見されたCPRというグループが有力であることがわかってきました。CPRは種類も多く、中でもOD1というグルークが、LUCAに近いことがわかってきました。


 CPRを調べて分類する試みがなされています。ただし、CPRは、種の培養が困難なので、充分なゲノム解析ができません。一部ですが、シングルセルゲノム解析といって、単一の細胞、あるいはごく少数の細胞から、ゲノム解析する方法も開発されてきました。しかし、多くはまだゲノム解析はできず、メタゲノムミックスでの解析(ゲノムビニング、メタゲノム分別などとも呼ばれている)の状態です。

 Yellowstoneのある池ので、CPRのメタゲノムミックスのデータから、系統解析がなされました。12の系統群(candidate division)に区分され、それらはOP1~OP12と命名され、OP11はさらに5つに細分されました。OP11のうちのひとつ、OP11-Derived 1(OP11から由来した1番目ものをOD1と呼ぶ)のゲノム解析がなされました。OD1は、Parcubacteria(つましいバクテリア)と命名されました。

 OOD1の特徴を、佐藤ほか(2019)の報告にもどついて、まとめておきます。多くは、CPR全体にも通じる特徴でもあります。

 まず、ゲノムサイズが小さいことです。CPRはもともと小さい(100万塩基対,のですが、44.5万塩基対しかありません。塩基対の英語が、base pairなので、塩基対の数をbpを単位として表します。44.5万塩基対は445 kbpとなります。

 次の特徴は、膜や自己複製のための遺伝子はあるのですが、代謝の遺伝子はもちません。これは、共生を前提とし生きていることになります。ただし、この試料では、微生物の集合(叢 そう といいます)のうち、70%以上をODが占めていたので、単純な共生関係では数のバランスがとれません。

 3つ目は、高アルカリや超還元などの過酷な極限環境になるほど、OD1の割合が大きくなります。

 4つ目は、真正細菌と古細菌の両方の特徴をもっています。つまり、両者の共通祖先に近いのではないかと考えられます。

 これらの特徴のうち、上の2つは、他のCPRにも共通していますが、下の2つはOD1固有のものです。特に最後の特徴は、生物の誕生、LUCAの追求には重要な生物群であることを示しています。

 また、OD1 の生息に必要な条件として、無酸素の超還元の環境で、栄養塩の供給をどうしているのか、物質循環の駆動力は何なのかなどを解明していく必要があります。

 さて、なぜ、ここでOD1を取り上げ詳しく紹介したかというと、日本でもOD1が見つかっており、その重要性が報告されています。それは佐藤ほか(2019)の報告にあるのですが、次回としましょう。


・放散・

CPRの中のradiationは、このシリーズでも紹介してきたように

「放射線」という意味があります。

しかしCPRでは、「放散」という意味で使われています。

今回のOD1の報告からCPRの名称を見つけたので、

radiationを放射線という意味で捉えていました。

それでは意味が通じないので、

放散という意味だと判断しました。

ところが、このCPRは、次回から紹介していきますが、

放射線(radiation)と関係がでてきます。

不思議なめぐり合わせですね。


・ラテン語・

生物の分類名にはラテン語が用いられます。

ラテン語は、現在は使われてはいない言語なのですが、

ヨーロッパでは学術的な記載は

ラテン語でなされていた時代ありました。

その名残が生物分類には残っています。

生物の分類をおこなう研究者はラテン語が必要になります。

さて、Parcubacteriaのparcuは

ラテン語のparcusで

「質素な、つつつましい、節約した」

などの意味があります。

この名の由来は、遺伝子の数が非常に少ないため

つけられたのでしょうね。

2021年8月5日木曜日

2_196 LUCA 5:渾身のMK-D1

 今回紹介するのは、CPRの培養に成功した研究です。その研究には12年という長い歳月がかかりました。ドメインの誕生という生物進化に重要な情報が得られました。


 CPRは、世界各地の極限環境からも発見されています。例えば、アメリカ合衆国カリフォルニア州のpH11以上もある強アルカリの水からも、CPRが発見されました。もちろん、ありふれた場所からも見つかっています。

