2014年4月17日木曜日

4_111 春の四国へ 2:リップルマーク

 春の四国の旅の話は、当初、6つほど連続で紹介する予定でした。そうすると、他の新しい話題がとどこおり、同じ話題ばかり長く続くと、読む側も飽きてくるかと思いました。そこで話題を、3つのグループに分けて、詳しく紹介することにしました。今回は、リップルマークを中心とする話題で3回の連載を予定しています。

 徳島県海陽町宍喰は、徳島県でも最も南にあり高知県に隣接しています。宍喰と書いて「ししくい」と読みます。少々難しい読み方になっています。「宍」は、「しし、にく」などと読み、食用の獣肉という意味です。宍喰は、狩猟によって得た肉をたべるという意味で、鎌倉以降につけられた地名だそうです。
 私は、宍喰には何度も来ています。以前にも2回ほど、今回の調査でも日をあらためて、3回訪れました。なぜ、何度もここに来たかというと、国指定の天然記念物の「化石漣痕」があるからです。「化石漣痕」を詳しく調べたいと思っていました。可能であれば、良い光の条件で撮影もできれば思っていました。
 「化石漣痕」の漣痕とは、リップルマークとも呼ばれ、海底にたまった砂が、水流によって波打った模様ができます。古い時代のものなので「化石」とついていますが、生物とは関係ありません。過去のリップルマークという意味合いで使っているのでしょう。
 砂浜などで風によってできる波模様、風紋も、リップルマークとなります。陸地や海底などで、さまざまな場でリップルはできます。リップルマークは、砂の性質と空気や水の流れの性質によって、いろいろな模様ができます。模様から、流れの様子を復元することもなされています。
 宍喰のリップルマークは、海底で形成されたものです。タービダイトとよばれる海底の土砂流が、斜面を流れ下る混濁流によってできたものです。その時の流れや海底にもともとある底層流などによってリップルマークが形成されます。大陸斜面におこった大きな異変の証拠にもなります。
 国道から県道に入り少し行ったところ、道が大きくカーブする山側の切り立った崖がリップルマークのある露頭です。露頭は、ひとつの地層の面が広く見ることができます。その面のリップルマークがきれいに残されています。壁に向かってリップルマークを眺めると、海底の水流が左下から右上にむかって流れていることを感じることができます。
 このリップルマークは四万十帯と呼ばれる地層にあり、約4000万年前に形成されたものです。リップルマークから読み取った流れの方向を、堆積していた時代の海底にもどすと、東北東から西南西に向かった流れになるようです。この方向は、現在の南海トラフにある大陸斜面と同じでもの、4000万年前から似たようなタービダイトが形成される環境があったことになります。つまり、海洋プレートが沈み込むような海溝とそれに続く大陸斜面があったということです。
 列島と海溝のセット(島弧-海溝系と呼ばれています)、つまり付加体形成の場が、ここには古くから存在していたことになります。そんな太古の時間をリップルマークから感じることができます。何度見ても見飽きません。

・露頭のすごさ・
天然記念物のリップルマークは
国道から少し奥まった県道沿いにあります。
地図にもでているのすぐにわかると思います。
でも人里少ない道路なので、
ここでいいのか少々心配になるようなころ、
その露頭が現れます。
露頭をみれば、その大きさや見事さに
きっと圧倒されることでしょう。
リップルマークのある露頭面だけでなく、
横に回ってみると地層の断面がよく見ます。
すばらしいものです。
もし、時間があれば、足を伸ばして
海岸でも断面が出た地層を見ることができます。
その様子は、次回、紹介します。

・ペンション・
今回の宍喰の調査では、
リップルマークのすぐ下にある
ペンションに泊まりしました。
海岸わきにたつ瀟洒なペンションで、
いくつもの棟があります。
なかなかいいところです。
存在は知っていたのですが、
今回はじめて宿泊しました。
この海岸はペンションのものなので、
プライベートビーチになっています。
食事もオリジナルの珍しいものを
出していただけるので
満足いくものとなるはずです。
もし近くでお泊まりの際はおすすめします。