2025年3月6日木曜日

2_226 20億年前からの生物 5:蛍光微粒子

 古い時代の岩石中での生物の有無は、前回紹介した方法で確認できます。しかし海の岩石は数億年前までしありません。それより古いものは、陸地にありますが、生物や水の汚染を排除するかが問題となってきます。


 前回の報告は、1億0400万年前までの玄武岩で、現在の海洋底で見つかった岩石でした。海底なので水の供給は、比較的簡単にできそうです。ところが、海洋底の岩石は、1億数千万年前くらいまでは遡れますが、それより古いものは入手できません。
 なぜなら、プレートテクトニクスが働いているためです。海洋プレートの岩石は海嶺で形成され、古い海洋プレートは海溝でマントルに沈み込んでいきます。現在の海洋底には、せいぜい1億数千万年前の岩石しか残されていません。地球の歴史45億年、あるいは生命の歴史38億年と比べると、あまりにも短い試料しな手に入りません。
 もっと古い時代の岩石で、生物の検出はできるのでしょうか。
 これまでの研究で、大陸地域で2kmより深い坑道の地層内で、20億年前より古い、10億年より長く、外部から水が入ってくることなく、存在し続けた生物がいることがわかっています。また、地下深部では、原始的な生物が、増殖の速度も遅く、1億年ほど進化することもないこともわかっています。
 このような研究と前回紹介した研究から、新しい時代の水や生物の汚染のない岩石中で生物が見つかったら、これまでの生物進化の時間スケールを考えなおす必要がでてきそうです。
 前回紹介した鈴木さんたちが共同研究され、2024年のMicrobial Ecology(微生物生態学)誌の116巻に
Subsurface Microbial Colonization at Mineral-Filled Veins in 2-Billion-Year-Old Mafic Rock from the Bushveld Igneous Complex, South Africa.
(南アフリカ、ブッシュベルト火成複合岩体からの20億年前の苦鉄質岩中の鉱物が充填された岩脈で地下微生物のコロニー形成)
が報告されました。
 ブッシュベルト火成複合岩体には、太古代の複雑な火成岩類が混在しています。それは過去の島弧が大陸化したもので、地下深部のマントルが上昇して地殻に入り込んでいます。地質は詳しく解明されています。それはこの岩体から金が発見され、ゴールドラッシュになったためです。現在もクロムやプラチナといったレアメタルの鉱山があり、地下の様子もよくわかっています。
 この研究では、500m以上のボーリングを進めて試料を採取しています。現世生物の汚染を排除するため、ボーリングした試料の洗浄、表層の加熱滅菌、真空パックして低温での保存など、いろいろな工夫がされています。
 さらに、ボーリングをする時には、潤滑のために水を使うのですが、その水にも注意を払っています。水には、紫外線に反応する微小な蛍光微粒子(0.25から0.45μm)を大量に入れ、岩石中に微粒子がないことを確認しています。もし紫外線をあてて、微粒子が見つかれば、水による汚染があったとして分析から除外しています。
 ここまで注意を払って、20億年前の岩石の亀裂での生物の有無を調べました。その結果は、次回としましょう。

・最終講義・
先週末に、最終講義を実施しました。
幸い多くの人に来て頂きました。
卒業生も在学生も来てくました。
平日なので卒業生は仕事があり来れませんでしたが、
メールで多数が連絡をくれました。
最終講義では、私がこれまで進めてきた研究の総括ですが、
その詳細は示しませんでした。
主に思索やその変遷を紹介しました。
そして最後には今後の展望などもお話しました。
終わってからも多く人から声をかけていただき
有りがかったかです。

・祭りの後は・
最終講義のあと、本来なら参加者と
歓談の場を設けるべきところなのでしょうが、
設けませんでした。
我が大学ではコロナ禍もあり
最終講義の実施が久しぶりでした。
どの程度の人が来るのか、不明でもありました。
それに平日なのでアナウンスも最小限にしてもらいました。
大学内では、退職する教職員への行事が
有志、学科、学部、大学で
開催していただけることになっていました。
ですからその日は、苦労かけてきた家内とともに
温泉に浸かりながら、のんびりとしようと考えました。
夫婦で温泉に入りごちそうを頂きました。