 現段階でわかっているCPRの特徴として、生物として必要最小限と考えられる遺伝子の数(1000個)よりかなり少ない(400個)、いくつかの重要なタンパク質や脂肪などをつくるための遺伝子がない、核酸を合成する能力もたない、などがあります。栄養源もまだよくわかっていないのですが、子孫を残せることは確かです。そのため、他の生物に依存した生き方(寄生や共生)をしているようです。

 CPRが謎となっているのは、種類が多いのですが、遺伝子解読ができないためでした。それは培養が難しいためDNAを集めることができなかったからです。しかし、MK-D1と呼ばれるCPRの培養に成功しました。

 MK-D1は、紀伊半島のコアの中から2006年に発見されました。CPRは培養が難しのですが、MK-D1は増殖のスピードが大腸菌などと比べる1000分の1ほどしかなく、大きさも0.55μmしかなく、嫌気性の生物でした。しかしアミノ酸をエネルギーとして利用していますが、他の微生物に依存しているため、その微生物を見つけて一緒に培養しなければなりません。

 このような特性から、培養は非常の困難だったのです。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の井町寛之さんたちが、12年の試行錯誤の結果、やっと培養に成功しました。そして、MK-D1の全ゲノムの解読ができました。

 MK-D1のゲノムには、真核生物に特徴的な遺伝子(アクチンやユビキチンなど)があることがわかりました。培養によって、生態もわかってきました。MK-D1は単純な構造なのですが、成長していくと触手のようなものもを多数伸ばし、小さな粒(小胞と呼ばれます)を多数放出していていました。

 MK-D1の遺伝子解析と生態から、真核生物の誕生について、新しい進化説(Entangle-Engulf-Endogenize model)が提案されました。巻き込み(entangle)、飲み込み(engulf)、内部に発達させる(endogenize)という3つのEが特徴なので、E3 modelと呼ばれています。

 真核生物は酸素を利用できるのですが、それはミトコンドリアの祖先となるバクテリアを細胞内に取り込み、共生する過程が起こったためだと考えられています。MK-D1では、E3 modelで、この取り込み、共生が起こることがわかってきました。非常に重要な発見でした。これは2020年1月に科学雑誌「Nature」で報告されました。タイトルは、

 Isolation of an archaeon at the prokaryote-eukaryote interface

 (原核生物と真核生物の境界に位置するアーキアの分離)

というものでした。

 MK-D1は真核生物の誕生の謎に迫りましたが、CPRは他にもいろいろな種類があります。身近な日本の温泉にもいます。そのCPRが生命の誕生につながるのではないと考えられています。それは、次回にしましょう。


・渾身・

今回紹介した研究成果は、

12年という長い研究期間が必要でした。

そこから生まれた成果は、非常に意義深いものでした。

ひとつの成果ではなく、

いくつもの重要な内容をもったものになっている。

それを一つの論文として報告されました。

研究のこれまで成果を集大成した内容でした。

まさに渾身の論文だったのでしょうね。


・ワクチン接種・

札幌で実施されているオリンピックの最中ですが、

札幌ではまん延防止等重点措置が

8月2日から31日まで適用されることが決まりました。

あまりに何度も繰り返される重点措置や緊急事態に

市民はもうすっかり疲れてきました。

市民は政府のいうことに従う気が

失せているのではないでしょうか。

感染症には、ワクチン接種が重要な対策ですが、

日本では国民全員の接種には、

まだだいぶ時間がかかりそうです。

政府の対策はすべて後手に回っているように見えます。

2021年7月29日木曜日

2_195 LUCA 4:細菌ドメイン

 生物には、未発見の種が多数いることはよく知られています。生物学者も知らないような、分類も不明な生物が、大量にいることが、数年前に見つかりました。そんな生物種の発見の物語です。


