2009年4月2日木曜日

1_81 滝の回廊:メッシニアン塩分危機6

 メッシニアン塩分危機は、地中海がジブラルタル海峡で、新たに大西洋とつながることで終わりを告げます。つまり、メッシニアン塩分危機を完全に解明するには、ジブラルタル海峡の形成の歴史を明らかにすることが最後の課題となります。しかし、その形成史も、実は謎に満ちたものだったのです。メッシニアン塩分危機のシリーズの最後として、ジブラルタル海峡の形成についてみていきましょう。

 メッシニアン塩分危機は、氷河期による海水準低下と、それまであった大西洋と地中海をつなぐ2つの回廊が地殻変動によって閉ざされたことが原因でおこりました。中新世のメッシニア期が終わる(533万年前)ととともに、メッシニアン塩分危機も終結します。そして時代は、鮮新世のザンクリーン期(Zanclean)になります。
 メッシニアン塩分危機によって生じた地中海沿岸の景観は、今の状態からはまったく想像もできないものです。今は水際で水を湛えている沿岸域がすべて、侵食の場となります。もともと海底であったところも、深い渓谷が各所にできました。
 地中海から1200kmも離れた、アスワンダムのある場所では、海水準より数100mも低いところに、花崗岩をうがってできた河川による侵食地形(ゴージュと呼ばれる箱型の渓谷)が見つかっています。また、カイロのナイル川の下2500mの地下にも、同じような河川の侵食地形が見つかっています。つまり、今体積の場となっている地域が、すべて侵食の場だったのです。
 メッシニアン塩分危機が終わると、地中海は、短時間で激しい環境変化が起こります。それは、地中海の海底堆積物から、突然、深海生物の化石が見つかることからわかります。
 氷河期が終わり、暖かくなると降水量が増えます。氷河の融解によって、海水準も上昇しはじめます。外洋である大西洋の海水準が上昇し、低地帯である地中海域が存在することになります。そこにじわじわと大西洋の海水が進入してくるというような、のんびりとした変化では、一気に深海に転じるという現象は説明できません。
 地質学的証拠を説明するには、現在のようなジブラルタル海峡が、一気に出来なければならないのです。地質現象としては、割れ目を一気につくるものとして断層がありますが、残念ながらジブラルタル海峡には、そのような断層は見つかっていません。断層ではない、別の地質現象を考えなければなりません。
 現在のジブラルタル海峡のあたりは、低地帯で、もともと大西洋の海水が何度も浸入していたところだという説があります。また、かつての回廊も同じように大量の海水を、時々通していたというのです。そのような説がでてきたのは、現在の地中海の海底に蒸発岩が厚くたまっているのですが、その間に深海の堆積物を挟んでいます。その堆積物をつくるには、何度かの海水の供給が必要となります。その海水の供給源の一つが、ジブラルタル海峡の低地帯であっと考えられたのです。
 ジブラルタル海峡における過去の地形や地震波による探査がなされました。すると、東向きの流れをもった流路や渓谷が形成されていたことがわかってきました。その渓谷が、現在の海峡のもとになったと考えられています。海水が地中海に満たされるには、数100年の単位で起こらなければなりません。地質学的にあっという間に起こったといえます。
 そこの現在のジブラルタル海峡の幅の流路で、地中海に海水を満たすには、膨大な海水が流れこまなければなりません。さらに、大西洋と地中海は、当時、その落差1kmほどもあったのです。ジブラルタル海峡は、まるで大きな滝(ヴクトリアの滝の100倍の規模)というべき海峡が出現したのです。
 でも、この説では、現在の286mというジブラルタル海峡の深い水深を説明できません。やはりこの水路周辺の200から100m程度の沈降は不可欠となります。その現象まで完全に説明している説は、まだないようです。
 科学者の説明はできていないのですが、今と同じような深海の地中海が、一気に復活し、現在まで継続しているのです。
 温暖で穏やかな地中海の水面をみていると、そのような異変の面影は見てきません。しかし、地中海の海底から見つかる蒸発岩や大量の微化石が、これまで述べてきたような出来事を物語っています。地質学者たちは、残されたかすかな痕跡から、異変を嗅ぎ取り、その物語を解明しつつあります。

・風邪・
発行が遅れて申し訳ありません。
旅行から帰ったら風邪でダウンしました。
旅行の最後の夜に風邪を引いてすごく不調でした。
翌日車を運転して飛行機に乗り、
自宅までまた1時間ほど運転して帰りました。
風邪はいったんピークを過ぎたように思えたのですが、
やはり翌日も体調不良で、医者に駆け込みました。
インフルエンザではなかったのですが、
その後、熱と悪寒に4日間襲われ
今日やっと復帰しました。
風邪をぶり返したようです。
新学期の最初の会議を
いくつか欠席してしまいました。
申し訳ないことをしました。

・もう春です・
北海道も、暖かい日、寒い日を繰り返しながら
春に向かっています。
道路の雪はもちろん消え、
田畑の雪もほとんどなくなりました。
私が帰ってきた3月31日は、北海道は肌寒く、
小雪が舞ってました。
帰宅後、家も冷え切っていたのですが、
一晩ストーブをつけたら温まりました。
それから数日は暖かくなり、
昼間は日の光の当たるところを避けなければ
暑いほど部屋の気温は上がります。
朝夕はまだストーブが必要ですが、
北国も、日に日に春めいてきました。