2011年10月27日木曜日

3_102 逸脱:超大陸 4

 超大陸は、地球史上、何度か形成されていたことがわかってきました。プレート運動は、ウイルソン・サイクルという一般則で説明されています。もちろん、超大陸の形成もウイルソン・サイクルで説明可能です。一番最近のパンゲア超大陸も、ウイルソン・サイクルでできたはずなのですが・・・・・

 超大陸の形成は、過去に何度かあったと考えられています。いくつかの超大陸があったという報告があります。ただし、時代が遡るほど、その詳細は不確かになります。
 復元されている超大陸で一番古いものとして、19億年前のヌーナ(Neuna、あるいはローレンシアLaurentiaとも呼ばれています)超大陸があります。ヌーナ超大陸は、多くの研究者が存在したのではないかと信じています。ヌーナは、最古の超大陸ではなく、もっと古い超大陸が存在していたと考えている研究者もいますが、定かではありません。超大陸の証拠は、古くなるほど不確かになってくるので、信じるかどうか心情的な判断も生じます。
 ヌーナ以降の超大陸をみていくと、約15億年前の超大陸(あったかどうか不明)、約10億から7億年前のロディニア(Rodinia)、約6億年前の超大陸(あったかどうか不明)、そして一番最近の2億5000万年前のパンゲア超大陸となります。
 超大陸があったどうかを述べることは簡単ですが、実際に復元をおこなうのは、簡単ではありません。復元の背景には、地質調査、化石の同定、地層の解析、岩石の年代測定、化学分析など、広域、長期間、膨大なデータの蓄積が必要です。すべてのデータを一人の研究者が出すことなど、とうていできない作業です。超大陸の復元は、多くの地質学者が長年かけて築きあげてきた知的成果の上に、成り立つものです。もちろん、超大陸を提唱するには、膨大な文献を集めてまとめるという大きな労力も必要です。
 さて、パンゲア超大陸の存在は、多くの地質学者が認めているものですが、その形成過程には、不明な点もあります。そのひとつは、なぜ集まったのかということです。
 大陸間の海洋プレートが沈み込むことによって、大陸が衝突します。いくつもの衝突が起こり、超大陸ができます。大陸が集まる以前には、間に海洋プレートがあったことになります。大きな海洋プレートは、長期間海底にあったため、充分冷えて重くなり、簡単に沈む込めます。海洋プレートと大陸プレートの性質やその違いに着目して、プレート運動を一般化したものを、ウイルソン・サイクルと呼んでいます。ウイルソン・サイクルでもあります。
 パンゲア超大陸の前には、ロディニア大陸(前の超大陸の名残)とゴンドワナ大陸(ロディニア超大陸から分裂したもの)があり、その両者の間には、できたての海洋がありました。いまの大西洋を思い浮かべるとわかりやすいと思います。パンゲア超大陸は、できてすぐの海洋プレートが沈み込んでいったことになります。これは、プレートテクトニクスの基本原理であるウイルソン・サイクルに反します。少々不思議な作用が起こったことになります。
 一番最近の超大陸、多くの研究者が存在を認めているパンゲアの形成に、どうも謎がありそうです。その謎を説明するアイディアもありますが、次回としましょう。その説は、ウイルソン・サイクルに再考を促すことになるかもしれません。

・巨人の肩の上に立つ・
超大陸の復元には、先人の成果を
大量に利用することになります。
先人の成果の上に新しい科学が進んでいくという構図は、
地質学だけでなく、すべて科学がもっているものです。
科学、あるいは文明、文化の典型的発展方法ともいえます。
こお構図を「巨人の肩の上に立つ」
(Standing on the shoulders of giants)
と呼ばれることがあります。
Google Scholarでもこの言葉が示されているため、
眼にしている方も多いと思います。
12世紀のフランスの哲学者である
ベルナール・シャルトル(Bernard Chartres)
の言葉とされています。
このエッセイも「巨人の肩の上に立つ」ことで成り立っています。
先人に感謝です。

・時間に追われて・
秋も深まって来ました。
今のところが冷え込むこともあまりないので
過ごしやすい日々が続いています。
でも、深まる秋を味わう余裕がありません。
先週は出張や校務、科研費の〆切などが
たてつづけにあり、少々疲れましたが、
今週からは定常的な仕事の戻ります。
次には、論文の報告書、本の原稿の〆切がきます。
定常的な講義や校務をこなしているのに
なぜが、時間に追われています。
こればかりは、先人も悩んだのではないでしょうか。