月の形成に関する次の話題になります。今回は、中国が進めている月探査からの話題です。新たにサンプルリターンによる試料が入手され、そこから新しい知見が報告されてきました。
近年、中国は月の探査に力を入れています。嫦娥計画(じょうがけいかく)と呼ばれているもので、最終的には有人による探査から滞在までを計画をしています。
探査は、2003年からはじまり、20年ほどかけて進めていく計画のようです。嫦娥1号からはじまり2号で、月の軌道上での周回を成功し、3、4号で着陸を成功して月面探査もしています。2020年に打ち上げられた5号では、1.7kgのサンプルリターンを成功しています。
その試料を用いた研究がいくつか報告されています。嫦娥5号が着陸したのは月の表側の「嵐の海」の北側です。この地域は、月の海の中でも、クレータが少ない地域で、新しい火山活動があった場所となります。
クレータ年代学と呼ばれる方法があります。表面が硬い天体でその地域の年代を、クレータ密度を調べることで推定する方法です。クレータは隕石の衝突で形成されるため、古くできた地域ほどクレータ密度は大きく、新しいほど少なくなります。高地と呼ばれるところは斜長岩からできており古く、海が玄武岩からできていて新しいことがわかります。アポロなどの試料による年代測定で検証されています。もっとも新しいクレータは、コペルニクスクレータで、約8億年前にできたと推定されています。
嫦娥5号が着陸した嵐の海は、コペルニクスクレータもある海で、クレータ密度が小さく、月でも新しい時代にできたところになります。海は玄武岩からできているため、新しい時代まで火山活動があった地域となります。年代と岩石の特徴を調べることが、重要な科学的目的となります。
まずは、えられた年代の報告です。2つの論文で報告され、ひとつは、2021年のScience誌に報告されたチェ(Che)らの共同研究で
Age and composition of young basalts on the Moon, measured from samples returned by Chang'e-5
(嫦娥5号によって持ち帰られた試料の測定による月の若い玄武岩の年代と組成)
と、もうひとつは2021年のNature誌に掲載されたリー(Li)らの共同研究による
Two-billion-year-old volcanism on the Moon from Chang'e-5 basalts
(嫦娥5号の玄武岩からの月の2億年前の火山活動)
というものです。
いずれもウランによる年代測定の結果です。ひとつでは19.63±0.57億年前が、もうひとつでは20.30±0.04億年前という年代を報告しています。
これまでえられていた海の岩石の年代は38~30億年前でした。この地域は若いとは推定されていましたので、その推定値は22~12億年前でしたが、その中でも古いものとなりました。
えられた年代は予想の範囲内でした。しかし、岩石としてははじめて入手された年代のものなので、岩石学的には重要な意味があります。岩石の特徴については次回としましょう。
・野外調査・
先日まで調査にでていました。
檜山・後志の周辺を回りました。
今シーズンはじめての調査になりました。
天気も雨の日もあったのですが、
露頭をみているときは振られずにすみました。
肉体的には疲れますが、
精神的にはリフレッシュします。
野外調査はやはりいいですね。
・観光地とはずれたところ・
今回の調査は、檜山・後志でも
かなりマイナーなところを多くまわりました。
土・日曜日も入っていましたが、
人出は少なく、のんびりと回ることができました。
ただし、積丹半島の周辺は、
平日にも関わらず、観光地なので、
観光バスも乗り付けてくるようなところも多く
外国人観光客も多かったです。