2024年12月26日木曜日

1_222 過去のプレートテクトニクス 2:沈み込みの痕跡

 現在のプレートテクトニクスでは、沈み込み帯で非常の大きな地質現象を起こしています。その沈み込み帯の痕跡を手がかりに、過去のプレートテクトニクスを、探ることが可能なはずです。


 地震や火山は、プレート運動に伴う地質現象の中でも、身近に感じる大地の営みとなります。ところが、プレートの運動はゆっくしたもので、人には感じることができない動きです。
 現在では、精度のいい観測によって、それぞれのプレートの移動量が、実測されており、その値は年間数cmから10cm程度とわかっています。また、海底には古い海洋プレートがあり、そこからも岩石が入手されています。海嶺で形成された海洋地殻の岩石が1億年前の年代だとわかっています。海嶺で地殻が形成されるプレートテクトニクスが、少なくとも1億年前からあったことがわかります。
 では、いつからプレート運動があったのでしょうか。古くからはあったはずでしょうが、それはどのように証明していけばいいのでしょうか。
 その証拠は、大陸地域にあるものになります。なぜなら、海洋域には、1億前より古い岩石は、すべて沈み込んで地表からなくなっているためです。
 大陸地殻の中からいくつかの証拠を示すことができます。沈み込み帯では、海洋プレートの断片が陸側に取り込まれたり、前回述べたような陸側で起こった各種の現象の痕跡の岩石が残されていれば、沈み込みがあったことが、間接的ですが、示すことができます。
 古い大陸で、プレートテクトニクスの痕跡が探されていくことになります。沈み込まず大陸に残された海洋プレート層序がオフィオライトとなっています。また、沈み込みの圧縮による付加体固有のデュープレックス構造も手がかりになります。沈み込みつつある海洋プレート内で起こる低温高圧変成作用による青色片岩、また大陸地殻深部で起こる超高温高圧変成作用によるコーサイトやダイヤモンドなども、過去の沈み込み帯があった痕跡となります。
 そのような痕跡を使いながら、プレートテクトニクスを大陸内で探すことできます。では、いったいどの時代まで遡れるでしょうか。

・いつものように研究室にて・
今年も残りわずかになりました。
今週で大学の講義も終わりますが、
最後の週には補講も組まれており、
個人へ代替講義も実施しました。
いつものように、暮れまで研究室で
仕事をしているはずです。
正月三ヶ日は休む予定ですが、
いつもと変わらず4日からは
仕事をはじめる予定です。
ただ、正月には次男も帰省するので、
久しぶりの家族での正月となりそうです。

・暮れの作業を・
現在、遅ればせながら暮れの恒例の
作業を進めています。
現在、年賀状の作成をしています。
1年ぶりのカラープリンターの使用だったので
調子が悪いのため、数枚のミスをしました。
今年の正月は喪中だったので、
年始の挨拶は欠礼としました。
来春は、通常の挨拶状になります。
また、週末には餅をつく予定です。
それでもいつものように
淡々と暮れを過ごしていきます。

2024年12月19日木曜日

1_221 過去のプレートテクトニクス 1:沈み込み帯

 プレートテクトニクスは、現在の地球の営みを生み出す重要な作用です。いつからはじまったのかは、どのように検証していけばいいのでしょうか。まずは、プレートテクトニクスの概要からはじめましょう。


