2002年1月1日火曜日

3_18 富士山:成層火山

 日本の象徴として、富士山がよく使われます。そして、それを受け入れさせるほどの、美しさを持ち、感動を与えます。つくづく、日本人は、富士山が好きなのだなあ、と思います。


 冬晴れの青空を背景にした雪化粧をした富士山、新緑に映え巣富士、赤富士、海越しにみる富士、どれも非常にすばらしく、正月番組やカレンダーの写真などにもよく利用されます。かつては、あるいは現在も、崇拝の対象として、宗教的な意味も見出されています。
 富士山の形が美しいのは、その起源によります。富士山の起源は、火山です。現在は活動を休んでいますが、まだ活動する可能性がある火山です。
 火山は、マグマの性質や活動頻度、量によって火山の形が違ってきます。富士山は、一つの火山の噴出口から何度も噴火をした火山です。富士山は、成層(せいそう)火山と呼ばれています。富士山の火山の断面をもし見ることができれば、何層もの溶岩や火山噴出物の層からできていることがわかります。さらに、富士山の下部には、古富士火山、さらに下部には小御岳(こみたけ)火山などが隠されています。つまり、富士山も一日にしてならず、です。
 その火山の歴史の概略は、以下の通りです。
 最初の火山活動は、第四紀中期の小御岳火山が始まりです。溶岩を主体とする火山噴出物から構成されています。続いて約8万年前に、小御岳火山の南側斜面から古富士火山の活動が始まります。玄武岩のマグマによる火山灰(正式には降下テフラといいます)を何度も噴出しました。この火山灰は南関東地方に降り積もり、ローム層の一部(立川ローム層)となっています。古富士火山の終わり頃には、火山灰の噴出、火砕流、山体崩壊、溶岩の流出を繰り返します。約1万年前には、溶岩を中心とする火山活動の現在の富士火山(新富士火山と呼びます)の活動となります。最近の宝永4年(1707年)の噴火では、南東斜面の宝永火口から大量の軽石とスコリアの噴出があり、南関東一円に火山灰を降らせました。そして、去年は富士山の山体下部で、地震が頻発し、一時噴火の危険も指摘されましたが、現在では小康状態となっています。そして、今や、富士山は、3775mの標高を持つ、日本一の山となったのです。
 日本列島には、多くの火山があります。しかし、富士山のようにきれいで大きな成層火山は、それほど多くありません。各地で○○富士とよばれる火山は、小規模な成層火山や、一度の噴火でできた単成火山であることが多いようです。その理由は、大きな成層火山は、火山の成長の1段階に過ぎないからです。
 火山の一生は、短いものは火山噴火が一度起こった後、終了するものから、数十万年の活動期間を持つものまであります。一度の活動で終わった単成火山は、伊豆の大室山など火山です。長い活動期間の火山は、成層火山形成後、火山体が陥没(かんぼつ)して、カルデラをつくり、中央で小さな火山丘をいくつかつくって終わります。
 富士山は成層火山の形成直後の火山です。大島はカルデラ形成中の火山です。箱根は中央火口丘を形成し、火山活動の末期に達した火山です。火山にもそれぞれの履歴があるのです。そして、やがては、その一生を終えていきます。富士山はまだ、壮年時代の火山でした。