 前回、天然の原子炉オクロの紹介をしました。半減期の長い放射性元素は、過去ほど多かったことになるので、ウランが濃集するような堆積場があれば、天然の原子炉、あるいは放射崩壊に伴う放射線や崩壊熱が多いところも、各地にあったと考えられます。そのような場を生命誕生の場と考えようとする仮説が最近出されました。

 この仮説は、不思議な生物のグループが多数存在していた、という報告がもとになっています。まずは、その報告からみていきましょう。2015年にBrown博士らが、Nature誌に発表した論文でした。

Unusual biology across a group comprising more than 15% of domain Bacteria

(細菌ドメインの15%以上を構成するひとつのグループの特異な生物学)

というタイトルでした。

 このタイトルの「ドメイン」とは、界より上の生物の分類の階層になります。かつて、モネラ(原核生物)界、原生生物界、植物界、菌界、動物界の「5界」が、分類のもっとも上位の区分でした。ところが、モネラ界の中で、古細菌の特徴が、他とはかけ離れていることがわかり、別の分類グループにする必要がでてきました。そのために、古細菌ドメインと細菌ドメインが区分されました。ところが両ドメインの違いは、真核生物内の4つの界より大きいもので、ひとつにまとめて、最上の分類では真核生物ドメインに一括されました。

 その細菌ドメインの中で新たな分類グループ(門)が見つかりました。全く未知の生物群があり、それらは共通して特徴をもっていました。その研究では、メタゲノミクスという方法が用いられました。

 ひとつの生物のゲノムを解析するには、その生物だけを増やし、つまり培養して一定量のゲノムを集めないと解析できません。しかし、混在(ミックス)した状態でゲノムのDNAを抽出して、そのまま分析してしまう方法がメタゲノミクスです。この方法では、個々の生物のゲノムを区別しては解析できませんが、グループ全体の概要を掴むことができます。なんといっても、培養できない生物の特徴を知ることができます。

 Brown博士らは、アメリカのコロラド川の近くの帯水層からの地下水を採取して、細菌を調べました。膨大な細菌が混在したゲノムを、メタゲノミクスとして分析をした結果、細菌ドメインの内の区分で、その下の階層として門(Phyla)があるのです、35門以上でゲノム解析をしました。そのうち8個で完全なゲノム解析をこない、789個でゲノムの概要の解読をしました。

 これらの膨大なデータを検討した結果、ひとつの特徴的なグループが見いだされました。このグループは、共通した進化をしてきたと考えられ、今回分析された全細菌のうち、15%以上が属することになりました。そのグループはCPR(Candidate Phyla Radiation)と呼ばれました。

 CPRとは、「門の候補となる放散群」とでも訳すのでしょうか。このCPRは、その後ももっとたくさん発見されており、これまで知られている細菌の種類の全体に匹敵するほどの量になのではないかと推測されています。

 今回は、CPRの発見の話でしたが、次回は、このCPRと生物進化の関係を考えていきます。


・Mathodのページ・

Brown博士らの論文は本文が4ページです。

NatureのLetterですが、Letterの論文としては長いくらいです。

しかし、付録として、研究のMathod(方法)が

4ページにわたって小さな文字が書かれています。

また参考資料が9ページ分もついています。

デジタルですので、このような方法がとれるのでしょう。

客観性を担保し、反論ができない、

つまり結果が正しいとみなせるような情報が提示されました。

これはかなりインパクのある論文となりました。


・培養困難・

Radiationには、放射線という意味もあるのですが、

生物学では「放散」という意味もあります。

このシリーズでは、放射線に関して述べているので

混乱を招くかもしれませんが、

ここでは、まだ分類が未確定なグループとなります。

生物の分類上の位置の確定は、

培養して、ゲノムを集めるという作業が必要になります。

これが、なかなか難しいものです。

詳細は次回以降に説明します。

2021年7月22日木曜日

2_194 LUCA 3:天然の原子炉

 思いもよらぬ現象が、自然界では起こっています。その現象が発見されたとしても、他への場面に適用するには、発想の転換が必要になります。その転換が正しいかどうかは、新らな検証が必要になります。