 地球の大地の営みは、プレートテクトニクスによって説明されています。地球表層を何枚かのプレートが覆っています。プレートが、長い時間をかけて移動していくことで、大地にさまざまな変化を起こします。
 プレートには、海洋底となっている海洋プレートと大陸地殻をもった大陸プレートがあります。海洋プレートは、中央海嶺で形成され、海溝に沈み込みます。沈み込む時、各所での変成作用や陸側に火成活動、堆積作用、変形作用の造山運動などの地質現象を起こします。海洋プレートが海洋を移動することで、大陸プレートも連動して移動していきます。
 海洋プレートは、マントル対流の上昇部にあたり、定常的にマントルの溶融が起こり、常にマグマができ、火成作用が起こります。マグマは、海洋プレート固有の成分を持っていて、中央海嶺玄武岩(Mid-oceanic ridge basalt MORBと略されています)と呼ばれています。その上に、海洋のプランクトンの死骸が落ちて海洋底にたまってできる堆積物(層状チャート)が重なります。海洋プレートが陸に近づいてくると、陸からの砕屑物が海溝を越えて溜まってきます(半遠洋性堆積物)。
 沈み込む直前には、海洋プレートは、どこでも似た岩石の連なり(下から、MORB、層状チャート、半遠洋性堆積物の順)となり、海洋プレート層序と呼ばれます。
 海洋プレートが沈み込んで、深部にはいっていくに連れて、岩石の温度は上がりにくいのですが、圧力は深さにともなって上がっていきます。沈み込み帯では、低温高圧の条件での変成作用を受けていきます。
 陸由来の堆積物は、大陸斜面にも厚い地層(タービダイト層)をつくり、沈み込みの力で、押し込まれて重なっていき特別な構造(デュープレックス構造)をもっていきます。このように陸側の大陸斜面の下には、特徴的な構造をもった厚い堆積物(付加体)ができていきます。
 海洋プレートが沈み込むと、圧力が上がり、含まれていた水分が絞り脱されて陸側のマントルに加わっていきます。厚いマントル物質に水分が加わると岩石の融点が下がりマグマができます。そのマグマも固有の成分を持ったものになります。
 陸側の地殻は、火成岩や堆積岩、変成岩などさまざまな岩石からなり、沈み込みで圧縮され続けるので、厚い地殻へとなってきます。厚い地殻の深部では、中温中圧から高温高圧、ときには超高温高圧の変成作用が起こります。このような複雑な岩石が、複合的な地質現象によって、日本列島のような地帯(島弧)ができています。
 沈み込み帯は、地球上でも重要な大地の営みの場となります。これがプレートテクトニクスの基本原理です。
 では、このプレートテクトニクスはいつから働いていたのでしょうか。それはどのようにすれば、検証できるでしょうか。

・来年の正月は・
わが町も、根雪となったようで、
連日雪が降り、除雪も何度か入りました。
着るものも、完全に厳冬期仕様になりきました。
今年は、年賀の準備が遅れています。
今年は喪中だったので、
正月には一周忌もあり
通常の正月を過ごすことはありませんでした。
来年は、三回忌は親族がおこってくれることになりました。
正月には、家族も帰省する予定なので
コロナ以降、久しぶりに通常の正月になりそうです。

・退職の準備・
大学は、今年度で退職になります。
年賀状にも、その旨を書いています。
だんだん年賀状も億劫になっています。
少しずつ出す人を減らしています。
大学でも、いろいろな手続もはじまっています。
校務とともに、退職の作業も加わってきました。
最終講義もおこなうので
その準備も少しずつ進めています。
これは、楽しみながら進めています。

2024年12月12日木曜日

3_227 外核のドーナツ 3:トーラスの意味

 外核にトーラス状の構造があることが、地震波のコーダ波の解析からわかってきました。ではこのトーラス状構造は、どのようなものからできていて、なぜできてきたのでしょうか。


 前回は、地震波の実体波の後に来るコーダ波と呼ばれるものがあることを説明しました。そのコーダ波を利用して、馬らは外核の詳細な構造を調べていきました。
 地震波のコーダ波を観測から、外核を地球の極地と赤道付近で比較していきました。その結果、極地に近い場所で検出された地震波よりも、赤道近くの地震波よりも進みが遅くなっていました。
 地震波の遅い領域は、外核の中でもマントルの境界に近い赤道に沿った領域で、トーラス(ドーナツ)状に、地震波の進みが遅い領域(以下新構造)が存在しいました。トーラスは、マントルとの境界から深度数百kmほどのサイズがありそうだとわかってきました。
 外核は液体で、その成分は金属鉄とニッケルを主成分としていますが、それだけでは地震波速度が説明できません。少量の軽元素(例えば、水素、ケイ素、酸素などが候補とされています)も含まれていなければならないと考えれられています。今回の報告のモデルによると、2%ほど遅いことになりますでの、このような軽元素が多くなれば、地震波速度が遅くなっていくので、軽元素の量と分布が明らかにできるのではと考えられています。
 外核の赤道付近の外側に、不均質な領域がトーラス状にあることになります。もしトーラス構造が、軽元素の分布の違いによるものであれば、外核内の対流で説明できる可能性も指摘されています。
 外核は深部ほど温度が高く、マントルに近い部分は低温になっています。温度差ができれば、液体なので対流が生じます。軽元素を多く含んだ密度の小さい部分があれば、密度が小さいので選択的に上昇流に取り込まれやすくなります。さらに、軽い成分の流れは、地球の自転の影響も受けて、赤道にそった上部に浮かんでいくと考えられます。長い時間がたって、軽い物質が集まってトーラス状になったと推定されます。
 外核の金属鉄が流動すれば、電流が発生し、磁場も起こります。この作用が連続して起こっていれば、核全体が地磁気を持って、地磁気となっていくと考えられます。これを地球ダイナモ説と呼ばれているものです。ダイナモに軽元素の多い部分が関与するようなことあれば、地磁気にその影響が出るかもしれません。そうなると、地磁気の変化でもトーラスの存在が観測できるかもしれません。

