月の形成初期にはマグマオーシャンがありました。中国のサンプルリターンで、新しい時代に活動した地域の特徴がわかっていました。月の形成後には多様なマントルから、マグマが由来していることがわかってきました。
月の海を構成している岩石の年代は、これまで38~30億年前でした。前回紹介した最近の探査でえられた年代が、20億年前のものでした。一気に10億年も新しい年代の岩石が見つかったことになります。
月のクレータ年代学では、嵐の海にはクレータが非常に少ないところがあり、20~10億年前と推定される地域が3つほど見つかっていまた。今回は、クレータの少ない地域の中で、北部の新しいと考えられるところの試料を回収しました。そこの岩石の年代が20億年前として実在することが証明されました。
新しくできた大きなクレータには、溶岩流らしきものも見つかっており、10億年前ころではないかという推定もされています。ですから、他の地域の探査をし、サンプルリターンをすれは、もっと新しい岩石が見つかる可能性もあります。
次に、岩石の特徴をみてきましょう。今回、回収されたのは、月の海の岩石でした。月には古い時代の形成された、KREEP玄武岩と呼ばれる岩石があります。KREEPとは、カリウム(K)と希土類元素(rare erarth elements: REEと略されています)、そしてリン(P)からとった略号で、これらの元素が多いのが特徴となっています。
これらの元素は、マグマが冷却して結晶化していくと、残されたマグマの残液に残りやすい元素(液相濃集元素と呼ばれています)です。月では形成初期にはマグマオーシャンがあったと考えらえているので、KREEP玄武岩は、マグマオーシャンでの結晶分化作用の最後に形成されたものだと考えられています。これらは、地球の海洋地殻の玄武岩とは、明らかに異なった特徴があります。
新しい年代にできた月の海の玄武岩は、マグマオーシャンとは異なった起源になります。チタン(Ti)の含有量の違いによって、多い高チタン(high-Ti basalt)系列、少ない低チタン(low-Ti basalt)系列、あるいは非常に少ない極低チタン(Very Low-Ti basalt)系列に分けられています。このような新しい時代の玄武岩にみられるチタンの含有量の違いは、それぞれのマグマの供給源(マントル)の組成が、不均質であることを示しています。
今回の試料は、新しい時代の玄武岩になり、チタン系列と低チタン系列の中間的な組成であることがわかりました。これまで知られているのとは、異なった組成のマントルに由来している可能性がでてきました。さらに、ストロンチウム(Sr)やネオジウム(Nd)の同位体組成でも、他の玄武岩と異なっていることがわかりました。これらの同位体組成は、起源物質の違いを示す指標となります。
少なくとも月の海の下には、履歴のことかったマントル物質が、多様性をもって存在していることになりました。
ここまで月の海の岩石を中心にみてきましたが、高地の岩石についても新しい報告がありました。それは、次回としましょう。
・新しいルートへ・
先日の調査は、雨の日もありましたが、
幸い、日中は降られることがなく
予定通りの調査ができました。
以前から、工事中の道があり
その直前に興味ある露頭があったのですが、
その先にはいけませんでした。
前回、ひさしぶりにその地にいったとき、
新しい道が完成していることを知りました。
昨年秋は、その道を通ったのですが、
強風と雨で、車から外に出ることもできませんでした。
今回、そのルートを通って、
調査をすることができました。
・新しい露頭も・
今週末には、2回目の野外調査にでかけます。
前回は檜山・後志でしたが
今回は道南の周辺を巡る予定です。
何度も訪れているところもありますが、
しばらく出かけてないところもあります。
興味をもった露頭は、何度みても面白いです。
今回もそんな地域や露頭があります。
そして新たに興味深い露頭も
見つかるかもしれません。
楽しみにしています。