 熱水噴出孔を生命誕生の場とするのが、現在、主流の考え方です。しかし、最近、全く異なった生命誕生の場が提案されてきました。天然の原子炉を利用した誕生の場です。

 天然の原子炉とは、どういうものかを、まずは理解しておく必要があるでしょう。

 原子炉とは、制御しながら核分裂反応を起こして、核分裂で放出されるエネルギーを発電に利用するものです。ウランには核分裂する核種をいくつか含んでいます。核分裂しても、連鎖反応がおこらなければ、通常の放射崩壊になります。連鎖反応を起こすには、ウラン(235U)の濃度が大きくなっていなければなりません。

 原子力発電所では、ウラン濃度を大きくして、制御できる状態で連鎖反応を起こして発電しています。連鎖反応を起こす濃度を臨界状態といい、放射性核種(235U)の濃度が3~5%になったものです。

 現在では天然のウラン鉱石では、濃度が臨界状態に達することはないのですが、あるウラン鉱山から不思議な鉱石が見つかりました。ガボン共和国のオクロでは、20億年前に堆積したウラン鉱があります。このウラン鉱石を調べていくと、ウランの同位体組成(235U/238Uの比)が、通常の天然の鉱石は0.7202%なのですが、オクロのものは0.600%となっていました。小さな値の差なのですが、これは有意の差となっていました。他の同位体組成(NdやRu、Xeなど)でも、他の鉱石と違いがありました。

 この違いを調べていくと、1972年に天然の状態で、原子炉と同じように臨界状態で核分裂の連鎖が起こったためだとわかってきました。しかし、古いほど、天然状態で核分裂を起こすほどのウラン濃度はあった可能性は、黒田和夫さんが、1956年にすでに予測していました。予測通りの現象が発見されたのです。

 20億年前のウラン鉱床では、ウラン(235U)が3.54%もあり、そこで減速材となる水があれば、連鎖的な核分裂が可能となります。計算していくと15万年間ほど、核分裂を起こしていたことがわかってきました。その後、似たような天然の原子炉が、世界各地の16箇所で見つかっています。

 もっと古い原始地球(冥王代)ならば、ウランが20%を越えていてもいいはずだと推定されます。つまり、古い時代には天然の原子炉がもっと一杯あったことになります。丸山茂徳さんたちの研究グループは、冥王代には核分裂の熱により、温泉や間欠泉が多数あったはずだと考え、それを利用して生命が誕生したのではないかと提案しました。岩石群の中を熱水が通り抜けることで、生物誕生に必要な成分が集められ、核分裂反応で化学反応が進むと考えられました。その痕跡が現在も見つかっています。それは次回としましょう。


・猛暑・

週末に2泊3日の調査にでました。

ちょうど北海道も猛暑に当たり、

暑さでバテてしまいました。

外にいる時はいいのですが、

ホテルでの寝る時、エアコンでは寒いし

エアコンを切って窓を開けると暑いしと

調整がうまく行かなかったので

熟睡できず疲れが取れず、ぐったりと疲れました。

帰ってきたら、もっと暑い日が待っていました。


・原子爆弾・

核分裂は、放射性核種では

定常的に起こっている現象です。

核分裂を安全に連鎖反応として起こすためには、

制御する必要があります。

制御されたないものは原子爆弾となります。

臨界にならないサイズで

濃度を大きくしておいた核物質を用意しておき、

それを合体させることで臨界にして

一気に核分裂を起こすことで爆発させます。

それなりに難しさもありますが、

発電よりは簡単です。

制御して発電に利用するのは、緊急事態への対処など

難しい問題がいっぱいあります。

福島原発は制御できない状態が起こったことになります。