前回、地震波には表面波と実体波があり、大きく揺れる実体波にもいろいろな種類があることを紹介しました。実体波の中のコーダ波を使って、外核にこれまでにない構造を発見しています。コーダ波を紹介していきましょう。
実体波は、いつも感じている地震の揺れをもたらすものです。P波とS波がその代表となります。
P波はもっとも速い地震波(5~7km/秒)で、最初に伝わってくる揺れで、初期微動とも呼ばれます。進行方向に平行に振動する波で、固体、液体、気体をすべて伝わリます。地球内部を探るために重要なものとなります。
一方、S波は、P波に比べて速度は小さい(3~4km/秒)のですが、揺れは大きく、主要動と呼ばれます。ただし、固体しか伝わリません。P波は地球内部をすべて通り抜けましたが、S波は液体の鉄からなる外核は通ることができません。そのため、外核の実態と存在は古くから知られていました。
実体波には、後続波と呼ばれるタイプがあります。P波やS波は、波が直接到達したものですが、後続波には地球内部にあるさまざまな境界で、反射したり屈折してしてから届く地震波もあります。そんな地震波にも重要な地球内部の情報が隠されています。
反射や屈折は、不連続面となる地表、海底、地殻、マントル、核や、それらの内部にある物性の異なる面で起こります。反射は屈折する場所によって、地震波それぞれに、別の名称がつけられています。例えば、P波が外核内を伝播したものをPKP波、この波が内核まで伝播したものをPKIKP波などと呼ばれて、区別されています。
後続波には、さらに地下の物質内に存在する不均質によって「散乱」される地震波があり、それらをコーダ波と呼んでいます。コーダ波は、振幅が減衰していく(指数関数的に)波形になるのが特徴ですが、数十秒から数分間振動が続きます。
コーダ波の減衰は、通過する物質の特性を反映します。減衰は、物質内の不均質、例えば、断層や化学的組成が異なったり、流体の存在や分布、温度分布の違いなどで起こります。また、不均質で減衰しながら伝播していくのですが、その時にも不均質があれば、散乱も起こります。ですからコーダ波には、複雑な経路を取っていきたものが含まれていることになります。このコーダ波の減衰状況や散乱から、地球内部の不均質な部分を見つけていったの今回紹介している論文です。
馬らは、ひとつの震源からの地震を、異なった地震計で記録された数時間にわたる続くコーダ波を用いました。微小なコーダ波を検出し、複雑にたどってきた経路を解析していき、各地のコーダ波の類似性から相関を調べてきました。これらの類似性をまとめて「後期コーダ波相関波動(late-coda correlation wavefield)」と呼びました。これが論文のタイトルにあったコーダ波の意味です。
そして、極地と赤道付近で観測された解析の結果を比較していきました。極地に近い場所で検出された地震波は、赤道近くの地震波よりも速く伝わっていることがわかったということです。その意味するところは次回としましょう。
・懸案が次々と・
今月は、特別な校務が重なっていました。
大きな懸案事項もいくつかありましたが、
先週までに、順番に終わらせていきました。
まだいくつか残っています。
懸案事項も、役職上の校務なので
締め切りや重要度の順番に
淡々とこなしていくしかありません。
長年、職場に勤めていると
そんな術も身についてきました。
それも今年度限りと思って
取り組んでいきましょう。
・久しぶりの休暇を・
このエッセイは、土曜日に予約配信しました。
日曜日から、家内と久しぶりに温泉ホテルに一泊します。
人里から離れて、車がないといけない不便な場所です。
森に囲まれていて、散策路を歩いていくと湖があります。
その先に観光施設があります。
そんな静寂に好き、時々利用するホテルです。
自宅や大学は大雪が降ったので心配なのですが、
いってみないと雪の様子はわかりません。
まあ冬タイヤにしているので、
少々雪は大丈夫なはずです。