2002年1月15日火曜日

5_14 岩石の分類の仕方

 石のいろいろの話を連続的にしようとしています。そこで、今回は、その基礎の部分にあたる石の分類方法について考えていきましょう。

 石には、いろいろなものがあり、分類されて、名前が付けられています。でも、石の名前は、実は人為的な分類名なのです。ですから、生物の名前のつけ方とは、少し違っています。
 動物や植物などの生物では、種の区別がまずあり、それに基づいて分類され、今までに見つかったことがないものなら新種として名前が付けられています。ところが石(石も岩石も似ていますが、専門的には岩石といいます。以下では岩石といいます)では、生物の種のような厳密な分類基準はありません。多くの場合、分類の境界は漸移的で、人がここに線を引いて、「この線よりこちらはこういう名前、あちらはああいう名前」と決めることになります。あるいは、研究者が定義すれば、いくらでも分類名ができます。かつては、岩石の名前だけを記録した、分厚い3冊に及ぶ事典があったほどです。
 分類基準が曖昧だとはいえ、でたらめに名前を付けるわけにいきません。ある基準で線を引いて名前を付けます。その基準として、岩石の起源、組織、化学成分を利用します。
 岩石を分類するために一番重要な情報は、その起源です。起源とは、その岩石がどうしてできたかということです。大きく分けると、堆積岩、火成岩、変成岩の3つに分けることができます。堆積岩は土砂が海底で溜まってできたもの、火成岩はマグマが固まったもの、変成岩は既存の岩石が熱や圧力で別の岩石に変わってしまったものです。この3つの分類はどんなに見かけが似ていても区分できるはずです。
 境界は、実は曖昧です。マグマからできているのですが、火山灰のように堆積岩にもなりうるものがありますし、変成岩でも変性の程度が低ければ、もとの火成岩や堆積岩の性質を色濃く残しています。ですから、どこかでエイヤと境界線を引く場合がでてきます。でも、起源による分類では、あまりに分類数が少なすぎます。
 起源に次いで重要なのは、組織です。組織とは、岩石の中に見られる模様やつくりです。組織は、岩石を構成している、構成物(結晶や砂粒)の種類の違い、構成物の量の違い、構成物の大きさの違い、構成物の形の違いなどによってつくられます。このような違いは、岩石の分類をするときの重要な情報です。しかし、組織を見分けるには経験が必要となります。岩石ごとに一つとして同じものがないし、景色のように似ているところがあっても、どこかに違いがあります。見れば見るほど岩石の個性が見てきます。
 組織の情報が読みとれると、堆積岩の砂粒が、どんなところからもたらされ、どんなところに溜まったのか読み取ることができます。火成岩が、どのようなマグマから、どのいう順番で結晶ができ始め、どのような固まり方をしたのかが読み取ることができます。変成岩が、どのような岩石から、どのような温度圧力条件で形成されたのか読み取れます。
 組織に基づく分類は必要ですが、あまり詳しいものにすると、大量の分類名ができるため、ほどほどにしておく必要があります。それに、経験ではなく、もっと客観的に誰でも付けられる分類法が必要です。
 化学組成に基づく分類は、非常に客観的な分類方法です。化学成分とは、岩石にどのような元素が、どれだけ含まれているかを比率で示したものです。このような化学組成は化学分析で求めます。化学分析で正確な組成を求める方法は、定量分析といいます。定量分析値は、同じ岩石を使えば、誰がおこなっても同じデータを求めることができます。ですから定量値に基づいて岩石の名前を決めておけば、誰でも同じ名前を付けることができますし、万国共通の名前となります。
 以上のような情報を、うまく組み合わせて分類して、名前を付けることができると、より岩石の分類は客観性を増します。でも、詳しく見れば見るほど、岩石ごとの共通性と相違が見つけることができます。それは、自然をよりよく見ることに繋がります。共通化によって個々の個性を消してしまうことはよくありません。その辺の兼ね合いに研究者の個性も出ます。