2002年1月23日水曜日

1_22 火星起源隕石(その1)(2002年1月23日)

 隕石には、変り種があります。それは、他の惑星から飛んできたものです。なぜ、他の惑星から飛んで来たなんてわかるのでしょうか。科学者の間でも議論がありました。そんな変り種の隕石を紹介しましょう。

 隕石の種類には、石からできた隕石、鉄からできた鉄隕石、石と鉄からできた石鉄隕石があるといいました。そして、石質隕石には、コンドリュールと呼ばれる丸いつぶつぶがあるコンドライトと、つぶつぶのないエイコンドライトがありました。そして、エイコンドライトは、今は亡き、微惑星の破片だといました。
 エイコンドライトには、数は少ないのですが、変わったものが含まれています。それは、SNCというグループ名のついたものです。SNCとは、あるグループを構成する隕石の頭文字をとって、エイコンドライトをさらに細分する名称としたものです。
 そのグループのSとは、シャーゴッタイト(shergottite)の頭文字です。シャゴッティ(Shergotty)と呼ばれる隕石がその代表です。ザガミ(Zagami)、南極やリビアで見つかった隕石もあり、今のところ、全部で9つあります。
 Nは、ナクライト(nakhlite)の頭文字で、ナクラ(Nakhla)がその代表的隕石です。このタイプは、ナクラのほかに、ラファイェット(Lafayette)、ゴベルナドール・ヴァラダレス(Governador Valadares)の合計3個しか見つかっていません。
 Cは、シャシナイト(chassignite)とよばれ、シャッシーニ(Chassigny)が、その代表で、なおかつ唯一ものです。
 このSNCをあわせて一つのグループと考えて扱われています。
 シャーゴッタイトにありましたが、20世紀後半には南極から大量の隕石が見つかりました。その中には、珍しい種類ものもたくさん含まれていました。多分、最近も新しい隕石が、見つかっていると思います。
 近年、アフリカやアラビア半島などの砂漠地帯で大量の隕石が見つかっています。その中にもSNC隕石がいくつか見つかっています。私の古い情報(1999年当時)でも、シャーゴッタイトが2個みつかっています。
 SNCとは違ったタイプの隕石なのですが、SNCの仲間だと考えられる隕石が、南極から見つかっています。それは、ALH84001と呼ばれているものです。この種類は、1個しかありません。
 以上、SNCは、合計で14個になっています。多分、その後も、隕石が発見されているので、SNCは増えていると思います。
 さて、SNCが他の隕石と区別して独立したグループとされていたのは、際立った特徴があったからです。そのひとつとして、他の隕石は見られない鉱物として、角閃石や磁鉄鉱を含んでいたことでした。これは、地球の岩石には普通に見られる特徴なのですが、多くの隕石ではみられない特徴でした。ですから、SNCは変わっていると考えられたのです。
 角閃石という鉱物は、水酸基(OHという部分を結晶の中に含む)をもっています。水酸基をもつ鉱物は、水のあるとことでしか形成されません。つまり、SNCは水がある「微惑星」でできたのです。
 ところが、水を持つ微惑星とは、実は小さくてはだめなのです。ある程度大きな惑星でないと、液体の水はできないのです。なぜなら、惑星の形成初期は、微惑星同士の衝突や合体が激しく、惑星の表面はかなり高温になっていました。ですから、H2Oはすべて気体の状態でしか存在しなかったはずなのです。H2Oが液体になるのは、惑星が冷めた状態、つまり微惑星の衝突が落ち着いた頃でないとなりません。その頃まで生き延びた惑星は、現在存在する惑星だけなのです。現在存在する惑星で水が「ある」、あるいは「あった」のは、地球と火星だけです。ということから、SNCは火星から飛び出して来たのではないかと、考えられたのです。
 1970年代末に、研究者はSNCが火星起源ではないかと考えるようになっていました。そして、1980年代に論争が起こり、1984年には火星起源隕石であるということで決着しました。
 火星起源の証拠は、角閃石だけではありません。そのほかにも、いくつもの証拠が挙げられました。
 形成された年代が13億から1.8億年前の若い年代であること、ガスの成分がバイキング1号、2号が調べた火星のものと一致すること、重力の大きい場所でできた岩石のつくり(組織)を持っていること、などなどいろいろな証拠が挙げられています。
 このようなことから、SNCは、火星から来たされたのです。実は、SNCにまつわる話には、もっと面白ことがあるのですが、長くなりました。次回にしましょう。

・隕石探し・
砂漠での隕石探し。
それは、地球上で隕石探しには、効率的な場所に違いありません。
なぜなら、砂しかない中に、石ころがあれば、
それが隕石であると容易に認定できるからです。
また、砂漠は、それまで、隕石など探す人がいませんでした。
大量の隕石が、砂漠地帯から見つかりつつあります。
1999年末現在で、
リビアから853個、
アルジェリアから450個、
サハラ砂漠から207個、
の隕石が発見されています。
そして、それが商品として出回っています。
しかし、なんといっても南極が最大の産地です。
それは、氷の中にあれば隕石であると簡単に認定できることと、
氷の移動に昇華(蒸発して気化すること)によって、
隕石が集積する機構があるからです。
南極から、総数17,508個の隕石が発見されています。
今まで見つかっている隕石22,507個のうち、
78%は南極から見つかっているのです。
これは、商品としては出回っていません。

・親として・
前回のマガジンに対して、高校(定時制と全日制)の先生をなされている
Niiさんから、親としての感想を述べられたメールをいただきました。
それに対して、私は以下のメールを書きました。

「定時制は、教員も生徒も大変ですね。
でも、ひとりでも、まじめに、熱心に聞いてくれる生徒がいると、
その講義はやる価値があると思います。
私のメールマガジンも、
まじめな購読者がいるはず
という信念のもとに成り立っています。
そうでなければ、報われません。
実際の講義の強みは、
その教師の熱意が生徒に伝わり、生徒の熱意が教師に伝わるという点です。
インターネットでは、これが、直ではなく、タイムラグがあります。
ですから、お互い信じているしかないのです。

自分の子供の場合、親は、ついつい
子供のためという自己弁護のものとに
親として責任、親の理想、などという荷物を、
こどもに背負わせています。
もっと、親は、子供を、ただ、Niiさんのおっしゃるように
『後ろから応援する』
『子どもは親とは違う人格をもった他者であるんだなー』
という立場に立つのがいちばんなのかもしれません。
でも、親として、ついつい・・・」