・冬が深まる・
週末に冬型になり
かなりの雪が降りました。
激しい降りのときは風も強く、
わが町では積雪量はそれほど多くはなリませんでした。
幸い、除雪が入るほどではありませんでした。
日に日に冬が深まり、
これからの降雪、根雪となっていきそうです。

・まさに師走・
12月も忙しくなっています。
私用ででかけることがも多くなり、
校務も連続してあります。
その上、校務で校外にでかけるものもあり、
その分、さらに時間が取られて忙しくなくなります。
まさに師走となっています。
幸い次年度の私用が、かなり減ったので
来年は少し落ち着けるようです。
多分。

2024年12月5日木曜日

4_189 支笏:カルデラの中の静寂

 支笏湖は、風光明媚で温泉もあり、千歳空港からも札幌からも近く、観光には恵まれた立地です。しかし、限られた所しか観光施設がないため、そこから少し離れると静寂があります。そんな静寂が好きです。


 11月下旬、支笏湖を訪れました。わが町では、数日前にかなりの積雪になったのですが、支笏周辺は降らなかったようです。ところが、訪れる前日に、支笏周辺の山域だけが雪となりました。支笏までの山道は、積雪があり凍っているところもありました。無理せずゆっくりとの走行しましたので、無事たどり着くことができました。
 支笏湖は、火山の雄大さと湖の神秘さ、森の静寂、そして温泉を湧いていると観光に恵まれた地となっています。湖畔からは、湖面越しに恵庭岳、樽前山、風不死岳の雄大な山体が眺められます。これらの山は、いずれも活火山です。
 支笏湖は4万年前ころに激しい噴火(支笏火山)が起こり、大量の火山砕屑物を放出しました。その噴出物は、大規模な火砕流となり、支笏の南側の白老町から、南東側の苫小牧市、そして東側の千歳市一帯を覆いました。その結果、以前は太平洋に流れ込んでいた石狩川がせき止められ、石狩湾に流れ込むようになりました。
 巨大な噴火で大量のマグマが放出されたことで、山体の直下で陥没が起こりました。その結果、直径12kmになるカルデラがでました。それが現在の支笏湖となります。支笏湖は面積も広く(日本で8番)、深い湖(日本で2番)です。もともとは丸い形のカルデラ湖でしたが、その後の火山活動で、現在のようないびつな形になっていきました。
 支笏湖ができてから、2万6千年前ころから支笏カルデラの中に、風不死岳ができました。カルデラの崖の上にあたるところに、9000年前の火山活動で樽前山ができ、少しの休止期をへて、17世紀と18世紀の噴火で山頂に火口ができ、1909年には溶岩円頂丘(遠くから見るとプリンのような形)ができました。現在も、山頂周辺では噴気が上がっています。
 恵庭岳は、2万年前ころにカルデラ壁で火山活動をはじめ、山体ができました。しばらく休止した後、17世紀になって水蒸気爆発が起こり、東側に火口(爆裂火口といいます)ができました。その生々しい火口の地形は現在も残されています。
 支笏湖は、観光地ですが、少しはずれれば周辺には森が広がっているので、静寂を味わえます。出かけた時の帰りや、自宅からも近いため散策に訪れていました。
 今回は野外調査は抜きで、家内と二人で、自然の散策と温泉、そして美味しい料理を楽しみに出かけました。途中で昼食をとって、早目に着きました。森を散策しようと思っていたのですが、積雪のため、ホテルの人に長靴やブーツがないとだめだと止められました。仕方なく、きっさコーナでコーヒーを飲みながら、窓越しに景色を見て過ごしました。朝には、いろいろな野鳥が観察できました。静寂の中で、ゆったりとした、穏やかで豊かな時間を過ごすことができました。

・厚さ寒さ・
先週前半は、温かい日もあったのですが、
週末には冷え込んで雪となりました。
例年の寒さに戻ったようです。
寒暖の変化が激しいと
防寒着も、厚手のものや薄手のものへと
日によって着替えていくことになります。
まあ、季節の変化なので
自分で対処するしかないのでしょう。

・忙しくても・
とうとう師走になりました。
校務が忙しく落ち着いきません。
特に、11月から2月にかけては
次々と重要な校務が続きます。
そこに私事の所要も重なっています。
気が休まらない日が続いています。
我が大学では、退職までの1年間は
落ち着いて研究をまとめるという意味を込めて
校務は少なくするというのが暗黙にあるのですが、
人員が減っているのに、校務が増えています。
そのため、退職前も校務が押し寄せます。
まあ、致し方ないことですが
与えられた業務、すべき作業を
淡々と優先順に進めていきます。
ただしなにがあっても、
研究の進行も止めることなく
進めていかなければなりません。