2009年12月3日木曜日

1_86 決着:第四紀問題1

 第四紀問題の決着をみましたので紹介します。第四紀とは、人類史にとって重要な時期にあたります。地質学だけでなく、生物学、考古学、歴史学など多くの分野で使われている用語です。それが一時は廃止するという決定が出たのですが、長い時間をかけて、その問題に対しての結論がでました。その内容を紹介しましょう。

 第四紀は、地質学者が中心になって研究しています。しかし、第四紀という用語はいろいろな分野に浸透しており、もはや地質学だけの問題ではありません。特に、廃止ということになったら、多くの分野で混乱が起こることは日を見るより明らかです。学校の教科書も、あちこち書き換えなければなりません。それをおしても廃止するか、それとも妥協策を探るか、ここ数年、そんな決断が迫られていました。本来なら2008年末までに決着がつくはずだったのですが、このたびやっと決着をみました。
 国際地質科学連合(IUGS)の理事会が、今年(2009年)の6月29日に、国際層序委員会(ICS)が提案した第四紀(Quaternary)の下限を258万8000年前とすることを承認しました。これによって、第四紀が再定義されたことになり、存続することが決定されたのです。
 第四紀問題については、本エッセイでも何度か扱ってきました。「1_52 新生代1:時代区分」(2005.10.27)、「5_48 第四紀の復活?1:時代区分の更新」(2005.12.29)と「5_49 第四紀の復活?2:第三亜代と第四亜代」(2005.12.22)、あるいは「1_64 Concise版:地質時代1」(2008.10.23)から「1_68 第四紀問題の決着は?:地質時代5」(2008.11.20)の5回、計8回エッセイとして取り上げてきたことになります。
 何度も取り上げてきたのは、決着をみるまで長い時間がかかったということです。それは上で述べてきたようにいろいろな問題を含んでいたためでした。しかし、20年近くにわたって議論されてきた第四紀問題がやっと終止符が打たれたのです。
 第四紀問題は、ICSの意向を受けて"A geological time scale 1989"という本で、ではなくすという方針が示されました。そのときは、あまり問題に顕在化してなかったのですが、2005年春に発行された"A Geological Time Scale 2004"では、新生代の第三紀(Tertiary)という時代名称を公式には使わなくなり、新生代はパレオジン(Paleogene)とネオジン(Neogene)に区分されることが紹介されました。それに伴って、第四紀もなくす(公式には使えないものとする)という方針が、強く打ち出されました。これが、大きな議論を呼ぶことになりました。
 第四紀の廃止という方針には、多くの関係者や学会が反対声明を出したこと、あるいは廃止に賛成するグループからの意見が出され、混乱を極めました。そして、議論を尽くした後、最終的にICSにおける3月の投票によって、第四紀は再定義が可決されて、今回の決定となりました。
 IUGSの決定を受けて、日本地質学会でも、その取り扱いについて、拡大地層名委員会において検討に入りました。委員会は、今後、関連する学術会議や学会と連携をとりながら、日本としての対応が検討されていくことになります。
 さて、第四紀とは、どう定義されたのでしょうか。それは次回としましょう。

・師走・
いよいよ師走となりました。
北海道では、日一日と寒さが募り
積雪も何度もありました。
もちろん暖かくて雨が降ることもありますが、
いよいよ冬到来です。
自宅でもストーブをたかない日はなくなりました。
忘年会、餅つきなどの年末特有の
行事のアナウンスも行われています。
気持ちばかり急いていきましたが
今こそ落ち着いてやるべきこともあります。

・卒業研究・
4年生の卒業研究の指導は、今が山場です。
学生も大変でしょうが、私も大変です。
ゼミ生の10名分のレポートを熟読して、
校正していかなければりません。
それが今週から来週にかけて続きます。
でも、彼らにとっては4年分の集大成となります。
よもや気を抜くことはできません。
今がんばっておけば、
なんとか穏やかな正月が迎えられるはずですから。