2024年11月21日木曜日

3_225 外核のドーナツ 1:トーラスとコーダ

 次の核のシリーズに変わります。新しい論文によると、外核でこれまで見つかっていなかった構造がわかったということです。地震波によって発見されたのですが、少々専門的な説明が必要になります。


 2024年8月末のScience Advances誌に、オーストラリア国立大学の馬とトカルチッチ(Ma and Tkalcic)が、核の構造に関する論文を発表しました。論文のタイトルは、
Seismic low-velocity equatorial torus in the Earth's outer core: Evidence from the late-coda correlation wavefield
(地球の外核内の地震波低速度の赤道上のトーラス:後期コーダ波相関波動場からの証拠)
というものでした。聞き慣れない難しい言葉があります。まず、トーラスとコーダ波について説明していきましょう。
 トーラスとは、円柱が環になったドーナツ状の構造をいいます。この論文では、外核の赤道上にトーラス構造が、地震波によって新たに見つかったということになります。
 トーラス構造は、コーダ波から見つかっています。コーダ波を説明するには、地震波の分類を説明しておく必要があります。
 地震波には、表面波と実体波があります。
 表面波とは、文字通り地球の表面を伝わる波です。少々変わった地震波で、固体と気体、あるいは固体と液体の境界だけを伝わっていく波です。主には地殻の表層(地表と大気の境界、海底と海の境界など)を伝わりますが、特徴は周期が長く、振幅幅も大きいものになります。伝わり方により、レイリー波やラブ波などに区分されます。レイリー波は、地表が上下方向に楕円を描くように振動します。ラブ波は、地表に対して平行に、進行方向に対して垂直に振動します。
 今回のコーダ波は、実体波に分類されます。実体波は、いつも感じている地震の揺れをもたらすものが代表です。P波とS波があります。P波はもっとも速い地震波(5~7km/秒)で最初に伝わる揺れで、初期微動などとも呼ばれます。進行方向に平行に振動する波で、固体、液体、気体を伝わリます。S波は、P波に比べて速度が小さい(3~4km/秒)のですが、揺れは大きく、主要動と呼ばれます。ただし、固体しか伝わらないという特徴があります。
 多くの地震波の研究は、地震発生後、1時間ほどで世界中に伝わるP波とS波に関するものです。ところが、実体波には、ほかにも後続波と呼ばれるタイプのものがあります。後続波は地球深部の探査に利用されています。その後続波のひとつに、コーダ波があります。少々長くなってきたので、コーダ波の詳細は次回としましょう。

・コーダ・
コーダ(coda)はイタリア語で「尾」を意味しています。
そこから、楽曲の最後に付けられる
終結、締めくくりを指す部分の名称として使われています。
コーダ波は、主な地震波のあとに現れ、
波形の最後にくっついています。
その様子から地震波の区分にも用いられました。
ただし、音楽のコーダは本体より短いのですが
コーダ波の継続時間は、本振動より長くなっています。

・晩秋から冬へ・
11月初旬に降った大雪は
その後、すべて溶けてしまいました。
紅葉の名残りも少なくなり、
多くの木々が葉を落としました。
季節は、晩秋から冬にむかっています。
そんな矢先、週のはじめには寒波到来で
また雪が少しですが降りました。
大学も後期の折り返しを過ぎました。
落ち着いて授業が進んでいます。